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3章 別れと出会い
048 商工ギルド
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「お前もうさっさと6階層行った方がいいわ」
2人と別れて2日後、3度目の探索を終えて帰ってきたところでオーサンに捕まった。
「はぁ?アンタが装備整うまで5階層回れっつったんだろうが?しかもこっちはソロだ。無理したくないんだけど?」
6階層以降を見据えた装備、つまりは魔力耐性がある防具や魔力が通りやすい武器は一気に高価になる。ホムロにも確認したんだけど、銀板5枚以上は飛んでいくようなものばかりだった。
まぁ今なら普通に買えはするんだけどさ。
「お前1人でも毎日涼しい顔して5階層回ってくるじゃねぇか!
トーマに5階層はもうヌルすぎだ。さっさと先進め」
「はぁ……。まぁ今までオーサンの言うこと間違ってたと思ったことはないけどさ。それじゃ6階層の魔物教えてくれる?」
「ああ、6階層から出てくるのは『魔小精霊』だな。コイツは火属性の魔法攻撃をしてくるから、ダーティ素材防具は買い換えてからいけ。
全身は無理でも、一箇所くらいは魔法耐性の高い防具を着ていったほうがいい」
ウィスプ……、これもわりとファンタジーでは良く見る魔物かな。人魂みたいな外見してるんだろうか。
「まぁ厄介なのは魔法攻撃くらいで、多分トーマなら余裕で攻略できるだろう。
ドロップアイテムは『精霊の欠片』っつって、まぁ錬金術素材だな。魔法素材なので需要は高いぞ。100リーフで買い取っている」
お、とうとう単価が銀貨1枚のドロップ品が出たか。遭遇頻度次第ではかなり稼げそうだ。
「レッサーウィスプって攻撃が通りにくかったりしない?あ、あとダーティ素材の石斧で叩くのはやめた方がいいのかな?」
「レッサーウィスプは耐久力はかなり低いぞ。一撃入れれば霧散するんじゃねぇか?
ダーティ素材武器で攻撃するのはやめた方が良いだろうな。存在自体が魔力の塊みたいな魔物だからな。まぁダーティ素材でレッサーウィスプ殴ったやつなんてそうそう居ねぇだろうがな」
ガハハハと大口を開けてオーサンが馬鹿笑いしている。殆どの冒険者は、遅くても5階層にはダーティ素材装備を卒業するんだろうな。
って、ホムロ曰く、そもそも扱う冒険者が殆ど居ないんだったか。
「あ、そうだオーサン。最近収入が増えてきたのはいいんだけどさ、あまり大金を持ち歩くのはちょっと怖いと思ってるんだよね。お金を預けたりすることって出来ないのかな?」
ギルドカードに振り込んでおきますねーとかいう作品はよく目にするし。
「あ?それなら『商工ギルド』に登録すれば預金っつうサービスが受けられるぞ。
まぁ口座を開設するためには10000リーフ、金貨1枚必要になるから安くはねぇがな」
「うぇ、高すぎだろ!?」
「まぁ確かに高いとは思うがな、それだけ便利でもあるんだよ。トーマがさっき言ってたように大金を持ち歩く必要がなくなるし、身分証に情報が登録されているから、各ギルド間なら身分証を通した取引も可能になる。そのうえリヴァーブ王国内のギルドならどこでも引き出すことが可能だからな。
個人的には金貨1枚払っても惜しくないサービスだと思うぜ」
ふむ、どこでも引きだせるのは非常に有り難いな。現代の銀行預金と大差ないサービスとして利用できそうかな?
オーサンに場所を教えてもらって商工ギルドに行ってみる。
場所は迷宮を挟んで冒険者ギルドの反対側って感じだった。建物の造りが冒険者ギルドと結構似ているのでわりとすぐにわかった。
中に入ってみたけど、やっぱり内装も冒険者ギルドとあまり変わりないな。ギルド間で共通規格でも定められてるんだろうか。
よし、とりあえず受付だ。冒険者ギルドではすっかりオーサンが担当になってしまった今、商工ギルドでは綺麗なお姉さんに担当になってもらいたい。切実に!
