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7章 更なる強さを求めて
閑話019 呪いの子④ ※リーネ視点
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「ね?リーネ。私が言った通り、とっても不思議な方だったでしょう」
説明会が終わった後、シスターが楽しそうに私に問いかけた。
不思議というかなんというか……。私の理解が及ばない人なのはわかった。
「今まで本当にごめんなさい。トーマさんを見て気付いたんです。貴方をずっと何とかして助けてあげたいと思っていたのに、それなのに私は……。
リーネは迷宮に入れないから仕方ないことなんだと諦めていた部分が、間違いなくありました」
シスターは私に謝ってきたけど、シスターを責める気なんて全く無かった。
だって私自身、私は呪われているから仕方ないんだって、そう思って生きてきたのだから。
「貴方のやる気が失われない限り、貴方の居場所もなくならないと、はっきりと言ってくれました。
貴方は子供の頃から、1人でも目標に向かって努力を重ねられる子でした。
だから私は貴方の門出を心から嬉しく思います。きっとこれからの貴方の人生は、幸多きものになるでしょう」
シスターは優しく私を抱きしめてくれた。
「私がしたことは、トーマさんに会うまで貴方を死なせないことだけでしたね。
不甲斐ないシスターでごめんなさいね。でもリーネはもう大丈夫よ。
迷宮に入れないままで、誰よりも幸せになってみせなさい。いつも貴方を見守っていますから」
私の命を今日まで繋いでくれたこと、心から感謝します。
誰より幸せになるから、もう心配しないでね。
次の日、冒険者ギルドでカンパニーへの参加手続きを行う。
カンパニーへの参加には身分証が必要らしく、身分証を持っていない私は血の気が引いた。
そんな私にトーマさんは、これが賃金ね、と物凄く簡単に銀貨3枚を手渡してきた。
おかげで身分証の発行は出来たけど、銀貨ってこんなに気軽に受け渡ししていいものだったっけ……。
どうでもいいと言った通り、トーマさんは私のことなどお構いなしにどんどん話を進めていく。
カンパニー宿舎の場所を確認した後、トーマさんの自宅に案内される。私は宿舎じゃなくて自宅で寝泊りすることになるらしい。
猫の獣人ジーンさんと、犬の亜人のリンシアさんに紹介される。私の当面の仕事は、この2人の手伝いとのことだった。
あとこれリーネの分、と筒のようなアイテムを沢山置いて、トーマさんたちは迷宮に探索に行ってしまった。
とりあえずお互いに簡単な自己紹介をして賃金の説明を受ける。
私も冒険者達と同じカンパニー参加費用を払わなければいけないのに、迷宮に入れないから給料のやりくりはとても重要だ。
身分証の発行で銀貨1枚を既に支払ってしまって、手元には銀貨2枚しか残っていないのだ。
「トーマさんに頼まれたのは、読み書き、計算、料理を教えて欲しいってことだね。リーネさんの始めの仕事はこの3つを覚えることだよ。
始めは10日ごとに銀貨3枚。3つのうち1つでも覚えたら10日ごとに銀板3枚。3つ全部覚えたら10日ごとに金貨3枚が支払われるから頑張ってね。
カンパニー参加費用は始めは銅板1枚。仕事を1つ覚えたら銀貨1枚。3つ覚えたら銀板1枚を払ってもらう事になるから」
……は?
10日ごとに銀貨3枚……?
1日銅板1枚払っても、10日ごとに銀貨2枚増えていく計算だ。しかも宿代も食費もかからない。
「い、いくらなんでも貰いすぎです……!私まだなにも出来ないのに……」
貰いすぎだと抗議する私を見て、リンシアさんはふっと笑顔を見せてくれた。
「貰いすぎだと思うわよねぇ……。実は私達もトーマさんに同じこと言ったのよ?そしたらトーマさんはね、この賃金こそが適正だって、この金額が正当な報酬だって言ってたのよ。意味が分かるかしら?
トーマさんは、私達の賃金が多すぎるんじゃなくて、今のベイクの一般的な報酬のほうが安すぎるって言ってるの。
トーマさんって戦い方も知らずに、冒険者になった初日に銀貨6枚以上稼いできた人なんだって。
そんな人から見たら、確かにリヴァーブ王国の賃金は安すぎるように感じるのかもしれないわよねぇ」
「それにねリーネさん。驚くのはまだ早いんだよ。君にはこれを全て使用してもらう必要があるんだからね。
拒否は許されないよ?私達も強制だったんだから」
そういってジーンさんは、さっきトーマさんから渡された筒状のアイテムを私に手渡してくる。
「え、強制って……。これ一体、なんなんですか……!?」
「なにを隠そう、生活魔法のスクロールだよ。全部で8つあるから今すぐ全部覚えてね?」
……………………生活魔法?
