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4章 2人のために出来ること
079 スレイと密談① 敵
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「ポーションは飲んだな?行くぞォ!」
「「おー!」」
くっ!ツッコミが欲しいけど、異世界で期待した俺がバカだった!いやマジでバカだった。
今更5階層の慣らしも必要ないと思うので、2人は今日から6階層で戦ってもらう事にした。
金欠なので、さっさと稼げる8階層に行ってしまいたい気持ちもあるが、この世界ではパワーレベリングはあまり意味が無いので、一歩ずつ歩んだ方が、結局は強くなれると思う。
まぁ火力さえ足りてれば、4階層以降はどこも稼ぎは充分だけどな。
移動を急ぎたいときは、いぬねこコンビをフードにインして移動する。
結構揺れてると思うけど、2匹ともケロッとしているので、大丈夫なのだろう。
…………もしかしてこれ、環境適応が効いてるのかな?
魔力に余裕があれば、シャドウボアは2人が担当する。まぁ攻撃魔法1発撃って終わりなんだけど。
音魔法でキラーラットを感知できるのは教えたけど、流石にまだ慣れないようだ。
どっちかっていうと、攻撃魔法を優先した魔力の運用をしてるように見えるしな。
6階層のレッサーウィスプは、2人とも危なげなく処理している。
正直こいつって、魔法を使う以外はクッソ雑魚だからなぁ。耐久力も全然ないし。
2人とも少々寝不足ではあるけれど、流石に迷宮内で気を抜くほどバカではない。しっかりと集中して戦闘を行っていた。
やはりバカなのは俺だけの模様。
魔装術を使ったロングソードで、シャドウボアの首を飛ばしてみせる。2人にもこんなことが出来るようになるよ、という意味で励みにしてもらいたい。
探索を終えて、冒険者ギルドに戻って換金中。
おおすげぇ!
自分で回ってたときっていくら稼いでたのか忘れたけど、3人で回ったら金貨2枚半くらいまでいった。
カズラさんに残金支払っても、問題なく暮らせそうだな。良かった良かった。
探索開始が遅かった割には、4回ほど回ることが出来て、金板に届いた。
これで負債分もなくなって、明日以降は溜まる一方のはずだ。
決して!決してフラグなどではないのだ!
探索が終ったので、工場に寄って鍵を受け取る。
まだ日は落ち切ってないけど、夕食はもう食べられるはずだよな。
今朝チェックアウトしたばかりの迷宮の安らぎ亭で夕食をとる。ウマー。
商工ギルドに向かう。
ポポリポさんはもう仕事を上がった模様。
リンカーズで働く人たちには基本的に、定休日という概念が無い。元気なら働く。疲れたら休む。こんな感じ。
なので常に開いている冒険者ギルドや商工ギルドでは、基本的に夜明けと日没を合図に人員の交代が行われている。
ただしお客さんの対応をするのは職員個人個人なので、対応したお客さんの都合によっては、時間外勤務を強いられることも少なくないらしい。
と、正に俺の都合に付き合わされたオーサンが言っていた。
案内された個室に行くと、スレイは既に待っていた。
マジかよ、俺だって早めに来たつもりなのに。
「早いなスレイ。先日はどうも」
「それはこちらのセリフだ。世話になった。
今日は色々話したいこともあるからな。早めに来て待っていた」
いぬねこコンビを離脱。いぬねこ兄妹に手渡す。
もし辛かったら寝ても良いと伝えて、スレイと話し始める。
「さて、今日の用件は何だ?奴隷購入で何か問題があったとか?」
「いやそうではなくてだな。私の考えすぎなら良いのだが、伝えておくべきことがある。
お前達が去った後、夜明けと共に、2組の購入希望者が現れたのだ」
「……それはつまり、2人の情報が公示される前に店に来た、って認識で合ってる?」
「話が早いな。
その2組の素性は勿論分からない。奴隷取引をしていれば所属は確かめられるが、誰も購入せず帰っていったからな」
「一応確認だけど。その客が確実にこの2人を買いに来た、と判断できる根拠は他にもあるか?」
「間違いない。なんせ2人はもう売却済みだと伝えると、商館内部を全て案内させられたからな」
「ちっ……確定か」
2組来てるから確実ではないだろうが、そのタイミングで店に来るってことは、2人はやっぱり狙って犯罪奴隷にされたと考えた方がいいな。
相手は貴族かよ。くっそ面倒くせぇ。
「公示前に情報が漏れる可能性と、漏れた場合の心当たりは?」
