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8章 異風の旋律
269 各都市への報告
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「迷宮の氾濫が……、同時に5箇所ですか……。最早悪夢というのも生温い状況なのですね、ボールクローグは……」
日没後の面会希望だったのにも関わらず、即時対応してもらえた。
ほんとありがたい人だわ。どっかのブルガーゾにも見習って欲しい。
そもそも、チート能力者に対する対応速度も違いすぎるんだよ。
ディオーヌ様って、まだチート能力者が知られていない段階で俺の話を信用して、すぐに1等級犯罪者対応を都市全体に共有したわけだし。器が違いすぎる。
「アリスの時も悪夢だと思いましたけど……、本当にチート能力と言うのは、リヴァーブ王国を簡単に滅ぼし得る存在なのだと実感いたしますわ……。
それでトーマさんは、私にどのような対応を望まれるのですか?」
「はい。まずはベイク、ヴェルトーガ、ボールクローグ以外の場所への連絡をお願いしたいと思っています。
特に王家って俺には接点がないですから、ディオーヌ様から伝えてもらうほうがスムーズだと思うんですよね。
それと金は払いますので、物資の提供をお願いできませんか?
特に矢はいくらあっても足りません。他の装備品もあるだけ買うくらいのつもりで用意して欲しいです」
「装備品だけで良いのですか? 例えば食料などは?」
「長期戦にはならないと踏んでますので、恐らくボールクローグにある分で足りると思ってます。
短期決戦で、魔物を殲滅しきるかこちらが全滅するかって話だと思いますので」
最悪の想定で15万体もの魔物が出てきたとしても、決着が着くのには2、3日もあれば充分だと思う。
加えて、今回の騒動の発端であろう、ブルガーゾの事情についても報告しておく。
「ええ、スカーから報告を受けております。
本当に、どうしようもない家で、同じ精霊家として恥ずかしく思いますわ……」
言われてんぞブルガーゾ。
「死地と分かっている場所に、人は送れません。ですが物資と報告の件は、明日の陽天の報せまでには済ませておきましょう。
物資の代金はどうなさいますか? 予算的には上限はいくらくらいかしら?」
「そう、ですね……。白金板10枚の範囲でお願いできますか?」
「……トーマさん。貴方、王都でも攻めるおつもりですか……?
ん、ん! 失礼。少々呆けてしまいましたわ。
どうやら予算上限は気にしなくて良さそうですね。確実に用意しておきましょう。
用意する場所は、ターミナル広場で宜しいですね」
「ありがとうございます。
それじゃこれから別の場所も回らないといけないんで、失礼しますね」
「……トーマさん。安全地帯にいる私がこんな事を言うべきではないかもしれませんが……。
どうか、生きて再会できる事を祈っておりますわ。
今回の件で痛感いたしました。リヴァーブ王国民だけで、異邦人のチート能力に対応するのは不可能であると。
必ず生還してくださいね」
「……なんかディオーヌ様の事、戦友みたいに感じてきましたよ。
もちろん死ぬ気なんてありません。シンと一緒に凱旋してみせますから」
そう、死ぬ気なんてない。
そして、誰も死なせる気なんてない。
ディオーヌ様に礼を言って別れ、ベイクに飛んだ。
自宅に向かい、ジーンさんとリンシアさんに状況を説明する。
「2人の子供を死地に向かわせるようなことをして、本当に申し訳ないと思ってる。
でもあの2人はもう、異風の旋律の大事な仲間だから。一緒に戦わせて欲しい」
「気にしないで。あの2人はもう自立して、自分の意思でトーマさんと戦うことを選んだんだ。
ならば私に言えることなんてないさ。
でも、もちろん全員で帰ってきて欲しいと思ってるからね」
「そうね。あの2人がトーマさんの力になれるなら、私たちにとっては2人は自慢の子供達だわ。
でも、孫の顔も見せずに死ぬようなこと、絶対許さないわよ?」
「わかってる。必ず全員で生きて帰ってくるよ。
それで2人にも物資の調達を頼みたいんだよね。ホムロの店で、買える装備を買い占めるつもりで購入して欲しいんだ。
ボールクローグの人たちには逃げ場がないからね。ならせめて装備を少しでも整えて、生存確率を上げておきたい」
2人にも細々とお願いをして、ここ最近工房に寝泊りしているらしいマーサにも会いにいく。
「おうお疲れさん! 悪いがまだ心核武器は完成してねぇぞ。もう間もなく完成させて見せっけどな!」
「そっか。期待してる。その調子で頑張ってくれよ」
もし完成していたら受け取りたかったけど、まぁ仕方ないな。
軽い雑談をしたあと、ゲートを使ってボールクローグに戻る。
狩人ギルド、商工ギルド、冒険者ギルドの順で回って仲間達と合流する。
「とりあえずヴェルトーガとベイクで物資を集める事は出来そうだ。各ギルドの動きはどんな感じ?」
「まず狩人ギルドですが、トーマのおかげで方向だけは分かってますからね。調査隊が編成されて出発済みです。
あとは狩人たちへの情報共有に終始してる感じでしたね」
「商工ギルドもそんな感じだねー。ボールクローグから遠い場所から順に、狩猟団の輸送隊が向かってるよ。
時間がないので、輸送を渋った者は無視していい事にしたみたいだねー」
……まぁ仕方ないか。輸送能力にだって限界はある。
多くの場所を回るためには、1箇所に長く留まるわけには行かない。
つうかブルガーゾのアホが調査隊は出発済みだって言ってた記憶があるんだけど、あれってブラフだったのか?
