異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

265 カルネジア・ブルガーゾ

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 クリーヌと俺たち一行は、狩人ギルドの馬車を使って、冒険者ギルドに案内されることになった。
 どうやら現在冒険者ギルドで、今回の異変に対する緊急会議が行われているそうで、そこに直接情報を届けなければならないらしい。
 結局移動するなら、混雑してるギルドに入った意味無かったじゃないですかぁ!

 狩人ギルドの馬車は、クリーヌといつも使っていた小さい馬車だった。これってギルドの備品だったのか。


「つうか冒険者ギルドなら俺たちも場所を知ってるし、直接走ってっても良かったんじゃないの?」

「ん。ギルドの馬車で行けば裏口からは入れるから。多分あっちは狩人ギルド以上に混雑してる」


 混雑回避か。そういう考え方もあるんだなぁ。

 狩人ギルドと冒険者ギルドはさほど離れてるわけでもないのですぐに到着。
 今まで存在すら知らなかった裏口から入って、そのまま3階に通される。
 なんでも冒険者ギルドの3階は、ギルドマスター室と、緊急時に大人数で集まれる大会議室があるらしい。

 案内のギルド員が、多分会議室であろう扉をノックする。


「会議中に失礼致します。重要だと思われる情報の提供者をお連れしました」

「入れ」


 返事の声は重厚なバリトンボイスだった。


「失礼します。では皆さんご入室を」


 ギルド員さんに促され、会議室に入る。

 中は四角形の大きなテーブルが中央に設置してあって、椅子は20席前後置いてあるように見える。
 現在集まってるのは15人前後かな?
 顔を知ってるのはエルハくらいしかいないな。

 ん?誰かが不意に俺の手を握ってきた。
 振り返ってみると、トルネが少し不安そうな表情で、俺の手を握っていた。

 トルネの視線を追ってみると、ハロイツァに良く似た獅子の獣人がこちらを見ている。なるほどね。
 相手の視線を遮るように、トルネを背後に隠してやる。


「情報提供者の異風の旋律のみなさんです。
 それでは早速報告をお願いします」


 ギルド員さんは報告を丸投げして退室していった。
 えー、これは俺が説明しなきゃだめな流れ?


「えー、異風の旋律のトーマです。
 先ほど城壁の外をスキルを使って確認したところ、ボールクローグからかなり距離はありそうでしたが、空から虹色の光が糸のようになって地面に落ちてきている箇所が5つありました。
 俺には土地勘がないので具体的な場所は説明できませんが、俺が光の糸を見た方角は、土地勘のある狩人であるこちらのクリーヌに報告してあります」


 自分で語ってみると、そんなに重要な情報には感じないなこれ。
 ただもしも前例があるならば、似たような現象を知っている人がいるかも知れない。


「嘘でしょ……。光の糸が……、5箇所も……?」

「馬鹿な……。流石にそんな事態は想定しとらんかったぞ……」


 おお? 流石は首脳会議? 現象に心当たりがあるらしい。


「トーマと言ったな。貴様の報告が嘘ではないという証拠は?」

「は? 実際に外で起こってる光景なんですから、疑うなら外出て自分の目で見ればいいんじゃないっすか?」


 つうか俺の報告が重要だと判断したから、ここに通されたんじゃないんかい?


「今起こっている事態には心当たりがあるが、同時に5箇所で起こるのは流石に荒唐無稽な話だ。馬鹿馬鹿しいにも程がある」


 なんか妙に突っかかってくるなこの獅子の獣人さん。私情入ってませんかね?


「そうですか。俺は自分が見た事を報告しただけですし、クリーヌに方角も確認させてます。
 お疑いになるならさっさと調査隊でもなんでも派遣して、裏付けを行ったらどうです?」

「ふん。もう出発しているに決まっているだろう。
 それで?この程度の情報だけを持って、自慢げにこの場に表れたのか?」


 ああ、完全に私情入ってるな。
 まぁ付き合う義理はないよな。報告も済んだわけだし。


「ああ、もう確認済みの情報でしたか。
 では私たちがこの場に留まる必要はありませんね。では失礼致します」


 軽く会釈して、退出するために扉に向かう。


「待て。誰が退出して良いと言った?」


 いや退出して良いとは言われてないけど、持ってきた情報に価値がないなら、この場にいる意味もないじゃん。
 そんなんだから馬鹿猫とか言われんだよ。まぁあれはハロイツァのことだったけど。


「提供した情報に価値がないなら、俺たちがこの場に留まる意味があります?
 それともなんか私的にご用件でもあるんですか? カルネジア・ブルガーゾ様?」


 なんだか場の空気が重くなったような気がするが、すぐに退出する場の空気なんかどうでもいい。
 残って会議する皆さんには同情するけど。


「ほおぉ。我が誰かを知っていてのその態度か。カルマに聞いた通り、随分と生意気な冒険者のようだな。
 貴様とは以前に約定を交わしていたため不干渉を貫いてきたが、此度の限定契約、あれはやりすぎだ。
 たかが6等級冒険者風情が、我が家の言葉を信じず契約で縛ろうなど、思い上がりも甚だしい!」


 強烈な怒気を孕んだ声が叩きつけられるが、なんか逆に冷めてしまうな。
 会ったこともない人間だったので、クソクソ言い過ぎてたかなぁと思ってたけど、やっぱりクソだったか。


「え、マジで言ってんすか? 自分で自分の家の言葉が信用に値しないって証明してどうすんの?
 あんな公の場でカルマさんに宣言させた契約を、当主の一存で破棄するとか、カルネジア家の言ってることなんて全く信用に値しないって自分自身で証明してんじゃないすか。
 あの時の会話、ボールクローグの大多数の人が聞いてたと思うっすけど?」

「まさにそのことだ!!
 貴様は我がカルネジア家の名に泥を塗ったのだ!!
 よもやただで済むと思っておるまいな!?」


 叫ぶ度に俺の体にビリビリとした衝撃が伝わってくる。
 んだけど、なんだろうな?あんまりコイツを脅威に感じない。
 なんつうか、評価が低すぎてどうでも良くなってしまったみたいな?


「え? つか今回の騒動だってご自身が原因でしょ?
 燃え滾る性欲を抑えられないカルネジア家の当主殿が、過去に渡って寝取ってきた女性関係の不始末が今回の発端でしょ。
 ブルガーゾ様の身勝手な腰の振る舞いで、ボールクローグがただで済まない危機的状況に陥ってしまったみたいですけど?
 カルマさんから報告いってるんでしょ? 今回の騒動の発端の」

「それは貴様の勝手な推測だろう!! まだそうだと決まったわけではない!!
 そもそも人為的に迷宮を操作することなどあり得ない!!
 貴様が言っているのは全て妄言の類だろうが!!」


 スレイさぁ。コイツのどこを見て立派な方とか評価したわけ?
 ん~、まぁ強者ほど惹かれるカルネジア家とかスカーさんも言ってたしな。
 6等級冒険者の俺が惹かれないのも当たり前なのかもしれない。

 ただまぁ、話が進まないのは勘弁して欲しい。
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