異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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6章 波乱のヴェルトーガ

130 新人冒険者ハル

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「はぁ……。はぁ……。足を、引っ張って、ごめん、ね……」


 ドロップ品で一杯になったリュックを背負って歩くだけでハルは息が上がっている。
 無理もない。ハルはリンカーズに来てまだ3日目。迷宮に入るだって今日が初めてなんだし。


「辛いと思うががんばって欲しい。俺が荷物を持っても構わないんだけど、甘やかすのはハルのためにならないと思う。
 まずは荷物を持って移動することに慣れて欲しいんだ。
 きついときはちゃんと休憩を挟むから、遠慮なく言ってくれよ」

「うん、ありがとう。大丈夫、分かってるわ。
 体力的には、とても、大丈夫とは、言えないけどね……」


 息を切らしながらも弱音は吐かない。
 ハルも分かっているのだ。もう日本で暮らすのと同じ感覚では生きていけないのだと。


 うーむ、それにしても、所詮は1階層といったところか。
 魔物の群れの規模は大きいのだが、密度が低いというか、遭遇率が悪い。

 むしろ戦闘中ならハルは休めるのだが、移動時間の方が多くて逆に辛そうだ。

 それでも全員のリュックが一杯になるまで、ハルは懸命に歩き続けた。


 入り口の魔法陣に乗ると、問題なく迷宮の外の祠に転移した。


「迷宮からでたことだし、ギルドまでは俺が持つよ。初日から無理しなくていい」


 半ば強引にハルからリュックを受け取る。


「うん、ありがとう。ごめんなさい。
 平気よと言いたいところだけどね、正直限界だったかも……」


 ハルは素直に従った。
 リンカーズでは15歳だが、日本では38歳まで生きたのだ。
 変に意地を張って無理を通すような年齢ではないのだろう。




「へぇ、流石は6等級。1階層なんか問題にならないってか?やるじゃないか!」


 受付ウサギさんに換金をお願いする。
 顔は可愛いウサギさんなのに、中身はめっちゃ姉御肌って感じで、有りか無しかで言えば、完全に有りだな。


「ハル。とりあえず今日は荷物持ちは終わりにしよう。
 でも出来れば最後まで探索には付き合って欲しい。
 歩いてついてくるだけなら、体力持ちそうか?」

「うん。役立たずでごめんね。
 移動も私に合わせてくれてるのは分かってる。
 最後までなんとかついていってみせるわ」

「ハル。お前は役立たずじゃなくて『新人』なんだよ。
 そりゃあ始めからなんでも出来る奴も居ただろうけどさ。
 新人には過度の要求をせず、まず仕事を教えるのが先だったろ?
 あっちじゃ新人が使い物になるまで何ヶ月かかるって話だよ。
 向上心があるのは良いけど、必要以上に自分を卑下する必要は無いさ」

「そうだよハル!私もトーマも、始めは全然戦えなかったんだからねー?
 やったことがないことは出来なくって当たり前なんだよー」

「うん。ありがとうリーンセンパイ」


 リーンの後輩がまた一人。



 その後、更に2回ほど探索を行った。
 ハルは余裕が無さそうにしながらも、なんとか最後まで付いて来ることが出来た。

 しかし、ハルには悪いがまだ休ませるわけには行かない。


「ハル。これからギルドの訓練場で武器の扱いの訓練だ。
 疲れてるとは思うが頑張ってくれ。疲れてるときに動くのが大切なんだ」

「うん、りょーかい。新人はただ学ぶのみってね。
 あーー。せめて肉体が若いことだけが救いだよー!」


 リーンはスネークソードの訓練。トルネは木製の槍で俺と模擬戦。


「僕は今のところ武器の扱いに不安はないから、ハルの相手は僕がするね」


 ということで、シンがハルにダガーの扱いを指導している。


「武器の扱いを覚えさせたからと言って、すぐに魔物と戦えなんて言わないよ。
 ハルはまず、武器の扱いに慣れることに専念して。
 実際に戦うことはまだ考えなくて大丈夫。
 幸いなことに、僕ら異風の旋律は戦力的には余裕があるし」

「うん、ありがとうシン。
 まずは落ち着いて、武器の取り扱いを覚えることだけに集中するわ」


 普段ショートソードを扱っているシンなら、ダガーの扱いも問題なく教えられるだろう。
 俺はなー。あんまり人に上手く教える自信ないんだよなー。




「うう、疲れたよぅ。お風呂入りたいぃ……」


 訓練を終えて宿で夕食中。ハルが溶けている。
 オーサンの指導を初めて受けた俺みたいになってんなぁ。


「お風呂か。こっちでは洗浄があるから入浴の文化がないんだよな。
 ベイクの家に浴槽作ってもいいんだけど、そうすると水周りの問題がなぁ」

「え、トーマって家持ちなの?冒険者ってそんなに稼げるものなの?」

「トーマは本気出すとめちゃくちゃ稼ぐからね。
 そして入浴だっけ?トーマが言った通り、洗浄魔法もあるから一般的にはまずしないかな。
 お金持ちの人が娯楽として入浴するってことはあるみたいだけどね」

「へー。お風呂って娯楽なんだー」

「うん。お湯に浸かると肌の感触が変わるとかで、お金のある商人や貴族が夫婦でとか、側室と一緒に入るらしいよ」

「あ、あ~……。娯楽ってそういう方向なのね……」


 思わぬ不意打ちにハルの顔が赤くなる。
 分かるわー。リンカーズって日本より性に対して明け透けな感じあるよなー。


「それにこっちだと水を張るのが結構大変なんだよ。
 こっちの生活用水って、水道や井戸じゃなくて水魔法の魔導具なんだ。
 水魔法って大量に水を発生させるのには向いてないから、浴槽に水を張るのにかなり時間がかかると思う」

「今日トーマが使ってた、ウォータースフィアだっけ?アレは駄目なの?」

「うん。攻撃魔法は威力を抑えたりその場に留めたりするのが難しいんだ。
 その上発動後はすぐに魔力に還元されて消えてしまうから、攻撃魔法を攻撃以外の用途で使うのは難しいんだよね。」

「えーそうなんだ!上手く行かないものねぇ……」

「仮に5人全員が水魔法を使えるようになったら、5人で協力して水を溜めれば、多少は現実的な話になるかもな。
 沸かすのは熱魔法でいけると思うし」

「魔法!私も覚えられるのよね?
 あー早く私も魔法を覚えてみたいなぁ」


 
 ハルを見てると自分がリンカーズに来たばかりのことを思い出すなぁ。

 ファンタジー世界に触れることに純粋に憧れてた、新人の頃の俺と一緒だ。
 
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