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8章 異風の旋律
276 異邦人タケル③
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「ああ。俺は迷宮経営をして、スローライフが送りたかったって言ったろ……? 迷宮の魔力使って便利なものを生み出してさ。護衛してくれる魔物とか、家の事を代行してくれる魔物とかを生み出して、のんびり暮らすのが目的だったんだよ。
でもさ。『迷宮操作』で出来ることって、基本的には誘導なんだよ。指定の場所に迷宮を発生させやすくしたり、発生した迷宮の暴走を誘発させたりとかは出来るけど、どんな迷宮を生み出すのか指定は出来ないし、生み出したあとの迷宮を消し去ったりすることも出来ない。中に入れば当然俺も襲われるしな……」
「……つまりは、迷宮操作なんて名前の割には、迷宮の制御が殆ど出来ない能力って事なのか?
自在に操れるって要素は、迷宮の発生と魔物の氾濫だけ……?」
「ああ、その認識で合ってると思う。
迷宮を生み出すだけ生み出して制御が出来ないなんて、使い道が全然ないだろ?
……無差別テロでも起こさない限りはっ!」
なるほどな。迷宮操作なんて能力の割には代償が少ないと思ったけど、使用コストは低くてリスクが大きいって感じの能力なのかもしれない。
迷宮を発生、暴走を任意に起こすことは可能だけど、タケル本人も襲われるんじゃあ簡単には扱えないもんな。使い勝手が悪い分、使用コストは軽めに設定されているっぽい。
「ってことは、タケルが保護された今、新しく迷宮が発生することは無いと思っていいのか?」
「ん……、それは恐らく、としか言えないかな。
能力が能力だけに、いままで検証とかして無かったからさ。能力の詳細まで把握しきれているかどうか……。
ただ、感覚的にはスキルを発動している感じがしない、な」
フォースだったか。魔法で能力の使用を強制されていたのを解除したわけだから、意識も落ちていたし、もうスキルは使ってないと見ていいかな?
「タケル。話してくれてありがとな。
そんじゃ俺は戻ります。ディオーヌ様、タケルの事はよろしくお願いします。終わったら迎えに来ますので」
「ええ、引き受けましょう。どうかご武運を」
とりあえず今はこれ以上状況が悪化しないことが確認できただけで充分だ。
あとはこの事態を、如何に犠牲を抑えて乗り切るかだ。
「待ってくれ……! トーマ、これからアンタは、俺が起こした迷宮の暴走を解決しに行くんだよな……!?
だったら俺も、俺も連れてってくれないか……!?
俺がやっちまったことで危険に晒されてる人たちがいるってのに、当の俺が安全地帯で守られてるなんて冗談じゃねぇよ!! 俺が行ったって出来る事なんか何もないかもしれないけどさ、それでも、自分のしでかしたことから目を背けちまったら、もう楽しくなんて生きていけないだろ!?」
「……タケルの気持ちも分かるけど、命の保障は全く出来ないぞ。
それにお前に関して言えば、ロンメノにも狙われてるからな。街中でも安全とは言い難い」
「足手纏いになるのも、危険な場所だってのもわかってる! その上でお願いしてるんだよ!
