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8章 異風の旋律
253 地元
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今日も3つの迷宮殺しを終えて、少し空いた時間でリーネとクリーヌと手合わせをした。
流石にクリーヌは狩人として活動しているだけあって、オーサンと同等くらいの力量に感じる。
狩人として活動できるのは、5等級冒険者あたりからなんだっけ?
そう考えると、クリーヌも狩人としてはまだまだ駆け出し扱いなのかも知れない。
リーネも毎日ギルドで訓練しているおかげか、動きはそんなに悪くない。武器の扱いにも慣れてきたみたいだし。
不安要素があるとすれば、やはり実戦経験の少なさだよな。でもこればっかりは迷宮に入れないからどうしようもない。
狩人として活動し始めたときに困らないよう、なるべく力を磨いておくくらいしか出来ない。
街の入り口で皆と合流し、狩人ギルドに報告に行く。
この報告も毎日代わり映えしなくて、俺たちが立ち会う意味がないと思うんだよなぁ。
クリーヌだけで充分じゃない?
なんて思っていたら俺宛てに伝言が届いていた。スカーさんからだ。
どうやら明日の夕食に、カルマさんと面会の時間を取れたらしい。
今日じゃなくて良かった。もうみんなベイクに行く気満々だったもんね。
狩人ギルドから出てすぐにゲートを発動する。
人目なんて最早気にしていない。人目に付かない場所を探す方が手間だ。
「あ~!やっぱりベイクに来ると、帰ってきたーって感じがするねー!」
「うん。私も帰ってきたって感じる。
始めはヴェルトーガに居たけど、もうすっかりベイクが地元になっちゃったな」
リーンとハルがはしゃいでる気持ちが良くわかるわ。
俺もベイクは完全に地元って意識になっちゃってるもんな。
食べ物はお土産も兼ねてボールクローグで購入済なので、真っ直ぐ自宅に向かった。
「父さん母さんたっだいまー!」
「あらリーン。みんなもおかえりなさい。
ちょうど旋律の運び手の皆の夕食を配り終えて、これから夕食を取る所だったのよ。
あ、みんなの夕食はどうしましょう?」
「大丈夫だよ母さん。僕達の分は用意してきたから。
3人の分もあるから、夕食の時に合わせて食べよう」
「おお、ボールクローグの食べ物は少し変わってるから嬉しいよ。
あそこは大森林で取れる食べ物が豊富なんだよね」
流石ジーンさんは各都市の情報に詳しいな。
ボールクローグの食べ物は珍しいから、行商時代もよく扱ってたりしたのかも。
「おうみんな予定通り戻ったか。今日に間に合わせた甲斐があるってもんだぜ!
まだ弓だけだけど、とりあえず完成させたからよ!夕食が終わったら見てくれよ!」
「おおマジかよ!?それは楽しみだわ!
弓は今のところ一番品質が低いから、結構気になってたんだよね」
「食後の楽しみも出来ましたし、早速夕食を頂きましょうか。
食器類は準備しますので、トーマはストレージから買ってきたものを出してくださいね」
「あ、トルネ。私も手伝うよ……」
うん。やっぱいいな。帰ってきたって感じがする。
一緒になった経緯は皆バラバラだけど、もうみんな家族って感じだよなぁ。
ボールクローグのお土産は、特にマーサに好評だった。
ジーンさんとリンシアさんは、やはり若いときに何度か口にしたことがあるそうだ。
迷宮産の食材が当たり前のリヴァーブ王国で、森の恵みと呼べる食べ物は中々に高級品で、南端であるミルズレンダではほとんど口に出来る事はないらしい。
ミルズレンダに運ぶためにはゲート前提だもんな。そりゃ食べたことないはずだわ。
夕食を食べ終えて、ジーンさんとリンシアさんの2人を自宅に残して、残りのメンバーで工房に向かった。
工房は自宅から徒歩で3分くらいの距離だ。
「……なぁマーサ。なんか工房がめっちゃ立派になってない?」
え?ボールクローグに行く前も魔物素材を収めに来るくらいしか来てなかったけど、いつの間にか工房が一回りでかくなってる気がするんだけど?
「ん?ちゃんとジーンさんに許可貰って、カンパニー資金で増築したんだぜ?
ジーンさんにはいくらお金をかけても良いって言われたからな。ありがたく使わせてもらったってワケさ!
