異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

259 放棄

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「ギルド員を含む複数の目撃者に聞いたところ、貴方の言ったことが間違ってないことは分かったわ」


 騒動のせいで出発も出来ず、ギルドの会議室に通されて取調べを受けている。
 時間の無駄すぎて眠くなってくるな。


「そりゃあ結構なことだな。
 で?話はもう終わりなわけ?」

「ええ、取調べは終わりよ。もう行っていいわ」


 あ?
 なに言ってんだこのアホは。


「じゃあ今度はこっちの話をさせてもらうぞ。
 襲撃者の身元と動機、そして今回の件の処罰はどうなる?
 まさか口頭で注意して御咎めなし、なんて言わねぇだろうな?」

「……なに言ってるの?
 貴方達も怪我なく場を収められたのだからそれでいいでしょ?」

「馬鹿にしてんのか?
 今のが狩人ギルドとしての正式な回答だってんなら、俺らはベイクに帰ってもう二度と協力しねぇぞ」

「は!?どうしてそうなるのよ!?
 丸く収まったんだからそれでいいでしょ!?なにが問題なのよこの緊急事態に!!」

「緊急事態なのを分かってて、お前らは俺たちに正式に協力要請をしたんだろうが。
 その俺たちがよりにもよって狩人ギルド内で襲われたのに静観し、襲撃者は御咎めなしだと?
 最低限、襲撃者を犯罪奴隷に落とすくらいはしてもらわないと納得できないね」

「だからどうしてよ!?今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょう!?
 このまま迷宮が増え続ければ、ボールクローグは滅亡するかもしれないのよ!?」

「話は終わりだな。みんな帰るぞ。一応銀の乙女とクリーヌたちには一言伝えておこう」

「待ってってば!!今貴方達に抜けられたら、迷宮の討伐が間に合わなくなるわっ!!」

「だから?そんなの別に俺たちの知ったことじゃないんだけど。
 その俺たちが襲われたのに守る気もなく、襲撃者を罰する気もない狩人ギルドに協力する義理なんてないね。
 今回御咎めなしにした彼らにでも頑張ってもらえば?」


 話は終わりなので席を立つ。
 クリーヌには今日の分の報酬を支払って、銀の乙女とクリーヌ一家には警告しておくか。
 もし移住の意思があるならゲートで送ってもいいし、ベイクに家を用意してもいい。

 あーでもペルにはベイクは狭いかもしれないなー。


「お願いだから待って!!どうして彼らを頑なに処分したがるの!?
 今は1人でも人手が欲しいときなのは分かってるでしょ!?」

「俺たちさぁ。ミルズレンダの狩人ギルドでも騙されて襲撃を受けたことがあるんだよね。運よくやり過ごせたけど。
 だから今回もさ。狩人ギルドが俺たちを排除しようとしてると判断したんだよ。
 だってそうだろ?協力をお願いされている立場の俺たちが守られなくて、その俺たちを襲った連中が必死に守られてるんだ。狩人ギルドの関与を疑うのは当たり前だろ。
 信用の出来ない相手とは取引できない。それだけだ。じゃあな」


 扉の前に立ち尽くしているエルハを力ずくで避ける。
 怪我をさせるつもりはないが、敵に遠慮をするつもりもない。


「関与なんてしてない!!ギルドの関与なんて絶対にないから!!マスターの私が保証するから!!お願い待って!!」

「その言葉に何の意味が?今回襲ってきた奴等が再度襲ってくる可能性は低くないし、迷宮殺しを進めている時に後ろからバッサリ、なんてこともありえるだろ。
 そんな危険を冒してまで協力する義理はないね」

「今は人手が必要なの!!彼らにだって毎日、迷宮の出現位置の調査を手伝ってもらってるのよ!!貴方達も彼らも、この非常時を乗り切るのには欠かせない存在なのよ!!」

「じゃあなんでギルドは介入せずに静観してたんだ?俺は武装した複数人に襲われていたんだぞ。まさにこの建物の中でな?
 6等級6等級煩かったから、等級だって俺より上の相手だったんだろう?」

