異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
225 / 580
7章 更なる強さを求めて

196 発想の転換

しおりを挟む
「そうか。魔装術を使えないと使い物にならないって、それに囚われすぎていたみてぇだ……。
 高速回転する硬いモンがあたりゃあ、最低限の殺傷力はあるんだよ。もちろん第一線級の武器にはなれねぇだろうが」


 マーサはなにかアイディアが湧いたみたいだ。っていうか今回の俺の依頼になんも関係ない話なんだけどなぁ。まぁ俺も乗っちゃったししゃーないか。
 それに正直、魔力で自由自在に動かせる回転刃とかめっちゃロマンあるから、俺だって完成品に興味はあるんだよな。

 それに魔物を想定しているから使えないんであって、例えば対人戦を想定するなら、魔装術を使ってなければそこまで強固な防御力って発揮できないはずだからな。変則武器としてめっちゃ有効な気がする。


「それにしてもトーマはよくダーティ素材を使おうなんて思うな?冒険者でダーティ素材に触れたことがある奴なんているのかよ?」


 ホムロさーん、一流の鍛冶職人に言われてますよー?


「俺って始め全く金がなかったら、銅板8枚で買ったダーティウッドの棍棒を握りしめて迷宮に入ってたんだよ」

「へぇ!それが今では魔物武器を使うまでになったってのか!ロマンあるじゃねぇか!」


 そう言われると悪い気はしないけど、実際は金が無かっただけだからな。あんなもん。


「実は魔力を一切通さない素材ってのがあるんだ。『絶縁液』って言うんだけどな。あんまり使い道がねぇ素材で一般にはあまり知られてねぇ。
 高等級の冒険者パーティで、盾役がたまに利用する程度の魔法薬だな。
 絶縁液をかけると、かけられた装備は一切魔力を通さなくなる。
 ただそれだけじゃあ使えねぇ。魔装術も通さなくなっちまうわけだからな」

「買っていく奴は、敵の強力な魔法攻撃とかの対策として買っていくってわけだ」

「そうだ。ブラックメタルとかの、元々の強度が高い素材に使う場合が多いな。
 くくく……、あーはっはっは!まさかダーティ素材がここで活きて来るとはな!恐れ入ったぜトーマ!」

「いくら魔力を通さないったって、肝心のダーティ素材の強度は運用に耐えられるもんなのか?」

「ああ?なんだトーマ、棍棒使ってた癖に知らねぇのかよ。
 ダーティ素材ってのは魔力抵抗が全く無い素材なんだがよ。逆に言やぁ、なんだよ。
 高速で敵にぶつけようが、魔力さえ通さなきゃ全く心配いらねぇんだ」

「はぁ!?そうなの!?っていうかそんな素材どうやって加工……、そうか、魔装術か?」

「正解だ。ダーティ素材ってのは木だろうが石だろうが、魔装術を使えば抵抗なく切れちまうからな。加工自体はめちゃくちゃ簡単なんだよ」

「……いやいや、それじゃダーティ素材に絶縁液使ったら最強の防具になんじゃん?魔装術要らねぇだろそれ」

「理論上はな。当たり前だけどそんな上手い話はねぇ。
 魔力を一切通さなくなるから、装備に付与された魔法効果も全て消失しちまう。
 それに絶縁液の効果はそこまで持ちゃしねぇ。上級でも3日くらいしかもたねぇだろな。
 ……だがよ、逆に言えば3日はもつんだ。戦闘に運用するには問題ない期間じゃねぇか?」


 毎日欠かさずメンテナンスすると仮定するならば、充分使える武器ってことになる……、のか?


「つうかさ、俺のいたベイクって街の迷宮では、3階層のレッサーコボルト相手に剣がボロボロにされたんだけどさ。ダーティ素材で作った武器なら補修再生の必要性も無いんじゃねぇのか?なんで流通してない……?」

「あ~、それは耳が痛ぇな。私もそうだったけど、魔力に弱いダーティ素材を活かすって発想が、全くないんじゃねぇか?
 なんつっても戦闘の基本は魔装術だからよ。ダーティウッドの棍棒なんてもんを扱ってる店があることさえ驚きだ」

