異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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6章 波乱のヴェルトーガ

135 対策会議① カミングアウト

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「ギルドマスター、警備隊隊長、そしてディオーヌ様自らがおいでになられた。
 皆様もうお揃いになっているので、お前達もすぐ会議室まで来て欲しい」


 おっと、軽く眠ってしまっていたようだ。
 同じく眠っていたみんなも、今ので目が覚めたらしく、案内の男に付いていった。


「失礼します。情報提供者のパーティを連れてきました!」

「入れ」


 直ぐに入室の許可が出され、案内の男に促されて入室する。
 案内してきた男は、俺たちが入室すると出て行った。


「またすぐお会いしてしまいましたねトーマさん。
 ヴェルトーガの騒動に巻き込んでしまってお恥ずかしい限りですが、馬鹿猫を退けるほどの冒険者であるトーマさんが居るときで良かった、とも考えてしまいますね」


 ……馬鹿猫って、もしかしてハロイツァのことか?


「先日振りですディオーヌ様。
 微力ながら、ヴェルトーガの治安維持に協力させていただきますよ」


 軽く会釈しておく。


「お前達のことは簡単に聞いているぞ。異風の旋律の諸君!
 ワシは、ヴェルトーガの冒険者ギルドマスターを勤めている『ガガンザ』だ!
 優秀な冒険者をヴェルトーガは歓迎しているぞ!」


 そう言って右手を差し出してきたので、握手しておく。
 握手の文化って、リンカーズにもあるのね。

 ガガンザは岩のような筋肉に覆われた、2メートル近い身長の大男だ。
 年齢は50代くらいに見えるかな。
 人種っぽいし、白髪もない。


「俺はヴェルトーガ警備隊隊長の『ベンベム』だ。
 正直こちらは少々手詰まりでな。
 そちらの情報提供には期待している」


 ワニ?トカゲ?もしくは大穴のドラゴン?
 なんらかの爬虫類の獣人であろうベンベムは、握手こそしなかったけれど、軽く会釈してくれた。
 「トーマです。よろしく」と、こちらも会釈を返す。


「さて、一応前提を確認しておこう。
 君たちは、誘拐犯と思われる男に襲われ、これを撃退。
 襲ってきた相手の風貌と、能力を教えてくれると聞いている。間違いないか?」


 ガガンザが確認してきたので「相違ありません」と返事をする。


「色々確認したいことがあるが、1つ1つ確認していこう。
 まずは襲ってきた男の風貌を教えてくれ」

「はい。10代後半から20代前半くらいの黒髪の男性。
 身長は俺より高かったと思います。
 顔の特徴は……、そうですね。俺のように、彫りが浅くて平坦な顔だと思います。
 一見した感じでは、装備らしい装備は身につけていませんでした。
 一応右手は斬り落としてありますが、回復されていたら分かりません」

「ふむ。特徴らしい特徴は、黒髪で若い男というところか。
 黒髪は比較的珍しいからな。それだけでも助かる」


 相手は転移能力持ちだからなぁ。
 目撃情報も痕跡もなかったことだろう。


「それでトーマさん。相手の能力とは一体なんなのですか?」

「はい、ディオーヌ様。
 実際に俺が体験した事実と、そこから俺たちが推論したことがありますが。
 相手は魔法名を必要としない転移スキル持ちで、恐らく魔力の溜め時間も必要ありません。
 スキルを発動した瞬間に自由に移動できる、転移スキルの使い手だと思われます」


 俺は襲われた時の状況を、なるべく細かく説明する。


「確かに……、制限無しの転移スキル使いだと仮定すれば、目撃者が居ないのも無理もないが……」

「だが確かに状況を考えると、能力の予想には納得できる部分は多いぞ。
 ワシとて馬鹿げた能力だとは思うが、それがあると考えると、辻褄が合ってしまう」

「トーマさん。他に何か根拠があるのでは?
 無制限転移スキルなど、恐らく私なら、この目で見ても直ぐには受け入れられないでしょう。
 でもトーマさんは、襲われた直後に思い至っておりますよね?
 私達が知らない情報を根拠に、推察しているような気がしてならないのですが、差し支えなければ教えてもらえませんか?」


 教えろと恫喝してこないだけ、ディオーヌ様は理性的なんだろうな。
 異世界転移者と、リンカーズの住人の常識の違いに気付いて、すぐに指摘してくるあたり、この人を敵に回すのは避けたい。


「そうですね。
 教えるのは構いませんが、俺が話すことが信じられなくても、それは俺の責任じゃありません。
 皆さんが信じられなかろうが、嘘だと思おうが、俺は責任を持てません。
 ですが、俺がこうして捜査に協力しに来ている事実を重視してもらえたら嬉しいですね」


 簡単な前置きで、一応責任逃れもしておく。
 戯言を!とか言ってキレられても、こっちだって困るからな。


「俺と、こっちのハルもなんですけど、元はリヴァーブ王国の外から転移して来ました。
 そして、今回の犯罪者も、恐らく俺たちと同郷である、というのが俺たちの情報の根底ですね」

「……リヴァーブ王国の外ですって?トーマさん、貴方は一体何を」

「信じられないというのは理解できます。
 ただ捜査に協力する気はありますよ。
 戯言だと切って捨てるなら、ここで話は終わります」


 そう言って一旦口を閉じる。
 信じられないなら話は終わりだ。

 話が進まないから協力する義理もない。
 その時はとっととベイクに帰ろう。


「リヴァーブ王国の外と言うのは、具体的にはどこになるんだ?」

「場所は分かりません。
 俺は気付いたらいきなりベイク付近に立っていたんですよ。
 なので元の場所も分からないし、帰り方も分かりません。
 ついでに言うなら、リヴァーブ王国に転移させられた理由も知りません」

「……なぜ犯罪者達が、自分たちと同郷だと思うのだ?」

「第一印象は勿論外見ですね。
 俺たちの故郷の人間は、黒髪で薄い顔が一般的でしたから。
 そしてもう1つは、これも印象の話になってしまって根拠と言っていいのか分かりませんが、外から来たやつって浮いてるんですよね。
 リヴァーブ王国民なら誰でも知っていることを知らないから。
 そういう雰囲気って、なんとなく感じ取れると思います。
 俺自身、散々変人扱いされてますし」


 そのおかげで、異風の旋律なんてパーティ名にさせられたくらいだからな!


「……話の腰を折りました。
 信じる信じないは、まずトーマさんの話を聞き終えてから判断します。
 まずはトーマさんが私達に伝えたい、最も重要な情報をまず教えてくれますか?」


 信じられない、という感情や常識は一旦置いて、まずは情報の引き出しにかかるか。


「そうですね。私が伝えたいのは大まかには4点。
 犯人は、恐らく単独犯ではないだろうということ。
 その全員が、何らかの非常識な能力を有しているであろうということ。
 犯人たちはリヴァーブ王国に地の利もなく、かつ常識もないであろうということ。
 犯人たちは非常識な能力はありますが、恐らく祝福の儀をまだ知らないであろうということ、ですね」


 今後はもっと転移者が押し寄せる可能性もあるけど、それは今回の件には関係ないので保留しておく。
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