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7章 更なる強さを求めて

180 賃金

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 救貧院を出て自宅に戻る。
 子供達全員に洗浄をかけて、身内みんなで2階へ移動。

 ジーンさんとリンシアさんに余っている生活魔法のスクロールを手渡し、厨房とトイレの増設の許可を取る。そして受け入れ人数が50人を超えたことを報告し、食事の量などを確認する。

「そういえば2人の事はうちで雇ってる扱いになるんだけど、この世界の賃金の払い方ってどうなってるんだ?」

「そうだな……。日雇いならば仕事が終った後にその場で、期間が決まっている仕事も、仕事が完了した時点での支払いが基本だね。
 長期雇用の場合は、5日間か10日間ごとに賃金が払われる場合が多いかな?」

「なるほどね。それじゃ2人は明日今までの分として金貨3枚ずつ、カンパニー用口座から引き出して賃金として受け取ってね。今後は10日ごと、下一桁が0の日付になる度に、金貨3枚ずつ賃金として引き落としてね。
 これは今後、迷宮に入らないカンパニー参加者への賃金として採用するから、間違いなく受け取るようにして欲しい」

「……はぁ。有無を言わせてくれないみたいだね。その金額は、一般的な年収の5倍以上の賃金だよ?それを私と妻の2人分なんて払い過ぎだと思うけどね」

「さっきも言ったけど、受け入れ人数が一気に増えるから2人も大変になると思う。むしろ正当な報酬だと思ってるよ。
 それと、間違いなく1人は迷宮に入れないから、ジーンさんとリンシアさんの補助をしてもらおうと思ってるんだ。そいつは今のところ何も出来ることがないみたいだから、2人の手伝いをさせながら、とりあえず料理と読み書き、計算を教えて欲しい。
 なにも出来ない間は見習い扱いで10日で銀貨3枚。さっき言ったうちの1つでも出来るようになったら銀板3枚。今の2人と同じ程度に働けるようになったら金貨3枚払ってやってね。カンパニー参加費は賃金に応じて冒険者と同じく、1日銅板1枚からスタートで」

「あら、私達にも補助人員が回してもらえるのはありがたいわ。その人にも生活魔法は覚えさせてもらえるの?」

「うん。迷宮に入らないからスキルは覚えられなかったとしても、魔法はスクロールさえあれば覚えれるわけだからね。スクロールはこっちで用意するから、改めて買ったりする必要はないからね。
 補助予定のその人は、この家に住んでもらったほうが都合がいいかな?」

「そうねぇ。部屋も余ってるし、朝晩の調理補助をお願いしたいし、住み込みのほうが便利ではあるわね」

「じゃあ住み込みの方向でいこう。カンパニー参加費の支払いがあるから、初めの銀貨3枚は初日に払ってあげてね、……って今回は俺から渡しておくか。
 着替えとか生活雑貨は賃金の中から融通してもらうように。備品だったり必要経費だと思うものにはカンパニー資金から捻出していいから。わざわざ俺に許可を取る必要もないからね」


 今はまだしも、何かある度に確認なんかされたらめんどくさくってたまらない。それに元商人の2人なら、数字にはかなり強いはずだ。


「……トーマさんは、私達がカンパニーの資金を着服するとか考えないのかい?」

「ん~、そこはまぁ、年下だけどお義父さんお義母さんなわけだし、信用してるってのもあるよ。
 ただ本音を言えば、どうでもいいんだよね。今俺たちって50階層に到達してるんだけどさ、5人で分けても、1日の稼ぎは白金貨を超えて来るんだよ。普通5人で潜るような場所じゃないんだろうね。
 将来的にはカンパニー用口座の方が預金額上回るのかもしれないけど、俺の個人資産以下のカンパニー口座なんてさほど興味もないよ。なくなっても別に俺は困らないからね。他の参加者は困るだろうけど」

「なるほど……。カンパニー用の口座に何かあったら、他の参加者の怒りを買うのは結局私達になるわけね。信用してるっていうのも嘘ではないんでしょうけれど、なかなか抜け目ないわね、トーマさんは」

「めんどくさいから気兼ねなく丸投げしてるだけだよ。
 それと、カンパニー参加者から集めたお金の半額は、給料日と同じ日に救貧院に振り込んで欲しい。俺たちと救貧院は協力関係を築いていかないといけないからね。とりあえずは手っ取り早く、資金援助って形の協力からしていこう。
 あ、このことは他の参加者には言わなくていいからね。めんどくさいことになりそうだから」

「ねぇねぇトーマ。トーマが一番めんどくさい性格だと私は思うんだー」

「うっさい。おっさんてのはめんどくさい生き物なんだよ」


 めんどくさく生きてこそおっさんだ。だからと言って必要以上に何かを背負うつもりもない。あくまで出来る範囲で。あくまで自立支援の範囲内で、だ。

 ジーンさん、リンシアさんの2人に生活魔法を覚えてもらってこの日は就寝。


「うん。明日から新しい同居人が増えるのよね。それで、もしシンが嫌じゃなかったらなんだけど……」


 この機会にハルはシンの部屋に引っ越すことになった。
 2人がどんなお付き合いをしているのかは知らないけど、ふわわとつららを連れて行っているあたり、まだ健全なお付き合いをしているんだろうな。ハルが使ってたベッドも一緒に引っ越したわけだし。


「さてトーマ。2人しかいないうちにいっぱい相手してもらうからねっ」

「2人しかいないうちってなんだよ。これ以上増やす気なんてねーから」

「やっぱり分かっていませんね。トーマにその気がなくても、もう無理だと思いますよ」

「なんでだよ。なんでそこで俺の意思が無視されんだっての。ま、2人の相手をするのは大歓迎だけどね」


 まったく、こんな可愛い奥さんが2人もいるのに、何の不満があるんだって話だよ。

 ハーレムには憧れるけど、普通に俺の手には余るだろう。
 2人相手でも大変なくらいだし。
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