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6章 波乱のヴェルトーガ
137 対策会議③ 能力者をどう扱うか
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「反則級の能力に目を奪われがちですが、彼らはまだこの国に来て、数日しか経っておりません。
そして犯罪を犯してしまった今、常識的な知識を手に入れる機会は、更に減ってしまったと思います。
……俺がこの世界に来た時は、免疫力強化も環境適応も覚えてなかったんです。
恐らく彼らも、与えられた能力以外のスキルは、まだ持ち合わせていないはずです」
「免疫力強化と、環境適応を持っていないことなど、有り得るのか……?
生まれた直後の赤子でさえ、その2つを持って生まれてくるのだぞ?」
「……証明は簡単ですよ。ハルはまだその2つを覚えてませんから。
このあとスキル神殿に行って、覚えてくる予定ですけど」
ハルを出汁に使うのは申し訳ないけど、正に動かぬ証拠だ。
「……トーマさんを疑うわけではありませんが、本日行うのであれば立ち合せて頂いても?」
「構いませんよ。スキル取得後の識別の書はお見せしなくて良いですよね」
「それこそ構いません。本当にスキルを取得していないかを知りたいのですから」
「あっと、悪いハル。勝手に決めちまった」
「うん、大丈夫。見られて困るものじゃないし」
ついでに、スキル神殿の利用料を負担してくれたりしないかなぁ、なんて。
「彼らはリヴァーブ王国、そしてヴェルトーガに来て、日が浅いはずです。
潜伏場所は、単純に人気が無い場所か、人が寄り付かない場所……。
例えば人が住んでいない空き家とか、魔物が出る可能性のある水路とか。
少なくとも、ヴェルトーガ内に潜伏しているのは間違いないと思います」
「転移スキルがあるのに、なぜヴェルトーガ内に居ると言い切れる?」
「単純に、彼らがリヴァーブ王国の地理を知らないだろうということ。
そしてこれは恐らくとしか言えませんが、転移スキルは自分が一度訪れた場所にしか転移できないはずだから、ですね。
実はハルは、リヴァーブ王国に来てまだ3日?4日?くらいしか経っていません。
彼らが来たタイミングは、ハルと同じだったと俺は考えています。
そして、これは俺もだったんですが、街の外は魔物が徘徊して危険だという忠告は、貰ってるんですよね。
魔物と戦ったことの無い彼らが、魔物の徘徊する外に拠点を置くとは思えないんです」
「筋が通っている、のか……?そもそもの前提が常識外の能力だからな。
俺の頭では判断が付かない」
「俺もハルもそうだったんですけど、こちらに来たばかりの頃って、相当上手く立ち回らないと、すぐに所持金が無くなるんですよね。
俺の場合は多分に幸運だったと思ってますが。
何も考えずに散在すると、お金が足りずに、迷宮に入ることすら出来なくなります。
実際俺もギリギリでしたし、ハルは多少事情が違いますが、お金がなくなってます。
彼らも恐らくお金が尽きて、迷宮許可証すら発行できなかったんじゃないですかね。
そこで、自分たちの持つ能力を悪用してしまったのかな、と」
実際、マニュアル無しだったら、俺も詰んでた可能性は低くない。
仲間が多くても、基本情報が足りなければ、正しく行動できないのは仕方ない部分はある。
でも、どんな境遇であれ、一度悪事に手を染めてしまった以上は、裁かれなければならないのだ。
この世界は異世界であっても、間違いなく現実なのだから。
「ベンベムさん。食料と雑貨を売っている店をあたって、手ぶらなのに大量の商品を購入していった人間が居ないか調べてみてください。
あと、俺たちの同郷者は全員が人種で、亜人も獣人も絶対に居ません。
髪の色は黒が多いですが、全員が黒髪だとは言い切れません。
黒髪の人物が混じっていて、亜人も獣人もいない集団がもし見つかれば、かなり怪しいと思います」
少なくとも今は、ね。
転生パターンだと分からないけど、生まれ直した場合は、頭角を現してくるのは、早くても8年くらいはかかるんじゃないかな。
流石にそこまで先の事は、知ったこっちゃない。
「俺が懸念しているのは、彼らを制圧した後の事です。
リヴァーブ王国には、スキルの使用を制限させることができる、アイテムや魔法などはありますか?
彼らに枷をつけることが出来ないのであれば、少なくとも転移スキル持ちは、生かしておくのは危険すぎると思います。
あのスキルは、あまりにも利便性が高く強力なので、悪用されたら抑えられません。今回のように」
強力なスキルなのは間違いないからな。
利用するつもりだったのに!とかあとでごねられても困る。
ハルを狙ってきた以上、容赦する余裕は無い。
「……奴隷契約で縛っても、一瞬で転移してしまうのならば、拘束力は低いかもしれませんね……。
仮にスキルの使用を一切禁じた場合は、生かしておく意味もありませんし……。
……能力の希少性に目を奪われている場合では、ありませんね。
犯罪を繰り返している以上、転移能力者は即時処分。
他の能力者においても、制御が難しいと判断した場合は、現場の判断で処理してもらうしかありませんね。
勿体無い。能力の有用性を考えれば、非常に勿体無い話ではありますが、市民の安全と命を差し出すわけにはいきません。
ベンベム。ガガンザ。犯罪者集団を、1等級として扱うように徹底させなさい。
対応を間違えたら、ヴェルトーガが壊滅するほどの事態と心得なさい」
「「了解です!」」
ベンベムさんは警備隊に戻り、ガガンザさんは各種ギルドと情報を共有するために、部屋を出て行った。
チート能力を持っていても、一番怖いのは地道な捜査だと思う。
お尋ね者になって、追われる立場になった時、彼らは果たして一枚岩でいられるのだろうか。
日常を脅かされるのって、結構精神的にくるものがありそうだ。
まぁ俺は石橋を叩いても渡らないタイプなので、追われる経験なんてしたことないんだけど。
そして犯罪を犯してしまった今、常識的な知識を手に入れる機会は、更に減ってしまったと思います。
……俺がこの世界に来た時は、免疫力強化も環境適応も覚えてなかったんです。
恐らく彼らも、与えられた能力以外のスキルは、まだ持ち合わせていないはずです」
「免疫力強化と、環境適応を持っていないことなど、有り得るのか……?