生活魔法の……スクロール!?
「待って待って待ってくださいー!?受け取れません!受け取れませんよそんな高価な物っ!」
「ふっふっふー。悪いけどリーネちゃん諦めてねー。私達だって拒否は許されなかったんだからっ」
結局なにを言っても聞き入れてもらえず、私は突然大量の生活魔法を覚えさせられてしまった……。
魔法の習得を強制されるってなんなの……?
なんで辞退が許されないの……?
お金を貰って、食事も宿も用意してもらって、教育や技術を教えてもらえる。
うん。普通逆じゃない?
普通お金を払って教えを乞うものでしょ?
なんで私がお金を貰って教えも受けてるのか、全然意味が分からない……。
「そんじゃ、暗視は俺とリーネで覚えるか。攻撃魔法は適当に分けよう」
っはぁ!?
しししし、支援魔法~~~~~っ!!?
どれだけ辞退を申し入れても、絶対に受け入れてくれない……。
それどころか理論立てて冷静に私を諭してくるんだけど……。
この人本当に私の事情なんてどうでもいいんだ……。
生活魔法でさえ一体いくらなのか見当も付かないのに、まさか迷宮に入ることも出来ない私が、支援魔法を覚えさせられる日が来るなんて……。
更に今度は戦闘技術の指導まで受けさせて貰えた。迷宮に入れないとはいえ、技術を磨いて損はない。例えばカンパニー内で、戦闘技術を指導する仕事だって出来るかもしれないだろ、と言われた。
私がどれだけ感情的になっても、全く取り合わずにトーマさんは自分の都合だけを押し付けてくる。
雇われている私に拒否権なんてない。
あれ?カンパニーに参加する以前も、周囲は私の気持ちなんて完全に無視して、呪いという事情を私に押し付けてきたんだよね?
彼らとトーマさん、やってる事はもしかして一緒……?
今までずっと、どれだけ手を伸ばしても、なにも手に入れることができなかった。
どんなにもがいても、なにも変えることは出来なかったのに。
最近はどんなに辞退しても、無理矢理何もかもを与えられて戸惑ってしまう。
なんなのよこのカンパニー……!?
説明会が終わった後、シスターが楽しそうに私に問いかけた。
不思議というかなんというか……。私の理解が及ばない人なのはわかった。
「今まで本当にごめんなさい。トーマさんを見て気付いたんです。貴方をずっと何とかして助けてあげたいと思っていたのに、それなのに私は……。
リーネは迷宮に入れないから仕方ないことなんだと諦めていた部分が、間違いなくありました」
シスターは私に謝ってきたけど、シスターを責める気なんて全く無かった。
だって私自身、私は呪われているから仕方ないんだって、そう思って生きてきたのだから。
「貴方のやる気が失われない限り、貴方の居場所もなくならないと、はっきりと言ってくれました。
貴方は子供の頃から、1人でも目標に向かって努力を重ねられる子でした。
だから私は貴方の門出を心から嬉しく思います。きっとこれからの貴方の人生は、幸多きものになるでしょう」
シスターは優しく私を抱きしめてくれた。
「私がしたことは、トーマさんに会うまで貴方を死なせないことだけでしたね。
不甲斐ないシスターでごめんなさいね。でもリーネはもう大丈夫よ。
迷宮に入れないままで、誰よりも幸せになってみせなさい。いつも貴方を見守っていますから」
私の命を今日まで繋いでくれたこと、心から感謝します。
誰より幸せになるから、もう心配しないでね。
次の日、冒険者ギルドでカンパニーへの参加手続きを行う。
カンパニーへの参加には身分証が必要らしく、身分証を持っていない私は血の気が引いた。
そんな私にトーマさんは、これが賃金ね、と物凄く簡単に銀貨3枚を手渡してきた。
おかげで身分証の発行は出来たけど、銀貨ってこんなに気軽に受け渡ししていいものだったっけ……。
どうでもいいと言った通り、トーマさんは私のことなどお構いなしにどんどん話を進めていく。
カンパニー宿舎の場所を確認した後、トーマさんの自宅に案内される。私は宿舎じゃなくて自宅で寝泊りすることになるらしい。
猫の獣人ジーンさんと、犬の亜人のリンシアさんに紹介される。私の当面の仕事は、この2人の手伝いとのことだった。
あとこれリーネの分、と筒のようなアイテムを沢山置いて、トーマさんたちは迷宮に探索に行ってしまった。
とりあえずお互いに簡単な自己紹介をして賃金の説明を受ける。
私も冒険者達と同じカンパニー参加費用を払わなければいけないのに、迷宮に入れないから給料のやりくりはとても重要だ。
身分証の発行で銀貨1枚を既に支払ってしまって、手元には銀貨2枚しか残っていないのだ。
「トーマさんに頼まれたのは、読み書き、計算、料理を教えて欲しいってことだね。リーネさんの始めの仕事はこの3つを覚えることだよ。
始めは10日ごとに銀貨3枚。3つのうち1つでも覚えたら10日ごとに銀板3枚。3つ全部覚えたら10日ごとに金貨3枚が支払われるから頑張ってね。
カンパニー参加費用は始めは銅板1枚。仕事を1つ覚えたら銀貨1枚。3つ覚えたら銀板1枚を払ってもらう事になるから」
……は?
