異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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5章 カルネジア・ハロイツァ

102 vsカルネジア・ハロイツァ④

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「おーいハロイツァくん。叫んでないで早く来てくんない?
 こっちはお前に付き合ってやるほど、暇じゃあないんだよ」


 異世界に来たら1度くらいね、イキって煽りをかましてみたかったんだよね~。
 ちょうど良く、煽り耐性無さそうな敵が居たから、試してみても仕方ないよね?


「殺す殺す殺す!テメェは絶対に殺してやらぁ!」

「それ会った時からずっと言ってんじゃん?
 今更改めて宣言されても、なんか意味あるのそれ?」

「死ねええええええええああああああ!!!」


 直線的に突っ込んでくるハロイツァ。正に我を忘れてるって感じだな。
 だけどこういう資質だけで戦ってきたようなヤツは、感情の昂ぶりで予想外の動きをすることもあるかもしれない。いつだって『かもしれない』を忘れない。

 もうリーンの事は覚えてないみたいだな。怒りに身を任せて全力で武器を振るってくる。
 そのおかげで速度と威力と迫力は、先ほどまでの比ではない。比ではない、が。

 元々備わっていない技術面が更に粗くなってしまい、速度が速まっても動作が大きくなっているので、かえって避けやすくなった。
 おかげで3人もハロイツァの剣を気にしつつも、攻撃を続けられている。

 もうマジで俺しか見てないしなコイツ。
 いやぁなんかほんと、おっさんばっかにモテて困るわ。


「死ね死ね死ねええええ!!」


 どれだけ冷静さを奪い、生活魔法で行動を妨害し、4対1で相手しているといっても、全く気の抜ける相手ではない。
 コイツに遊び心などなく、初手で武器を使ってこられたら、まさに一瞬にして俺たちは敗北、絶命していただろう。


 なんかコイツ、チート能力を授かってリンカーズに来て、チート能力に頼り切って、努力や研鑽を怠った転移者みたいに見えてくるな。
 魔物は殺しまくってたらしいが、格下ばかり相手にしていても、ここじゃあ強くはなれないんだぜ?

 この世界リンカーズではレベリングも研鑽も、どっちも蔑ろにしちゃあいけないんだよな。
 スキルだけで強くなれるなら、俺だってオーサンにボコられたりしてねぇし。


「死ね!死ね!死ね!死ね!死ねええええ!」


 おかげ様で、ハロイツァは何も考えずに『トーマ絶対殺すマン』と化してしまったようだ。

 作戦も固まった。
 3人に音魔法で鈴の音を届ける。決着をつけようじゃないか。


 まずは音魔法による音の到達速度のズレ。
 さっきまではランダムに音を選んでいたけど、今のハロイツァなら単調なリズムでも気付かないだろう。
 音の選択をパターン化して、脳の処理する情報を減らす。

 水滴飛ばしは怒り狂ったハロイツァには、いまいち効果が薄い模様。
 普段使いは止めて、魔力を温存。


 さて仕掛けるぜハロイツァ。
 これを凌がれたら俺たちの負けだ。精々頑張って凌いでみせろ!


 音魔法で短い炸裂音。仲間への合図だ。
 一瞬置いてハロイツァの目の前に、照明魔法を最大出力!まずは視覚。
 それと同時に複合センサーもONしておく。


「しゃらくせええええええ!!」


 続けてハロイツァの周りに消臭効果の、風&洗浄魔法を発生、嗅覚を奪う。

 そして仲間が居ない方向を熱と魔力で判断。
 そちらの方向から攻撃音を発生させつつ、自身と仲間の動作音を音魔法で消去。これで聴覚も奪う。

 複合センサーのおかげで、ハロイツァの居場所は把握できている。

 喰らえっっ!!

 瞬間加速を使って、全身全霊の袈裟切りを放つ!


 ……瞬間加速のせいで、手応えが分からない。どうだ!?

 照明魔法を打ち消しつつ、二の太刀を構えてハロイツァを確認する。


「か、は……?」


 おお、左肩から右わき腹にかけて、バッサリいってる!
 流石に両断は出来なかったか。
 
 そして良く見ると、腹の部分に3方向から刃が突き出している。
 ハロイツァを中心に、上から見たら『米』みたいになってそうだな。

 良かったなトルネ。
 体に空けられた風穴の数は、これで一緒だぞ。


「奪われるのが嫌なら、強くなって奪えばいい、そう言っていたわね。
 ……これで満足?
 負けたお前の命は、これで私達に奪われるわ」

「かふっ……」


 リーンがナイフを引き抜く。


「いつも馬鹿にしていた、人種の妹に負けた気分はどうかしら?
 貴方は楽しそうに私を甚振ってくれたけど、貴方なんかを下しても、そこまで良い気分にはならないみたい。
 貴方はいったい何があんなに楽しかったんだか。私には理解できそうにないわ」

「ごほ……」


 トルネがダガーを引き抜く。


「記憶すらしていなかったほど、眼中に無かった僕の剣に貫かれた気分はどうかな?
 ここに居ない両親の分は、仕方ないからオマケしてあげるよ。
 自分のツケを他人に押し付けて、今までのうのうと生きてきたんだ。
 これはただ、そのツケを支払わされただけの話。
 この結末は、お前の自業自得だ」

「ぐあぁっ……!」


 最後にシンが、ショートソードを引き抜いた。


 口から血を吐き、袈裟切りされて、腹に3つも穴が開いているのに、まだ倒れないとは凄いなぁ。


「ハロイツァ。お前の何が悪かったか教えてやろうか?
 お前の敗因はな、他人を舐めすぎたことだ。
 自分より強い相手がこの世にいるとは思わなかったか?
 自分ならなにが起きても対処できると思ってたのか?
 ったくよぉ、余計な仕事させやがって……。
 他人に迷惑かけてもなんとも思わないような奴は、滅びやがれっ!」

「ごべぇ!」


 屈んで低くなった顔面目掛けて、瞬間加速を使ってぶん殴る。
 非力な我が身なれど、スキルがあればゴリラでも殴り飛ばせそうだな。
 
 さんっざんボコられたからな。一発くらいはお返ししておく。


「さてと、トドメ刺したいところだけど、こいつってこのまま殺しても良いもんかねぇ」


 一応貴族だしな。3等級を俺たちが殺したと思うやつはいないだろうから、疑われるって線は少なそうではあるが、そもそも四大精霊家?の人間を気楽に殺しちゃっていいものか。

 まぁ判断付かなかったら殺しておくべきだと思うけどね。コイツに限っては。


「……そう、だね。正直生かしておいても、僕らにとっては何一つメリットがないけれど、殺したところで何一つ意味がないから、少し難しいところだね」

「コイツ生きてても死んでも、マジで碌なモンじゃねぇな」


 生きてるだけで迷惑かけて、死んでもなにも解決しないとか、ホントなんなんだこいつは?


「そうですね。
 ですので私に1つ、ご提案が御座います」


 誰だ!?
 監視がいる可能性は考えていたが、複合センサーにはまるで反応がなかった!


 声がしたほうを見ると、とても丁寧な物腰をした、執事服の獅子の獣人が立っていた。

 獅子の獣人……。
 カルネジア家のものでまず間違いないだろうな。

 さっきから複合センサーを作動させてるってのに、目の前に立っているっていうのに、センサーに一切引反応がない。
 やっべぇなコイツ。
 多分ハロイツァとは比べ物にならないくらいの強者だ。


 提案とやらが何かは分からないが、穏便なものであることを願いたいね、まったく。
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