異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

267 迷宮の氾濫

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「まずは答えやすいように1つずつ聞いていく。
 予兆が起きてから、実際に迷宮が氾濫するまでの時間は?」

「はい! 翌日の、予兆が起きた時間から魔物の氾濫が始まると言われてます!」

「はぁ!? 1日しか猶予がねぇのに、なにしてたんだよ馬鹿どもが!!」


 くっそ!
 以前白金貨稼いだときも余裕は無かったけど、今回は全く猶予がねぇじゃねぇか!


「ちっ! 氾濫の規模はどうなんだ!?
 1つの迷宮から、どの程度の魔物が溢れてくるんだ!?」

「はい! 正確な数は分かりませんが、5000から1万はくだらないと思います!」

「過去の事例であった、最大規模と歳小規模は? 分かってる範囲でいい」

「はい! 正確な数が分かっている前例はありませんが、最小規模で5000前後、最大規模で3万規模の魔物の出現が確認されております!」


 最大規模で3万か……!
 最悪の想定だと、15万を超える魔物が溢れ出てくるわけか……!


「住人の避難や、ボールクローグでの篭城は可能か?」

「……避難は、無理です。
 魔物は人を襲うために、どこまでも人だけを狙ってきます。
 なので、迷宮の氾濫が起きた場合、氾濫を発生させた最寄りの都市は、避難を禁じられているんです。
 他の都市に魔物が到達する前に、責任を持って魔物の数を減らすように、と……」


 くっそ! 避難もできねぇのか!!
 実際ゲートで運べるのは数百人が良いところだし、避難は現実的ではないんだけど……!

 つうかいつまで寝てやがんだブルガーゾは!!


「おい!! そこに寝てるのはカルネジア・ブルガーゾだ!!
 さっさと魔法治療院で治療を受けさせて、ここまで引っ張って来い!!
 じゃねぇと今すぐそのカスの息の根止めてやるぞ!!!」


 拡声して、未だ1階で動き出さないギルド員に叫んで指示を出す。
 カルネジア家には矢面に立ってもらう。
 絶対に楽に死なせてやらねぇ。

 ち、氾濫の情報を拡散するかどうかは迷うな。
 下手にパニックを起こされても困る。

 けど、戦うか逃げるかの選択肢は彼らにも必要だと思う。
 ちっ、とりあえず情報が足りないか……。
 

「避難は無理だといったな。ならボールクローグで篭城することは可能なのか?」

「……恐らくそれも厳しいかと。
 一応迷宮都市は氾濫にも備えて作られており、ボールクローグは前線に近いこともあって、強固な城壁で守られてはおりますが……。
 5箇所同時氾濫など、今まで想定されたことは無かったですから、どこまで持つか……」


 最低限の都市防衛力はあるのか。
 だが確かに、規模がでか過ぎてアテにするには少々心許無いか……。


「というか、魔物は人を狙ってやってくるんだよな?
 ボールクローグよりも氾濫迷宮に近い町や村はないんだろうな?」


 この世界には行商が普通に存在するんだ。
 迷宮都市ではない、小規模のコミュニティがあっても不思議じゃない。


「迷宮の位置が分からないのでなんとも言えませんが、ボールクローグ周辺には大小の町が点在しています……。
 その中には、恐らくボールクローグよりも危険な場所がいくつかあるかと……」

「先に言えよクソ野郎がぁっ!!! 商工ギルドの奴はいるか!!
 今すぐ迷宮氾濫の事実を公表して、ボールクローグに避難誘導を行え!!
 エルハ!! 狩人ギルドに戻って、迷宮の位置を5つとも正確に割り出して来い!!
 夜明けまでに5箇所とも判明しなかったら、お前のせいでボールクローグは滅びると思えよ!!」


 指定された2人はすっ飛んで退出していった。
 始めからそのくらい必死になれよクソが……!


「冒険者ギルドの奴は、今すぐ冒険者に迷宮の氾濫を公表して、避難が禁じられていること、戦って打ち倒すしか生き延びる道がない事を説明して、冒険者全員に協力を要請しろ。行け!」


 あとはなんだ? あとはなにをすればいい?