10日ごとに銀貨3枚……?
1日銅板1枚払っても、10日ごとに銀貨2枚増えていく計算だ。しかも宿代も食費もかからない。
「い、いくらなんでも貰いすぎです……!私まだなにも出来ないのに……」
貰いすぎだと抗議する私を見て、リンシアさんはふっと笑顔を見せてくれた。
「貰いすぎだと思うわよねぇ……。実は私達もトーマさんに同じこと言ったのよ?そしたらトーマさんはね、この賃金こそが適正だって、この金額が正当な報酬だって言ってたのよ。意味が分かるかしら?
トーマさんは、私達の賃金が多すぎるんじゃなくて、今のベイクの一般的な報酬のほうが安すぎるって言ってるの。
トーマさんって戦い方も知らずに、冒険者になった初日に銀貨6枚以上稼いできた人なんだって。
そんな人から見たら、確かにリヴァーブ王国の賃金は安すぎるように感じるのかもしれないわよねぇ」
「それにねリーネさん。驚くのはまだ早いんだよ。君にはこれを全て使用してもらう必要があるんだからね。
拒否は許されないよ?私達も強制だったんだから」
そういってジーンさんは、さっきトーマさんから渡された筒状のアイテムを私に手渡してくる。
「え、強制って……。これ一体、なんなんですか……!?」
「なにを隠そう、生活魔法のスクロールだよ。全部で8つあるから今すぐ全部覚えてね?」
……………………生活魔法?
生活魔法の……スクロール!?
「待って待って待ってくださいー!?受け取れません!受け取れませんよそんな高価な物っ!」
「ふっふっふー。悪いけどリーネちゃん諦めてねー。私達だって拒否は許されなかったんだからっ」
結局なにを言っても聞き入れてもらえず、私は突然大量の生活魔法を覚えさせられてしまった……。
魔法の習得を強制されるってなんなの……?
なんで辞退が許されないの……?
お金を貰って、食事も宿も用意してもらって、教育や技術を教えてもらえる。
うん。普通逆じゃない?
普通お金を払って教えを乞うものでしょ?
なんで私がお金を貰って教えも受けてるのか、全然意味が分からない……。
「そんじゃ、暗視は俺とリーネで覚えるか。攻撃魔法は適当に分けよう」
っはぁ!?
しししし、支援魔法~~~~~っ!!?
どれだけ辞退を申し入れても、絶対に受け入れてくれない……。
それどころか理論立てて冷静に私を諭してくるんだけど……。
この人本当に私の事情なんてどうでもいいんだ……。
生活魔法でさえ一体いくらなのか見当も付かないのに、まさか迷宮に入ることも出来ない私が、支援魔法を覚えさせられる日が来るなんて……。
更に今度は戦闘技術の指導まで受けさせて貰えた。迷宮に入れないとはいえ、技術を磨いて損はない。例えばカンパニー内で、戦闘技術を指導する仕事だって出来るかもしれないだろ、と言われた。
私がどれだけ感情的になっても、全く取り合わずにトーマさんは自分の都合だけを押し付けてくる。
雇われている私に拒否権なんてない。
あれ?カンパニーに参加する以前も、周囲は私の気持ちなんて完全に無視して、呪いという事情を私に押し付けてきたんだよね?
彼らとトーマさん、やってる事はもしかして一緒……?
今までずっと、どれだけ手を伸ばしても、なにも手に入れることができなかった。
どんなにもがいても、なにも変えることは出来なかったのに。
最近はどんなに辞退しても、無理矢理何もかもを与えられて戸惑ってしまう。
なんなのよこのカンパニー……!?
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