異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

251 どこまで情報を共有する?

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 既に食事は終わって酒飲んでるだけだったし、俺の話で酒を飲む雰囲気でもなくなってしまったので夕食会はお開きとなった。

 帰りもペルが送ってくれると言ってくれたが、ボールクローグに帰るだけならゲートを使えばいいだけなので遠慮した。


「この程度の距離で気軽にゲートを使うとか信じられないよ。
 なんで6等級やってんだいアンタ」


 昇級に興味がないからです。

 魔力が万全な今なら、20人程度の転送は全く問題ない。
 魔力は自然回復する半無限のエネルギーなんだから、むしろ活用しない手はないのだ。
 使えば使うほど魔力量も増えていくんだし。


 ボールクローグに戻ってきて解散する。
 結構夜も更けてきたし、クリーヌの家族の中でも年少の子達は、年長の子供達に背負われてスヤスヤと眠っている。

 リス獣人に背負われて眠っている子供のリス獣人……!
 カ……、カメラが欲しい……!!!


「ん。トーマ。ちょっといい?」


 リスオンザリスに見蕩れていると、クリーヌが話しかけてきた。


「さっきの、迷宮討伐と経験の話。エルハには報告しないの?」

「ん?別に隠したい情報ってワケでもないから、もしクリーヌがエルハに報告するのならしても構わないよ。
 でも少なくとも俺は説得に協力はしないからね。聞かれたら答えはするけど、信じない人を説得する気はないよ。
 逆に聞くけど、クリーヌはさっきの話を聞いてどう思った?すんなり信じられるような内容だった?」

「ん……。むしろ信じられない話だった。でもトーマが嘘を言っているようにも見えなかった。
 異風の旋律の強さの秘密だと言われて、少し納得できたところあるかも」


 腕を組んで俯いているリス獣人。可愛すぎませんかねぇ?


「もう1度言うけど、サリサリにはああ言ったけど別に隠したい情報ってワケじゃないからさ。クリーヌがエルハに報告するのは全然構わないんだよ。
 でも銀の乙女にしてもクリーヌにしても、俺たちと直接会っているからこそ説得力を感じたんでしょ?
 俺たちと面識のない冒険者に話しても、信じてもらえないと思うんだよね。
 仮にエルハから冒険者に説明したとしても、迷宮殺しを進めたい狩人ギルドの嘘情報だと思う冒険者もいそうだ。
 まぁそれでも情報が公開されれば、頭のいい奴なら1度試して確認するだろうから、報告が全く無駄ってワケでもないかも知れないな。
 俺は迷宮殺しに集中するつもりだから、エルハへの報告も他の冒険者への情報公開も好きにしていいよ。
 今回の件が終われば、さほど重要な情報でもなくなるだろうし」

「分かった。なら私はエルハに報告するから」

「了解。案内の仕事に支障が出なければ自由にやってくれていいよ」


 クリーヌは自宅の方向ではなく、狩人ギルドのある方向に去っていった。
 これからエルハに報告をするんだろうな……って、エルハって日没後もギルドにいるのか? 
 今は緊急事態だからと連日ギルドに詰めてるんだろうか?

 この世界は洗浄があるおかげで、缶詰がしやすいんだよなぁ。




「それにしてもトーマは口が上手いよね。僕達が迷宮殺しを達成したのなんて今回が初めてだっていうのに。
 リーンのスキル取得の秘密って言われたら、この世界の住人なら絶対に聞き逃せない情報だよ」

「ねぇねぇトーマ。狩猟ギルドにまで情報を提供しちゃって良かったのかなー?
 迷宮殺しで効率良く経験を積めるのは、私達にとっても同じことでしょー?」


 今日は夕食を外で済ませたので、就寝前にパーティだけでまったり雑談タイムだ。
 話の内容はあんまりまったりしてない気もするけど。


「それはぶっちゃけ全く問題がないんだよ。
 俺らって毎日10回探索してたじゃん?確かスカイサーペントが出た辺りで、1日で積める経験の量が迷宮討伐で積める経験の量と同じくらいだったんだよね。
 俺たちはベイクで毎日1つ以上迷宮殺しをやってたようなモンなんだよ」

「うん。トーマの言ってる事は本当なの。
 1日3つ迷宮殺しをしている状態だと流石に追いつけないけど、私たちにとって迷宮殺しはそこまで優先してこなさなきゃならないものではないって感じかな」