そう思って受付の職員さんを見ていると、一番端っこの受付窓口に、タヌキっぽい獣人の職員さんが立っていた。
ブハッ!商工ギルドにタヌキの獣人とか似合いすぎだろ!これはあの人のところで受付するっきゃねぇ!
「済みませーん。商工ギルドに登録しに来ましたー」
「はいはい、身分証持ってたら貸してちょうだい。登録料は銀貨1枚だよ」
身分証と銀貨1枚を渡す。タヌキさんは窓口の横に置いてあった、パソコンのハードディスクみたいな四角い魔導具に身分証をセットした。
「はい確かに銀貨1枚頂きましたっと。9等級の冒険者さんなのね。なんで商工ギルドにも登録しようと思ったんだい?」
口調的にあんまり若くないのかな?でもユリンさんも似たような話し方だしなぁ。
「ああ、ちょっと預金サービスを利用しようと思いまして。預金の利用には商工ギルドに登録する必要があると言われたので」
「え!9等級冒険者で預金を利用するなんて珍しい人だねぇ!口座開設には金貨1枚が必要になるんだけど、払えるのかい?」
「はい、それも聞いてます。支払いは銀板で良いですか?」
そういってタヌキさんに銀板10枚を追加で渡す。
「へぇ~気前良く払うじゃないか。アンタは大物になりそうだ。
私ゃ商人ギルド所属の『ポポリポ』だよ。これから宜しくねトーマさん」
「なんで俺の名前、って身分証か。こちらこそよろしく」
「それじゃトーマさんは預金口座を開設したから、商人ギルドの5等級として扱われるよ。登録したてが6等級、口座開設が5等級の条件だからね」
なんだかいきなり5等級になってしまったぞ。確かに金貨1枚はなかなかに辛い出費だからなぁ。
「4等級の条件は口座入金累計250万リーフ。
3等級は4等級の条件を満たした上で自分名義の店舗を所持していること。
2等級は複数の都市で商売を展開することが条件で、1等級は商工ギルドの審査によって選出される一部の大商人って感じさ。
商売をする気がないなら4等級までしか関係が無いと思うけどね」
聞いてもいないことをスラスラと答えてくれた。ポポリポさんは有能っていうより話好きな人なんだろうな。
「あ、そうそう。入金にしても引き出しにしても、口座内のお金が動いた場合はその都度手数料として銀貨1枚が商工ギルドに支払われるからね。入金した金額と残高が合わないって文句言ってくるやつも居るから、ここはちゃんと理解しておいておくれよ?
口座作るときに必ず説明してるはずなんだけどねぇまったく」
あ、やべぇ。俺はその説明を受ける前に解説してしまったじゃないか。まぁ今更銀貨1枚くらい消費税みたいな感覚だけど。
リンカーズに来た当初、所持金1000リーフで怯えていたのが遠い昔のようだ。
「了解、ポポリポさんに迷惑はかけないようにするよ。
あー、あと俺ってまだ読み書きが不安でさ。誰かに習いたいんだよね。商工ギルドで読み書き教えてくれたりっていうサービスないかな?」
例えば冒険者ギルドの指導のような。そして口調は崩すことにした。ギルドの職員の方が砕けた口調なのに俺が敬語ってのもなんかね。
「んー、読み書きってのは基本的に親に習うか、教師を雇って教えてもらうもんだからねぇ。うちのギルドではそういうサービスはやってないねぇ。
商工ギルドに登録したわけだし、アンタが依頼を出すことも出来るから、教えてくれる人を探すのが早いんじゃないかねぇ?」
「へぇ、ギルドに登録してれば俺が依頼出しても良いのか。
報酬の相場とか分からないから相談しても良いかな?」
「勿論!そのためのギルド職員なんだからね。とりあえず、依頼の報酬とは別にギルドへ依頼の仲介料として銀貨1枚かかるよ」
なんかことあるごとに銀貨取られるな!
