294 / 580
8章 異風の旋律
264 光の糸
しおりを挟む
スキル神殿を出て狩人ギルドへ。
移動中も周囲に注意を向けていたが、やはり状況を把握している人は居ないように見える。
「あ、みんな……! 良かった……!」
狩人ギルド前に、リーネとクリーヌが待っていた。
「悪い待たせた。何かわかったことはあるか?」
「駄目。みんな混乱してるし、そもそもこれが何か分かる人がいない」
だろうな。地震の原因なんて分かる奴が居るわけない。
というかクリーヌの言い方だと、地震そのものもあまり知られていない感じか?
とりあえずタイミング的に考えて、迷宮討伐に何らかの関わりがあると予想できるくらいなんだが、他に何か手がかりはないだろうか。
そういや今回『遠見』を取得したんだよな。
試験も兼ねて、街の外を一望できる場所に行ってみるか……?
「クリーヌ。ボールクローグの城壁の上に登れるとこある?
俺たちはこの揺れは、迷宮殺しになんらかの関わりがあると予想してるんだよ。
とりあえず迷宮が発生していた方向を、遠目にでも確認したいんだ」
「ん……。このままギルドに居ても埒が明かない……か。
壁の上まで案内できる。一緒に来て」
一瞬迷ったクリーヌだったが、すぐに案内を了承してくれた。
クリーヌを先頭に移動する。
「そんでリーネ。お前から見て、ギルド内の状況はどうだったのか教えてくれ」
「え? えっと、クリーヌが言ってた通りだよ……?
みんななにが起きてるんだー、って叫んでて、ギルドの人がただ今確認中ですー、みたいな……?」
あー、場の混乱が目に浮かぶようだ……。
情報を集めるためにギルドに行くのは間違っちゃいないけど、そもそもギルドに情報が届いてなければ行く意味ないんだよなぁ。
TVやネット、電話なんかの情報発信ツールが発達してる現代日本ですら、災害直後って何も分からんからな。それでも日本人は最低限の防災意識あると思うけど、リヴァーブ王国で防災教育なんて行われてるわけもなし。
まずは自分の目と耳と足で、各種ギルドに届ける情報を集めるしかない。
「ここ。普段は警備兵がいるんだけど、今は誰もいないみたい。
でも一般開放されてる場所だから問題無い。行こ」
クリーヌが城壁の内側から入れる登り階段に案内してくれた。
一般開放されてる場所なら大丈夫か。
仮に問題があっても、持ち場を離れた警備兵の責任を追及することにしよう。
城壁もそれなりの高さではあるが、全員スキル持ちなので息切れすることもなく登りきる。
さてと、最後に討伐された迷宮はどの変なのかな?
「クリーヌ、俺たちの後に残っていたと思われる迷宮の位置って……」
「トーマ……!あっちを見て……!向こうの空が少しだけ明るいよ……!?」
クリーヌに迷宮の位置を確認しようとすると、リーネが何らかの異変を報告してくる。
リーネの見ているほうを見ても、空の明るさの違いなんて俺には良く分からないな……?
ってそうか。リーネは暗視を持ってないのか!
暗視スキルを1度切って、改めてリーネが教えてくれた方向を見る。
確かに……、完全に日が落ちているのに、俺たちが見ている方向だけがやけに明るく感じられる。
ただ、なんだ……?極々最近、似たような光景を目にしたことがあるような……?
