異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
156 / 580
6章 波乱のヴェルトーガ

137 対策会議③ 能力者をどう扱うか

しおりを挟む
「反則級の能力に目を奪われがちですが、彼らはまだこの国に来て、数日しか経っておりません。
 そして犯罪を犯してしまった今、常識的な知識を手に入れる機会は、更に減ってしまったと思います。
 ……俺がこの世界に来た時は、免疫力強化も環境適応も覚えてなかったんです。
 恐らく彼らも、与えられた能力以外のスキルは、まだ持ち合わせていないはずです」

「免疫力強化と、環境適応を持っていないことなど、有り得るのか……?
 生まれた直後の赤子でさえ、その2つを持って生まれてくるのだぞ?」

「……証明は簡単ですよ。ハルはまだその2つを覚えてませんから。
 このあとスキル神殿に行って、覚えてくる予定ですけど」


 ハルを出汁に使うのは申し訳ないけど、正に動かぬ証拠だ。


「……トーマさんを疑うわけではありませんが、本日行うのであれば立ち合せて頂いても?」

「構いませんよ。スキル取得後の識別の書はお見せしなくて良いですよね」

「それこそ構いません。本当にスキルを取得していないかを知りたいのですから」

「あっと、悪いハル。勝手に決めちまった」

「うん、大丈夫。見られて困るものじゃないし」


 ついでに、スキル神殿の利用料を負担してくれたりしないかなぁ、なんて。


「彼らはリヴァーブ王国、そしてヴェルトーガに来て、日が浅いはずです。
 潜伏場所は、単純に人気が無い場所か、人が寄り付かない場所……。
 例えば人が住んでいない空き家とか、魔物が出る可能性のある水路とか。
 少なくとも、ヴェルトーガ内に潜伏しているのは間違いないと思います」

「転移スキルがあるのに、なぜヴェルトーガ内に居ると言い切れる?」

「単純に、彼らがリヴァーブ王国の地理を知らないだろうということ。
 そしてこれは恐らくとしか言えませんが、転移スキルは自分が一度訪れた場所にしか転移できないはずだから、ですね。
 実はハルは、リヴァーブ王国に来てまだ3日?4日?くらいしか経っていません。
 彼らが来たタイミングは、ハルと同じだったと俺は考えています。
 そして、これは俺もだったんですが、街の外は魔物が徘徊して危険だという忠告は、貰ってるんですよね。
 魔物と戦ったことの無い彼らが、魔物の徘徊する外に拠点を置くとは思えないんです」

「筋が通っている、のか……?そもそもの前提が常識外の能力だからな。
 俺の頭では判断が付かない」

「俺もハルもそうだったんですけど、こちらに来たばかりの頃って、相当上手く立ち回らないと、すぐに所持金が無くなるんですよね。
 俺の場合は多分に幸運だったと思ってますが。
 何も考えずに散在すると、お金が足りずに、迷宮に入ることすら出来なくなります。
 実際俺もギリギリでしたし、ハルは多少事情が違いますが、お金がなくなってます。
 彼らも恐らくお金が尽きて、迷宮許可証すら発行できなかったんじゃないですかね。
 そこで、自分たちの持つ能力を悪用してしまったのかな、と」


 実際、マニュアル無しだったら、俺も詰んでた可能性は低くない。
 仲間が多くても、基本情報が足りなければ、正しく行動できないのは仕方ない部分はある。

 でも、どんな境遇であれ、一度悪事に手を染めてしまった以上は、裁かれなければならないのだ。

 この世界は異世界であっても、間違いなく現実なのだから。


「ベンベムさん。食料と雑貨を売っている店をあたって、手ぶらなのに大量の商品を購入していった人間が居ないか調べてみてください。
 あと、俺たちの同郷者は全員が人種で、亜人も獣人も絶対に居ません。
 髪の色は黒が多いですが、全員が黒髪だとは言い切れません。
 黒髪の人物が混じっていて、亜人も獣人もいない集団がもし見つかれば、かなり怪しいと思います」


 少なくとも今は、ね。
 転生パターンだと分からないけど、生まれ直した場合は、頭角を現してくるのは、早くても8年くらいはかかるんじゃないかな。

 流石にそこまで先の事は、知ったこっちゃない。


「俺が懸念しているのは、彼らを制圧した後の事です。
 リヴァーブ王国には、スキルの使用を制限させることができる、アイテムや魔法などはありますか?
 彼らに枷をつけることが出来ないのであれば、少なくとも転移スキル持ちは、生かしておくのは危険すぎると思います。
 あのスキルは、あまりにも利便性が高く強力なので、悪用されたら抑えられません。今回のように」


 強力なスキルなのは間違いないからな。
 利用するつもりだったのに!とかあとでごねられても困る。

 ハルを狙ってきた以上、容赦する余裕は無い。


「……奴隷契約で縛っても、一瞬で転移してしまうのならば、拘束力は低いかもしれませんね……。
 仮にスキルの使用を一切禁じた場合は、生かしておく意味もありませんし……。
 ……能力の希少性に目を奪われている場合では、ありませんね。
 犯罪を繰り返している以上、転移能力者は即時処分。
 他の能力者においても、制御が難しいと判断した場合は、現場の判断で処理してもらうしかありませんね。
 勿体無い。能力の有用性を考えれば、非常に勿体無い話ではありますが、市民の安全と命を差し出すわけにはいきません。
 ベンベム。ガガンザ。犯罪者集団を、1等級として扱うように徹底させなさい。
 対応を間違えたら、ヴェルトーガが壊滅するほどの事態と心得なさい」

「「了解です!」」


 ベンベムさんは警備隊に戻り、ガガンザさんは各種ギルドと情報を共有するために、部屋を出て行った。

 チート能力を持っていても、一番怖いのは地道な捜査だと思う。
 お尋ね者になって、追われる立場になった時、彼らは果たして一枚岩でいられるのだろうか。


 日常を脅かされるのって、結構精神的にくるものがありそうだ。
 まぁ俺は石橋を叩いても渡らないタイプなので、追われる経験なんてしたことないんだけど。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...