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8章 異風の旋律
277 防衛準備
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「つうことでコイツは、タイデリア家から連れて来た救援ってことになってる。この衣装をつけている間は、そうだな、オーサンとでも名乗ってもらおうか」
「ぶふっ!!」
シンが吹き出した。大体オーサンのせい。
今はボールクローグに戻ってきて、タケルと異風の旋律を引き合わせたところだ。
流石にタケル呼びするのは迂闊すぎるので、この衣装をタイデリア家に返却するまでの間はオーサンで通すことにする。
「それでその、オーサンは戦えるのー? 9等級冒険者ってことは、魔物との戦闘経験はあるんでしょー?」
「ああ。でもまだスキルを取得できてないんだ。
イメージ的には、3階層に挑戦した時の俺たちくらいの実力なんじゃないかな。
魔装術が使えないから、前線に出すわけにはいかない」
「そうですね。時間までに管理迷宮で強制的に経験を積ませるにしても、覚えたてで使い慣れていないスキルを持って前線に送り出すわけにも行きませんし、諦めるべきですか」
「うん。みんなと合流した頃の私よりは戦えるって事かな。
スキルはなくても戦闘経験があるなら、変な動きはしないかな?」
「そうだな。戦いが始まったら、基本的にリーネと一緒に行動してもらうことになると思う。
リーネは逆に実戦経験がないから、前線に出すとしても前半だけで、後は後方支援に徹してもらいたいと思ってるし」
「そうだね……。私が戦いの場に出ても足を引っ張っちゃうと思うから、後方支援、頑張るよ……!」
「多分リーネはヴィジョンを使いまくることになるとは思うけどな。
さてと、あとは……」
「トーマ! おいトーマ! アンタのパーティ、ビジュアルレベル高すぎだろ!?」
「俺以外な。あと全員相手いるから手ぇ出すなよ?」
うちの人間関係を軽く説明する。
「マジかよ!? こんな若くて可愛い子を3人も囲うとか、アンタ異世界満喫しすぎだろ!?」
「そう思われても仕方ないんだけどさぁ。全部成り行きだったんだよなぁ。
ま、オーサンもこの騒動が終わったらさ、改めてやり直せば良いんだよ。楽しい異世界生活って奴をさ」
「……やり直す、か。いいなそれ。俺が望んだ異世界生活、か……」
間もなく陽天の報せがなる頃だ。
今回サルトリとヨーダムの護送を行うのは、俺とシンを除いた異風の旋律の女性陣だ。
街が滅びるかどうかって極限状態だからな。カルネジア家への憎しみよりも、単純な欲望が暴走することもあるだろう。しかも同志の救出という大儀も抱えているのだから、襲撃もやむなし、と。
俺は迷宮殺しとカルネジア家との騒動、ブルガーゾを撃退したことで、地味に有名になってしまったので、街に残っておく事にした。
俺がいなくなるだけで相手が警戒するとも思ってないけど、念には念をだ。
代わりにシンにアイソレーションをかけて、距離を取って追いかけてもらう。
現在街の周りは、野戦での見晴らしを確保するために、急ピッチで伐採が行われている。
ボールクローグの住人と、避難してきた近郊に住んでいる人たちみんなが協力しているので、みるみるうちに伐採が進んでいく。
小型の魔物は実力的には脅威じゃないけど、森に潜んで街まで近付かれるのは厄介だからな。先手を打って潰しておく。
伐採した木材は、城壁の補強に使ったり城壁の前に高い櫓を組んだりしている。
基本的には城壁の少し前で野戦を行う事に決定したので、弓の有効射程範囲を延ばすために櫓の設置を急いでいる。
加えて、魔法薬で魔物の忌避剤を作れるというので、可能な限り用意してもらう。
氾濫状態の魔物にどのくらい効果があるのかは誰も分かっていなかったけど、使えるのもはなんでも使う。