頼む! 例えなんの力になれなかったとしても、自分が起こしてしまったことの結末くらい、最後まで見届けさせてくれっ!!」
……タケルをボールクローグに連れて行くのは合理的じゃない。
合理的じゃあないんだけど、連れて行ってやりたいとも思う。
洗脳されて強制的に悪用された自分の能力から目を逸らさない、なかなか熱い男じゃないか。嫌いじゃない。
「あ~ディオーヌ様済みません。タイデリア家のゲート使いが着けてるマスクとマントって、借りれたりしませんかね?」
「……タケルさんをお預かりするよりも当家の負担は軽くなりますから、その程度でしたらすぐにご用意できますよ。
ですが、トーマさんらしくありませんね。タケルさんをボールクローグに同行させる危険性は、私以上に認識されていると思っているのですが」
「はは、俺も男の子なんで。命を賭けるって言ってる男の邪魔は、したくないんですよ」
タケルは悪い奴じゃない。悪い奴に利用されただけだ。
アリスたちと比べると気概があって良い奴に感じる。
「つ、連れてってくれるのか!?」
「ただしこっちの指示には確実に従ってもらうからな。
ディオーヌ様から借りる衣装を、またここに戻ってくるまでは絶対に脱がないこと。
この後紹介するけど、俺のパーティメンバー以外には絶対についていかないこと。人伝に伝言することもしないからな。俺のパーティ以外からの指示は全部無視してくれ。
ちなみに9等級って言ってたけど、祝福の儀、スキルはもう獲得したことがあるのか?」
「い、いやまだスキルは取得できてないな。祝福の儀って金貨3枚なんだろ?手が出なかったんだ。
SPは今のところ12SP貯まってる」
まだ魔装術の取得条件である15SPには届いていないか。
そういえば俺の場合は、9等級になったのとSP初獲得がほぼ同時だった気がするな。
そう考えるとタケルは9等級にしては頑張ってる方なのかも。
「15SP稼げていれば、魔装術ってスキルが覚えられるんだけどな。ま、こればっかりは仕方ない。
さて、命の保障は出来ないと言ったが、みすみす殺されてやるつもりなんてねぇからな。
覚悟を決めろよタケル。自分のしたことから目を逸らさない覚悟と、それでも絶対生き残る覚悟をな」
「覚悟はしたっつうの! いや、実際に現場に行ったら揺らいじまうかもしれないけどさ……。
誰かに簡単に利用されるような情けない俺だけど、この覚悟は自分で選んだ道なんだよ!」
ディオーヌ様から衣装を受け取り、タケルが装着する。
マントのおかげで性別すらわからないし、仮面のおかげで顔も確認できない。
ボールクローグに着いたら飲み食いも制限されそうなので、ターミナル広場に向かう間に、馬車の中で軽く食事をさせておいた。
物資の輸送に、タイデリア家から2名ほどゲート使いを派遣してもらえた。
ゲート使いを普通に複数抱えてるタイデリア家怖いっす。
でもさ。『迷宮操作』で出来ることって、基本的には誘導なんだよ。指定の場所に迷宮を発生させやすくしたり、発生した迷宮の暴走を誘発させたりとかは出来るけど、どんな迷宮を生み出すのか指定は出来ないし、生み出したあとの迷宮を消し去ったりすることも出来ない。中に入れば当然俺も襲われるしな……」
「……つまりは、迷宮操作なんて名前の割には、迷宮の制御が殆ど出来ない能力って事なのか?
自在に操れるって要素は、迷宮の発生と魔物の氾濫だけ……?」
「ああ、その認識で合ってると思う。
迷宮を生み出すだけ生み出して制御が出来ないなんて、使い道が全然ないだろ?
……無差別テロでも起こさない限りはっ!」
なるほどな。迷宮操作なんて能力の割には代償が少ないと思ったけど、使用コストは低くてリスクが大きいって感じの能力なのかもしれない。
迷宮を発生、暴走を任意に起こすことは可能だけど、タケル本人も襲われるんじゃあ簡単には扱えないもんな。使い勝手が悪い分、使用コストは軽めに設定されているっぽい。
「ってことは、タケルが保護された今、新しく迷宮が発生することは無いと思っていいのか?」
「ん……、それは恐らく、としか言えないかな。
能力が能力だけに、いままで検証とかして無かったからさ。能力の詳細まで把握しきれているかどうか……。
ただ、感覚的にはスキルを発動している感じがしない、な」
フォースだったか。魔法で能力の使用を強制されていたのを解除したわけだから、意識も落ちていたし、もうスキルは使ってないと見ていいかな?
