異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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4章 2人のために出来ること

071 話し合い① 犯罪奴隷の認識の齟齬

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 夕食会が終って、オーサンとクリリクさん、そしてオードルも残念ながら帰宅した。

 クリリクさんに呼ばれたら一発だったもんなぁ。
 流石犬だけあって、序列に厳しい。

 夕食会が終わったことを、ユリンさんに報告する。


「了解だよ。それとトーマ、部屋を変更しておいたからね。
 今まで止まってた部屋の向かい側の部屋だから、間違えんじゃないよ。
 はい、これが鍵ね」


 と言ってユリンさんは鍵を渡してきた。
 ……って、ちょっと待って!?


「いやいや確かに2人の部屋をお願いしたのは俺だけどさ、なんで俺の部屋まで変わるんだよ?
 別に1人部屋と2人部屋の別々でいいじゃんか」

「トーマは世間知らずだからそう思うんだろうけどね。犯罪奴隷だけで部屋に泊めるなんて、他のお客さんの手前出来ないんだよ。
 それにあの2人もトーマと一緒に居た方が助かるはずさ。
 仮にトーマが居ない時に何か起こったとしたら、あの2人は恐らく問答無用で悪者としてしょっ引かれてしまうよ。
 犯罪奴隷ってのはそういうモンなんだ」


 ……犯罪奴隷ってものを、甘く見すぎていたか。


「なるほど。俺が同行していれば所有者として監督責任だのなんだの、適当なことを言って間に立つことも出来るけど、俺が居ないと2人には社会的な意味で、身を守る術がないってこと?」

「そうだね。こんなことは言いたかぁないけど、例えばあの女の子が誰かに乱暴されたとする。
 一方的に、無抵抗で、武装した集団に襲われたとしても、犯罪奴隷の方が悪いとみなされるかもしれないってことさ。
 犯罪奴隷と一緒に生きるってことを、もう一度ちゃんと考えてみるこったね。
 あ、ウチは別に追い出したりはしないから安心しな。あの子らのことは以前から見てたしね」

「あ、ああ。ありがとうユリンさん。
 あ、それと読み書きはもう大丈夫だから、終わりにしてもらっても良いかな?」

「ははは、なんで金払う方のトーマが私にお伺いを立ててるんだい。
 授業は終わりだね。了解了解。
 まぁトーマの読み書きは問題ないレベルだと私も思うよ。今までありがとね」


 ユリンさんに読み書きの依頼終了を伝え、新しい部屋に行ってみるとする。
 確か今まで使ってた部屋の向かいって言ってたっけ。


 言われた部屋に入ってみると、そこは4人部屋のようだった。
 結局ベッドしか置いてないのは一緒なのだが、部屋面積はかなり広くなったように感じる。
 ベッドが1つ余るけど、3人部屋ってのはないのかもしれない。なんとなく半端だし。

 部屋に入り、それぞれベッドに腰掛けて、ふわわとつららも空いているベッドにリリースし、2人と改めて話をする。


「本当は別々の部屋を取るつもりだったけど、ユリンさんの配慮で同じ部屋になった。
 2人には悪いけど我慢してくれ」

「いや、僕たちもトーマと同室の方が助かるよ。犯罪奴隷、特にリーンは女だからね。もしも部屋に押し入られても、僕たちに抗う術がないんだ。
 トーマには迷惑ばかりかけてしまって、本当に申し訳ないと思う……」

「いやいや謝って欲しいわけじゃないさ。2人が良いなら問題ない」


 リーンがわざわざ移動してきて、俺の隣に座りなおし、横から抱きついてきた。
 なんかほんと距離なくなったなコイツ。

 というか今の話で、なんか嫌な想像したのかもしれない。


「あ……」


 頭でも撫でておこう。


「んー、なんかユリンさんの話を聞いて、オーサンが軽く考え過ぎだって言ってた意味がちょっと分かってきたよ。
 多分俺は犯罪奴隷に関して、全然理解できていないんだと思う。
 悪いけど2人とも、犯罪奴隷の扱いに関して詳しく教えて欲しい」


 せっかく助けた2人を甘い考えで傷つけてしまっては、なんのためのデスマだったのかわからなくなるからな。


「そうだな、先に俺の認識を説明した方がわかりやすいかな?
 俺の認識は、奴隷ってのは購入者の所有物であり、中でも犯罪奴隷ってのは全く人権がないってことが、なんとなく理解出来てきたって程度かな」

「うん。その認識で概ね合ってると思う。ただ恐らく感情面での理解が足りてないんじゃないかな。
 まず一般の奴隷、借金奴隷も含めてだけど、社会的にはさほど酷い扱いを受けることはないよ。奴隷契約は雇用契約の一種と思ってもらって構わない」


 リンカーズでは、奴隷の社会的立場はさほど低くない印象を受けるな。
 ということは犯罪奴隷だけが、別格で待遇が悪いということか。


「だけど犯罪奴隷だけは別なの。犯罪奴隷はだって思われてるの。
 実際私だって、自分が犯罪奴隷になるまでは同じことを思ってた……」


 ちっ……。
 報いって意味で、犯罪奴隷には全く救いがなく、それが社会常識化してるのか。
 本当に、今回のような冤罪の場合は、どうすればいいんだ?


「……ちょっと待て?
 なんかお前らが無差別に襲われてもおかしくないって話ばっかりだけど、そもそもお前らは俺の所有物扱いなんだろ?
 なんで所有者が居る筈の奴隷がそんなに危険なんだ?
 所有物を傷つけられたら、奴隷に人権がなくても所有者とトラブルになりえるだろ?それこそ賠償とか」

「うん、そこがトーマと他の人の認識の違いだね。
 普通の人は犯罪奴隷の所有者が奴隷を守るとは、まず思わないんだ。
 むしろ、何らかの報いを与えた方が所有者が喜ぶ、とまで思っている人が居ても不思議じゃない。
 犯罪奴隷を害して、それが原因で所有者と問題が起きると思っている人は、少ないんだ……」


 はぁ……?
 金払って購入した奴隷が傷つけられて喜ぶとか、特殊な趣味をお持ちの方くらいじゃないのかよ。


「じゃあなんだ。一般的に犯罪奴隷を購入する奴ってのは、わざわざ大金を払って購入するっていうのか?
 ……はっ、なかなかに狂った価値観なんだな」


 なるほど。
 なんで2人がこんなに強い感謝を俺に抱いているのか、少しずつ分かってきた。


「今まで実際にあった例だと、生きたまま魔物に食べさせて見世物にしたり、魔法薬の投薬実験に使われたり。
 女性の奴隷の場合は、ちょっと筆舌に尽くしがたいね……。魔物と交配させられた、なんて話もあるよ」


 シンの言葉を聞いてか、抱きついているリーンの腕の力が強くなる。


 どうやら2人は、本当に危ないところだったらしい。
 それこそ、普通に死ぬことすら許されないほど、劣悪で醜い場所に送られる寸前だった。

 そして、購入しただけで2人を助けた気になっていた俺は、犯罪奴隷というものを軽く考えすぎていた。

 犯罪奴隷となった今、これからも2人が安全に暮らせることはないようだ。
 やっぱり他人の人生になんて、簡単に踏み込むもんじゃないなぁ……。
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