ボールクローグが滅びるかどうかって時になにやってんだよマジで。
「冒険者ギルドではやはり混乱が起きているね。戦うしかないのは分かってるんだろうけど、それでも納得いかないってところかな?
カルネジア邸には住人が押し寄せてるみたいだね」
「周辺から一気に避難民が集まってくるわけだけど、食料とかは足りてるんだろうか?
ゲートはあまり輸送に向かないから、食料はボールクローグで賄いたいところなんだけどな」
「うん。それは大丈夫じゃないかな? あまり長期化するようなものじゃないらしいし。
仮に食料が必要になったら管理迷宮に入ればいいだけだしね。この世界って、兵糧攻めとかあまり現実的じゃなさそう」
迷宮がある都市は篭城には向いてるよな。
あとは防衛力が足りてれば、多少は余裕を持って氾濫に対抗できそうではあるけど。
「あとは狩人ギルドの調査と、カルネジア家の作戦待ちかな。
他になんか出来る事はあるか?」
冒険者ギルドの会議室で、仲間と共に議論を重ねる。
情報が足りない。
現状だと全然乗りきれる気がしないわ。
まったく、マジでどうすりゃいいんだか……。
日没後の面会希望だったのにも関わらず、即時対応してもらえた。
ほんとありがたい人だわ。どっかのブルガーゾにも見習って欲しい。
そもそも、チート能力者に対する対応速度も違いすぎるんだよ。
ディオーヌ様って、まだチート能力者が知られていない段階で俺の話を信用して、すぐに1等級犯罪者対応を都市全体に共有したわけだし。器が違いすぎる。
「アリスの時も悪夢だと思いましたけど……、本当にチート能力と言うのは、リヴァーブ王国を簡単に滅ぼし得る存在なのだと実感いたしますわ……。
それでトーマさんは、私にどのような対応を望まれるのですか?」
「はい。まずはベイク、ヴェルトーガ、ボールクローグ以外の場所への連絡をお願いしたいと思っています。
特に王家って俺には接点がないですから、ディオーヌ様から伝えてもらうほうがスムーズだと思うんですよね。
それと金は払いますので、物資の提供をお願いできませんか?
特に矢はいくらあっても足りません。他の装備品もあるだけ買うくらいのつもりで用意して欲しいです」
「装備品だけで良いのですか? 例えば食料などは?」
「長期戦にはならないと踏んでますので、恐らくボールクローグにある分で足りると思ってます。
短期決戦で、魔物を殲滅しきるかこちらが全滅するかって話だと思いますので」
最悪の想定で15万体もの魔物が出てきたとしても、決着が着くのには2、3日もあれば充分だと思う。
加えて、今回の騒動の発端であろう、ブルガーゾの事情についても報告しておく。
「ええ、スカーから報告を受けております。
本当に、どうしようもない家で、同じ精霊家として恥ずかしく思いますわ……」
言われてんぞブルガーゾ。
「死地と分かっている場所に、人は送れません。ですが物資と報告の件は、明日の陽天の報せまでには済ませておきましょう。
物資の代金はどうなさいますか? 予算的には上限はいくらくらいかしら?」
「そう、ですね……。白金板10枚の範囲でお願いできますか?」
「……トーマさん。貴方、王都でも攻めるおつもりですか……?