「心当たりは多すぎるな。なんせ商売中に広場から連行だったらしいし、目撃者を数えたらキリがない」
ふむ、情報漏洩とか気にするだけ無駄か。
「2人を犯罪奴隷にした貴族が購入しに来た可能性はあるか?」
「……あるだろうな。当事者なのだから情報は筒抜けだろう」
「2人を購入するために冤罪をでっち上げた可能性は、あると思うか?」
後ろで息を飲む声が聞こえた気がするが、今は構わずスレイの返答を待つ。
「……ああ、それは充分考えられる。
というかだな、今回の話は始めから最後まで、おかしな点だらけなのだ。
2人の家族は明らかに、狙って陥れられたとしか思えぬ」
「貴族家に容易に、犠牲者も出さずに侵入できた盗人。
わざわざシンたち一家を取引に巻き込んだ無意味さ。
貴族家に侵入できるほどの盗人が盗んだものは、たった1品。
家に侵入されたのに、盗人を追うことも警備を強化することもない被害者宅。
両親は懲役を言い渡されたのに、一緒に居た2人が奴隷として売却されるのもおかしいよな?
まぁ全部俺の想像なんだけど、合ってる?」
「……概ね想像通りだ。今回の関係者にはそれなりに疑問を持つ者も居たのだが、現行犯ということで碌な取調べも行われずに、異例のスピードで処分が下されたのだ」
「待って!?私達は何日も監禁されて、取調べを受けたよ!?」
リーンが悲鳴のような声で叫んだ。
「ああ、私にも直接話してくれたな。
だが実際に公的な取調べを行う者は『審問官』と呼ばれ、国に厳正に運営されている組織なのだが、私が問い合わせたところ、今回審問官が関わった記録はなかったそうだ。
つまり2人が受けていたのは取調べではなく、単純な監禁だ。沙汰が済むまで閉じ込めておいたのだろう」
「そ、んな……。そんな!なんで、なんで僕たちがそんな目に!?僕たちがなにをしたって言うんだよ!?」
シンも耐え切れず叫ぶ。
犯罪奴隷になってから『なんで』と思わなかった日はなかったのだろう。
「……これは聞くに堪えない話になるかも知れないが。
今回の被害者として扱われている貴族家、当代様は非常に優れた人格をお持ちなのだが、少々色事に奔放なところがあってな。多くのご子息、ご令嬢がいらっしゃるのだ。
その中のあるご子息様が、これまた当代様に似て、女性に非常に強い関心を抱く方でな。定期的に女奴隷を購入しては、犯し尽くして殺してしまうので、我々奴隷商の間では非常に有名な方なのだ。
いくら奴隷は所有者の財産とは言っても、人命が失われ続けているようでは、流石に国も看過出来なくなってな。その方に、通常の奴隷の購入が出来なくなるような措置を取られたのだ。
我々奴隷商人は広い意味では国の管轄、流石の彼も国に楯突くような事はなかったのだが……」
ギリリッと歯を食いしばる音が室内に響く。
シンの怒りが伝わってくるようだ。
「つまりはこういうことか?色ボケ家族の色ボケ息子が女をやり捨てしすぎて目をつけられたから、購入可能な犯罪奴隷をでっち上げた、ってことで合ってる?」
「トーマさん!貴族家の方にそのような「シン、そのクソ共の名前は?」
そう。スレイの話が本当であるならば狙われたのは、いや狙われているのはリーンなのだ。
そしてそういうクソは、法的な手順など守る気はないだろう。
実際現時点で、全く法を意に介してないように思えるしな。
「……リヴァーブ王国四大精霊家が1つ、『火のカルネジア家』だよ。トーマ」
「火のカルネジアな。さんきゅー。覚えた」
ちっ、厄介ごとなんて放置してみんなでスローライフとか目指すつもりだったのに。
2人にも復讐なんて考えないで、穏やかに暮らして欲しかったのに。
貴族なんて相手にするのは御免なのに。
関わるつもりなんて、これっぽっちもなかったのになぁ。
そっちから来るんじゃあ仕方ない。
こちらも黙って殺されるわけにはいかないしな。
敵の名は、『火のカルネジア家』。
1人残らず皆殺しだ。
「「おー!」」
くっ!ツッコミが欲しいけど、異世界で期待した俺がバカだった!いやマジでバカだった。
今更5階層の慣らしも必要ないと思うので、2人は今日から6階層で戦ってもらう事にした。
金欠なので、さっさと稼げる8階層に行ってしまいたい気持ちもあるが、この世界ではパワーレベリングはあまり意味が無いので、一歩ずつ歩んだ方が、結局は強くなれると思う。
まぁ火力さえ足りてれば、4階層以降はどこも稼ぎは充分だけどな。
移動を急ぎたいときは、いぬねこコンビをフードにインして移動する。
結構揺れてると思うけど、2匹ともケロッとしているので、大丈夫なのだろう。
…………もしかしてこれ、環境適応が効いてるのかな?
