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7章 更なる強さを求めて

228 スキルツリーの先

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 目が覚める。うん。いつもより疲労感が凄い。
 起き上がり、手早く身支度を整えベッドで寝ている3人を見る。
 うん、3人かぁ。

 2人でも持て余し気味だったのになぁ。
 つうかリーネのことは誰に報告しにいけばいいんだ?クレーレさんあたり?


 53階層を回りながら考える。
 昨日のグリーンドラゴン戦、色々と運が良かっただけだった。
 始めのブレスで全滅せずに済んだのがまず幸運でしかなかったし、俺が防御魔法を覚えていたとしたら、2発目のブレスを阻止することなく魔力切れに追い込まれていた可能性が高い。
 ディオーヌ様からジャンプを貰っていなければ回避も攻撃も間に合わなかっただろうし、そもそもフラジャイルを使えなかったら、文字通り歯が立たなかった。

 目の前のミスリルゴーレムを両断して考える。
 今の装備品で深階層域を越えて最下層、最深部まで到達できるという話が本当だとしたら、昨日のグリーンドラゴン戦をどのように評価すべきだろう。


 1つ目に考えられるのが、グリーンドラゴンがベイク最深部の魔物よりも強力な存在であった可能性。
 ベテラン冒険者の転職先の1つである狩人の中にもなかなか狩れる人がいないということなので、この線は充分に考えられる。
 この場合、仮にベイクの最深部を攻略しても、この世界で生きていく力としてはまだまだ不十分ということになる。特に俺の場合は将来的に国境壁外を目指しているわけで、迷宮最深部よりも外の世界の方が難易度が高いとするならば、迷宮に潜っているだけでは、到達できる強さに限界があるということになってしまいそうだ。

 2つ目に考えられるのは、迷宮の最深部を攻略する際にも、フラジャイルなどの支援魔法が必須だという可能性。しかしこれは流石に考えにくい。
 53階層までしか到達していない俺たちですら1つ拾えているのだから、最下層まで行く途中で入手できる可能性は低くはないのだろうが、それでもちょっと確実性に欠ける話だ。
 それに、特定の条件が攻略に必須だった場合、その装備で最深部までいけるなんて、あのホムロが言うとは思えない。シルバーライト製武器は、間違いなく最深部まで使っていける品質のはずだ。

 2つ目を踏まえると、3つ目に考えられる可能性が浮かび上がってくる。個人的にもこれが一番可能性が高いと睨んでいるのだが、があるということだ。
 考えてもみれば魔装術は、15SP獲得で解放される、今から思えば初期スキルみたいなものだと思える。魔装術がないとこの世界では戦闘することが難しい、っていうレベルの必須スキルだ。
 現状は装備品の特性によって、魔装術の効果を高めることで攻撃力を増しているわけだが、魔装術の上位スキル、もしくは魔装術を強化するスキルがあっても不思議じゃないというか、無い方が不自然なように思えるのだ。

 そもそも凄まじい防御力に目を奪われがちだが、グリーンドラゴンの攻撃1つ1つがジャンプ無しには回避するのが難しい速度であったり、3人が一気に魔力切れを起こすほどのブレスを吐いてきたりと、今の俺たちの手に余る魔物だったのは間違いない。
 今回はたまたまフラジャイルとジャンプという2つの要素が勝因に結びついただけであって、真正面から戦って勝てる相手じゃなった。
 リンカーズはまだまだ奥が深い。



 などと考えていたら荷物がいっぱいになった。SPは4000くらい増えている。とうとう20000SP到達である。

 って、ん?取得可能スキルにNEWがついているな。いつの間に?



◆◆◆◆◆◆

免疫力強化:中 (必要SP1000)
自身の免疫力を高め、病気に対して耐性を得る。

取得条件
リヴァーブ王国領の外に出ること。

◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆

環境適応:中 (必要SP3000)
地形効果による影響を、かなり受けにくくなる。

取得条件
リヴァーブ王国領の外に出ること。

◆◆◆◆◆◆



 おお?いつの間に!っていつの間に増えたかわかりやすいな!
 必要SPはまぁまぁ重めではあるけど、今の俺なら1日で回収可能な範囲だ。

 こうして考えると、やっぱり魔装術にも何らかの追加スキルがあると思うんだけど、現状で取得条件を満たせていないと考えると、なんらかの特殊な条件が必要になってくる可能性が低くないな。
 やっぱちょっとSP稼ぎ足りない気がする。って、焦りすぎかなぁ……?


 帰宅して朝食にする。
 リーネがこちらを見ては赤くなって目を逸らしているのはウザ可愛い。放置しておこう。


「ハル。新しくスキルが取れるようになってるの気付いてた?」

「うん。昨日寝る前に気付いたよ。結構必要SP多いのが難点だけど、環境適応にはかなり助けられたから気になってるかな」


 そういやハルはヴェルトーガの開放型迷宮で苦労したんだったな。俺はあまりこの2つのスキルの効果って実感できなかったんだけど、ハルが言うには絶大な効果だったらしい。
 んー、取りたいスキルが多くて困るなぁ。



 迷宮に行き、54階層の攻略を開始。

 54階層では人によっては見ただけでトラウマになりそうな『暴食の飛蝗グラトニーローキャスト』が現れる。
 簡単に言ってしまえばイナゴの大群なわけだが、2メートルクラスの飛蝗が大群で襲い掛かってくるのは普通に怖過ぎる。

 脅威なのはその食欲と脚力で、死んでも相手に喰らいつこうと噛み付いてくるので、迷宮に融けるまで油断は禁物。
 弾丸のようなスピードで突撃してくるため、体当たりを食らうだけでもかなりのダメージを受けてしまう。
 とにかく数が多くて、飛行の際の羽音には精神を不安定にさせる効果もあるというオマケつきだ。

 攻略法は単純に範囲殲滅だ。特に魔力への耐性が低く、範囲攻撃魔法を打ち込むとごっそり数を減らしてくれる。


「デトネイション!」


 今まで試していなかったデトネイションだが、一定範囲に熱と衝撃を瞬時に発生させる攻撃魔法で、不思議なことに目の前で爆発が起こっているのに、効果範囲外だと熱さも風圧も感じない。
 半径20~30メートルほどのドーム状の範囲魔法で、グラトニーローキャストは跡形も残らない。
 ハルのウィンドストームと交互に使うことで、魔力回復を早めて使用回数をなるべく増やす。

 
 ドロップアイテムは、まさかの『小麦粉』である。と言ってもリンカーズでは高級品扱いで、1つ150リーフだ。
 グラトニーローキャストの群れは大きいので、単価が少なくとも稼ぎにはさほど影響が出ない。

 探索1回でのSP獲得は720くらい。みんなのSPは多分、ぎりぎり8000に届かないくらいかな?

 
 1セット2回の探索を追え、今回もリーネを伴ってミルズレンダに。

 ちなみにクリリクさんは今日からオードルと一緒に自宅に通ってくれることになった。
 つまり日没までに帰ってこられれば、一目でもオードルに会えるということだ!

 よーしできるだけ早く帰ってきちゃうぞー!
 
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