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4章 2人のために出来ること
077 攻撃魔法と生活魔法
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「さて、3階層に行く前に、2人とも攻撃魔法を試してみようか」
現在は1階層の少し奥まった場所にいる。
未だに、ポーターの子達さえ1階層は回っていないらしく、ほぼ無人状態だ。
実験するにはうってつけの環境である。
「ふわわとつららを見ながら付いていくから、マッドスライムが出たら攻撃魔法使ってみてくれ。どっちからでもいいから」
1階層なので危険はほぼ無い。2匹の運動とお散歩のために歩かせている。
流石に2匹とも生まれたばかりなので、人の足に合わせて歩くことはまだ出来ない。
ならば俺が一緒に居てやれば良いのだ。
くくく、これぞWIN-WINの関係というヤツだな!
なんか違う気もするけど。
「トーマ、見つけたよ」
前方からシンの声が聞こえる。
「おし。2人とも、シンのところまでいっそげー!」
ふりふりぽてぽてと走る2匹のお尻を眺めつつ、シンと合流する。
しっかし2匹とも頭いいよなぁ。こっちの指示はほぼ100%理解してる印象だ。
「じゃあ僕からストーンバレットを試してみるね」
「おーよろしく」
念のため、2匹を抱き上げておく。
「トーマ。やっぱり手のひらにしか魔力を集められない。
あと、込める魔力の量を調整することも難しそうだ」
「なるほどなるほど。あとは好きに発動してくれ」
「分かった。ストーンバレット!」
右手のひらをマッドスライムに向け、シンが魔法を発動する。
シンの右手から大きめの石が幾つか射出され、マッドスライム先生はばらばらに吹き飛んで行った。
ふむ、地面に大きな陥没が4つ、1つ1つもスリングショット以上の威力か。
抉れた後に石は見つからない。着弾後はすぐに霧散してしまう感じかな。
発射速度はなかなかだったけど、発動までに一瞬時間があった。
っと、そこまで考えてシンに目を向けると、呼吸が荒く汗も酷い。
「今の僕には魔力消費が多すぎるみたいだ……。
少なくとも、もう1発撃つ余裕は無いかな」
「了解、無理すんな」
流石に昨日魔法を覚えたばかりの2人には、攻撃魔法のコストは重いか。
俺はなんだかんだいって、初期と比べれば魔力量増えている実感があるからな。
魔装術と音魔法併用しても、全然余裕あるし。
「フレイムアロー!」
次はリーンセンパイのフレイムアローの確認。大きさ的には矢っていうより槍に近いんじゃね?
貫通力もそこそこで、ストーンバレットの3倍くらいの深さまで地面が抉れていた。
まぁみるみる直っていったけどね。迷宮の力ってすげー!
そしてマッドスライム先生、今回もお疲れ様です。
「リーン、辛かったら座っていいぞ」
「うん、だいじょぶ。あとやっぱり魔法名を言わないと発動できなかったよ」
無言で無詠唱では攻撃魔法は使えない、か。
これもマニュアルに記載されていた『縛り』の1つだと思うのが自然かな。
ただ、スキルで無詠唱発動とか出来るようになる可能性は、ゼロではないからなぁ。
そんなスキルは一般には知られてないみたいだけど、無いと言い切るのは危険だな。
なんせ生活魔法は、無言発動が可能なのだから。
「じゃあここで休んでても仕方ないし、ゆっくり3階層に移動しようか。
エアスラッシュは使えそうになったら試そう」
ちなみに俺自身も待機しながら、新しく覚えた生活魔法をちょいちょいこっそり試している。
照明魔法は、目晦ましや時限式の囮に使えるんじゃないかなと思う。
熱魔法はサーモセンサーみたいな使い方が出来ないか練習中。今のところ出来ない。
風魔法は今のところ、街行く女性のスカートをめくることすら出来なそう。
たださっき色々試していたら、ちょっと重大な事実が判明した。
風魔法と熱魔法、同時に発動できた上に、効果を合成できたのである。
まぁ平たく言ってドライヤーが完成しただけなのであるが、これは地味に大発見じゃなかろうか。
お風呂なんてこっちに来てから見たことないので、ドライヤー魔法の使いどころが難しいが、生活魔法が複数同時発動、効果合成が出来るのは結構衝撃的だ。
例えば、水と熱で熱湯を生み出すことが出来る。
音魔法と照明魔法で閃光発音筒とか出来る。
しかも魔法でのスタングレネードの場合、魔法操作次第で、自分の目と耳への影響を、限りなくゼロにすることも可能なんじゃないか……?
