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2章 強さへの道標
030 3階層での手応え
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俺たちの3階層探索は、今のところ順調だ。
レッサーゴブリンには、あまり知性を感じない。俺が注意を引きつけることが出来れば、感情のままに突っ込んでくる。
小柄で少し標的が小さくはあるものの、敏捷性が高いというわけでもなく、落ち着いてさえいれば攻撃を当てることも回避することも難しくない。
余裕のあるときに腕と足をわざと噛まれてみたが、奴らの歯がダーティ素材の服を貫通することはなく、露出している手と、頭部にさえ噛み付かれなければ、ほぼ事故が起こる心配は無さそうだ。
レッサーゴブリンは背が低いので、頭部に攻撃を受ける可能性は元々低そうだし。
ただ、噛まれても怪我まではしないが、痛いことは痛い模様。
慣れてくると、行動パターンもシンプルなのが分かってきた。
基本的には飛びついて相手に取り付き、そこから噛み付き攻撃と、抱きつきと引き倒しに繋げる、という感じだ。
フェイントのような発想もなく、正面から真っ直ぐ突っ込んでくるだけなので、単体での脅威度ははっきり言ってネズミ以下で間違いない。
やはりこいつらの危険性の多くは、集団であることだろう。
2階層で活動し慣れた冒険者が、5人以上で纏まって動けば、2階層とさほど難易度は変わらないのではないかと感じる。
逆に俺たちのように少人数だったり、ソロで戦う場合は、3階層の難易度は本当に跳ね上がってしまうことだろう。
とにかくレッサーゴブリンは、数が多い。最低3体以上は常にまとまっていると聞いていたが、5体以下の集団になんて一度も遭遇していない。平均で言うなら7~9体くらいだろうか。
エンカウント率も高くて、3階層は1戦1戦の間隔も短く、一度戦闘中の増援も経験した。
ひとつ幸いなのは、こいつらギャアギャア煩いために、よほどの混戦状態でもない限り、新手の出現に気付かないということはなさそうだということだ。
増援によって奇襲を受けることが一番危険な想定だったが、ただ単に敵が増えただけならば、戦闘時間が少し長くなるだけだった。
「トーマ、次は奇襲じゃなくて、正面からぶつかってみてもいい?
奇襲出来なかったときに戦えませんじゃ、やっていけなくなっちゃうし」
シンが提案する。尤もな意見だな。先ほど増援があった際も問題なく立ち回れたと思うし、真っ向勝負でも恐らく大丈夫だろう。
「了解。次は奇襲なしな。2人がレッサーゴブリンに後れを取るとは思ってないが、奇襲の時と比べて相手に攻撃される機会は増えるだろうから、気ぃつけてくれよ」
「うん、注意するよ。それと奇襲の時と比べて、僕たち全員の戦闘位置が近くなると思う。同士討ちなんてしないように、お互い注意しよう。
特にトーマの石斧は、威力も攻撃射程も僕たちの中では一番だから、僕とリーンはトーマの位置を常に念頭において戦わないといけないからね?」
「うん。戦ってる間はトーマに近付かないようにするね」
なんかその言い方だと、俺が敵味方の区別なく襲い掛かるバーサーカーみたいに聞こえませんかね?
ただ、シンの言ってることは分かる。2人のほうで気をつけてくれるとは言っても、俺自身も意識の端っこに置いておくことにする。
「見つけたね。数は……8、いや9体か。
じゃあ今回は僕が先陣を切るから、リーンは僕の援護を、トーマは遊撃して、積極的に数を減らしてほしい。
僕は敵の注意を引きつけるようなことはしないから、みんなも気をつけてね」
「うん、わかった」
「了解。ま、俺たちならやれるさ。油断せず行こう」
短く最終確認を済ませて、敵に近付く。今回は正面からの真っ向勝負なので、相手が気付くまで歩いて近付く。
お互いの距離が10メートルくらいまで近付いて、ようやくこちらの存在に気付いたようだ。猿っぽい見た目の割に、こいつらって五感があまり鋭くないような気がする。
全員がこちらに気付いたのを確認し「行くよ!」と短く声をあげシンが敵に走り寄る。リーンと俺もそれに続く。
勢い良くシンが袈裟斬りをお見舞いしているのを横目に見る。
リーンはシンの後方で全体の位置を確認しつつ、積極的に攻めに回らず、シンの援護を優先するようだ。
「っせぃ!」
シンからある程度離れた、群れの外側にいた個体に石斧で殴りかかる。
ゴキュっと鈍い音がして、頭部に深く大きな凹みが出来る。
続けざまに、もう1体に横薙ぎを叩き込む。
武器を引きつつ一瞬周囲を確認、攻撃射程内の敵はいないと判断し、頭部を狙って追撃の一撃。
頭部の上半分を叩き潰した。
前方に、シンと俺のどっちに向かうか迷っているアホがいたので、頭部を殴り飛ばしてやる。
これで彼も悩みから解放されることだろう。
その様子を見て、近くの2体がこちらに向かってくる。先ほどまでタンク役で、集団全体の注意を引いていたのだ。2体程度を、同時に相手取るのは問題ない。
先に飛び掛ってきた相手のどてっ腹に、石斧を叩き込む。
武器を引き抜きつつ、後ろにいたもう1体の頭部を狙って、石斧によるチョッピングライト!