「タケル。話してくれてありがとな。
そんじゃ俺は戻ります。ディオーヌ様、タケルの事はよろしくお願いします。終わったら迎えに来ますので」
「ええ、引き受けましょう。どうかご武運を」
とりあえず今はこれ以上状況が悪化しないことが確認できただけで充分だ。
あとはこの事態を、如何に犠牲を抑えて乗り切るかだ。
「待ってくれ……! トーマ、これからアンタは、俺が起こした迷宮の暴走を解決しに行くんだよな……!?
だったら俺も、俺も連れてってくれないか……!?
俺がやっちまったことで危険に晒されてる人たちがいるってのに、当の俺が安全地帯で守られてるなんて冗談じゃねぇよ!! 俺が行ったって出来る事なんか何もないかもしれないけどさ、それでも、自分のしでかしたことから目を背けちまったら、もう楽しくなんて生きていけないだろ!?」
「……タケルの気持ちも分かるけど、命の保障は全く出来ないぞ。
それにお前に関して言えば、ロンメノにも狙われてるからな。街中でも安全とは言い難い」
「足手纏いになるのも、危険な場所だってのもわかってる! その上でお願いしてるんだよ!
頼む! 例えなんの力になれなかったとしても、自分が起こしてしまったことの結末くらい、最後まで見届けさせてくれっ!!」
……タケルをボールクローグに連れて行くのは合理的じゃない。
合理的じゃあないんだけど、連れて行ってやりたいとも思う。
洗脳されて強制的に悪用された自分の能力から目を逸らさない、なかなか熱い男じゃないか。嫌いじゃない。
「あ~ディオーヌ様済みません。タイデリア家のゲート使いが着けてるマスクとマントって、借りれたりしませんかね?」
「……タケルさんをお預かりするよりも当家の負担は軽くなりますから、その程度でしたらすぐにご用意できますよ。
ですが、トーマさんらしくありませんね。タケルさんをボールクローグに同行させる危険性は、私以上に認識されていると思っているのですが」
「はは、俺も男の子なんで。命を賭けるって言ってる男の邪魔は、したくないんですよ」
タケルは悪い奴じゃない。悪い奴に利用されただけだ。
アリスたちと比べると気概があって良い奴に感じる。
「つ、連れてってくれるのか!?」
「ただしこっちの指示には確実に従ってもらうからな。
ディオーヌ様から借りる衣装を、またここに戻ってくるまでは絶対に脱がないこと。
この後紹介するけど、俺のパーティメンバー以外には絶対についていかないこと。人伝に伝言することもしないからな。俺のパーティ以外からの指示は全部無視してくれ。
ちなみに9等級って言ってたけど、祝福の儀、スキルはもう獲得したことがあるのか?」
「い、いやまだスキルは取得できてないな。祝福の儀って金貨3枚なんだろ?手が出なかったんだ。
SPは今のところ12SP貯まってる」
まだ魔装術の取得条件である15SPには届いていないか。
そういえば俺の場合は、9等級になったのとSP初獲得がほぼ同時だった気がするな。
そう考えるとタケルは9等級にしては頑張ってる方なのかも。
「15SP稼げていれば、魔装術ってスキルが覚えられるんだけどな。ま、こればっかりは仕方ない。
さて、命の保障は出来ないと言ったが、みすみす殺されてやるつもりなんてねぇからな。
覚悟を決めろよタケル。自分のしたことから目を逸らさない覚悟と、それでも絶対生き残る覚悟をな」
「覚悟はしたっつうの! いや、実際に現場に行ったら揺らいじまうかもしれないけどさ……。
誰かに簡単に利用されるような情けない俺だけど、この覚悟は自分で選んだ道なんだよ!」
ディオーヌ様から衣装を受け取り、タケルが装着する。
マントのおかげで性別すらわからないし、仮面のおかげで顔も確認できない。
ボールクローグに着いたら飲み食いも制限されそうなので、ターミナル広場に向かう間に、馬車の中で軽く食事をさせておいた。
物資の輸送に、タイデリア家から2名ほどゲート使いを派遣してもらえた。
ゲート使いを普通に複数抱えてるタイデリア家怖いっす。
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