次は、同じ魔法を同時に発動することも試してみる。
少なくとも、両手から同時に別々の音を発生させることは可能だった。
うーむ、生活魔法の夢が広がるところだけど、こうしてみると洗浄だけがちょっと異質な感じがしてくる。
生活魔法の割に、応用の幅が狭いように感じられるんだよな。
俺が思いつかないだけで、洗浄にも面白い使い方があるような気がしてならない。
3階層でレッサーゴブリンをバッサバッサと斬り捨てながら、生活魔法の使い方を考える。
うーん、音感知と熱感知を合わせて、マジでレーダー的なことって出来ないかなぁ。
魔力感知スキルも合わせたら面白いような……。
「エアスラッシュ!」
魔力が回復したらしいシンに、エアスラッシュを試してもらう。
刃渡り50センチくらいの、切れ味の良い刃物が飛んでいく感じだね。
威力も中々で、レッサーゴブリンの骨ごとバッサリだった。
ただ、エアスラッシュの真骨頂は、その視認性の悪さにありそうだ。魔力を感じ取れれば避けれると思うけど、目視で回避するのは結構難しそうだ。
その分、スピードと有効射程距離は大したことない印象。奇襲には向いてるかもね。
今回、攻撃魔法の威力を目の当たりにして、生活魔法が軽んじられるのも無理はないな、と思った。
それと同時に、生活魔法の使い方を考えるほどに、生活魔法の研究が進んでいないのは不自然だとも感じる。
やっぱ情報操作されてると思って、警戒したほうがいいな。
ドロップ品の回収を手伝ういぬねこコンビを見ながら、この世界の奥深さに思いを馳せる俺であった、なんてね。
現在は1階層の少し奥まった場所にいる。
未だに、ポーターの子達さえ1階層は回っていないらしく、ほぼ無人状態だ。
実験するにはうってつけの環境である。
「ふわわとつららを見ながら付いていくから、マッドスライムが出たら攻撃魔法使ってみてくれ。どっちからでもいいから」
1階層なので危険はほぼ無い。2匹の運動とお散歩のために歩かせている。
流石に2匹とも生まれたばかりなので、人の足に合わせて歩くことはまだ出来ない。
ならば俺が一緒に居てやれば良いのだ。
くくく、これぞWIN-WINの関係というヤツだな!
なんか違う気もするけど。
「トーマ、見つけたよ」
前方からシンの声が聞こえる。
「おし。2人とも、シンのところまでいっそげー!」
ふりふりぽてぽてと走る2匹のお尻を眺めつつ、シンと合流する。
しっかし2匹とも頭いいよなぁ。こっちの指示はほぼ100%理解してる印象だ。
「じゃあ僕からストーンバレットを試してみるね」
「おーよろしく」
念のため、2匹を抱き上げておく。
「トーマ。やっぱり手のひらにしか魔力を集められない。
あと、込める魔力の量を調整することも難しそうだ」
「なるほどなるほど。あとは好きに発動してくれ」
「分かった。ストーンバレット!」
右手のひらをマッドスライムに向け、シンが魔法を発動する。
シンの右手から大きめの石が幾つか射出され、マッドスライム先生はばらばらに吹き飛んで行った。
ふむ、地面に大きな陥没が4つ、1つ1つもスリングショット以上の威力か。
抉れた後に石は見つからない。着弾後はすぐに霧散してしまう感じかな。
発射速度はなかなかだったけど、発動までに一瞬時間があった。
っと、そこまで考えてシンに目を向けると、呼吸が荒く汗も酷い。
「今の僕には魔力消費が多すぎるみたいだ……。
少なくとも、もう1発撃つ余裕は無いかな」
「了解、無理すんな」
流石に昨日魔法を覚えたばかりの2人には、攻撃魔法のコストは重いか。
俺はなんだかんだいって、初期と比べれば魔力量増えている実感があるからな。
魔装術と音魔法併用しても、全然余裕あるし。
「フレイムアロー!」
次はリーンセンパイのフレイムアローの確認。大きさ的には矢っていうより槍に近いんじゃね?
