異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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6章 波乱のヴェルトーガ

152 守りたいもの

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「ごめん……!とりあえず一旦寝させて……!」


 アリスの能力を聞いて、なんかもう全てを投げ出したい気分で仕方ない。アリスを引き取ったディオーヌ様の心労も半端じゃないだろうな。

 一旦全部忘れて寝よう。頭がぐちゃぐちゃで、眠いのに寝れそうもない。全力で魔力を使いまくって、魔力切れ起こして寝てやらぁ!俺の眠気舐めんな!



 ……ん、無事魔力切れで意識が落ちたみたいだけど、魔力切れでの昏倒はそのまま睡眠には繋がらないから、わりと短時間で起きちゃうんだよな。しかも具合は悪くなるし。睡眠導入剤としては全然使えない。


「トーマ。起きた……?」


 リーンとトルネが一緒に寝ていた。シンとハルは居ないみたいだ。
 リーンとトルネの柔らかさと香りに包まれている。あ、やべ。だめだこりゃ。ちょっと我慢できそうにない。


「悪い。2人とも。今すぐ一緒に向こうの部屋に付き合ってくれる?ちょっと今むしゃくしゃしててさ。何も考えたくないんだ。
 こんな気持ちで2人に触れるのは凄く失礼だと思うんだけど。ちょっと我慢できそうにないんだ。今すぐ2人を抱きたくて仕方ないんだよ」


 2人を力いっぱい抱きしめる。2人の香りが感じられて、心は落ち着くのに、体はどんどん興奮していく。まるで心と体が別々に分かれてしまったみたいだ。
 今はただ、2人に甘えたくて仕方がない。

「ふふ。どうしたのトーマ?今日はあまえんぼさんだね……」

「いっぱい、甘えてください。何があったのかは、あとでみんなで聞いてあげます。
 今は何も考えずに、好きなだけ私達に甘えてください……」


 2人の甘い声に脳が痺れる。なのに心はどんどん落ち着いていく。2人が欲しくてたまらない。2人が愛おしくてたまらない。

 2人を抱きしめたまま部屋を移動し、衝動の赴くままに、ただただ2人を愛し続けた。2人は何も聞かずに、ただ俺を受け入れてくれた。
 まるで獣になったかのように、本能の赴くままに。なのに心はどんどん穏やかで、肌を重ねれば重ねるほど、2人のことが愛しくて愛しくて。自分の中にある感情をぶつけるように、時間も忘れて2人を抱いた。2人は決して自分からは動かずに、ただ黙って俺を愛してくれた。



「うー……。流石にちょっと、つかれたかなー……。
 トーマ?もう大丈夫?私、トーマのこと、受け止めて上げられたかな?」

「うん。ありがとうリーン。俺のリーン。大好きだよ」

「ふふ……、トーマは普段からもっと甘えていいんですよ。
 せっかく私達は2人いるんです。2人でしっかりトーマを支えてみせますよ」

「うん。ありがとうトルネ。俺のトルネ。大好きだよ」


 とても穏やかな気分だ。事象復元のことを忘れたわけでも、異邦人のことも忘れた訳でもない。それでも2人の温もりが、俺を落ち着かせてくれる。
 この2人を守るために力が足りないなら、もっと強くなるだけだ。チートだろうが呪いだろうが、この2人を守るためなら超えてみせる。
 心が落ち着く理由が分かる。これは覚悟だ。2人を絶対に失えないという覚悟。俺の心はこの2人だ。この2人を守るために、これからの人生を生きていこう。
 
 腕に感じる確かな体温を頼りに、ようやく俺は眠ることができた。


「全く。帰ってくるなりお盛んですこと!私は私でトーマに話があったのに!」

「そうだよ!ハルと2人で寝ることになった僕の気持ち考えてよ!」


 翌朝ハルに怒られた。なんで怒られてるのかいまいち分からないが、とりあえず冷静にはなれた。シンとハルの距離感がちょっと変わった?ってかシン、その言い方だとハルに怒られると思う。


「いやマジでごめん。あとで話すけど、ちょっと嫌ぁな話があってな。冷静じゃなかったんだよ。まずはハルの話から聞かせてくれる?」

「うん。私は、トーマに宣戦布告をします!シンを賭けて勝負しなさい!」

「………………………………は?」


 いやそんなドヤ顔で腰に片手を当てながら、ビシィ!って感じで指差されても困る。


「私ね、シンが好きになっちゃった。でも今のシンの中では、トーマが一番大きな存在なの。
 だから宣戦布告!シンの一番を、トーマから私にして見せるからね。覚悟しなさい!」

「昨日からこの調子なんだよ!この状態でハルと2人で一緒の部屋に寝た僕の気持ち考えてよ!ふわわとつららが居なかったら一睡も出来なかったよ、もう!」

「あ、あ~ちょっと待って?ちょっと待ってね?事情は飲み込めたけど、ちょっと俺に落ち着く時間をちょうだい?」


 落ち着いたばかりの心が一気に乱されたじゃねぇかくっそ!ま、全然嫌な気分じゃないけどな。


「とりあえず、2人の間ではどういう話になってんの?ハルがシンを好きでも構わないし、シンがいいなら受け入れればいいと思うんだけど?なんで俺が巻き込まれてるのか、コレガワカラナイ」

「うん。私がシンに好きって言っただけね。シンの返事はまだ聞いてないわよ?」

「いや、僕だってハルのことが嫌いなわけじゃないよ!?でもあんまりにも突然すぎて、頭が追いついてないっていうか、どうしたらいいのかわかんないんだよ!トーマ!僕どうしたらいいのかな!?」

「あーシン!そこでトーマを頼らない!私に甘えなさい私に!どーんと受け止めてあげるわ!」

「ハルのことをハルに相談してどうするんだよ!あーもう、異邦人ってこんな人たちばっかりなの!?」


 ふふ、こんな子供らしいシン、珍しいな。
 しかしハルがこんなグイグイ来るキャラになるとは思わなかった。こっちの生活に慣れて、ようやく素が出てきたってことなんだろうか。ちょっと楽しくなってきたな。


「シン。なにも今すぐ答えを出す必要は無いんだよ。俺だって、リーンとトルネを受け入れるまで時間かかったろ?
 ハルとは同じパーティなんだから、じっくり付き合って、ゆっくり答えを出せばいいさ」

「そうだった……。トーマもなんだかんだとリーンのこと受け入れるまで、時間かかったよね。そうか。すぐに答えを出すことはないのか」

「あーもう!勢いで押し切りたかったのに、冷静にさせないでよー!」

「ハルも落ち着け。お前そんなキャラだったのかよ。キャラ崩壊してない?
 これから知っていけばいいけど、シンも結構苦労続きでさ。あんま恋愛方向にキャパないんだよ多分。俺もハルのこと応援するから、焦らせないでやってくんない?」

「うん。その冷静な態度が、シンに憧れを抱かせるのかしら……?
 勿論シンに迷惑や負担をかけるつもりは無いわ。引くつもりもないけどね。応援するって言った以上、ちゃんと協力してよ?トーマ」


 ああもう、やっと帰ってきたって感じがするよ。みんなといるとやっぱり楽しい。

 俺が強くなる理由。こいつらと生きて行きたい。こいつらを守り抜きたい。
 ただそれだけで充分だな。
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