忌避剤に期待するのは、魔物の進行ルートの限定だ。
戦う場所をこちらで決められるのであれば、作戦も立てやすいし取れる手段も増えてくる。
陽天の報せが鳴り響く。作戦開始だな。
異風の旋律の女性陣が護送を担当しているのに、俺が見送りに行かないのは不自然なので、街を出るまでは一緒に歩くことにする。
俺の居場所を相手に確認させる意味合いもあるけど、単純に少し不安なので、できるだけ一緒にいたかっただけ。
「ふふ、トーマは心配性だねー? もう少し先輩の私を信用してくれても良いんだよー?」
「心配されるのは悪い気はしませんけどね。サルトリやヨーダムの能力を考えると、襲撃者の戦力がそこまで大きいとは考えにくいですよ」
「うん。これでもみんな、深階層域で活動してる冒険者なんだしね。襲撃されるのが目的の行動なんだし、心の準備も万端。遅れを取るわけには行かないかな」
「わ、私が足を引っ張っちゃったらごめんね……? ホ、ホントに私も一緒に行く必要あるのかなぁ……?」
「悪い。こんな作戦しか思いつかなかったんだよ。
カルネジア家に女性を奪われたことが原因で復讐を考えているなら、女性に飢えた奴もいるんじゃないかと思ってな。
城壁の上から見てるからさ。くれぐれも気をつけてくれよ? 危なくなったら逃げてもいいからさ」
「もー! 信用しなさいっていってるでしょー!?
ただトーマ。今回は本当に捕獲しなくていいのー?」
「ああ、どっちにしてもロンメノの勢力ってお互いのこと知らないからさ。例え拷問にかけても新しい情報が得られるとは限らないし。今回は排除優先でいいんじゃないかな」
この後魔物の氾濫に襲われる状況で、捕虜の監視なんかに人手を割くわけにも行かない。
ならば全員排除してしまうしかない。こっちだって余裕はないのだから。
街の入り口まで同行して、護送用の馬車が街を離れるのを見送る。
息切れしているタケルと一緒に城壁に登りながら、作戦が無事に成功することを祈る。
不安要素はあるんだよな。
ロンメノの行った異邦人探し、複数名がまだ見つかってないって報告だったからなぁ……。
「ぶふっ!!」
シンが吹き出した。大体オーサンのせい。
今はボールクローグに戻ってきて、タケルと異風の旋律を引き合わせたところだ。
流石にタケル呼びするのは迂闊すぎるので、この衣装をタイデリア家に返却するまでの間はオーサンで通すことにする。
「それでその、オーサンは戦えるのー? 9等級冒険者ってことは、魔物との戦闘経験はあるんでしょー?」
「ああ。でもまだスキルを取得できてないんだ。
イメージ的には、3階層に挑戦した時の俺たちくらいの実力なんじゃないかな。
魔装術が使えないから、前線に出すわけにはいかない」
「そうですね。時間までに管理迷宮で強制的に経験を積ませるにしても、覚えたてで使い慣れていないスキルを持って前線に送り出すわけにも行きませんし、諦めるべきですか」
「うん。みんなと合流した頃の私よりは戦えるって事かな。
スキルはなくても戦闘経験があるなら、変な動きはしないかな?」
「そうだな。戦いが始まったら、基本的にリーネと一緒に行動してもらうことになると思う。
リーネは逆に実戦経験がないから、前線に出すとしても前半だけで、後は後方支援に徹してもらいたいと思ってるし」
「そうだね……。私が戦いの場に出ても足を引っ張っちゃうと思うから、後方支援、頑張るよ……!」
「多分リーネはヴィジョンを使いまくることになるとは思うけどな。
さてと、あとは……」
「トーマ! おいトーマ! アンタのパーティ、ビジュアルレベル高すぎだろ!?」
「俺以外な。あと全員相手いるから手ぇ出すなよ?」
うちの人間関係を軽く説明する。
「マジかよ!? こんな若くて可愛い子を3人も囲うとか、アンタ異世界満喫しすぎだろ!?」