その後ポポリポさんと相談しつつ、読み書きを教えてくれる人募集の依頼を出した。
ただポポリポさんが言うには、宿暮らしの冒険者相手だと応募してくる人は少ないんじゃないかとのこと。
時間も報酬も応相談にしたのも、きちんと報酬がもらえるか、どのくらいの時間拘束されるかが分からないので応募してくる側から見ると不安になるかもしれないと。
うーん、俺としては貴方の都合に合わせられますよー、ってつもりだったんだけどな。
まぁ、最悪誰も受けてくれなくても別にいいか。リーンセンパイのおかげで最低限の読み書きは出来るようになったわけだし。
誰か受けてくれたらラッキー、くらいに思っておこう。
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「はぁ?アンタが装備整うまで5階層回れっつったんだろうが?しかもこっちはソロだ。無理したくないんだけど?」
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「ああ、6階層から出てくるのは『魔小精霊』だな。コイツは火属性の魔法攻撃をしてくるから、ダーティ素材防具は買い換えてからいけ。
全身は無理でも、一箇所くらいは魔法耐性の高い防具を着ていったほうがいい」
ウィスプ……、これもわりとファンタジーでは良く見る魔物かな。人魂みたいな外見してるんだろうか。
「まぁ厄介なのは魔法攻撃くらいで、多分トーマなら余裕で攻略できるだろう。
ドロップアイテムは『精霊の欠片』っつって、まぁ錬金術素材だな。魔法素材なので需要は高いぞ。100リーフで買い取っている」
お、とうとう単価が銀貨1枚のドロップ品が出たか。遭遇頻度次第ではかなり稼げそうだ。
「レッサーウィスプって攻撃が通りにくかったりしない?あ、あとダーティ素材の石斧で叩くのはやめた方がいいのかな?」
「レッサーウィスプは耐久力はかなり低いぞ。一撃入れれば霧散するんじゃねぇか?
ダーティ素材武器で攻撃するのはやめた方が良いだろうな。存在自体が魔力の塊みたいな魔物だからな。まぁダーティ素材でレッサーウィスプ殴ったやつなんてそうそう居ねぇだろうがな」
ガハハハと大口を開けてオーサンが馬鹿笑いしている。殆どの冒険者は、遅くても5階層にはダーティ素材装備を卒業するんだろうな。
って、ホムロ曰く、そもそも扱う冒険者が殆ど居ないんだったか。
「あ、そうだオーサン。最近収入が増えてきたのはいいんだけどさ、あまり大金を持ち歩くのはちょっと怖いと思ってるんだよね。お金を預けたりすることって出来ないのかな?」
ギルドカードに振り込んでおきますねーとかいう作品はよく目にするし。
「あ?それなら『商工ギルド』に登録すれば預金っつうサービスが受けられるぞ。
まぁ口座を開設するためには10000リーフ、金貨1枚必要になるから安くはねぇがな」
「うぇ、高すぎだろ!?」
「まぁ確かに高いとは思うがな、それだけ便利でもあるんだよ。トーマがさっき言ってたように大金を持ち歩く必要がなくなるし、身分証に情報が登録されているから、各ギルド間なら身分証を通した取引も可能になる。そのうえリヴァーブ王国内のギルドならどこでも引き出すことが可能だからな。
個人的には金貨1枚払っても惜しくないサービスだと思うぜ」
ふむ、どこでも引きだせるのは非常に有り難いな。現代の銀行預金と大差ないサービスとして利用できそうかな?
オーサンに場所を教えてもらって商工ギルドに行ってみる。
場所は迷宮を挟んで冒険者ギルドの反対側って感じだった。建物の造りが冒険者ギルドと結構似ているのでわりとすぐにわかった。
中に入ってみたけど、やっぱり内装も冒険者ギルドとあまり変わりないな。ギルド間で共通規格でも定められてるんだろうか。
よし、とりあえず受付だ。冒険者ギルドではすっかりオーサンが担当になってしまった今、商工ギルドでは綺麗なお姉さんに担当になってもらいたい。切実に!
そう思って受付の職員さんを見ていると、一番端っこの受付窓口に、タヌキっぽい獣人の職員さんが立っていた。
ブハッ!商工ギルドにタヌキの獣人とか似合いすぎだろ!これはあの人のところで受付するっきゃねぇ!