 ウチのパーティには異邦人が2人もいるから話が早いんだよな。
 俺1人だけの情報だと、なかなか実感しにくい情報もありそうだ。


「……最近は完全に麻痺してましたけど、私達の迷宮探索の回数って異常ですよね。
 この世界の冒険者で考えると、熱心に活動しているという冒険者でさえ、毎日1度潜るくらいのはずですし」

「うん……。院、救貧院でお金に困っている子達よりも、よっぽど沢山迷宮に入ってるよね……。
 まぁ院の子達は荷物がいっぱいにならなくて、滞在時間が長引いていたってだけなんだけど……。
 栄光の運び手のみんなでも1日2回くらいしか潜ってないし、それでもベイクでは凄く潜ってる方なんだよ……?」


 栄光の運び手は人数が多いから、一度に持てる荷物が多くて、逆に探索回数が減ってるんだろうな。

 つうかこの世界の冒険者って、生活に困窮しているくせに迷宮に潜らなすぎでしょ?
 冒険者とか貧困層とか、ちょっと意識がおかしくないかと思うわ。


「この世界の冒険者の方がおかしいんだよ。
 今でもはっきり覚えてるけどさ。棍棒1本握り締めて、ロクに運動もしたことなかったオッサンの俺が、ベイクの迷宮で初めて貰った報酬は72リーフだったんだぜ?
 そのまま迷宮の安らぎ亭で休むまでに、1日で600リーフ以上、650リーフだったっけ?を稼いだんだよ。ちょっと意識が朦朧としてたから、合計額は自信ないけど。
 だから初めてシンたちと会った時に、1日で銅板も稼げない日も珍しくないって話を聞いて、こっちの方が驚いたくらいだよ」

「……あの時は僕もしょうがないって思ってたけど、実際にトーマと一緒に探索していて、確かに他の冒険者の探索の頻度が少なすぎるようには感じてきたよね。
 今改めて思うと確かにちょっと不自然な気もするよ。なんで冒険者はこんなに迷宮に入らないんだろう?」


 シンは生活困窮者の1人だったから、俺と会う前にも毎日探索をしていたはずだ。
 そのシンが自分の探索回数が少なすぎたと感じているんだから、俺がおかしいんじゃなくて、リヴァーブ王国の冒険者の方がおかしいと思うんだよなぁ。


「ん~。私はちょっとわかる気がするなぁ。
 私、トーマと会うまでは冒険者って凄く辛くて、全然楽しくなかったから。
 目標があったし、兄さんが居てくれたから毎日頑張って迷宮に入れたけど、出来るなら入りたくないって思ってたよ。
 1日ずっと迷宮を歩き回って銅板1枚も稼げないなんて、本当に辛かったなぁ……」

「それに私達はトーマとハルのおかげで、大凡おおよそですけどスキルの取得時期が分かりますからね。魔物との戦闘が無駄になっていないことが明確に分かるのは、正直ありがたいことだと思いますよ」

「うん。私達みたいにSPが可視化されているのは大きいよね。
 まぁそれを考慮しても、トーマの探索ペースは多すぎると思うけど」

「今まで院の子達を見てきたけど、リーンが言ってることが近いんじゃないかな……?
 やり方を間違っていたにしても、1日中苦労しても実入りは少ないし、生活は楽にならない……。
 どれだけ魔物を倒せばスキルが得られるかも分からない……。実際、お金を貯めて祝福の儀を受けたのに、スキルを取得できなかったアウタオみたいな人も珍しくないし……。
 トーマがカンパニーを作ってくれて、皆に道を示してくれたから、旋律の運び手に参加している人たちの探索頻度はとても増えたみたいだよ……?」


 つまりは、駆け出しのときに苦労しすぎて、迷宮探索に苦手意識というか、嫌気が差してしまっているってことなのかな?
 栄光の運び手はすでに8階層を越えているし、毎日楽しそうに迷宮に向かっているもんな。

 駆け出しの一番苦労しているところをフォローしてやれば、後は勝手に成長してくれるって認識は間違ってなさそうだ。


「今回の件が終わったら、他の都市でも本格的にカンパニーを広げていきたいところだなぁ。
 今の冒険者の成長速度じゃ、国境壁の外の世界で生きていくのは難しそうだ」

 
 全員の装備が完成したら、ベイクの迷宮の踏破はしてみたいなぁ。
 管理迷宮を討伐するわけにはいかないんだけどさ。
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