異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

273 釣り出し作戦

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「この2人は愚かにも、このボールクローグの滅亡に加担した重罪人である! 此度の迷宮氾濫は、この2人の手引きによって行われたのだ!
 狩人ギルドの情報をかく乱し、5つの迷宮が氾濫するまで、その存在を隠し続けたのだ!」


 朝イチでブルガーゾによる演説が始まる。
 内容は、今回の騒動の手引きをした犯人の確保と、処刑。

 もちろん処刑と言っても、こんな大勢の前で行っては、救援に入る隙もないだろう。
 なので、救出に都合の良い展開を追加してやる。


「よってこの2人は自らの行いの報いを受けてもらう!
 ボールクローグからギリギリ視認できる範囲に磔にする! 自らが起こした魔物の氾濫で、生きたままその身を食われるが良い!」


 ということで、どうぞ助けてやってくださいとばかりに、2人を街から離れた場所に孤立させる。
 加えてもう1つ。


「この2名の移動は、陽天の報せを持って開始する! その間、この2人はこの場に留めておく!
 殺すことは許さぬが、今回騒動に巻き込まれたボールクローグに住まう者なら、言いたいこともあろう! 自由に面会することを許す!
 重ねて言うが、殺すことは許さぬ! だが、殺しさえしなければ多少の事には目を瞑ろう!
 共にボールクローグに住まう者として、我も心を痛めておる。みなの怒り、みなの悲しみは、我も一緒に感じておる。
 一時の慰めにしかならぬであろうが、今回の手引きをしたこの両名に、みなの想いをぶつけることを許そう!
 浅はかで杜撰な計画で、このボールクローグを、このカルネジア家を愚弄したこと、存分に後悔させるが良い!」


 同志の迫害を黙っていられるかどうか。まぁこれは一種の賭けではあるが。

 ブルガーゾによる計画の看破、同志の迫害、救出しやすい状況。
 積み重ねれば、動いてくれる可能性は高まるはず。

 なにより、憎くて溜まらないブルガーゾに、ひと泡吹かせてやることが出来るだろう。


 スパイどもは横の繋がりはないと言っていた。だけど、横の繋がりがないだけで、お互いが居るのは認識しているはず。
 だとすれば救出作戦に向けて、同志と接触を図っても不思議ではないはずだ。

 今は2人に街中の意識が向いている状態。密会するには最高のタイミングだろ。
 それに今は避難民の受け入れのため、街の出入りに制限を設けていない。
 
 先んじて襲撃を行うための下見をし放題、隠れるのも簡単だ。
 しかもボールクローグ周辺は森林地帯ときてる。
 隠れる場所なんていくらでもあるし、逆にボールクローグから視認できる範囲は狭い。

 救出作戦を決行するなら、最高の条件が整っていると言える。
 移動までにも時間があるし、救出した後に逃げる時間も充分だろう。


「そんじゃ俺はベイクに行ってくるよ。一緒に来たい奴はいる?」

「いや、この騒動を乗り切って凱旋するつもりだから、僕は必要ないかな」


 シン以外も、今回で死ぬつもりは全くないのでと同行を断った。
 うん、頼もしすぎるぜうちのパーティ。

 シンからキャリーをかけてもらう。
 ストレージには影響しないが、ゲートに影響しない手荷物の量が増やせるからな。

 ゲートを発動。ベイクに物資の受け取りに向かう。
 ベイクのターミナルに出ると、大量の物資と共に、カンパニー『旋律の運び手』のメンバーが揃っていてちょっとびっくりした。
 

「トーマ! 話は聞いたよ! 俺たちにも手伝わせてくれ!」


 栄光の運び手のリーダーであるセンタルが、一同を代表して同行を願い出る。


「話を聞いたってのはどこまでだ? 今回ボールクローグでは、5箇所同時に迷宮の氾濫が発生して、ぶっちゃけ俺たちが生き残れるかどうかも怪しい危険度だぞ?
 ボールクローグに来るって事は、高い確率で死ぬ事を意味するんだ。本当に分かってるのか?」

「全部聞いてるよ! でも俺たちだってもう戦えるようになった! 守られるだけの足手纏いじゃない!
 トーマたちが生き残れるか分からないような状況だからこそ、俺たちは力になりたいんだよ!」


 …………。

 大人として、子供を死地に送り込むってのは、どう考えても間違ってるよな。

 でも自立支援の観点から言えば、こいつら自身が選んだ道を、俺の勝手な考えで否定するのも間違っているのか……。
 
 どっちが正しいかなんて、考えても仕方ないのか。
 こんなもんに正解なんてあるわけがない。


「分かった。だが最低限条件は付けさせてもらう。
 現時点で魔装術まで使用可能なこと。6階層まで自力で到達したことがある者。この2つを満たしている者だけ同行を許可する。魔装術が使えない奴とか、5階層を突破できていない奴は来るだけ無駄だ。
 その上で、死ぬ可能性が高い事をちゃんと分かって選んだ選択なら、好きにしていい。
 正直、人手はいくらあっても足りないだろうからな」


 結果、28名が俺と一緒にボールクローグに向かうことになった。
 28人なら何とか俺1人のゲートで行けるはず……。

 輸送予定だった物資の運搬も分担して行い、1回で済ませる。


 う~ん。30人弱も転送しておきながら、魔力切れの兆候が出ない。
 我ながら魔力の量も上がってきたと感じるわ。

 ボールクローグでシンに事情を説明し、カンパニーの指揮を任せる。
 ベイクから持ち込んだ装備品の分配などもお願いしてしまう。
 俺が直接担当するよりも、シンのほうがよほど上手くやるだろう。


「それじゃ続けてヴェルトーガに行って来る予定だけど、タケルは目を覚ましたか?」

「ううん。まだ眠ったままだね。単純な魔力切れならもう目を覚ましていいと思うんだけど、よほどの量の魔力を消費してしまったのかもね」
 

 ディオーヌ様には悪いが、異邦人をもう1人保護してもらうことにした。

 というのも、ロンメノのスパイがどこに潜んでいるか分からない状況で、このままボールクローグに滞在させておくのはこちらの負担が大きすぎるからだ。確実に護衛するなら、異風の旋律で護衛しなきゃならないからな。

 ディオーヌ様がカルネジアの敵対勢力に入ってたらもう諦めるけど、俺の中で信用があって異邦人を守りきれる戦力がある場所って、タイデリア家しか思いつかないんだよねー。


 どうせディオーヌ様と話をするうちに魔力回復は終わるだろうってことで、リーネにジェネレイトを上書きしてもらって、タケルを背負ってヴェルトーガに転移する。

 さてと、ディオーヌ様にはなんて言い訳しようかなぁ……。
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