グリーンドラゴンとアサルトドラゴンの素材だけでも保管しきれなかったからよ。せっかくだし建物自体も大きくさせてもらったんだぜ!」
倉庫の拡張をしてたのは知ってたけど、ボールクローグに行ってた短期間で増築なのか改築なのか、大規模リフォームを完成させるとは、やっぱ異世界建築技術は凄いわ。
「っていうか、これ相当金かけたんだよな?ジーンさん何も言ってこなかったの?」
「だからジーンさんにはいくら金を使っても良いって言われたんだって。
というか、なるべくお金をかけて最高の設備を揃えて欲しいって言われたぜ?
いやあジーンさんって良い人だよなぁ!」
あのジーンさんがなるべくお金を使えって言ったのか?
……あれ、ちょっと待てよ?
毎回の探索で異風の旋律のメンバーは、金貨5枚ずつ納めてるんだよな?
それで、いつからだったか忘れたけど、今は1日10回ずつ探索してるわけで。
俺のソロ探索の時も一応カンパニー口座に入金してるし。
あれ?そう考えると1日に1人当たり金板5枚ずつ、5人だと白金貨2枚半もカンパニー口座に入ってる……?
あれ?いつから10回探索にしたか覚えてないけど、単純な入金額は既に白金板数枚以上に及んでる……?
は?じゃあ俺たちの口座に入ってる金額はどうなってんだよ……?
カンパニー口座への入金は負担にならないようにって、少なめにしてあったはず……。
「トーマ……。多分僕と同じこと考えてると思うけど、深く考えるのはよそう。
カンパニーの活動資金が潤沢にあると思うしかないよ」
「そーそー。私なんてとっくに考えるのやめちゃったよー?
トーマにいっぱい稼いでもらうからねーなんて言ってたけど、ここまで稼ぐとは思わなかったなー?」
「異風の旋律全員の口座の金額を合わせると、下手するとその辺の貴族家を上回る可能性すらありますよ。
流石に精霊家はこの程度の規模ではないと思いますけど、現時点でもディオーヌ様の屋敷くらいは私達も問題なく建てられそうですね」
「うん。日本で例えると、毎日宝くじに当選してるようなものなんじゃない?
私ちょっと前まで、飲食店の支払いで揉めてた気がするんだけどなぁ」
「私は今のところお金稼げてないんだよね……。
でもいつかいっぱいお金稼いで、みんなに少しでも返していくからね……!」
マジかよ。まさかそこまで金が貯まってるとは……!
こうなるとミルズレンダに行けないのは痛いな。
職人都市ならいくらでも金の使い道はありそうだったのに……!
ボールクローグの一件が済んだら、ガンガン散財していかないとダメだな。
自立支援の活動をどんどん広げていこう。
流石にクリーヌは狩人として活動しているだけあって、オーサンと同等くらいの力量に感じる。
狩人として活動できるのは、5等級冒険者あたりからなんだっけ?
そう考えると、クリーヌも狩人としてはまだまだ駆け出し扱いなのかも知れない。
リーネも毎日ギルドで訓練しているおかげか、動きはそんなに悪くない。武器の扱いにも慣れてきたみたいだし。
不安要素があるとすれば、やはり実戦経験の少なさだよな。でもこればっかりは迷宮に入れないからどうしようもない。
狩人として活動し始めたときに困らないよう、なるべく力を磨いておくくらいしか出来ない。
街の入り口で皆と合流し、狩人ギルドに報告に行く。
この報告も毎日代わり映えしなくて、俺たちが立ち会う意味がないと思うんだよなぁ。
クリーヌだけで充分じゃない?
なんて思っていたら俺宛てに伝言が届いていた。スカーさんからだ。
どうやら明日の夕食に、カルマさんと面会の時間を取れたらしい。
今日じゃなくて良かった。もうみんなベイクに行く気満々だったもんね。
狩人ギルドから出てすぐにゲートを発動する。
人目なんて最早気にしていない。人目に付かない場所を探す方が手間だ。
「あ~!やっぱりベイクに来ると、帰ってきたーって感じがするねー!」
「うん。私も帰ってきたって感じる。
始めはヴェルトーガに居たけど、もうすっかりベイクが地元になっちゃったな」
リーンとハルがはしゃいでる気持ちが良くわかるわ。
俺もベイクは完全に地元って意識になっちゃってるもんな。
食べ物はお土産も兼ねてボールクローグで購入済なので、真っ直ぐ自宅に向かった。
「父さん母さんたっだいまー!」
「あらリーン。みんなもおかえりなさい。
ちょうど旋律の運び手の皆の夕食を配り終えて、これから夕食を取る所だったのよ。
あ、みんなの夕食はどうしましょう?」
「大丈夫だよ母さん。僕達の分は用意してきたから。
3人の分もあるから、夕食の時に合わせて食べよう」
「おお、ボールクローグの食べ物は少し変わってるから嬉しいよ。
あそこは大森林で取れる食べ物が豊富なんだよね」
流石ジーンさんは各都市の情報に詳しいな。
ボールクローグの食べ物は珍しいから、行商時代もよく扱ってたりしたのかも。
「おうみんな予定通り戻ったか。今日に間に合わせた甲斐があるってもんだぜ!