「どこのギルドだって、冒険者同士の諍いには不介入でしょう!?問題が起きたら当人同士で解決するのが冒険者のルールでしょうが!?」

「じゃあ逆になんでお前は介入してきたんだよ。
 あのタイミング……、俺があいつらを再起不能にしようとしたのを見計らったように介入してきておいて、今さらギルドは不介入とか笑わせんな。
 ここまで言ってもまだあいつらを庇うってんだから、話にならねぇな」


 喚きながらしがみついているエルハを引き摺ってギルドの外に出る。
 多少注目を浴びようが、どうせこのあと訪れることはない場所だからどうでもいい。


「トーマ!?エルハ!?何してる!?」


 ギルドの入り口で待っていたクリーヌが、驚いて馬車から駆け寄ってくる。


「ああクリーヌたちには悪いけど、俺たちはベイクに帰るよ。
 多分もう来ないから、後はボールクローグの冒険者達で頑張ってくれ」

「待って。それじゃ分からない。説明して」

「めんどくせぇからパス。俺たちが帰ったあとにエルハにでも聞いてくれ。
 短い間だったけど世話になった。ありがとうな」


 ゲートの詠唱を始める。
 しがみついてるエルハがウザイけど、流石にベイクまで付いては来ないだろ。


「待ってトーマ!お願い教えて!なにがあった!?」

「クリーヌたちを待っている間に武装した集団に襲われたんだ。トーマだったから無傷で制圧できたけど、相手は武器も抜いていた。
 だけど狩人ギルドは彼らに何の処分も下さないらしくてね。僕たちとしても安全の確保の出来ない状況で協力する義理はないから、ボールクローグへの協力はやめることにしたんだよ。信用できないからね」


 俺の代わりにシンがクリーヌに説明した。


「……エルハ、ホント?ホントだったら、エルハを軽蔑する。犯罪者を見逃すなんてありえない」

「だよなー?しかも今さら処分しますなんて言われても、そいつらもう逃げた後だろ?もう全部が全部手遅れなんだよなー」

「トーマお願い。協力して。異風の旋律が居なかったら討伐が間に合わない。
 私に出来ることなら何だってするから。お願い」

「異風の旋律が居ないと討伐が間に合わないのに、安全は保証できないとか馬鹿じゃねぇの?
 クリーヌのことは友人だと思ってるけど、現状じゃ狩人ギルドから紹介されたお前らを信用するのも無理だ。
 お前がボールクローグを大事に思うのは勝手だが、それで俺の家族を危険に晒されちゃたまらない」


 クリーヌは悔しそうな表情で拳を握っている。
 こんな別れになって残念なのは俺だって一緒だ。でも家族には代えられない。


「ねぇトーマ……。私もこのまま帰りたくないよ……。
 銀の乙女が、クリーヌたちが危険に晒されてるのに、私達だけ安全なベイクに帰るの……!?」

「そうだよ?悪いが俺は自分の身内が最優先だ。
 ミルズレンダであった事を忘れたか?もし迷宮討伐中に襲撃にあったら、馬車に残るリーネには対処できないだろ」

「異風の旋律なら……、トーマなら助けられる人たちを見捨ててベイクに帰るなんて、ホントにそれでいいの……!?」

「リーネが俺の事をどう思ってるのかは勝手だが、俺は1人の人間でしかないからね。俺の手に掴める物なんてのは限られてる。だからこそ色んな人に助けてもらってるんだよ。
 もし迷宮殺しの最中にリーネが攫われたり殺されたりしたら、それこそ俺自身の手でこの街を滅ぼしてやると思うけど、リーネにはその覚悟は背負えるのか?
 綺麗事だけで渡り歩いていけるほど、この世界は優しくないんだぜリーネ」


 ゲートが開く。時間切れだ。
 こんな結末になって残念だったな。

 せめて他の冒険者たちが奮闘してくれる事を祈ってるよ。
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