魔力に余裕があれば、シャドウボアは2人が担当する。まぁ攻撃魔法1発撃って終わりなんだけど。
音魔法でキラーラットを感知できるのは教えたけど、流石にまだ慣れないようだ。
どっちかっていうと、攻撃魔法を優先した魔力の運用をしてるように見えるしな。
6階層のレッサーウィスプは、2人とも危なげなく処理している。
正直こいつって、魔法を使う以外はクッソ雑魚だからなぁ。耐久力も全然ないし。
2人とも少々寝不足ではあるけれど、流石に迷宮内で気を抜くほどバカではない。しっかりと集中して戦闘を行っていた。
やはりバカなのは俺だけの模様。
魔装術を使ったロングソードで、シャドウボアの首を飛ばしてみせる。2人にもこんなことが出来るようになるよ、という意味で励みにしてもらいたい。
探索を終えて、冒険者ギルドに戻って換金中。
おおすげぇ!
自分で回ってたときっていくら稼いでたのか忘れたけど、3人で回ったら金貨2枚半くらいまでいった。
カズラさんに残金支払っても、問題なく暮らせそうだな。良かった良かった。
探索開始が遅かった割には、4回ほど回ることが出来て、金板に届いた。
これで負債分もなくなって、明日以降は溜まる一方のはずだ。
決して!決してフラグなどではないのだ!
探索が終ったので、工場に寄って鍵を受け取る。
まだ日は落ち切ってないけど、夕食はもう食べられるはずだよな。
今朝チェックアウトしたばかりの迷宮の安らぎ亭で夕食をとる。ウマー。
商工ギルドに向かう。
ポポリポさんはもう仕事を上がった模様。
リンカーズで働く人たちには基本的に、定休日という概念が無い。元気なら働く。疲れたら休む。こんな感じ。
なので常に開いている冒険者ギルドや商工ギルドでは、基本的に夜明けと日没を合図に人員の交代が行われている。
ただしお客さんの対応をするのは職員個人個人なので、対応したお客さんの都合によっては、時間外勤務を強いられることも少なくないらしい。
と、正に俺の都合に付き合わされたオーサンが言っていた。
案内された個室に行くと、スレイは既に待っていた。
マジかよ、俺だって早めに来たつもりなのに。
「早いなスレイ。先日はどうも」
「それはこちらのセリフだ。世話になった。
今日は色々話したいこともあるからな。早めに来て待っていた」
いぬねこコンビを離脱。いぬねこ兄妹に手渡す。
もし辛かったら寝ても良いと伝えて、スレイと話し始める。
「さて、今日の用件は何だ?奴隷購入で何か問題があったとか?」
「いやそうではなくてだな。私の考えすぎなら良いのだが、伝えておくべきことがある。
お前達が去った後、夜明けと共に、2組の購入希望者が現れたのだ」
「……それはつまり、2人の情報が公示される前に店に来た、って認識で合ってる?」
「話が早いな。
その2組の素性は勿論分からない。奴隷取引をしていれば所属は確かめられるが、誰も購入せず帰っていったからな」
「一応確認だけど。その客が確実にこの2人を買いに来た、と判断できる根拠は他にもあるか?」
「間違いない。なんせ2人はもう売却済みだと伝えると、商館内部を全て案内させられたからな」
「ちっ……確定か」
2組来てるから確実ではないだろうが、そのタイミングで店に来るってことは、2人はやっぱり狙って犯罪奴隷にされたと考えた方がいいな。
相手は貴族かよ。くっそ面倒くせぇ。
「公示前に情報が漏れる可能性と、漏れた場合の心当たりは?」
「心当たりは多すぎるな。なんせ商売中に広場から連行だったらしいし、目撃者を数えたらキリがない」
ふむ、情報漏洩とか気にするだけ無駄か。
「2人を犯罪奴隷にした貴族が購入しに来た可能性はあるか?」