「そう思われても仕方ないんだけどさぁ。全部成り行きだったんだよなぁ。
ま、オーサンもこの騒動が終わったらさ、改めてやり直せば良いんだよ。楽しい異世界生活って奴をさ」
「……やり直す、か。いいなそれ。俺が望んだ異世界生活、か……」
間もなく陽天の報せがなる頃だ。
今回サルトリとヨーダムの護送を行うのは、俺とシンを除いた異風の旋律の女性陣だ。
街が滅びるかどうかって極限状態だからな。カルネジア家への憎しみよりも、単純な欲望が暴走することもあるだろう。しかも同志の救出という大儀も抱えているのだから、襲撃もやむなし、と。
俺は迷宮殺しとカルネジア家との騒動、ブルガーゾを撃退したことで、地味に有名になってしまったので、街に残っておく事にした。
俺がいなくなるだけで相手が警戒するとも思ってないけど、念には念をだ。
代わりにシンにアイソレーションをかけて、距離を取って追いかけてもらう。
現在街の周りは、野戦での見晴らしを確保するために、急ピッチで伐採が行われている。
ボールクローグの住人と、避難してきた近郊に住んでいる人たちみんなが協力しているので、みるみるうちに伐採が進んでいく。
小型の魔物は実力的には脅威じゃないけど、森に潜んで街まで近付かれるのは厄介だからな。先手を打って潰しておく。
伐採した木材は、城壁の補強に使ったり城壁の前に高い櫓を組んだりしている。
基本的には城壁の少し前で野戦を行う事に決定したので、弓の有効射程範囲を延ばすために櫓の設置を急いでいる。
加えて、魔法薬で魔物の忌避剤を作れるというので、可能な限り用意してもらう。
氾濫状態の魔物にどのくらい効果があるのかは誰も分かっていなかったけど、使えるのもはなんでも使う。
忌避剤に期待するのは、魔物の進行ルートの限定だ。
戦う場所をこちらで決められるのであれば、作戦も立てやすいし取れる手段も増えてくる。
陽天の報せが鳴り響く。作戦開始だな。
異風の旋律の女性陣が護送を担当しているのに、俺が見送りに行かないのは不自然なので、街を出るまでは一緒に歩くことにする。
俺の居場所を相手に確認させる意味合いもあるけど、単純に少し不安なので、できるだけ一緒にいたかっただけ。
「ふふ、トーマは心配性だねー? もう少し先輩の私を信用してくれても良いんだよー?」
「心配されるのは悪い気はしませんけどね。サルトリやヨーダムの能力を考えると、襲撃者の戦力がそこまで大きいとは考えにくいですよ」
「うん。これでもみんな、深階層域で活動してる冒険者なんだしね。襲撃されるのが目的の行動なんだし、心の準備も万端。遅れを取るわけには行かないかな」
「わ、私が足を引っ張っちゃったらごめんね……? ホ、ホントに私も一緒に行く必要あるのかなぁ……?」
「悪い。こんな作戦しか思いつかなかったんだよ。
カルネジア家に女性を奪われたことが原因で復讐を考えているなら、女性に飢えた奴もいるんじゃないかと思ってな。
城壁の上から見てるからさ。くれぐれも気をつけてくれよ? 危なくなったら逃げてもいいからさ」
「もー! 信用しなさいっていってるでしょー!?
ただトーマ。今回は本当に捕獲しなくていいのー?」
「ああ、どっちにしてもロンメノの勢力ってお互いのこと知らないからさ。例え拷問にかけても新しい情報が得られるとは限らないし。今回は排除優先でいいんじゃないかな」
この後魔物の氾濫に襲われる状況で、捕虜の監視なんかに人手を割くわけにも行かない。
ならば全員排除してしまうしかない。こっちだって余裕はないのだから。
街の入り口まで同行して、護送用の馬車が街を離れるのを見送る。
息切れしているタケルと一緒に城壁に登りながら、作戦が無事に成功することを祈る。
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