まだ弓だけだけど、とりあえず完成させたからよ!夕食が終わったら見てくれよ!」
「おおマジかよ!?それは楽しみだわ!
弓は今のところ一番品質が低いから、結構気になってたんだよね」
「食後の楽しみも出来ましたし、早速夕食を頂きましょうか。
食器類は準備しますので、トーマはストレージから買ってきたものを出してくださいね」
「あ、トルネ。私も手伝うよ……」
うん。やっぱいいな。帰ってきたって感じがする。
一緒になった経緯は皆バラバラだけど、もうみんな家族って感じだよなぁ。
ボールクローグのお土産は、特にマーサに好評だった。
ジーンさんとリンシアさんは、やはり若いときに何度か口にしたことがあるそうだ。
迷宮産の食材が当たり前のリヴァーブ王国で、森の恵みと呼べる食べ物は中々に高級品で、南端であるミルズレンダではほとんど口に出来る事はないらしい。
ミルズレンダに運ぶためにはゲート前提だもんな。そりゃ食べたことないはずだわ。
夕食を食べ終えて、ジーンさんとリンシアさんの2人を自宅に残して、残りのメンバーで工房に向かった。
工房は自宅から徒歩で3分くらいの距離だ。
「……なぁマーサ。なんか工房がめっちゃ立派になってない?」
え?ボールクローグに行く前も魔物素材を収めに来るくらいしか来てなかったけど、いつの間にか工房が一回りでかくなってる気がするんだけど?
「ん?ちゃんとジーンさんに許可貰って、カンパニー資金で増築したんだぜ?
ジーンさんにはいくらお金をかけても良いって言われたからな。ありがたく使わせてもらったってワケさ!
グリーンドラゴンとアサルトドラゴンの素材だけでも保管しきれなかったからよ。せっかくだし建物自体も大きくさせてもらったんだぜ!」
倉庫の拡張をしてたのは知ってたけど、ボールクローグに行ってた短期間で増築なのか改築なのか、大規模リフォームを完成させるとは、やっぱ異世界建築技術は凄いわ。
「っていうか、これ相当金かけたんだよな?ジーンさん何も言ってこなかったの?」
「だからジーンさんにはいくら金を使っても良いって言われたんだって。
というか、なるべくお金をかけて最高の設備を揃えて欲しいって言われたぜ?
いやあジーンさんって良い人だよなぁ!」
あのジーンさんがなるべくお金を使えって言ったのか?
……あれ、ちょっと待てよ?
毎回の探索で異風の旋律のメンバーは、金貨5枚ずつ納めてるんだよな?
それで、いつからだったか忘れたけど、今は1日10回ずつ探索してるわけで。
俺のソロ探索の時も一応カンパニー口座に入金してるし。
あれ?そう考えると1日に1人当たり金板5枚ずつ、5人だと白金貨2枚半もカンパニー口座に入ってる……?
あれ?いつから10回探索にしたか覚えてないけど、単純な入金額は既に白金板数枚以上に及んでる……?
は?じゃあ俺たちの口座に入ってる金額はどうなってんだよ……?
カンパニー口座への入金は負担にならないようにって、少なめにしてあったはず……。
「トーマ……。多分僕と同じこと考えてると思うけど、深く考えるのはよそう。
カンパニーの活動資金が潤沢にあると思うしかないよ」
「そーそー。私なんてとっくに考えるのやめちゃったよー?
トーマにいっぱい稼いでもらうからねーなんて言ってたけど、ここまで稼ぐとは思わなかったなー?」
「異風の旋律全員の口座の金額を合わせると、下手するとその辺の貴族家を上回る可能性すらありますよ。
流石に精霊家はこの程度の規模ではないと思いますけど、現時点でもディオーヌ様の屋敷くらいは私達も問題なく建てられそうですね」
「うん。日本で例えると、毎日宝くじに当選してるようなものなんじゃない?
私ちょっと前まで、飲食店の支払いで揉めてた気がするんだけどなぁ」
「私は今のところお金稼げてないんだよね……。
でもいつかいっぱいお金稼いで、みんなに少しでも返していくからね……!」
マジかよ。まさかそこまで金が貯まってるとは……!
こうなるとミルズレンダに行けないのは痛いな。
職人都市ならいくらでも金の使い道はありそうだったのに……!
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