貫通力もそこそこで、ストーンバレットの3倍くらいの深さまで地面が抉れていた。
まぁみるみる直っていったけどね。迷宮の力ってすげー!
そしてマッドスライム先生、今回もお疲れ様です。
「リーン、辛かったら座っていいぞ」
「うん、だいじょぶ。あとやっぱり魔法名を言わないと発動できなかったよ」
無言で無詠唱では攻撃魔法は使えない、か。
これもマニュアルに記載されていた『縛り』の1つだと思うのが自然かな。
ただ、スキルで無詠唱発動とか出来るようになる可能性は、ゼロではないからなぁ。
そんなスキルは一般には知られてないみたいだけど、無いと言い切るのは危険だな。
なんせ生活魔法は、無言発動が可能なのだから。
「じゃあここで休んでても仕方ないし、ゆっくり3階層に移動しようか。
エアスラッシュは使えそうになったら試そう」
ちなみに俺自身も待機しながら、新しく覚えた生活魔法をちょいちょいこっそり試している。
照明魔法は、目晦ましや時限式の囮に使えるんじゃないかなと思う。
熱魔法はサーモセンサーみたいな使い方が出来ないか練習中。今のところ出来ない。
風魔法は今のところ、街行く女性のスカートをめくることすら出来なそう。
たださっき色々試していたら、ちょっと重大な事実が判明した。
風魔法と熱魔法、同時に発動できた上に、効果を合成できたのである。
まぁ平たく言ってドライヤーが完成しただけなのであるが、これは地味に大発見じゃなかろうか。
お風呂なんてこっちに来てから見たことないので、ドライヤー魔法の使いどころが難しいが、生活魔法が複数同時発動、効果合成が出来るのは結構衝撃的だ。
例えば、水と熱で熱湯を生み出すことが出来る。
音魔法と照明魔法で閃光発音筒とか出来る。
しかも魔法でのスタングレネードの場合、魔法操作次第で、自分の目と耳への影響を、限りなくゼロにすることも可能なんじゃないか……?
次は、同じ魔法を同時に発動することも試してみる。
少なくとも、両手から同時に別々の音を発生させることは可能だった。
うーむ、生活魔法の夢が広がるところだけど、こうしてみると洗浄だけがちょっと異質な感じがしてくる。
生活魔法の割に、応用の幅が狭いように感じられるんだよな。
俺が思いつかないだけで、洗浄にも面白い使い方があるような気がしてならない。
3階層でレッサーゴブリンをバッサバッサと斬り捨てながら、生活魔法の使い方を考える。
うーん、音感知と熱感知を合わせて、マジでレーダー的なことって出来ないかなぁ。
魔力感知スキルも合わせたら面白いような……。
「エアスラッシュ!」
魔力が回復したらしいシンに、エアスラッシュを試してもらう。
刃渡り50センチくらいの、切れ味の良い刃物が飛んでいく感じだね。
威力も中々で、レッサーゴブリンの骨ごとバッサリだった。
ただ、エアスラッシュの真骨頂は、その視認性の悪さにありそうだ。魔力を感じ取れれば避けれると思うけど、目視で回避するのは結構難しそうだ。
その分、スピードと有効射程距離は大したことない印象。奇襲には向いてるかもね。
今回、攻撃魔法の威力を目の当たりにして、生活魔法が軽んじられるのも無理はないな、と思った。
それと同時に、生活魔法の使い方を考えるほどに、生活魔法の研究が進んでいないのは不自然だとも感じる。
やっぱ情報操作されてると思って、警戒したほうがいいな。
ドロップ品の回収を手伝ういぬねこコンビを見ながら、この世界の奥深さに思いを馳せる俺であった、なんてね。
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