「は?その店の店主は、金欠の冒険者のために、どこの店でも1つ2つはダーティ素材装備置いてるって言ってたぞ?」

「はっ!粋な店長じゃねぇか!金欠冒険者のために、わざわざ自分で作って置いてあったんだろうよ。
 それで今トーマが生きて私に会いに来てるってんだから、運命を感じずにはいられねぇな!お礼を言いたい気分だぜ!」


 ……なんだよ。やっぱりホムロもめんどくさいおっさんだったか。やっぱおっさんたる者、めんどくさく生きてこそだよな。
 ったく、ずっと世話になってきたけど、本当に最初っから世話になってたとはね。


「トーマよぉ!お前ってゲート使えんだよな?俺もベイクに連れてってくんねぇか?
 どうせミルズレンダに居ても未来はねぇしな。こんな店畳んで、お前の装備作るほうが楽しそうだ!
 その店の店主にも会ってみてぇしな!毎日ふわわちゃんとつららちゃんと一緒に暮らせるとか夢のようだしよ!どうだトーマ!?」

「ちょちょちょまてまてマーサルさん待って待って!?
 マーサルさん一応シルバーライト級なんだよ!?そんな簡単に出て行けるわけないっしょ!?」

「はっ!シルバーライト級ったって、素材を回してもくれねぇこんな街に居たって仕事なんか出来ねぇだろうが!
 育ててもらった恩はあるがよ。恩はあっても未来がねぇんだよ。ここに居る限りはな。
 別に私が居なくなっても他の職人連中に迷惑かかるわけじゃねぇし、勝手にさせてもらうぜ」

「俺としちゃ専属の一流鍛冶職人とか断る理由全く無いけどさ。アルの反応的に、勝手して良さそうには見えないぞ?面倒事は抱え込みたくないんだが」

「ああ、職人にも等級があってな?一定以上の等級の職人は、ミルズレンダを出るには許可が要るんだよ。
 これでも私は『月光銀シルバーライト級』っつって、最高級扱いの職人なんでな。許可なく移住する事はできねぇんだが、なら許可を取るだけだ。
 実際このままここに居たってなんにも出来ねぇんだからな。
 アルだってウチの現状は見てきただろうが?ミルズレンダに居たら私は死ぬだけだ。
 人としても職人としてもな」

「確かにマーサルさんの店が苦しいのは知ってるけど、それとこれとは話が別っしょ!
 マーサルさんはトレイポール工房の技術を完全に受け継いでる、最高峰の職人なんだよ!?ミルズレンダを出て行く許可なんて下りるわけが無いでしょ!」

「知ったことかよ!!!トレイポール工房の技術を受け継いだ最高峰の職人様とやらに、このミルズレンダはいったい何をしてきた!?どういう扱いをしてきたんだ!?
 お前は見てきただろうが!!全部全部、お前はその目で見てきただろうがよ!!!
 そのお前が、私にミルズレンダでこのまま死ねって言ってんのか!!?どうなんだよアル!!!」

「だから!だから俺がギルドで偉くなって、マーサルさんの待遇を変えてみせるって、約束したじゃん!!
 ちゃんとギルド員になって、ちゃんと真面目に働いて、出世してマーサルさんを助けてみせるって言ったでしょ!!!」

「はっ!他の街ならともかく、ここミルズレンダの商工ギルドで偉くなってもそんなことできねぇさ。たとえギルドマスターになったとしても、職人に逆らえないのがミルズレンダのルールだ。
 ギルドに入って、むしろそういう場面を見ることが多くなってきたんじゃねぇのか?
 それにワリーけどさ。アルが商工ギルドで偉くなるまで、私にずっとこのまま我慢してろって、ふざけんなよ?
 お前も言ったろ?私は職人なんだよ。鍛冶をしなけりゃ生きていけねぇんだよ。私にとって鍛冶ってのは呼吸と一緒だ。
 ミルズレンダに私の居場所が無いように、私にとってもミルズレンダに居続ける理由なんざ一切無いね」


 アルはマーサのことが好きなのかもな。でもそれでマーサの自由を奪うことは出来ないか。

 まぁ一番の元凶はミルズレンダの職人優遇措置なんだろうけど、そんなもん俺にとってはどうでもいい。

 腕の良い職人が仲間になってくれそうだし、ミルズレンダには感謝してもいいくらいだ。


 ありがとう、マーサを冷遇してくれていたクソども。
 お礼に厄介者は引き取って差し上げますよ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...