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8章 異風の旋律
286 スタンピード② 前半戦
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「「「うあああああああああ!!!」」」
ギャギャギャギャギャ!!!
最前線と魔物の波がぶつかった。
見た感じレッサーゴブリンやコボルトくらいまでの弱い魔物が大量に押し寄せてる感じだな。
「よし、そんじゃシンとリーンは両翼を頼むよ」
「……まさかあの演出のためだけに、ここまで待機させてたわけじゃないだろうね?」
シンがちょっとジト目になって睨んでくる。恥ずかしかったのかもしれない。
でもオッサンの俺より、シンがやった方が絶対に絵になるから仕方ないんだ。
「流石にそれはねぇよ。中央を破られたら終わりだからさ。開戦するまで中央に戦力を置いておきたかっただけ。
見た感じ、当分の間は中央も問題無さそうだから宜しくな」
スネークソードで攻撃範囲が長大なリーンと、心核武器持ちでウチの最大戦力になったシンが、中央から少し離れた部分をサポートする。
ハル、リーネ、ついでにタケルは中央の後方に詰めていて、ハルは可能であれば援護射撃、更に余裕があればウィンドストームで敵の量を減らしてもらう。
さてと、俺もサボってないでそろそろいきますかね。
手数メインのダガー二刀流で魔物の群れに突っ込んでいく。
後々強い魔物が出始めたときに備えて、上級に分類される冒険者達の半数は温存してあるけれど、戦っても消耗しない程度の魔物の殲滅くらいは手伝っても問題ない。
あーなんか1人で好き勝手暴れてると、デスマを思い出すなぁ。
あの時と比べて出来ることも格段に増えたし、弱い魔物相手ならセンサーに頼らなくても気配が感じ取れるようになってる。
これは恐らく五感強化のおかげなんだろうな。
異風の旋律もカルネジア家も前線で戦っているので、この作戦全体の総指揮は、なんとエルハが任されている。
俺としては不安が残る人選なのだが、ボールクローグに住んでいる人からのエルハへの信頼は篤い。お人好しではあるが有能なのは間違いないらしく、彼女がギルドマスターになってから、狩人ギルドの売り上げも狩人の生還率も上がっているらしい。
なるほどなぁ。裏切りには耐性がなかっただけで、基本スペックは高い人だったのか。
魔物を切り捨てながら様子を見てみるが、どうやらレッサーウィスプみたいな移動が苦手な魔物は、氾濫の中には含まれていないっぽい。
ま、移動できなかったら後続に踏み潰されて終わりだから意味ないもんな。
移動が苦手な魔物が出てこない分、移動が得意な魔物の割合は多い。特にキラーラットやスカイジャベリンなんかの飛行魔物は危険度が高いので、ハルを含めて射手のみなさんには優先的に落としてもらっている。
迷宮と違って壁や天井がないからな。空飛んで一気に街まで行く可能性すらある。
しかしこうやって戦ってみると、ベイクの迷宮で遭遇済みの魔物も、迷宮外だと行動パターンが変化してて結構新鮮だな。
生い茂っている木々に隠れたり登ったりして地形を利用してくるし、ブラックウルフとか移動を優先しているためか、得意の遠吠えを使う気配もない。
しかしブラックウルフか。ベイクの10階層級の魔物を超えてきたみたいだな。
そして魔物の個体能力は上がってきているのに、物量的な変化が見られない。前線を支えてる中でも戦闘経験が少なめの奴等から、そろそろ負傷者が出てもおかしくない。
ま、突出して森まで入ってる俺に確認する術もないんだけど。
自分の周囲に誰もいない状況なので、攻撃範囲拡張も気にせず行えるし、いつものソロ探索と感覚的にはあまり変わらない。
ただ迷宮と違って魔物の死体が消えてくれないので、同じ場所で戦い続けると、文字通り足の踏み場がなくなってしまう。
範囲攻撃魔法、俺も覚えておけば良かったなぁ。ま、今さら過ぎるか。
今のところ、どこからも救援信号は出ていないので、全体的には上手く回っているのだと判断しよう。
しかし、俺の前には誰もいない状況か。それなら少し試してみるかな。
ロングソードを両手で持って、左足を上げて振り被る。そう、これは伝説の一本足打法!