「済みませーん。商工ギルドに登録しに来ましたー」
「はいはい、身分証持ってたら貸してちょうだい。登録料は銀貨1枚だよ」
身分証と銀貨1枚を渡す。タヌキさんは窓口の横に置いてあった、パソコンのハードディスクみたいな四角い魔導具に身分証をセットした。
「はい確かに銀貨1枚頂きましたっと。9等級の冒険者さんなのね。なんで商工ギルドにも登録しようと思ったんだい?」
口調的にあんまり若くないのかな?でもユリンさんも似たような話し方だしなぁ。
「ああ、ちょっと預金サービスを利用しようと思いまして。預金の利用には商工ギルドに登録する必要があると言われたので」
「え!9等級冒険者で預金を利用するなんて珍しい人だねぇ!口座開設には金貨1枚が必要になるんだけど、払えるのかい?」
「はい、それも聞いてます。支払いは銀板で良いですか?」
そういってタヌキさんに銀板10枚を追加で渡す。
「へぇ~気前良く払うじゃないか。アンタは大物になりそうだ。
私ゃ商人ギルド所属の『ポポリポ』だよ。これから宜しくねトーマさん」
「なんで俺の名前、って身分証か。こちらこそよろしく」
「それじゃトーマさんは預金口座を開設したから、商人ギルドの5等級として扱われるよ。登録したてが6等級、口座開設が5等級の条件だからね」
なんだかいきなり5等級になってしまったぞ。確かに金貨1枚はなかなかに辛い出費だからなぁ。
「4等級の条件は口座入金累計250万リーフ。
3等級は4等級の条件を満たした上で自分名義の店舗を所持していること。
2等級は複数の都市で商売を展開することが条件で、1等級は商工ギルドの審査によって選出される一部の大商人って感じさ。
商売をする気がないなら4等級までしか関係が無いと思うけどね」
聞いてもいないことをスラスラと答えてくれた。ポポリポさんは有能っていうより話好きな人なんだろうな。
「あ、そうそう。入金にしても引き出しにしても、口座内のお金が動いた場合はその都度手数料として銀貨1枚が商工ギルドに支払われるからね。入金した金額と残高が合わないって文句言ってくるやつも居るから、ここはちゃんと理解しておいておくれよ?
口座作るときに必ず説明してるはずなんだけどねぇまったく」
あ、やべぇ。俺はその説明を受ける前に解説してしまったじゃないか。まぁ今更銀貨1枚くらい消費税みたいな感覚だけど。
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「了解、ポポリポさんに迷惑はかけないようにするよ。
あー、あと俺ってまだ読み書きが不安でさ。誰かに習いたいんだよね。商工ギルドで読み書き教えてくれたりっていうサービスないかな?」
例えば冒険者ギルドの指導のような。そして口調は崩すことにした。ギルドの職員の方が砕けた口調なのに俺が敬語ってのもなんかね。
「んー、読み書きってのは基本的に親に習うか、教師を雇って教えてもらうもんだからねぇ。うちのギルドではそういうサービスはやってないねぇ。
商工ギルドに登録したわけだし、アンタが依頼を出すことも出来るから、教えてくれる人を探すのが早いんじゃないかねぇ?」
「へぇ、ギルドに登録してれば俺が依頼出しても良いのか。
報酬の相場とか分からないから相談しても良いかな?」
「勿論!そのためのギルド職員なんだからね。とりあえず、依頼の報酬とは別にギルドへ依頼の仲介料として銀貨1枚かかるよ」
なんかことあるごとに銀貨取られるな!
その後ポポリポさんと相談しつつ、読み書きを教えてくれる人募集の依頼を出した。
ただポポリポさんが言うには、宿暮らしの冒険者相手だと応募してくる人は少ないんじゃないかとのこと。
時間も報酬も応相談にしたのも、きちんと報酬がもらえるか、どのくらいの時間拘束されるかが分からないので応募してくる側から見ると不安になるかもしれないと。
うーん、俺としては貴方の都合に合わせられますよー、ってつもりだったんだけどな。
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