異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
171 / 580
6章 波乱のヴェルトーガ

149 アリスとの会話

しおりを挟む
「これより王国で共有すべき情報の検討を行います。
 まずは今回の事件の顛末についてまとめますね。トーマとアリスは、気になる点があったら指摘して下さい」

「了解です」「わかりました」


 現在はタイデリア家のお屋敷の一室。ディオーヌ様を始め、ヴェルトーガの重鎮が勢揃いしているらしいが、紹介は省かれたので、ベンベムさんやガガンザさんなどの、既に面識のある人以外は全く分からない。

 現在はベンベムさん、スカーさんの両名が、今回の連続行方不明事件の顛末について、出席者全員に情報を共有しているところで、今のところ暇で仕方ない。


「トーマさん、でしたよね?貴方も異邦人と言ってましたよね。少しお話してもいいですか?」


 どうやらアリスも暇だったようで、隣りにいる俺に話しかけてきた。


 ちなみに、リヴァーブ王国の外からやってくる人間のことを指して『異邦人』と呼ぶことが、暫定的にではあるが決定した。なんせリンカーズには、リヴァーブ王国しか存在してないからな。異邦人って概念が今までなかった。

 俺とアリスは同じ異邦人ということで、一緒くたにまとめられている状態だ。


「トーマでいいよ。敬語も要らない。俺もアリスって呼ばせてもらうし。俺も暇してたし、雑談歓迎だ」


 っとここで、そういえばアリスにはちゃんと自己紹介してなかったことを思い出した。


「改めて名乗っておこうか。俺はトーマ。35歳。アリスと同じく異邦人だ。
 俺が来たのは100日くらい前だね。ヴェルトーガじゃなく、ベイクって迷宮都市で活動してた。今は冒険者として、迷宮に入って生計を立てている。
 縁あってディオーヌ様と知り合って、今回の事件解決に協力をした。こんなところかな」

「ええ、それじゃあ私もトーマと呼ばせてもらうわ。
 まずは、みんなを止めてくれてありがとう。あのままだったら、この街を壊滅させるまで暴走していたかもしれない……」


 スカーさんレベルの人が何人も居そうだから、一方的に蹂躙されるとも思えないけど、チート能力の認識を誤っていたら、結構ズルズルと長引いたかもしれないな。
 死んだ異邦人6名と、そいつらに弄ばれた被害者には申し訳ないが、最小限の被害で済んだと言えるだろう。


「それに、多少自由は制限されるだろうけど、ディオーヌ様に保護して貰えたのも助かったわ。多分貴方がいなければ、私も殺されて終わりだったと思う」

「いや、それはアリス自身の行動の結果だよ。
 あいつらのように力に流されず、自分に出来ることを精一杯やった結果が、被害者の女性に認められたって事だろ。あいつらを止められなかったは仕方ない。特に速水の野郎に逆らう方法はなかっただろうしな」


 一応会議の邪魔にならないように、俺とアリスの会話は他の人の耳に届く前に消している。魔力の動き自体は気付かれているだろうけど、会話が聞かれなきゃ問題ないだろ。


「私たちは、この世界に送られてくる前に初めて顔を合わせたんだけど、みんな漫画とかアニメが大好きでね?異世界転移って聞いて、どんな能力でも1つ貰えるって聞いて、凄く嬉しかったの。
 私たちは力を合わせて、これから向かう世界の人たちを助けて回ろうって、すっごく盛り上がって、意気投合したんだよ?
 ……それがどうしてこうなっちゃったんだろう。何が間違っていたのかしら?私達とトーマで、一体なにが違っていたのか、教えてくれないかしら……?」


 アリスから見れば、俺の立場こそが自分が立ちたかった場所なのかもしれないな。
 それが気付いたら、自分が倒されるべき悪役に回っていたとなれば、恨み言の1つも言いたくなるのかもしれない。


「さあね。もしかしたら、チートを貰って仲間が居たら、俺も同じ道を辿ったかもしれない。
 俺のときは頼れる仲間なんて居なかったし、チート能力も貰えなかったから、あいつらみたいに振舞いたくても振舞えなかっただけなんじゃねぇかな。7人で来たって事は、全員で銀貨70枚もあったろ?なんで犯罪になんか手を染めたのか、こっちこそ意味わからねぇよ」


 ヴェルトーガに入るのに銀貨21枚。身分証と冒険者登録と探索許可証の発行に銀貨21枚。宿泊費に21枚取られたとしても、銀貨7枚も余剰金があったはずだ。
 こいつらのチートがあれば、ヴェルトーガの1階層で死ぬ心配もない。むしろいくらでも簡単に稼げたはずなのにな。


「仕方ないじゃない!冒険者になるのにお金が要るなんて知らなかった!迷宮に入るのにお金が要るなんて知らなかったの!私達だって真っ当に稼ごうとしたわ!でも出来なかった!出来なかったのよ!
 なんでよ!冒険者になるのって普通無料でしょ!?迷宮に入るのにお金が要るってなんでなのよ!?街への出入りにもお金がかかるから、外で魔物を探すことも出来なかった!!
 私たちは一体、どうすれば良かったっていうのよっ!?」


 いやいやアリスさん。今が会議中だってこと忘れてません?
 勿論叫び声も全部消音してるけど、そんな叫んでたら、声が聞こえなくても色々バレちゃうって。


「むしろお前がなに言ってんのかわからないな。日本だって、ありとあらゆるサービスは基本的に有料だろうよ?なんで金に困ったことを誰かに相談しなかったんだ?この世界には救貧院っつう救済措置だってある。
 神様に会って、チートを貰って、異世界に来て、そりゃあ浮かれるのも分かるよ。でもここは異世界であって、ゲームやアニメの中じゃないんだ。この世界の人たち1人1人にそれぞれ生活があって、社会インフラには整備費が必要だし、街の入り口や迷宮を警備する兵士に、給料だって払わなきゃいけないんだよ」


 ポーターで雇った子供達のことを思い出す。自分の都合の良いことしか考えない。要は、幼稚で甘えた考え方ってことだ。


「むしろこの世界は日本よりずっと優しいよ。どうすれば良かったって?恥を忍んで、この世界の誰かに相談すれば良かったんだよ。困ってる人がいれば、この世界は最低限の生活はちゃんと保障してくれる。
 結局お前らは、自分は神に選ばれた特別な人間だっていうプライドが邪魔して、この世界に生きる人たちを見下していたんだよ。困ったら、しかるべき相手に相談する。そんなの日本だって同じことだろ」


 別に説教する気はなかったんだけど、まぁ巻き込まれた側として、この程度は言わせて貰ってもバチは当たらんでしょ。アリスは机に突っ伏して、泣き出してしまったが。


 そのアリスの姿を見て、ディオーヌ様が俺を睨んできた。

 あっはっは。バレテーラ。


 俺は会議の内容ちゃんと聞いてますから勘弁してください。音魔法で音情報を拾って、把握してただけなんですけどね。


 音魔法先生には、いつも本当にお世話になってばかりです。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...