「あ、悪いクリーヌ。狩人ギルドに行って、大型の運搬馬車を持っている狩猟団には、近くの町や村の避難誘導に協力するよう言ってきてくれ。
 ペルやアサルトドラゴンの輸送力を、迷宮調査に使うのは馬鹿馬鹿しいからな。
 エルハがごねたら俺の指示だって言って黙らせろ。
 そして商工ギルドにも行って、街や村の位置を全員ちゃんと共有して、効率よく避難誘導が出来るように言ってきてくれ。要は迷宮討伐の時の場所の打ち合わせと一緒だ」

「ん! 必ずやらせる!」


 クリーヌが元気良く返事して部屋を出ていく。


「つうかブルガーゾはまだか!? この中にカルネジア家の奴いるんだろ!?
 ボールクローグの存亡がかかってる事態に、いつまで当主不在で対応する気だ!!
 とっととブルガーゾ引っ張って来い!! じゃねぇとボールクローグが滅びるぞ!!」


 誰かが血相を変えて出ていった。
 どこまで俺に尻拭いさせりゃ気が済むんだあのカス野郎……!


「シン。他に何か出来ることはあるか?」

「そうだね……。ボールクローグの住人にも今すぐ事実を公表して、協力を仰ぐべきだと思う。
 逃げ場がないことも包み隠さず公表すれば、生き残るためには協力するしかないと理解してもらえると思う。
 それで街の外に逃げ出すような相手まで、僕たちが気にかける必要はないでしょ」

「私も兄さんの意見に賛成。職人さんとか商人さんにも協力してもらう必要が出てくると思うの。
 戦う力がなくても、人手が必要な仕事はいっぱいあるでしょ?」


 リーンの言うとおりだな。
 人手があれば、出来る事は格段に増える。


「避難は無理だとして、他の都市に救援を要請する事は可能か?」

「トーマ。恐らく難しいと思いますよ。
 救援に来るにはゲートが使えないといけませんし、5箇所同時氾濫なんて、救援に来てくれる人がいるとは思えません」

「上級冒険者とか、特級とか言われてる奴でも無理か?」

「難しいと思いますね。魔物の氾濫が起きた場合は、最寄りの都市は大損害を受けるのが普通ですから。
 長く生き残って危険に敏感な上級冒険者ほど、助けてくれないんじゃないでしょうか。
 そして特級の人たちには、ギルドや国からの要請を拒否できる特権がありますからね。まず来てもらえないでしょう」


 ち、救援にも期待できねぇか。
 ディオーヌ様にも報告しに行くつもりだけど、増援は期待できないか……!


「本当に……、チート能力って厄介だね。
 アリスの事象復元と言い、大袈裟でもなくリヴァーブ王国を滅ぼせてしまうんだもの……。
 今さらだけど、私は貰わなくて済んで良かったと思うな」

「トーマ……。昨日の夜と言っていたことが違うんじゃない……?
 今って、トーマがそんなに頑張らないといけない状況なのかな……?」

「昨日とは状況が違うからな。これは災害対応みたいなもんだ。
 それにここで踏ん張らないと、ボールクローグが滅亡した後も魔物の数は大して減らずに、リヴァーブ王国中を駆け回ることになっちまうからな。
 冗談抜きで、今ここがリヴァーブ王国存亡の瀬戸際だと思ってるぜ」


 俺だってやりたくねぇんだけどさぁ……。
 まだ魔物の動きが読める分、ここで対応したほうが可能性があると思うんだよね。
 ボールクローグが滅ぼされた後、大量の魔物が無軌道に王国中を蹂躙するとか、対処できる気がしないからな。

 魔物の氾濫は、明日の夕飯過ぎくらいからか。
 実際に到達するのは更に遅くなると考えると、戦いは深夜に始まりそうだなぁ。

 リーネのヴィジョンが大活躍しそうだ。
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