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7章 更なる強さを求めて
229 職人殺し
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ミルズレンダも今回で3度目の来訪かぁ。
全く街に良い印象が無いのに、来た回数だけは無駄に多い。
なんだかちょっと街が騒がしい気がするけど、とりあえず無視して商工ギルドへ。
普通の職員に案内してもらっても構わないというのに、問答無用でギルドマスターのカサルテさんに回された。
あ、俺ブラックリスト入った感あるわ。まぁ当たり前か?
流石はギルドマスターと言うべきか、頼んであった物件は既に目星を付けておいてくれて、すぐにでも購入可能だそうだ。
しかしながら、職人連中とのトラブル回避のためということで、あまり便利でない場所が多いようだ。
加えて、職人連中は俺と関わることに及び腰なので、改装工事なども請け負ってくれるかどうかわからないということだ。宜しい。ならば資金で殴ろう。
とりあえず収容可能人数10人ごとにトイレを1つ増設する依頼を出し、報酬は相場の5倍。そしてやりとりは全て商工ギルドを通して行われ、俺とは一切顔を合わせないという条件だ。
これでも駄目だったらミルズレンダは放置だな。
「そういえば街が騒がしい気がするけど、なにかあったの?」
「あ、とても珍しい魔物素材が入ってきたという話ですね、はい。
なんでもカラードラゴンの素材らしくて、ここミルズレンダでも、1年に1度入るかどうかというほどの稀少素材なんですね、はい」
あ、どっかで聞いた話ですね。これ以上踏み込むのはめんどくさそうだ。
商工ギルドを出て、救貧院に金板5枚寄付してから狩人ギルドへ向かう。
「おう待ってたぜ『職人殺し』。何人か依頼を受けても良いって言ってくれてるぜ」
ミルズレンダの狩猟ギルド員は、サイっぽい獣人の渋いおっちゃんだ。
「ソレはありがたいけど職人殺しってなんだよ。1人も殺してねーっつうの」
「くく、トレポール工房のローサルも、月光の手腕の跡取りのアルグリーマも、ゼルポーナス様も金槌を置いたって話じゃねぇか。
充分職人殺しだろうよ」
「そいつらが足を洗ったのはそいつらの意思だろ。人のせいにしてんじゃねぇっつうの。
それに、トレポールの奇跡、生きるミルズレンダのマーサルシリルが鍛冶を再開したんだからお釣りが来るだろ」
「ほう!あの人がもう1度鍛冶が出来るようになったのか。それは喜ばしいことだ」
サイの表情なんて分からないけれど、なんだか安心したようなニュアンスに聞こえたな。
「ミルズレンダ全体に冷遇されてたって聞いたけど、アンタはそうじゃなかったのか?」
「ああ、本人がそう思うのも無理は無いだろうな。俺たち狩人ギルドとは直接会うことは無かったし。
俺に限らず、狩人は全体的にあの人には同情的なんだよ。だからこそ職人殺しからの依頼には複数の狩猟団が声を上げてくれたんだからな」
「ふむ?素材を取ってくる狩人連中が同情的でも、マーサに素材を回すのは難しかったのか?」
「難しかったんだよ。他の都市なら別だが、ここは自身も職人の、メーデクェイタ・ゼルポーナス様が治める街だからな。他の街よりも職人が異常に優遇されてるんだよ。
狩人としちゃあよ。自分が取ってきた素材は、なるべく腕の良い職人に使ってもらいてぇって思うもんなんだよ。苦労して狩ってきた素材を駄目にされちゃあやり切れねぇからな。
だから史上最高とすら称えられたあの人に素材が回ってないって状況には、狩人達も俺たちギルド員も歯痒い想いをしてたんだ」
ん~~……。まぁ仕方ないと言えば仕方ない、か。
個人間での対立ならまだしも、領主に、支配者層に逆らうってのは並大抵じゃ出来ないからな。
マーサと心中する覚悟程度では足りなくて、下手すると狩人ギルドや狩猟団まで解体させられる可能性がある。
単純な正義感や同情だけでは、とてもマーサに手は差し伸べられないか。
「じゃあ狩人を紹介してもらおうかな。可能であるなら速度重視で、今日中にマウントハウンド狩って帰ってこれるような狩人がもしいるならお願いしたい。