「確かに、明るいね。暗視を使っていたから気付かなかったよ。
でも単純に、昼間のような明るさって感じじゃなくて、何かが光ってるような感じに思えるね」
「うん。それに色も一定じゃない感じ?なんだか沢山の色が煌いているように見えるかな」
沢山の色が煌きながら、天に昇っていく光景……。
それってつまり……。
「迷宮殺しが終わった後、迷宮が魔力還元されていってる時みたいだねー」
「ですね。そう考えると、迷宮殺しと関連がある可能性はやはり高そうですね」
『遠見』発動。光っている方角に望遠を向ける。
うわ、前振りなしに、展望台の上の双眼鏡を覗いたみたいな視界に切り替わった。
使い慣れておかないと、気持ち悪くなってしまいそうだ。
どの程度の倍率で遠くを見通せているのか分からないが、光っている方向に目を向けると、空から七色に煌く光が、地面に向かって糸のように収斂しているのが見えた。
全部で5箇所か。しかし方向くらいは教えられるけど、この視覚情報だけで場所を説明するのは俺には無理だな。
「『遠見』を使って見たんだけど、空から虹色に煌く光が、地面に向かって糸のように収斂してる。それが5箇所。
魔力還元と比べてみると、空から地面に光が落ちているように見えるな。
クリーヌ。お前この周辺の地図って頭に入ってるよな?
今から光の糸が落ちている方向を教えるから、それぞれ記憶して狩人ギルドに報告してくれないか?」
「ん、わかった。教えて」
凄いマヌケっぽい絵になってると思うけど、遠見をしながら光の糸が落ちている方向に体ごと向いて、指で方向を指し示す。
俺の知識では、どこも森林地帯の中にしか見えないし、望遠倍率も分からないので距離も測れない。
「ん。覚えた。それじゃ狩人ギルドに報告に行こ。
この現象がなんなのか、知ってる人がいるかも」
確かに、情報さえ届けられれば正解を知ってる奴はいるかも知れない。
今来たばかりだが、同じ道を急いで引き返す。
狩人ギルドに戻ってきたが、まださほど時間も経っていないし、状況に変化は見られない。
こういう時って冒険者ギルドに行くイメージがあるんだけど、どこのギルドも同じ状況なのかな?
クリーヌはごった返すギルド内を器用に潜り抜けて、カウンターの奥まで入り込み、ギルド員と何か話しているようだ。
そしてギルド員がどこかに走って行ってしまうと、クリーヌが俺たちに向かって手招きをしている。
どうやら俺たちも、このごった煮の中に突撃する必要がありそうだ。
さて、どんな情報が得られるかな?
最悪空振りもありえるので、過剰に期待するのは控えるべきか。
移動中も周囲に注意を向けていたが、やはり状況を把握している人は居ないように見える。
「あ、みんな……! 良かった……!」
狩人ギルド前に、リーネとクリーヌが待っていた。
「悪い待たせた。何かわかったことはあるか?」
「駄目。みんな混乱してるし、そもそもこれが何か分かる人がいない」
だろうな。地震の原因なんて分かる奴が居るわけない。
というかクリーヌの言い方だと、地震そのものもあまり知られていない感じか?
とりあえずタイミング的に考えて、迷宮討伐に何らかの関わりがあると予想できるくらいなんだが、他に何か手がかりはないだろうか。
そういや今回『遠見』を取得したんだよな。
試験も兼ねて、街の外を一望できる場所に行ってみるか……?
「クリーヌ。ボールクローグの城壁の上に登れるとこある?
俺たちはこの揺れは、迷宮殺しになんらかの関わりがあると予想してるんだよ。
とりあえず迷宮が発生していた方向を、遠目にでも確認したいんだ」
「ん……。このままギルドに居ても埒が明かない……か。
壁の上まで案内できる。一緒に来て」
一瞬迷ったクリーヌだったが、すぐに案内を了承してくれた。
クリーヌを先頭に移動する。
「そんでリーネ。お前から見て、ギルド内の状況はどうだったのか教えてくれ」
「え? えっと、クリーヌが言ってた通りだよ……?