まさに野球のバットを振るかのように、ロングソードをスイングする。
その瞬間トランスと攻撃範囲拡張を発動。俺にイメージできる最大射程で発動する。
振りきった直後に範囲拡張を終了させ、背後の味方に攻撃が届かないように気をつける。
一瞬とはいえ、思い切り攻撃範囲を拡張したので、魔力がごっそり持っていかれた。これはちょっと後ろに下がって休憩しようかな。
一瞬置いて木々が倒れる。目の前の魔物から順に地面に崩れ落ちていく。
それはまるでドミノ倒しのように、俺を中心にしてどんどん遠くまで広がっていく。
おお、いったいどれくらいまで攻撃が届いたんだろう?
なんて暢気に構えていたら、見渡す限りの倒木と魔物の死体の山が築き上げられてしまった。
お、おう。恐らくは百メートル以上は斬撃が通ったっぽい……?
これを見られるとまたちょっと煩そうだな。
後続の魔物が来れば荒れて分からなくなるだろうし、とりあえず戻って射手に専念しよう。
「あ、あれ? この辺だけ魔物が途切れたんだけど、なにか来るのか……?」
あーあー聞こえませーん。
最前線部隊のすぐ後ろの櫓に登る。
ここからは極力魔力を使わずに回復に努める。
本当は遠見を使って遠距離スナイプの練習もしたいところなんだけどねぇ。
暗視と違って遠見は魔力を使用するから、あれ使ってると魔力回復が起こってくれなくなるから使えないんだよね。
なぜか生まれた小休止の時間、櫓の上から周囲の状況を軽く確認してみる。
今のところ戦線が崩れたところもなく、街への人員輸送が行われているようには見えない。
どうやらここまでは安定しているようだ。
ここからはどんどん大型の魔物も出てくるだろう。最終的にはアサルトドラゴンやグランドドラゴンが群れで出現するようになるだろうな。
大型魔物の範囲攻撃魔法とブレスを如何に防ぐかが、犠牲を減らす上で重要なポイントになってきそうだ。
ギャギャギャギャギャ!!!
最前線と魔物の波がぶつかった。
見た感じレッサーゴブリンやコボルトくらいまでの弱い魔物が大量に押し寄せてる感じだな。
「よし、そんじゃシンとリーンは両翼を頼むよ」
「……まさかあの演出のためだけに、ここまで待機させてたわけじゃないだろうね?」
シンがちょっとジト目になって睨んでくる。恥ずかしかったのかもしれない。
でもオッサンの俺より、シンがやった方が絶対に絵になるから仕方ないんだ。
「流石にそれはねぇよ。中央を破られたら終わりだからさ。開戦するまで中央に戦力を置いておきたかっただけ。
見た感じ、当分の間は中央も問題無さそうだから宜しくな」
スネークソードで攻撃範囲が長大なリーンと、心核武器持ちでウチの最大戦力になったシンが、中央から少し離れた部分をサポートする。
ハル、リーネ、ついでにタケルは中央の後方に詰めていて、ハルは可能であれば援護射撃、更に余裕があればウィンドストームで敵の量を減らしてもらう。
さてと、俺もサボってないでそろそろいきますかね。
手数メインのダガー二刀流で魔物の群れに突っ込んでいく。
後々強い魔物が出始めたときに備えて、上級に分類される冒険者達の半数は温存してあるけれど、戦っても消耗しない程度の魔物の殲滅くらいは手伝っても問題ない。
あーなんか1人で好き勝手暴れてると、デスマを思い出すなぁ。
あの時と比べて出来ることも格段に増えたし、弱い魔物相手ならセンサーに頼らなくても気配が感じ取れるようになってる。
これは恐らく五感強化のおかげなんだろうな。
異風の旋律もカルネジア家も前線で戦っているので、この作戦全体の総指揮は、なんとエルハが任されている。
俺としては不安が残る人選なのだが、ボールクローグに住んでいる人からのエルハへの信頼は篤い。お人好しではあるが有能なのは間違いないらしく、彼女がギルドマスターになってから、狩人ギルドの売り上げも狩人の生還率も上がっているらしい。
