異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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7章 更なる強さを求めて

215 目標

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 どこまでも続く黄金の海。
 頬を撫でる乾いた風。砂の匂い。

 そして、そんな砂の海を我が物顔で徘徊する魔物たち。


「今まで言ってなかったけどさ。カンパニーが俺が不在でも回るようになったら、国境壁外に街を作ろうと思ってたんだよね。異邦人の受け皿としての場所を作りたいと思ってるんだ」

「国境壁の外に街を……?
 なんで壁の中じゃないのか、説明してくれる?」


 本当はまだ、自分でもちゃんと考えがまとまってないんだけどな。
 壁の外を見てしまったら。自然に零れてしまった。


「今回のカンパニーの件でさ。誰にも見向きもされていないモノに手をつける分には、周囲への影響が少ないんじゃないかって思ったんだよ。
 実はアリスの件があってから、このままリヴァーブ王国に異邦人が増え続けることは危険だ。どこか別の場所に、異邦人が生きていきやすい場所を作っておきたい。って思ってたんだよな」


 リヴァーブ王国から見れば異邦人は異物でしかない。なのに影響力は非常に大きいとか、俺だったら悪夢だと思うだろう。
 しかし、異邦人が害悪だと思われて、異邦人全体が拒絶されてしまうのも、また違う話だと思う。俺だってハルだってこの世界で生きていけるし、リヴァーブ王国民とは共存できている。


「んと、トーマはこのまま異邦人が問題を起こし続けていたら、国中で異邦人排除の流れが起きるかもって、そう思ってるってことー?」

「そういうことだな。ハルや俺みたいに、チートを持たない異邦人だって、これからもやってくると思う。識別を受けさせれば一発で証明出来ることではあるけど、異邦人に対する偏見ってのは生まれると思うんだよな」


 人間ってのは追い詰められると暴発してしまうもんだ。特にチート能力者なんて、ちょっとしたストレスで問題を引き起こしてしまうってのは、アリスたちの一件で証明されてしまった。
 異邦人を集めているらしい勢力もあるからな。今の流れは異邦人としては歓迎できない。


「ハルはまだしも、トーマがチート能力を持ってないっていうのは、なんだか納得出来ない部分ですけどね。つまりお互いが衝突したときに、異邦人が逃げ込める場所を用意しておきたいということですか。
 確かに後がなくなれば、お互い行くところまで行くしかなくなりますからね」

「うん。トーマの言いたいことは分かったんだけど、街作りなんて簡単じゃないでしょ?なにか考えはあるのかな?」

「いやぁ、まだみんなに言うつもりも無かったし、今のところ作りたいっていう感情だけで、具体的なことは何もって感じだよ。
 でもこの世界ってさ。治水やゴミ処理を考えなくていいし、迷宮さえあれば、まぁバリエーションを考えなければって話になるけど、食糧問題も起こらないんだよね。
 環境問題も資源の管理もあまり考えなくて良いのなら、異邦人のイメージしている街作りよりも、ずっと敷居は低いはずなんだよ」


 重機は無いけど魔法もある。建築の歴史はこの世界にもあるし、問題は開拓の人手ってことになる。そこでカンパニーの参加者の成長を期待したいんだよなぁ。


「そんでさ、その街作りが一段落したら、色んなものを見て回りたいと思ってるんだよね。
 この黄金の砂漠の先も、北の大森林の先も、南の山岳地帯の先も、西の大海原も先も、見て回りたいと思ってるんだよな」

「国境壁の、外側の世界………」


 別に地球が嫌いなわけでは無いけれど、科学技術の発達していないこの世界は、きっと雄大で美しい景色が沢山あると思うんだ。
 色々な景色を見て回りたい。
 ゆっくり生きるのは、やりたいことをやってからで十分だ。


「ま、リーンやトルネとずっといちゃいちゃだけして暮らすってのも悪くないと思ってるし、いつかはそんな生活を送ることになると思うんだけどさ。
 体が動くうちは、心が動かされているうちは、この広い世界を満喫したいんだよね」


 砂漠から目を離して皆の方に向き直る。
 いつの間にか皆も俺のほうに顔を向けていた。


「勿論皆にも協力してもらうつもりだけど、これはあくまで俺個人の目標であり夢なんだよね。
 もしもみんなが俺の夢を手伝いたいって思ってくれるなら、それは凄く嬉しいんだけどさ。
 俺の夢とは別に、みんなもそれぞれ自分の夢を見つけてくれたらもっと嬉しい。別々の道を目指すって意味じゃないぜ?全員が自分の意思で目標に迎えるような、そんな関係が理想だと俺は思うってだけの話だ」


 俺みたいなおっさんが夢を語るなんて、大それてるとは思うけど。

 おっさんの恥ずかしい夢語りにも、みんなは真剣に向き合ってくれているようだ。


「僕自身の……。僕だけの目標、か……」


 シンは考え込むようにして、改めて砂漠に、いや壁の外に目を向けている。


「私はトーマと一緒に生きていくのが夢だからなー。もう叶っちゃってるんだよねー」


 ふ、照れるじゃないかリーンセンパイ。


「トーマとリーンと一緒に家庭を築くというのが夢とも言えますけど……。更にその他の目標ですか、ちょっと今すぐには思いつきませんね。
 でも少し、考えてみたいと思います」


 トルネは将来に希望を持ったりすることって、今まであまり無かっただろうからな。この機会にゆっくり考えてみてもいと思う。1つめの夢はもう叶ってるようなもんだろ。


「私は、迷宮がこの世界の全てだと、思ってました……。
 でも、この世界はこんなにも、あまりにも、どこまでも広がっている……。
 迷宮なんて、この世界の一部分でしか、無かった……。
 迷宮に入ることが出来ないなんて、こんなにもちっぽけな悩みだったんだ……!」


 余裕が無いときって、あまり自分の外側に意識を向けられないもんだからな。自分1人で落ち込んで、どんどん悪いことばかり考えて、自分自身で出口を塞いでしまうことがあるんだよな。
 もちろんこの世界の住人にとって迷宮の存在はあまりにも大きいし、国境壁の外側の世界なんて考えたことも無いだろう。
 でも考えなくても、世界は確かに存在していて、広がっているんだ。


「ま、リーネの抱えていた問題がちっぽけだったかどうかは、お前自身にしか分からない。この世界で迷宮に入れないことが、どれほどのことだったかってのは想像に難くないしな。
 でもさ、やっぱり迷宮に入れない程度のこと、ぜんっぜん大した問題じゃなかったろ?」


 リーネは俺のほうを真っ直ぐ見つめて、本当に嬉しそうに笑顔を見せた。


「はい……!はい……!本当に、本当にありがとうございます……!
 私に世界の広さを教えてくれて……、迷宮の小ささを教えてくれて、ありがとうございます……!
 私も見てみたいです……。もっともっと、広い世界を、この目で見てみたいっ……!」


 俺がリーネにしてやれたことなんて大した事じゃないと思うけどな。
 でもこいつが笑ったのって初めて見たような気がする。

 ちゃんと笑えんじゃんリーネ。
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