みんななにが起きてるんだー、って叫んでて、ギルドの人がただ今確認中ですー、みたいな……?」
あー、場の混乱が目に浮かぶようだ……。
情報を集めるためにギルドに行くのは間違っちゃいないけど、そもそもギルドに情報が届いてなければ行く意味ないんだよなぁ。
TVやネット、電話なんかの情報発信ツールが発達してる現代日本ですら、災害直後って何も分からんからな。それでも日本人は最低限の防災意識あると思うけど、リヴァーブ王国で防災教育なんて行われてるわけもなし。
まずは自分の目と耳と足で、各種ギルドに届ける情報を集めるしかない。
「ここ。普段は警備兵がいるんだけど、今は誰もいないみたい。
でも一般開放されてる場所だから問題無い。行こ」
クリーヌが城壁の内側から入れる登り階段に案内してくれた。
一般開放されてる場所なら大丈夫か。
仮に問題があっても、持ち場を離れた警備兵の責任を追及することにしよう。
城壁もそれなりの高さではあるが、全員スキル持ちなので息切れすることもなく登りきる。
さてと、最後に討伐された迷宮はどの変なのかな?
「クリーヌ、俺たちの後に残っていたと思われる迷宮の位置って……」
「トーマ……!あっちを見て……!向こうの空が少しだけ明るいよ……!?」
クリーヌに迷宮の位置を確認しようとすると、リーネが何らかの異変を報告してくる。
リーネの見ているほうを見ても、空の明るさの違いなんて俺には良く分からないな……?
ってそうか。リーネは暗視を持ってないのか!
暗視スキルを1度切って、改めてリーネが教えてくれた方向を見る。
確かに……、完全に日が落ちているのに、俺たちが見ている方向だけがやけに明るく感じられる。
ただ、なんだ……?極々最近、似たような光景を目にしたことがあるような……?
「確かに、明るいね。暗視を使っていたから気付かなかったよ。
でも単純に、昼間のような明るさって感じじゃなくて、何かが光ってるような感じに思えるね」
「うん。それに色も一定じゃない感じ?なんだか沢山の色が煌いているように見えるかな」
沢山の色が煌きながら、天に昇っていく光景……。
それってつまり……。
「迷宮殺しが終わった後、迷宮が魔力還元されていってる時みたいだねー」
「ですね。そう考えると、迷宮殺しと関連がある可能性はやはり高そうですね」
『遠見』発動。光っている方角に望遠を向ける。
うわ、前振りなしに、展望台の上の双眼鏡を覗いたみたいな視界に切り替わった。
使い慣れておかないと、気持ち悪くなってしまいそうだ。
どの程度の倍率で遠くを見通せているのか分からないが、光っている方向に目を向けると、空から七色に煌く光が、地面に向かって糸のように収斂しているのが見えた。
全部で5箇所か。しかし方向くらいは教えられるけど、この視覚情報だけで場所を説明するのは俺には無理だな。
「『遠見』を使って見たんだけど、空から虹色に煌く光が、地面に向かって糸のように収斂してる。それが5箇所。
魔力還元と比べてみると、空から地面に光が落ちているように見えるな。
クリーヌ。お前この周辺の地図って頭に入ってるよな?
今から光の糸が落ちている方向を教えるから、それぞれ記憶して狩人ギルドに報告してくれないか?」
「ん、わかった。教えて」
凄いマヌケっぽい絵になってると思うけど、遠見をしながら光の糸が落ちている方向に体ごと向いて、指で方向を指し示す。
俺の知識では、どこも森林地帯の中にしか見えないし、望遠倍率も分からないので距離も測れない。
「ん。覚えた。それじゃ狩人ギルドに報告に行こ。
この現象がなんなのか、知ってる人がいるかも」
確かに、情報さえ届けられれば正解を知ってる奴はいるかも知れない。
今来たばかりだが、同じ道を急いで引き返す。
狩人ギルドに戻ってきたが、まださほど時間も経っていないし、状況に変化は見られない。
こういう時って冒険者ギルドに行くイメージがあるんだけど、どこのギルドも同じ状況なのかな?
クリーヌはごった返すギルド内を器用に潜り抜けて、カウンターの奥まで入り込み、ギルド員と何か話しているようだ。
そしてギルド員がどこかに走って行ってしまうと、クリーヌが俺たちに向かって手招きをしている。
どうやら俺たちも、このごった煮の中に突撃する必要がありそうだ。
さて、どんな情報が得られるかな?
最悪空振りもありえるので、過剰に期待するのは控えるべきか。
0
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる