異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
259 / 580
7章 更なる強さを求めて

229 職人殺し

しおりを挟む
 ミルズレンダも今回で3度目の来訪かぁ。
 全く街に良い印象が無いのに、来た回数だけは無駄に多い。

 なんだかちょっと街が騒がしい気がするけど、とりあえず無視して商工ギルドへ。
 普通の職員に案内してもらっても構わないというのに、問答無用でギルドマスターのカサルテさんに回された。

 あ、俺ブラックリスト入った感あるわ。まぁ当たり前か?

 
 流石はギルドマスターと言うべきか、頼んであった物件は既に目星を付けておいてくれて、すぐにでも購入可能だそうだ。
 しかしながら、職人連中とのトラブル回避のためということで、あまり便利でない場所が多いようだ。

 加えて、職人連中は俺と関わることに及び腰なので、改装工事なども請け負ってくれるかどうかわからないということだ。宜しい。ならば資金で殴ろう。

 とりあえず収容可能人数10人ごとにトイレを1つ増設する依頼を出し、報酬は相場の5倍。そしてやりとりは全て商工ギルドを通して行われ、俺とは一切顔を合わせないという条件だ。
 これでも駄目だったらミルズレンダは放置だな。


「そういえば街が騒がしい気がするけど、なにかあったの?」

「あ、とても珍しい魔物素材が入ってきたという話ですね、はい。
 なんでもカラードラゴンの素材らしくて、ここミルズレンダでも、1年に1度入るかどうかというほどの稀少素材なんですね、はい」


 あ、どっかで聞いた話ですね。これ以上踏み込むのはめんどくさそうだ。

 
 商工ギルドを出て、救貧院に金板5枚寄付してから狩人ギルドへ向かう。


「おう待ってたぜ『職人殺し』。何人か依頼を受けても良いって言ってくれてるぜ」


 ミルズレンダの狩猟ギルド員は、サイっぽい獣人の渋いおっちゃんだ。


「ソレはありがたいけど職人殺しってなんだよ。1人も殺してねーっつうの」

「くく、トレポール工房のローサルも、月光の手腕の跡取りのアルグリーマも、ゼルポーナス様も金槌を置いたって話じゃねぇか。
 充分職人殺しだろうよ」

「そいつらが足を洗ったのはそいつらの意思だろ。人のせいにしてんじゃねぇっつうの。
 それに、トレポールの奇跡、生きるミルズレンダのマーサルシリルが鍛冶を再開したんだからお釣りが来るだろ」

「ほう!あの人がもう1度鍛冶が出来るようになったのか。それは喜ばしいことだ」


 サイの表情なんて分からないけれど、なんだか安心したようなニュアンスに聞こえたな。


「ミルズレンダ全体に冷遇されてたって聞いたけど、アンタはそうじゃなかったのか?」

「ああ、本人がそう思うのも無理は無いだろうな。俺たち狩人ギルドとは直接会うことは無かったし。
 俺に限らず、狩人は全体的にあの人には同情的なんだよ。だからこそ職人殺しからの依頼には複数の狩猟団が声を上げてくれたんだからな」

「ふむ?素材を取ってくる狩人連中が同情的でも、マーサに素材を回すのは難しかったのか?」

「難しかったんだよ。他の都市なら別だが、ここは自身も職人の、メーデクェイタ・ゼルポーナス様が治める街だからな。他の街よりも職人が異常に優遇されてるんだよ。
 狩人としちゃあよ。自分が取ってきた素材は、なるべく腕の良い職人に使ってもらいてぇって思うもんなんだよ。苦労して狩ってきた素材を駄目にされちゃあやり切れねぇからな。
 だから史上最高とすら称えられたあの人に素材が回ってないって状況には、狩人達も俺たちギルド員も歯痒い想いをしてたんだ」


 ん~~……。まぁ仕方ないと言えば仕方ない、か。

 個人間での対立ならまだしも、領主に、支配者層に逆らうってのは並大抵じゃ出来ないからな。
 マーサと心中する覚悟程度では足りなくて、下手すると狩人ギルドや狩猟団まで解体させられる可能性がある。

 単純な正義感や同情だけでは、とてもマーサに手は差し伸べられないか。


「じゃあ狩人を紹介してもらおうかな。可能であるなら速度重視で、今日中にマウントハウンド狩って帰ってこれるような狩人がもしいるならお願いしたい。
 無理ならギルドのオススメの狩人をお願いしようかな」

「おうそれならオススメがいるぜ。ロビーで待ってて貰えるか?呼んでくっから」


 ミルズレンダにしては話が早くて助かるわ。
 この街ではなんだかんだと厄介事しか体験してないからな。良い印象が全くない。


「しっかし、ハルはもう充分1人で戦えると思うし、シンいるからな。ふわわとつららはリーネの護衛をお願いしていいかな?」

「みゃぁ」「わんっ」


 ちゃんとお返事していい子いい子。戦闘能力はまだないけど、危険察知は実戦レベルだからな。迷宮と違って、外での戦闘ってなにが起こるか分からないから怖い。


「おう待たせたな職人殺し。こいつらは地竜の牙っつう、ミルズレンダ全体で見ても大手に入る狩猟団だぜ。
 アサルトドラゴンを数体使役しているから、とにかく移動が早い。
 それに人数も多いし、国境壁の外にも何度も行ってる実績もある。
 狩猟ギルドから自信を持って紹介できる狩猟団だ」


 サイのおっちゃんが連れて来たのは、犬の獣人の男だった。


「紹介に与った『地竜の牙』の団長をやってる『ロウロン』だ。よろしく頼むぜ職人殺しさんよ」

「トーマだけどね。よろしく頼むよロウロン。そんじゃ依頼内容だけど」

「ああ、大丈夫だ。元々俺らはこれから国境壁外に行く予定だったからな。
 マウントハウンドさえ狩れりゃあいいんだろ?俺らの狩りに同行させてやるぜ。
 日が落ちる前にはミルズレンダに戻ってこれるはずだ」

「え?いやいや、同行するだけでもそっちにとっては負担だろ?ちゃんと報酬払うって」

「いやいや構わねぇって言ってんだろ?ミルズレンダが大分世話になったみてぇだしな。この街の住民として、協力してぇと思ってんだよ。遠慮なんかするもんじゃねぇ」


 そんな話、あり得るか?俺たちを待っていたのに、これから狩りに行くから便乗させてやるって?

 ん~でも、ギルドからの紹介だし、断るのも良くないか。


「そっか。それならお言葉に甘えさせてもらうよ。準備はもう出来てるのかな?」

「ああ、狩りに行く所だって言ったろ?すぐに出れるぜ。早速行こうや」


 正直このリンカーズで、無料で助けてくれたケースってないんだよな。

 あまり考えたくないけど、とりあえず皆と意見を共有しておこう。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...