生まれた直後の赤子でさえ、その2つを持って生まれてくるのだぞ?」
「……証明は簡単ですよ。ハルはまだその2つを覚えてませんから。
このあとスキル神殿に行って、覚えてくる予定ですけど」
ハルを出汁に使うのは申し訳ないけど、正に動かぬ証拠だ。
「……トーマさんを疑うわけではありませんが、本日行うのであれば立ち合せて頂いても?」
「構いませんよ。スキル取得後の識別の書はお見せしなくて良いですよね」
「それこそ構いません。本当にスキルを取得していないかを知りたいのですから」
「あっと、悪いハル。勝手に決めちまった」
「うん、大丈夫。見られて困るものじゃないし」
ついでに、スキル神殿の利用料を負担してくれたりしないかなぁ、なんて。
「彼らはリヴァーブ王国、そしてヴェルトーガに来て、日が浅いはずです。
潜伏場所は、単純に人気が無い場所か、人が寄り付かない場所……。
例えば人が住んでいない空き家とか、魔物が出る可能性のある水路とか。
少なくとも、ヴェルトーガ内に潜伏しているのは間違いないと思います」
「転移スキルがあるのに、なぜヴェルトーガ内に居ると言い切れる?」
「単純に、彼らがリヴァーブ王国の地理を知らないだろうということ。
そしてこれは恐らくとしか言えませんが、転移スキルは自分が一度訪れた場所にしか転移できないはずだから、ですね。
実はハルは、リヴァーブ王国に来てまだ3日?4日?くらいしか経っていません。
彼らが来たタイミングは、ハルと同じだったと俺は考えています。
そして、これは俺もだったんですが、街の外は魔物が徘徊して危険だという忠告は、貰ってるんですよね。
魔物と戦ったことの無い彼らが、魔物の徘徊する外に拠点を置くとは思えないんです」
「筋が通っている、のか……?そもそもの前提が常識外の能力だからな。
俺の頭では判断が付かない」
「俺もハルもそうだったんですけど、こちらに来たばかりの頃って、相当上手く立ち回らないと、すぐに所持金が無くなるんですよね。
俺の場合は多分に幸運だったと思ってますが。
何も考えずに散在すると、お金が足りずに、迷宮に入ることすら出来なくなります。
実際俺もギリギリでしたし、ハルは多少事情が違いますが、お金がなくなってます。
彼らも恐らくお金が尽きて、迷宮許可証すら発行できなかったんじゃないですかね。
そこで、自分たちの持つ能力を悪用してしまったのかな、と」
実際、マニュアル無しだったら、俺も詰んでた可能性は低くない。
仲間が多くても、基本情報が足りなければ、正しく行動できないのは仕方ない部分はある。
でも、どんな境遇であれ、一度悪事に手を染めてしまった以上は、裁かれなければならないのだ。
この世界は異世界であっても、間違いなく現実なのだから。
「ベンベムさん。食料と雑貨を売っている店をあたって、手ぶらなのに大量の商品を購入していった人間が居ないか調べてみてください。
あと、俺たちの同郷者は全員が人種で、亜人も獣人も絶対に居ません。
髪の色は黒が多いですが、全員が黒髪だとは言い切れません。
黒髪の人物が混じっていて、亜人も獣人もいない集団がもし見つかれば、かなり怪しいと思います」
少なくとも今は、ね。
転生パターンだと分からないけど、生まれ直した場合は、頭角を現してくるのは、早くても8年くらいはかかるんじゃないかな。
流石にそこまで先の事は、知ったこっちゃない。
「俺が懸念しているのは、彼らを制圧した後の事です。
リヴァーブ王国には、スキルの使用を制限させることができる、アイテムや魔法などはありますか?
彼らに枷をつけることが出来ないのであれば、少なくとも転移スキル持ちは、生かしておくのは危険すぎると思います。
あのスキルは、あまりにも利便性が高く強力なので、悪用されたら抑えられません。今回のように」
強力なスキルなのは間違いないからな。
利用するつもりだったのに!とかあとでごねられても困る。
ハルを狙ってきた以上、容赦する余裕は無い。
「……奴隷契約で縛っても、一瞬で転移してしまうのならば、拘束力は低いかもしれませんね……。
仮にスキルの使用を一切禁じた場合は、生かしておく意味もありませんし……。
……能力の希少性に目を奪われている場合では、ありませんね。
犯罪を繰り返している以上、転移能力者は即時処分。
他の能力者においても、制御が難しいと判断した場合は、現場の判断で処理してもらうしかありませんね。
勿体無い。能力の有用性を考えれば、非常に勿体無い話ではありますが、市民の安全と命を差し出すわけにはいきません。
ベンベム。ガガンザ。犯罪者集団を、1等級として扱うように徹底させなさい。
対応を間違えたら、ヴェルトーガが壊滅するほどの事態と心得なさい」
「「了解です!」」
ベンベムさんは警備隊に戻り、ガガンザさんは各種ギルドと情報を共有するために、部屋を出て行った。
チート能力を持っていても、一番怖いのは地道な捜査だと思う。
お尋ね者になって、追われる立場になった時、彼らは果たして一枚岩でいられるのだろうか。
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