異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

274 異邦人タケル①

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「トーマさん。家の者を除いたら、私が一番お会いしている回数が多いのは、貴方のような気がして参りますわ」


 ディオーヌ様にはすぐにお目通りが許された。なんかちょっと予想されてた感もある。
 だって、ターミナル広場に馬車が用意してあったんだもの。
 タケルを背負っていた俺としては有り難かったけど。


「あの者が迷宮を操って、この度ボールクローグを危機に陥れた張本人ということですか。
 まぁ2、3日の保護、監視程度なら請け負いますけど、その後はどうなさるおつもりですか?」

「それなんですよねぇ。出来れば本人と話をしてから決めたいと思ってるんですよ。
 身分証を見るに、あいつは普通に冒険者として活動していて、9等級に上がってるんですよね。つまり、リヴァーブ王国で生きていこうと努力していたってことだと思うんですよ」


 今回の迷宮の氾濫が自分の意志で行われていた場合は、極刑は免れないだろうと思うけど。
 もし巻き込まれただけであったのなら、彼にもチャンスは与えるべきだ。

 ……そのために、ボールクローグでの被害を最小限に抑える必要がある。


「失礼します。彼が目を覚ましたので連れて参りました。入室させても構わないでしょうか?」


 小さなノックの後に、タケルが目を覚ましたことが伝えられる。


「構いません。入りなさい」


 ディオーヌ様が入室を許すと、1人の使用人と共に、緊張した面持ちでタケルが入室してきた。
 緊張するのは分かる。ディオーヌ様って超美人だし威厳もあるからなぁ。

 ディオーヌ様が立ち上がったので、俺だけ座ってるわけにも行かないか。


「初めまして。タケルさん、で良いかしら? 私はタイデリア・ディオーヌと申しますわ。
 恐れ多くも、このヴェルトーガの地を任されておりますの。
 タケルさんにはいくつか聞きたいことがあります。タケルさんの聞きたいことにも答えましょう。
 どうぞこちらにおかけになって。
 トーマさんは済みませんが私の隣に。なにかあった場合はお願い致します」


 うえっ、広いソファとはいえディオーヌ様の隣りか。別に嫌なわけではないけどちょっと緊張するな。
 何かあった場合、か。つまりは護衛をお願いされたわけなのだから、断るわけにも行かないか。

 タケルが着席したのを確認してから、ディオーヌ様が話を進める。


「こちらの男性はトーマさんと言いまして、冒険者をされている方なのですが、トーマさんからお話をしてもらう方がお互い理解しやすいかと思います。
 トーマさん。宜しくお願いしますね」



 丸投げかい!
 まぁタケルにとっても日本人の俺のほうが話しやすいだろうけどさ。


「ご紹介に預かった6等級冒険者のトーマだ。もう察しはついてるかもしれないが、俺も日本からリヴァーブ王国に来た人間だ。こっちでは異邦人と名付けられたけどな。
 良かったら改めて、タケルのほうからも自己紹介してもらえないか?」

「じ、自分はタケルです! ミルズレンダって街に転移してきて、この前9等級になりました! 今年で28歳になります!」


 ガチガチだな。まぁ俺と同じくただの一般ピープルだったんだろうから、いきなり貴族様の相手は緊張するか。


「タケル。同じ日本人同士、冒険者同士だ。俺相手には普通に喋って良いぞ。トーマって呼び捨てにしてくれ。
 さて、俺は今ちょっと1つの事件を追っていてな。その捜査の途中で、昏倒していたタケルを保護したんだよ。
 タケルって行方不明扱いになっててさ。最近なにがあったのか教えてもらえるか?」

「あ、ああ。じゃあ遠慮なく言葉は崩させてもらうよ。
 最近こっちに転移してきたんだけどさ、神様に貰った能力が思ったより使えなくて……。仕方ないから冒険者を始めたんだ。
 それが意外と性に合ってたみたいでさ、地道に迷宮に入りながら、日銭を稼いで生活してたんだ。
 9等級に上がったときは嬉しかったなぁ……」


 確かに9等級に上がったときは、自分が認められたみたいに感じて俺も嬉しかったなぁ。
 それ以降は昇級とかどうでも良くなっちゃったけど。


「それで、割とここの生活も悪くないなって思い始めてさ。俺なりに楽しく過ごしてたんだよ。
 そしたらある日、この国の外の話を聞きたいって人が現れてさ。話すだけで報酬も貰えるなんて美味しい話だなって、その話を受ける事にしたんだよ。
 そしたらさ、そしたら、そし、たら……。
 あ、あれ? そうしてどうしたんだっけ? あれ? ちょっと待ってくれ……。
 ……なんで!? なんで何も思い出せないんだ……!?」


 タケルが突然混乱しだした。記憶障害? いや、精神干渉か!?


「タケルさん。落ち着いてください。まずは深く呼吸をして、心を落ち着かせてください。
 落ち着いたら、タケルさんのほうから質問してみませんか?
 タケルさんが疑問に思っていることなどに、私たちが答えられるかも知れません」

「俺が、疑問に思っていること……?
 それなら、俺になにがあったか教えてくれ!! なんで何も思い出せないんだ!?」


 タケルが取り乱すのも無理はない。
 俺も精神干渉の可能性に思い至った瞬間は、自分が自分でなくなったような気がして、凄まじい違和感に襲われたもんな……。


「タケルさんが行方不明の間に何をしていたのか、正確にお答えする事はで来ません。ですが、タケルさんの記憶障害の原因でしたら心当たりがあります。
 ……タケルさん、落ち着いて聞いてくださいね。タケルさんは恐らく『強制フォース』、『遮断シャット』、『扇動インサイト』という魔法によって、精神状態異常にさせられていた可能性が高いです。
 先ほどまで目が覚めなかったのも、外界からの刺激を遮断され、外界からの指示を強制されている状態で、更に『睡眠スリープ』までかけられていたようです。
 先ほど当家の者が『排除リジェクト』を施し、魔法効果を打ち消しました。その結果、タケルさんの精神異常が解除され、正常な思考が出来るようになったと思われます」

「……つまり、つまり俺は! さっきまで、誰かに洗脳されてたってことかよ!?
 なんで、なんで俺がそんな目に!? 俺が一体なにをしたってんだっ!?」


 いやぁカルネジア家が嫌いなのは俺も一緒だけどさぁ。
 ボールクローグに住人全員を巻き込むテロを起こしたり、無関係の異邦人を洗脳して無理矢理協力させたりとか、絶対に許されることじゃねぇんだよ。

 トルネと婚約? させるかバーカ。
 今までは多少は同情の余地はあったけど、これは駄目だ。

 ネリレイジュ商会会長ロンメノ。
 お前は完全に、一線を越えたぞ。
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