なるほどなぁ。裏切りには耐性がなかっただけで、基本スペックは高い人だったのか。
魔物を切り捨てながら様子を見てみるが、どうやらレッサーウィスプみたいな移動が苦手な魔物は、氾濫の中には含まれていないっぽい。
ま、移動できなかったら後続に踏み潰されて終わりだから意味ないもんな。
移動が苦手な魔物が出てこない分、移動が得意な魔物の割合は多い。特にキラーラットやスカイジャベリンなんかの飛行魔物は危険度が高いので、ハルを含めて射手のみなさんには優先的に落としてもらっている。
迷宮と違って壁や天井がないからな。空飛んで一気に街まで行く可能性すらある。
しかしこうやって戦ってみると、ベイクの迷宮で遭遇済みの魔物も、迷宮外だと行動パターンが変化してて結構新鮮だな。
生い茂っている木々に隠れたり登ったりして地形を利用してくるし、ブラックウルフとか移動を優先しているためか、得意の遠吠えを使う気配もない。
しかしブラックウルフか。ベイクの10階層級の魔物を超えてきたみたいだな。
そして魔物の個体能力は上がってきているのに、物量的な変化が見られない。前線を支えてる中でも戦闘経験が少なめの奴等から、そろそろ負傷者が出てもおかしくない。
ま、突出して森まで入ってる俺に確認する術もないんだけど。
自分の周囲に誰もいない状況なので、攻撃範囲拡張も気にせず行えるし、いつものソロ探索と感覚的にはあまり変わらない。
ただ迷宮と違って魔物の死体が消えてくれないので、同じ場所で戦い続けると、文字通り足の踏み場がなくなってしまう。
範囲攻撃魔法、俺も覚えておけば良かったなぁ。ま、今さら過ぎるか。
今のところ、どこからも救援信号は出ていないので、全体的には上手く回っているのだと判断しよう。
しかし、俺の前には誰もいない状況か。それなら少し試してみるかな。
ロングソードを両手で持って、左足を上げて振り被る。そう、これは伝説の一本足打法!
まさに野球のバットを振るかのように、ロングソードをスイングする。
その瞬間トランスと攻撃範囲拡張を発動。俺にイメージできる最大射程で発動する。
振りきった直後に範囲拡張を終了させ、背後の味方に攻撃が届かないように気をつける。
一瞬とはいえ、思い切り攻撃範囲を拡張したので、魔力がごっそり持っていかれた。これはちょっと後ろに下がって休憩しようかな。
一瞬置いて木々が倒れる。目の前の魔物から順に地面に崩れ落ちていく。
それはまるでドミノ倒しのように、俺を中心にしてどんどん遠くまで広がっていく。
おお、いったいどれくらいまで攻撃が届いたんだろう?
なんて暢気に構えていたら、見渡す限りの倒木と魔物の死体の山が築き上げられてしまった。
お、おう。恐らくは百メートル以上は斬撃が通ったっぽい……?
これを見られるとまたちょっと煩そうだな。
後続の魔物が来れば荒れて分からなくなるだろうし、とりあえず戻って射手に専念しよう。
「あ、あれ? この辺だけ魔物が途切れたんだけど、なにか来るのか……?」
あーあー聞こえませーん。
最前線部隊のすぐ後ろの櫓に登る。
ここからは極力魔力を使わずに回復に努める。
本当は遠見を使って遠距離スナイプの練習もしたいところなんだけどねぇ。
暗視と違って遠見は魔力を使用するから、あれ使ってると魔力回復が起こってくれなくなるから使えないんだよね。
なぜか生まれた小休止の時間、櫓の上から周囲の状況を軽く確認してみる。
今のところ戦線が崩れたところもなく、街への人員輸送が行われているようには見えない。
どうやらここまでは安定しているようだ。
ここからはどんどん大型の魔物も出てくるだろう。最終的にはアサルトドラゴンやグランドドラゴンが群れで出現するようになるだろうな。
大型魔物の範囲攻撃魔法とブレスを如何に防ぐかが、犠牲を減らす上で重要なポイントになってきそうだ。
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