無理ならギルドのオススメの狩人をお願いしようかな」
「おうそれならオススメがいるぜ。ロビーで待ってて貰えるか?呼んでくっから」
ミルズレンダにしては話が早くて助かるわ。
この街ではなんだかんだと厄介事しか体験してないからな。良い印象が全くない。
「しっかし、ハルはもう充分1人で戦えると思うし、シンいるからな。ふわわとつららはリーネの護衛をお願いしていいかな?」
「みゃぁ」「わんっ」
ちゃんとお返事していい子いい子。戦闘能力はまだないけど、危険察知は実戦レベルだからな。迷宮と違って、外での戦闘ってなにが起こるか分からないから怖い。
「おう待たせたな職人殺し。こいつらは地竜の牙っつう、ミルズレンダ全体で見ても大手に入る狩猟団だぜ。
アサルトドラゴンを数体使役しているから、とにかく移動が早い。
それに人数も多いし、国境壁の外にも何度も行ってる実績もある。
狩猟ギルドから自信を持って紹介できる狩猟団だ」
サイのおっちゃんが連れて来たのは、犬の獣人の男だった。
「紹介に与った『地竜の牙』の団長をやってる『ロウロン』だ。よろしく頼むぜ職人殺しさんよ」
「トーマだけどね。よろしく頼むよロウロン。そんじゃ依頼内容だけど」
「ああ、大丈夫だ。元々俺らはこれから国境壁外に行く予定だったからな。
マウントハウンドさえ狩れりゃあいいんだろ?俺らの狩りに同行させてやるぜ。
日が落ちる前にはミルズレンダに戻ってこれるはずだ」
「え?いやいや、同行するだけでもそっちにとっては負担だろ?ちゃんと報酬払うって」
「いやいや構わねぇって言ってんだろ?ミルズレンダが大分世話になったみてぇだしな。この街の住民として、協力してぇと思ってんだよ。遠慮なんかするもんじゃねぇ」
そんな話、あり得るか?俺たちを待っていたのに、これから狩りに行くから便乗させてやるって?
ん~でも、ギルドからの紹介だし、断るのも良くないか。
「そっか。それならお言葉に甘えさせてもらうよ。準備はもう出来てるのかな?」
「ああ、狩りに行く所だって言ったろ?すぐに出れるぜ。早速行こうや」
正直このリンカーズで、無料で助けてくれたケースってないんだよな。
あまり考えたくないけど、とりあえず皆と意見を共有しておこう。
全く街に良い印象が無いのに、来た回数だけは無駄に多い。
なんだかちょっと街が騒がしい気がするけど、とりあえず無視して商工ギルドへ。
普通の職員に案内してもらっても構わないというのに、問答無用でギルドマスターのカサルテさんに回された。
あ、俺ブラックリスト入った感あるわ。まぁ当たり前か?
流石はギルドマスターと言うべきか、頼んであった物件は既に目星を付けておいてくれて、すぐにでも購入可能だそうだ。
しかしながら、職人連中とのトラブル回避のためということで、あまり便利でない場所が多いようだ。
加えて、職人連中は俺と関わることに及び腰なので、改装工事なども請け負ってくれるかどうかわからないということだ。宜しい。ならば資金で殴ろう。
とりあえず収容可能人数10人ごとにトイレを1つ増設する依頼を出し、報酬は相場の5倍。そしてやりとりは全て商工ギルドを通して行われ、俺とは一切顔を合わせないという条件だ。
これでも駄目だったらミルズレンダは放置だな。
「そういえば街が騒がしい気がするけど、なにかあったの?」
「あ、とても珍しい魔物素材が入ってきたという話ですね、はい。
なんでもカラードラゴンの素材らしくて、ここミルズレンダでも、1年に1度入るかどうかというほどの稀少素材なんですね、はい」
あ、どっかで聞いた話ですね。これ以上踏み込むのはめんどくさそうだ。
商工ギルドを出て、救貧院に金板5枚寄付してから狩人ギルドへ向かう。
「おう待ってたぜ『職人殺し』。何人か依頼を受けても良いって言ってくれてるぜ」
ミルズレンダの狩猟ギルド員は、サイっぽい獣人の渋いおっちゃんだ。
「ソレはありがたいけど職人殺しってなんだよ。1人も殺してねーっつうの」
「くく、トレポール工房のローサルも、月光の手腕の跡取りのアルグリーマも、ゼルポーナス様も金槌を置いたって話じゃねぇか。
充分職人殺しだろうよ」
