異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

243 迷宮神像

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「迷宮神像?って、迷宮を司る神がいるってことか?迷宮ってこの世界ではどういう存在なんだ……?」


 柱の中の神像から目が離せない。
 中があまり良く見通せないが、多分男神像で、両手を組んで祈りを捧げているようなデザインだ。
 
 ……少なくとも、禍々しい雰囲気は感じない。


「僕もあまり詳しいわけじゃないから、ざっくりとしか説明できないけど。
 リヴァーブ王国建国神話によると、神々からスキルを得てもなお、人々は魔物に対抗するには脆弱すぎたらしいんだよね。実際僕たちも装備品がなければ戦えないわけだし。
 そこで世界に満ちている魔力を集めて人々に役立つ資源を生み出したのが、迷宮神像に姿を残すダンゲルスヌーマ神だと言われているんだ。
 人々のために自ら迷宮となって様々な恩恵を齎した神として、ラーゼリア、リーゼリアと共に、リヴァーブ王国の最高神の1柱に数えられているね」

「迷宮の神、ダンゲルスヌーマ……」


 確かにリンカーズの迷宮のシステムは、人にとって都合が良すぎるとは思っていた。
 少しずつ難度の上がる階層。解体の必要がないドロップアイテムというシステム。稀に落ちるスクロールというボーナスアイテム。
 元々が人々の繁栄のために生まれた存在だとするならば、むしろ納得がいく。

 管理迷宮に、迷宮資源か。
 まさに迷宮とは人々に管理され、資源を齎すためのシステムであって、管理されている姿こそが正しい形ということなのか。


「うん。まさか迷宮も神様が作った施設だとは思ってなかったけどさ。迷宮を殺すっていう事は、この神像を破壊するっていうことなんだよね?
 それってダンゲルスヌーマ様への冒涜行為に当たらないのかな?」

「それは大丈夫ですよハル。迷宮とは人に恩恵を齎すもの。ですが人の手を離れてしまうと迷宮は暴走してしまいます。
 暴走した迷宮は人々にとって脅威となり、それはダンゲルスヌーマの望みではありません。
 人々の手に負えない迷宮は速やかに討伐する、それは人々のために迷宮を生み出したダンゲルスヌーマの願いであると言われています。
 迷宮神像がどうして生まれるかは諸説ありますが、少なくともこの神像はダンゲルスヌーマ本体ではないですから。遠慮は要りませんよ」

「それに迷宮神像を破壊する行為は、ダンゲルスヌーマを迷宮から解放する行為であるとも言われてるんだよねー。
 迷宮が死ぬと、迷宮に蓄積されていた魔力が大気に還るらしいんだけど、それが迷宮から解放されたダンゲルスヌーマの一部だと思ってる人も少なくないんだよー」


 迷宮からの解放か。
 確かに、柱の中の神像を見てしまうと、迷宮に囚われているように思えるもんな。


「そっか。なら早く解放してやらないとな」


 ロングソードに魔力を込める。


「ダンゲルスヌーマ様。今までお疲れ様でした。
 貴方の願いにそぐわない他の迷宮も、なるべく早く解放しますね」


 ロングソードを右斜め上から振り下ろす。
 柱ごと神像は両断され、斜めにずれて地面に崩れ落ちた。

 粉々に崩れた神像が光を放ち、手のひらサイズの光の球が浮かび上がって、俺の目の前にゆっくりと飛んできた。

 俺は何も考えずに手を伸ばし、光の球に触れる。

 その瞬間視界がブレた。
 と思った瞬間には、俺は根元に大きな穴の空いた大木の前に立っていた。


 ……ここは、迷宮の入り口?

 っとそうだ!?みんなはどうなった!?
 焦って周りを見回してみると、どうやら全員が迷宮の外に出てきているみたいだった。
 

「みんな無事か?どこも異常ないか?」

「大丈夫だよ。迷宮殺しが成功すると、中の人間は強制的に排出されるって話は聞いてたしね。
 どうやら無事に迷宮は討伐され、ダンゲルスヌーマは解放されたみたいだよ」


 シンが迷宮の入り口があった大木の根元を指差す。
 魔法陣があった場所から七色の光の粒が、天に向かってゆっくりと吐き出されていた。


「トーマが持ってるのが心核って言われてるアイテムでねー。迷宮を討伐したときにしか得られない、すっごく貴重な魔法素材なんだってー!」


 リーンに言われて、自分が綺麗な球体を握っていることに気付かされた。
 これは神像から出た光の球の本体、心核っていうアイテムなのか。


「何の素材かは知られてませんけど、ギルドに持っていくと凄まじい金額で買い取ってくれるらしいですよ。なんでも王家が買い集めているらしいですね。
 そんな高額なアイテムを持ち歩くのは怖いので、トーマのストレージに保管してもらうのが良いと思いますよ」

「うん。ストレージなら絶対安全だもんね。トーマよろしくね」


 確かにストレージなら今のところ安全だよな。
 金に困ってるわけでもないし、とりあえずストレージの肥やしにしておこう。


「あれ。もう戻った?木の実集め、ちょっと張り切りすぎちゃったか」


 心核を収納したタイミングでクリーヌが戻ってきた。
 御者はリーネが務めている。なかなか有意義な時間を過ごしたみたいだな。


「いや、俺たちもちょうど戻ってきたとこだよ。
 今日はもう戻ろうぜ。間もなく日没だよな?」

「ん。早く帰るに越したことはない。色々取ってきたから馬車がちょっと狭いかも」


 馬車を覗くと床一面に色々な木の実が置かれていた。全てストレージに収納して乗り場を確保。


「空間魔法いいね。私も欲しい」

「ま、手に入れるのは結構大変だったからな。
 街に戻ったら一緒に夕食食べないか?出来れば取ってきた木の実の食べ方とか教えて欲しいんだが」

「ん。夕食奢ってくれるなら。
 でもその前に仕事の話。明日もこの迷宮に連れてくればいいの?」

「ん?ここの迷宮は討伐出来たから、明日は違う場所で頼むよ」

「……は?え、ちょっと待って」


 馬車を飛び降りたクリーヌは、大木の根元を確認してアタフタしている。


「えっえっ、どういうこと?なんで迷宮なくなってる?迷宮を討伐?え?どうやって?え?え?」

「おーいクリーヌ。まずは帰ろうぜ。聞きたいことがあれば道中で話した方が無駄がなくていいだろ?」


 クリーヌは振り返ると、ダッシュで馬車に戻ってきて俺に詰め寄ってきた。
 あ~リスの獣人もかわいいなぁ。


「どどどっど、どういうこと……!?なんでこんな短時間で迷宮が死んでる……!?
 貴方達は5等級と6等級の冒険者パーティだとエルハに聞いてる……!
 だから私は事前調査か何かを頼まれてるんだと思ってた……!」

「等級は合ってるよ。でもエルハから頼まれたのは迷宮の討伐だよ。
 まぁまぁクリーヌ。まずはボールクローグに帰ろうぜ。話は飯でも食いながらでいいだろ」

「その前に狩人ギルドで報告しないと駄目!報告しないと二度手間になるから。
 少し急いで戻る。あ、夕飯は奢ってもらう」


 クリーヌはリーネから手綱を取り返して、馬車を急いで走らせた。

 とりあえず野良迷宮のレベルがかなり低めだってことが分かった。
 これだと異風の旋律は、バラけて攻略したほうが効率いいかもなぁ。
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