異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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7章 更なる強さを求めて

235 ディオーヌ様への報告

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「トーマさん。本日は何用でヴェルトーガにいらしたんですか?」


 スキル神殿から出ると、馬車と一緒にスカーさんが待っていた。
 冒険者ギルドに行く気配がないから、痺れを切らして出てきたんだろうか?

 ま、馬車が来たならせっかくだし利用しちゃおうかな?


「まぁ、一応報告したいこともあるんだけど、一番の目的は海を見に来たんだよ。
 もし良かったら海まで連れてってくれない?徒歩だと遠いからさ。
 馬車の中で簡単な報告をさせてもらうよ」

「ふむ?海に行くのは構いませんよ。
 こちらから報告することは現状ありませんし。
 トーマさんの話次第では、ディオーヌ様が対応する必要もないかも知れませんしね」

 
 う~ん、どうかなぁ?
 正直ディオーヌ様に怒られるような気がして仕方ないんだけど……。

 馬車に乗り込み、街の西側に向けて馬車は走り出した。


「んんん……。それはやはり、ディオーヌ様のお耳に入れておくべきですか。
 それにしてもトーマさんは、次から次へと色々やってくれますねぇ」


 マーサの引き抜きからのメーデクェイタ家との対立、ギルド員まで巻き込んで襲撃され、隙を見てゲートで逃げてきたという内容で報告する。
 まぁ調べたらすぐにバレるかも知れないけど。

 
 馬車が街の西端に着く。
 目の前には何処までも続く青い海が広がっている。

 なんかここ見覚えあるんですけどぉ。
 スカーさん、わざわざ久我たちと戦った場所に案内しやがった。
 迎えの馬車を私用で借りたことへの意趣返しのつもりですかねぇ?


「これが海……。果てが見えないんだね……。
 ふふ、これで私、東西南北全ての国境の外を見たことになるんだね……。
 迷宮に入れないことなんて、ホントに、本当に大したことじゃなかった……」

「いつかこの先も見てみたいもんだ。
 その時は一緒に行こうぜ、リーネ」

「ふふ、もちろん……。一緒に行こう、外の世界へ……」


 ま、そのためには、壁の内側のゴタゴタを何とかしたいところなんだけどねぇ。

 結局ディオーヌ様とはお会いする流れになったので、海を見るのもそこそこにして、再び馬車に乗り込んだ。


 それにしても、今回新しく分かったスキルの中に『遠見』というスキルがあった。
 取ってみないことには詳細は分からないけれど、結局のところ望遠能力なのは間違いないと思う。
 ターミナル広場をどうやって監視しているのかと思っていたけど、遠見のスキルがあれば、何処から誰が監視しているのかなんて気付きようがない。

 コスト的にもかなり重いし、環境適応:中を取得するのもかなり難しい。だけど国境の拡張を任されている四大精霊家ならば、国境の外に出るのはさほど難しくない。
 恐らく4家とも、それなりに監視体制を整えてあると思ったほうがいいな。

 今回ボールクローグに出向いた際に、カルネジア家からの接触は無かったけれど、俺たちの動き自体は把握されていると思うべきか。

 ターミナルが監視されていることを考えたら、ミルズレンダでの行動も全て監視されると思わなければならないし、やっぱりもう二度とミルズレンダには行かない方が良さそうだ。
 商工ギルドに依頼出しちゃった件は、他の街のギルドからなんとか対応出来ないかなぁ?最悪の場合は放置するしかない。


 なんてことを考えていたらディオーヌ様の屋敷に到着した。相変わらず遠いなぁここ。
 俺とスカーさんがそれぞれ考え事をして無言だったので、リーネは退屈させてしまったかなと心配したんだけど、車窓から見えるヴェルトーガの町並みを楽しんでいたようだった。
 確かに今まで見た都市の中で、ヴェルトーガは断トツで美しく整備されてるとは俺も思う。


「ほら、いくぞリーネ」


 屋敷に圧倒されて固まっていたリーネの手を取る。
 流石にディオーヌ様を待たせるのは不味いからな。

「手、握っててね……?」


 リーネはどこか嬉しそうだった。


「それでトーマさんは、新しい奥様を私に紹介するために、ヴェルトーガにいらっしゃったと?」

「いやいや、流石にそこまでボケちゃいませんて。
 スカーさんから話は通ってるのかもしれませんが、ちょっとミルズレンダで揉めまして……」


 メーデクェイタ家に襲撃されたことをディオーヌ様に説明する。


「……ミルズレンダでの職人優遇は、それなりに問題視されておりまして。
 というかですね。四大精霊家の中では、カルネジアとメーデクェイタは問題が多いのですよね……。
 それぞれが優先するものがあっても構わないのですけど、それ以外を蔑ろにするのは違う話ですわ」


 強者絶対主義と、職人優遇ってことか。


「ここヴェルトーガにも、貴方達異風の旋律に魔物素材を卸さないようにと、ミルズレンダ……、いえメーデクェイタから通達がありました。
 私としては、メーデクェイタと事を構える気はないのですが……。
 異風の旋律としては今回の事態、乗り切れますか?」 

「素材が回ってこない程度なら問題ないです。直接襲撃されるんであれば話は変わってきますけど、流石にそれはないですよね?」

「……ない、とは思いますわ。
 元々メーデクェイタ家はミルズレンダから出たがりませんから。今回の件も、貴方達がミルズレンダを訪れるまで待っていたのでしょう?」


 ……確かに、マーサを連れ戻しにベイクに来たりする気配はないよな。
 よし!ミルズレンダには二度と行かない。これで行こう。

 そんなことを考えていたら、ディオーヌ様はまるで場を引き締めるように小さく咳払いをした。


「……トーマさん。異風の旋律のみなさんで、いつでも動けるようにしていてもらえますか。
 まだ調査中で確実な事はお伝え出来ませんが、既に何かが起こり始めているようです。
 事によっては、メーデクェイタ家なんかに構っている場合ではなくなります」

「……というと、異邦人がらみですか?」


 ディオーヌ様は、心底嫌そうな表情をしながら額に手を当てた。


「まだ確定ではありません。当家の調査でも、まだ確信は持てていないのですが……。
 私個人の見解ですが、異邦人が関わっている案件だと思っております。
 今はまだ大きな問題にはなっていないですし、偶然でも起こりえることですが……。
 これが偶然では無かった場合、次の騒動の舞台は、火のカルネジア家の本拠地、前線都市ボールクローグとなるでしょう。
 異風の旋律の皆さんは、次なる戦いに備えておいてください」

「ボールクローグで……」

「そんな……!
 あそこには、銀の乙女の皆さんがいるのに……!」


 まぁ仮に知り合いがいなくても見逃せる話ではないけどもさ。
 あそこにはサリサリたちもいるし、なによりもペルがいるからな。

 それに銀の乙女の拠点は街の外だ。異変があったら真っ先に危険が及びかねない。

 
 タイデリア家の調査次第で、俺たちにも連絡を貰える事になった。
 さぁて。次の戦いに備えて、少しでも強くなっておかないと。
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