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2章 強さへの道標

031 3階層探索の方針

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「さてと、この後どうするか。初日だし無理せずここで上がるか?」


 俺自身は怪我もしてないし疲労も感じない。続けても問題ないとは思うのだが、資金的にもまだ余裕がある。今日無理する必要は特にない。


「あ、トーマが良いなら今日はここまでにしておこうかな。このあと武器屋に寄りたいと思ってる。ちょっとこれ見てよ」


 シンが腰の剣を抜いて、俺に刃を見るように言ってくる。

 ……よく見ると、所々刃こぼれしているようだな。わざわざ俺に見せたのは、ひょっとして今日の3階層探索だけでこの状態になったってことか?


「お察しの通り、今日1日でこの状態になったんだ。だから武器屋に修理に出そうと思っててね。
 トーマやリーンの武器も一応武器屋で状態を確認してもらった方が良いと思う」


 シンの言葉に素直に感心する。

 シンの考え方は常に慎重で合理的だ。何も考えず「なんとなくまだいけそう」とか考えている俺より、19歳も年下の少年のほうが落ち着いてるってのは、大人として非常に情けなく感じざるを得ない。


「なるほど、そういうことなら今日は切り上げよう。武器の状態とか気にもしてなかったわ。シンはいつも色々考えてるよな。俺も見習わないと」

「いやいや、自分でも冒険者らしくない考え方だと思うんだけどね。商売人として色々な角度で物事を見るように教育されたのが活かせているってことなら、両親のおかげだね。
 それと元々、剣なんかの斬撃武器は消耗が激しいって言われていたんだ。だから常に武器の状態には気をつけてたんだよ」


 人生どんな経験が役に立つかわかんないのは、日本もリンカーズも変わらずってね。




「シンの武器は損傷が激しいな。トーマとリーンの武器は問題ないと思うが、ついでだし一緒に見てやる。防具も見た感じ破損は無さそうだし、強度的にも3階層くらいで抜かれるこたぁないはずだ」


 ホムロに装備一式を確認してもらい、武器はメンテしてもらう。修理はさほど時間がかからないらしいので、このまま店で待たせてもらうことにする。

 ホムロが武器を置いて戻ってきた。こいつが修理するんじゃないんか。


「シンの剣は補修再生しなきゃならんから銀貨1枚。リーンとトーマの短剣は損耗してなかったから研ぎだけだ。
 本当は銅貨6枚だが、初回だしサービスしていてやる」

「サンキューホムロ。あの短剣はまぁまぁ良いお値段だったから長く使わないとね。それと頭部を守るものが欲しいんだけどなんかあるかな?」


 鑑定能力なんて持ってないので装備の目利きなど出来ない。装備品のプロであろうホムロに相談するのが多分一番無難だと思ってる。


「……なんだかんだ言って、トーマが一番頻繁に買い物してる気がするな。まぁ単価は安いから大した上客ってわけでもねぇけどよ。
 ふん、しばらく3階層だろうし打撃耐性はあまり必要ないか。ならトーマ御用達のダーティ素材の帽子でどうだ。噛み付きや引っかきに対してなら充分な性能だと思う」


 べ、別に俺だって好きでダーティ素材装備を買ってるわけじゃないんだからねっ!?勘違いしないでよねっ!ただお金がないだけなんだからねっ!?


「俺の御用達とか、他に誰も買ってる奴いねーってことかよ?まぁいいけど。3階層で戦ってみてダーティ素材防具の耐久性は確認出来たし、それ貰うよ」

「ああ、銀貨1枚でいい。サイズを確認してくれ」


 ダーティレザーの帽子を購入。耳の上辺りまであるヘルメットのような構造で、そこから下はダーティレザーがカーテンみたいに付属していて、後頭部から顎のあたりまでを覆うデザインになっている。
 顎にベルトを引っ掛けて固定するのもヘルメットと変わんないな。

 帽子のサイズ調整を終えたあたりで、武器のメンテナンスが終ったと言われる。
 ん~、体感でしかないけど30分から1時間くらいかな?

 メンテを終えて戻ってきたシンの武器は刃こぼれ1つなくなって、新品と見分けが付かないほどだった。
 補修再生って言ってたっけ。どうやったんだが知らんけど、本当に破損箇所が元に戻ってる。魔法ってすげーな、なんでもありか。


「オーサンが予備の剣を揃えてから3階層に行けって言ってた意味が分かるね。剣1本だと毎回ここで少し待たされてしまうけど、2つあれば潜ってある間に修理に出せる。
 1回ごとに銀貨1枚の出費は痛いけれど、収入を考えれば問題ない。これなら明日からは時間いっぱい稼げると思うよ」

「レッサーゴブリン程度なら、骨に思い切り斬りつけても剣が折れるようなことはないはずだ。1回ごとにうちに修理に出していくってんなら、まず安全だろうな」


 これで3階層で戦い続ける目処も立った。明日からは精力的に探索しよう。


 ……そういえばリーンが静かだなと思って店内を見渡してみると、隅っこの方で椅子に座って舟を漕いでいた。

 待ちくたびれて寝てしまった模様。しかし背もたれも肘掛もないただの丸椅子なのに、よく落ちずに寝れるもんだ。


 やっぱりどこか猫っぽいところあるよなコイツ。
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