「……あるだろうな。当事者なのだから情報は筒抜けだろう」
「2人を購入するために冤罪をでっち上げた可能性は、あると思うか?」
後ろで息を飲む声が聞こえた気がするが、今は構わずスレイの返答を待つ。
「……ああ、それは充分考えられる。
というかだな、今回の話は始めから最後まで、おかしな点だらけなのだ。
2人の家族は明らかに、狙って陥れられたとしか思えぬ」
「貴族家に容易に、犠牲者も出さずに侵入できた盗人。
わざわざシンたち一家を取引に巻き込んだ無意味さ。
貴族家に侵入できるほどの盗人が盗んだものは、たった1品。
家に侵入されたのに、盗人を追うことも警備を強化することもない被害者宅。
両親は懲役を言い渡されたのに、一緒に居た2人が奴隷として売却されるのもおかしいよな?
まぁ全部俺の想像なんだけど、合ってる?」
「……概ね想像通りだ。今回の関係者にはそれなりに疑問を持つ者も居たのだが、現行犯ということで碌な取調べも行われずに、異例のスピードで処分が下されたのだ」
「待って!?私達は何日も監禁されて、取調べを受けたよ!?」
リーンが悲鳴のような声で叫んだ。
「ああ、私にも直接話してくれたな。
だが実際に公的な取調べを行う者は『審問官』と呼ばれ、国に厳正に運営されている組織なのだが、私が問い合わせたところ、今回審問官が関わった記録はなかったそうだ。
つまり2人が受けていたのは取調べではなく、単純な監禁だ。沙汰が済むまで閉じ込めておいたのだろう」
「そ、んな……。そんな!なんで、なんで僕たちがそんな目に!?僕たちがなにをしたって言うんだよ!?」
シンも耐え切れず叫ぶ。
犯罪奴隷になってから『なんで』と思わなかった日はなかったのだろう。
「……これは聞くに堪えない話になるかも知れないが。
今回の被害者として扱われている貴族家、当代様は非常に優れた人格をお持ちなのだが、少々色事に奔放なところがあってな。多くのご子息、ご令嬢がいらっしゃるのだ。
その中のあるご子息様が、これまた当代様に似て、女性に非常に強い関心を抱く方でな。定期的に女奴隷を購入しては、犯し尽くして殺してしまうので、我々奴隷商の間では非常に有名な方なのだ。
いくら奴隷は所有者の財産とは言っても、人命が失われ続けているようでは、流石に国も看過出来なくなってな。その方に、通常の奴隷の購入が出来なくなるような措置を取られたのだ。
我々奴隷商人は広い意味では国の管轄、流石の彼も国に楯突くような事はなかったのだが……」
ギリリッと歯を食いしばる音が室内に響く。
シンの怒りが伝わってくるようだ。
「つまりはこういうことか?色ボケ家族の色ボケ息子が女をやり捨てしすぎて目をつけられたから、購入可能な犯罪奴隷をでっち上げた、ってことで合ってる?」
「トーマさん!貴族家の方にそのような「シン、そのクソ共の名前は?」
そう。スレイの話が本当であるならば狙われたのは、いや狙われているのはリーンなのだ。
そしてそういうクソは、法的な手順など守る気はないだろう。
実際現時点で、全く法を意に介してないように思えるしな。
「……リヴァーブ王国四大精霊家が1つ、『火のカルネジア家』だよ。トーマ」
「火のカルネジアな。さんきゅー。覚えた」
ちっ、厄介ごとなんて放置してみんなでスローライフとか目指すつもりだったのに。
2人にも復讐なんて考えないで、穏やかに暮らして欲しかったのに。
貴族なんて相手にするのは御免なのに。
関わるつもりなんて、これっぽっちもなかったのになぁ。
そっちから来るんじゃあ仕方ない。
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