「そいつらが足を洗ったのはそいつらの意思だろ。人のせいにしてんじゃねぇっつうの。
それに、トレポールの奇跡、生きるミルズレンダのマーサルシリルが鍛冶を再開したんだからお釣りが来るだろ」
「ほう!あの人がもう1度鍛冶が出来るようになったのか。それは喜ばしいことだ」
サイの表情なんて分からないけれど、なんだか安心したようなニュアンスに聞こえたな。
「ミルズレンダ全体に冷遇されてたって聞いたけど、アンタはそうじゃなかったのか?」
「ああ、本人がそう思うのも無理は無いだろうな。俺たち狩人ギルドとは直接会うことは無かったし。
俺に限らず、狩人は全体的にあの人には同情的なんだよ。だからこそ職人殺しからの依頼には複数の狩猟団が声を上げてくれたんだからな」
「ふむ?素材を取ってくる狩人連中が同情的でも、マーサに素材を回すのは難しかったのか?」
「難しかったんだよ。他の都市なら別だが、ここは自身も職人の、メーデクェイタ・ゼルポーナス様が治める街だからな。他の街よりも職人が異常に優遇されてるんだよ。
狩人としちゃあよ。自分が取ってきた素材は、なるべく腕の良い職人に使ってもらいてぇって思うもんなんだよ。苦労して狩ってきた素材を駄目にされちゃあやり切れねぇからな。
だから史上最高とすら称えられたあの人に素材が回ってないって状況には、狩人達も俺たちギルド員も歯痒い想いをしてたんだ」
ん~~……。まぁ仕方ないと言えば仕方ない、か。
個人間での対立ならまだしも、領主に、支配者層に逆らうってのは並大抵じゃ出来ないからな。
マーサと心中する覚悟程度では足りなくて、下手すると狩人ギルドや狩猟団まで解体させられる可能性がある。
単純な正義感や同情だけでは、とてもマーサに手は差し伸べられないか。
「じゃあ狩人を紹介してもらおうかな。可能であるなら速度重視で、今日中にマウントハウンド狩って帰ってこれるような狩人がもしいるならお願いしたい。
無理ならギルドのオススメの狩人をお願いしようかな」
「おうそれならオススメがいるぜ。ロビーで待ってて貰えるか?呼んでくっから」
ミルズレンダにしては話が早くて助かるわ。
この街ではなんだかんだと厄介事しか体験してないからな。良い印象が全くない。
「しっかし、ハルはもう充分1人で戦えると思うし、シンいるからな。ふわわとつららはリーネの護衛をお願いしていいかな?」
「みゃぁ」「わんっ」
ちゃんとお返事していい子いい子。戦闘能力はまだないけど、危険察知は実戦レベルだからな。迷宮と違って、外での戦闘ってなにが起こるか分からないから怖い。
「おう待たせたな職人殺し。こいつらは地竜の牙っつう、ミルズレンダ全体で見ても大手に入る狩猟団だぜ。
アサルトドラゴンを数体使役しているから、とにかく移動が早い。
それに人数も多いし、国境壁の外にも何度も行ってる実績もある。
狩猟ギルドから自信を持って紹介できる狩猟団だ」
サイのおっちゃんが連れて来たのは、犬の獣人の男だった。
「紹介に与った『地竜の牙』の団長をやってる『ロウロン』だ。よろしく頼むぜ職人殺しさんよ」
「トーマだけどね。よろしく頼むよロウロン。そんじゃ依頼内容だけど」
「ああ、大丈夫だ。元々俺らはこれから国境壁外に行く予定だったからな。
マウントハウンドさえ狩れりゃあいいんだろ?俺らの狩りに同行させてやるぜ。
日が落ちる前にはミルズレンダに戻ってこれるはずだ」
「え?いやいや、同行するだけでもそっちにとっては負担だろ?ちゃんと報酬払うって」
「いやいや構わねぇって言ってんだろ?ミルズレンダが大分世話になったみてぇだしな。この街の住民として、協力してぇと思ってんだよ。遠慮なんかするもんじゃねぇ」
そんな話、あり得るか?俺たちを待っていたのに、これから狩りに行くから便乗させてやるって?
ん~でも、ギルドからの紹介だし、断るのも良くないか。
「そっか。それならお言葉に甘えさせてもらうよ。準備はもう出来てるのかな?」
「ああ、狩りに行く所だって言ったろ?すぐに出れるぜ。早速行こうや」
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