異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
325 / 580
8章 異風の旋律

293 スタンピード⑩ 緑の閃光

しおりを挟む
 ギュラアアアアアアアッッ!!

 大地が揺れるほどの咆哮。
 ランドビカミウリは己を鼓舞するかのような凄まじい鳴き声を発した後、地面に伏せて4足動物のような体勢になった。
 ちっ、片足を失っても、そういう手段があるのかよ!

 ギュルゥゥッ!!


「く、そ……!」

「うああ……!」


 獣みたいなのは体勢だけじゃないようだ……!
 明らかに動作が速くなって、しかもテイルスイングが今まで以上に早い……!

 だが、俺の弓を異常に警戒しているのがバレバレだ!
 俺の矢に対して、異常なほど大きく距離を取って回避しているからなぁ!


 魔法付加した矢の難点は、何かに接触させないと発動しないという点だ。
 恐らく俺がさっきスネークソードを狙ったのを見て、その事を一瞬で見抜いたのだろうな。

 だが甘いんだよ! 俺の切り札は小細工だけじゃねぇ……!
 お前自身も開幕に喰らったのを、もう忘れちまったようだなぁ!?


 翠緑の風を持ったまま、ウォーハンマーを取り出す。
 俺の近接武器の中で、最も威力があるのはコイツだからな。

 ギュオオオオオオ!!

 ランドビカミウリがテイルスイングで背を向けた瞬間、ジャンプを使用しランドビカミウリの体の中心の真上に転移。
 いくら猛スピードで回転していても、回転軸は動いてないんだよぉ!!


「くったばれええええ!!」


 ギュゴォッ!?

 トランスを使用した俺の最大威力の攻撃を、背中にぶち込んでやる!
 勿論こんなので殺せるとは思ってないが、背中から地面に叩きつけてやった!

 つまり、ランドビカミウリは現在、地面に縫い付けられた状態だ!
 後は頼むぜみんなぁぁっ!!


「「「はあああっっ!!」」」」


 ギュイイイイイッ!!

 尻尾側にいたシンの緑に輝く刃が、ランドビカミウリの尻尾を根元から斬り飛ばす!

 ギュアアアアアッ!!

 リーンのスネークソードが、ランドビカミウリの右腕を斬り飛ばす!

 ギュボァ!!

 トルネの槍が、ランドビカミウリの喉を貫く!

 ここで決めて、なにっ!?


 突如俺を避けて跳躍したランドビカミウリは、その勢いのまま羽ばたき始める。
 コイツ、空に逃げる気か!!


「リーン!! 奴の翼を切り落とせぇ!!」

「はあああああ!!」


 範囲拡張したスネークソードが、まるで生き物のような動きでランドビカミウリの翼に迫る。
 
 だが当然、これだけでは攻撃が命中しないだろうな。

 ストレージから2本の矢を取り出す。
 1本を普通に撃って、もう1本をトランスを使用して放つ。

 後から撃った矢が、先に撃った矢に当たる。
 その瞬間、ランドビカミウリの右目を、2本目の矢が射抜いていた。

 ギュアア!??

 誰も生活魔法しか付加してないなんて言った覚えはないぜ?
 2本目にはジャンプを付加してあるんだよぉ! 

 小さな矢とはいえ、右目を射抜かれたランドビカミウリは動揺し、大きく体勢を崩す。
 そこに追いついたスネークソードが、奴の翼を根元から斬って捨てた!

 翼を失い落下する、白き竜の王。
 その落下している首元を、緑の閃光が駆け抜ける!

 攻撃範囲を拡大した、心緑の流刃の一閃。

 古より蘇った神話上の生物は、空中で首と胴体が切り離され、2つになって地面に衝突した。


 凄まじい轟音と振動。そして土煙が舞う。
 だが相手は伝説上のバケモノだ。確実に死んだ事を確認しなければ……!

 そう思ってまさに走り出した瞬間、土煙の中から5つの光がシンに向かって飛んできた。


「あ……! トーマ! これ心核だよ!
 心核が5つ出たって事は……!」


 シンの言葉を引き継ぐかのように、ランドビカミウリの落下した辺りから、凄まじい勢いで魔力の帯が天に駆け上っていった。


「これは……。規模はでかいけど、迷宮殺しを達成した時と同じ感じに見えるな……」

「心核が出て、魔力還元が起こったってことは……」


 シンと顔を見合わせる。
 この現象が起こったって事は、迷宮の氾濫は終わったってことだよな……?

 つまり、つまり俺たちは……!


「「勝ったあああああああっ!!」」


 勝利を叫びながらシンと抱き合う。
 勝った! 勝てた! 生き延びた! 終わったんだ!!


「あーーっ!! トーマも兄さんも、相手が違うでしょーっ!! なんで男同士で抱き合ってるのよーーっ!!」

「うん。私にそっち方面の趣味はないからね? 別に嫌いでもないけど。
 でも良かった。みんな無事で、本当に良かったよ……!」

「はあぁ……。未だに生きてる実感が湧きませんよ……。
 心核魔獣を相手にするのはもう懲り懲りです……」


 リーン、ハル、トルネも合流する。
 誰1人欠けることなく勝利できて、本当に良かった……!

 ……なんか俺、毎回似たようなこと思ってねぇか?

 シンと離れて、リーンとトルネを抱きしめる。シンとハルも抱き合っているみたいだ。


「本当、良く勝てたよなぁ……。みんな生き残れて、本当に良かったよ。
 トルネの言うとおり、もう1回戦うのは絶対にお断りだな……!」

「ホントだね……。次も勝てるかって言われると自信ないな~。
 流石に白き竜王が出てくるのは反則だよねー?」

「反則過ぎますよ……。今日はもう嫌になりますよ全く……!
 迷宮殺しを終えて帰ってきて、迷宮の氾濫が始まって、準備に奔走して、日中にはチート能力者と戦って、夜には魔物の氾濫、そして最後の最後にこれですよ?
 ほんと、やってられませんよ……!」

「本当に、今日はなんだったんだってくらい凄まじい1日だったね。
 と言っても、ロンメレを捕まえない事には終わらないんだけどさ。
 終わらないんだけど、流石に僕も1回気を抜きたい気分だよ……」

「うん。今日はずっと生きた心地がしなかったよ。
 でも凄く綺麗だね。みんなと一緒にこの光景を見れて良かったって、心から思うな」


 よほど蓄えられた魔力が多かったのか、魔力の帯はまだ天に昇り続けている。
 オーロラなんて見たことなかったけど、虹色の光の帯が空に登っていく光景は、なんとなくオーロラを連想させる光景だった。

 なんかもうロンメレのことなんてどうでもいいくらいに疲れたわ。
 とりあえず明日1日くらいは、ゆっくり休ませてもらおうかねぇ……。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...