ん、ん! 失礼。少々呆けてしまいましたわ。
どうやら予算上限は気にしなくて良さそうですね。確実に用意しておきましょう。
用意する場所は、ターミナル広場で宜しいですね」
「ありがとうございます。
それじゃこれから別の場所も回らないといけないんで、失礼しますね」
「……トーマさん。安全地帯にいる私がこんな事を言うべきではないかもしれませんが……。
どうか、生きて再会できる事を祈っておりますわ。
今回の件で痛感いたしました。リヴァーブ王国民だけで、異邦人のチート能力に対応するのは不可能であると。
必ず生還してくださいね」
「……なんかディオーヌ様の事、戦友みたいに感じてきましたよ。
もちろん死ぬ気なんてありません。シンと一緒に凱旋してみせますから」
そう、死ぬ気なんてない。
そして、誰も死なせる気なんてない。
ディオーヌ様に礼を言って別れ、ベイクに飛んだ。
自宅に向かい、ジーンさんとリンシアさんに状況を説明する。
「2人の子供を死地に向かわせるようなことをして、本当に申し訳ないと思ってる。
でもあの2人はもう、異風の旋律の大事な仲間だから。一緒に戦わせて欲しい」
「気にしないで。あの2人はもう自立して、自分の意思でトーマさんと戦うことを選んだんだ。
ならば私に言えることなんてないさ。
でも、もちろん全員で帰ってきて欲しいと思ってるからね」
「そうね。あの2人がトーマさんの力になれるなら、私たちにとっては2人は自慢の子供達だわ。
でも、孫の顔も見せずに死ぬようなこと、絶対許さないわよ?」
「わかってる。必ず全員で生きて帰ってくるよ。
それで2人にも物資の調達を頼みたいんだよね。ホムロの店で、買える装備を買い占めるつもりで購入して欲しいんだ。
ボールクローグの人たちには逃げ場がないからね。ならせめて装備を少しでも整えて、生存確率を上げておきたい」
2人にも細々とお願いをして、ここ最近工房に寝泊りしているらしいマーサにも会いにいく。
「おうお疲れさん! 悪いがまだ心核武器は完成してねぇぞ。もう間もなく完成させて見せっけどな!」
「そっか。期待してる。その調子で頑張ってくれよ」
もし完成していたら受け取りたかったけど、まぁ仕方ないな。
軽い雑談をしたあと、ゲートを使ってボールクローグに戻る。
狩人ギルド、商工ギルド、冒険者ギルドの順で回って仲間達と合流する。
「とりあえずヴェルトーガとベイクで物資を集める事は出来そうだ。各ギルドの動きはどんな感じ?」
「まず狩人ギルドですが、トーマのおかげで方向だけは分かってますからね。調査隊が編成されて出発済みです。
あとは狩人たちへの情報共有に終始してる感じでしたね」
「商工ギルドもそんな感じだねー。ボールクローグから遠い場所から順に、狩猟団の輸送隊が向かってるよ。
時間がないので、輸送を渋った者は無視していい事にしたみたいだねー」
……まぁ仕方ないか。輸送能力にだって限界はある。
多くの場所を回るためには、1箇所に長く留まるわけには行かない。
つうかブルガーゾのアホが調査隊は出発済みだって言ってた記憶があるんだけど、あれってブラフだったのか?
ボールクローグが滅びるかどうかって時になにやってんだよマジで。
「冒険者ギルドではやはり混乱が起きているね。戦うしかないのは分かってるんだろうけど、それでも納得いかないってところかな?
カルネジア邸には住人が押し寄せてるみたいだね」
「周辺から一気に避難民が集まってくるわけだけど、食料とかは足りてるんだろうか?
ゲートはあまり輸送に向かないから、食料はボールクローグで賄いたいところなんだけどな」
「うん。それは大丈夫じゃないかな? あまり長期化するようなものじゃないらしいし。
仮に食料が必要になったら管理迷宮に入ればいいだけだしね。この世界って、兵糧攻めとかあまり現実的じゃなさそう」
迷宮がある都市は篭城には向いてるよな。
あとは防衛力が足りてれば、多少は余裕を持って氾濫に対抗できそうではあるけど。
「あとは狩人ギルドの調査と、カルネジア家の作戦待ちかな。
他になんか出来る事はあるか?」
冒険者ギルドの会議室で、仲間と共に議論を重ねる。
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