地面に叩きつけて頭部が爆散した。キモっ。
振り返ると、腹を押さえて蹲っている個体がいたので、石斧を叩き込んでおく。近くに敵がいなくなった。
注意の範囲を広げてみると、最後の1体に背中から体当たりするような形で、リーンが短剣を突き刺しているところだった。
ふむ、どうやら終ったようだな。
声をかける前に、周囲を見渡しながら、耳も澄ましてみる。
近くに他の群れは居ないと判断。
「ドロップ品は俺が集めるから、2人は警戒しながらそのまま休憩しててくれ」
正面戦闘だったので、今までより俺の負担は減って、2人の負担は増えていただろう。
ここは俺が働いて、2人を休ませることにする。
ドロップ品をささっと回収し、2人と合流する。
「おつかれさん。2人とも怪我は無いか?俺のほうはなんともない」
「うん、僕もリーンも無事だよ。とりあえずこれで、3階層を問題なく回っていけるって、自信にはなったかな」
「私も頑張って役に立つからねー!」
どうやら正面から戦っても、被害なく完全勝利することができたようだな。
このあとは奇襲するのはやめて、なるべく正面から戦うことにした。戦闘経験だって足りていないのだから、楽をするのは最低限にしないとな。
探索を終えてギルドに戻ったときに、改めて3階層の旨みというものを思い知った。レッサーフラワーの単価は5リーフと大した値段じゃないが、一度の戦闘で7~9体は戦うことになる。
そしてマッドスライムを探すよりも遭遇率が高く、ドロップ品もソフトボール大だった粘土と比べて、テニスボールくらいの大きさしかないため、一度に持てる量もレッサーフラワーのほうが多い。
新しく買ったリュックの容量もでかいしね。
狩った数は223体、換金額は1115リーフになった。
1回の探索の報酬でこれだから、金策の効率も今までとは段違いである。まだ日没までには、かなり時間がありそうだし。
3階層とギルドまでの往復距離は伸びているが、1日3回も潜れれば、1人頭で日当が銀板単位に及ぶ。
こりゃあ完全に、1階層巡りは卒業だなぁ。
ばいばいマッドスライムさん!君たちのことは忘れないよ!
レッサーゴブリンには、あまり知性を感じない。俺が注意を引きつけることが出来れば、感情のままに突っ込んでくる。
小柄で少し標的が小さくはあるものの、敏捷性が高いというわけでもなく、落ち着いてさえいれば攻撃を当てることも回避することも難しくない。
余裕のあるときに腕と足をわざと噛まれてみたが、奴らの歯がダーティ素材の服を貫通することはなく、露出している手と、頭部にさえ噛み付かれなければ、ほぼ事故が起こる心配は無さそうだ。
レッサーゴブリンは背が低いので、頭部に攻撃を受ける可能性は元々低そうだし。
ただ、噛まれても怪我まではしないが、痛いことは痛い模様。
慣れてくると、行動パターンもシンプルなのが分かってきた。
基本的には飛びついて相手に取り付き、そこから噛み付き攻撃と、抱きつきと引き倒しに繋げる、という感じだ。
フェイントのような発想もなく、正面から真っ直ぐ突っ込んでくるだけなので、単体での脅威度ははっきり言ってネズミ以下で間違いない。
やはりこいつらの危険性の多くは、集団であることだろう。
2階層で活動し慣れた冒険者が、5人以上で纏まって動けば、2階層とさほど難易度は変わらないのではないかと感じる。
逆に俺たちのように少人数だったり、ソロで戦う場合は、3階層の難易度は本当に跳ね上がってしまうことだろう。
とにかくレッサーゴブリンは、数が多い。最低3体以上は常にまとまっていると聞いていたが、5体以下の集団になんて一度も遭遇していない。平均で言うなら7~9体くらいだろうか。
エンカウント率も高くて、3階層は1戦1戦の間隔も短く、一度戦闘中の増援も経験した。
ひとつ幸いなのは、こいつらギャアギャア煩いために、よほどの混戦状態でもない限り、新手の出現に気付かないということはなさそうだということだ。
増援によって奇襲を受けることが一番危険な想定だったが、ただ単に敵が増えただけならば、戦闘時間が少し長くなるだけだった。
「トーマ、次は奇襲じゃなくて、正面からぶつかってみてもいい?
奇襲出来なかったときに戦えませんじゃ、やっていけなくなっちゃうし」
シンが提案する。尤もな意見だな。先ほど増援があった際も問題なく立ち回れたと思うし、真っ向勝負でも恐らく大丈夫だろう。
「了解。次は奇襲なしな。2人がレッサーゴブリンに後れを取るとは思ってないが、奇襲の時と比べて相手に攻撃される機会は増えるだろうから、気ぃつけてくれよ」
「うん、注意するよ。それと奇襲の時と比べて、僕たち全員の戦闘位置が近くなると思う。同士討ちなんてしないように、お互い注意しよう。
特にトーマの石斧は、威力も攻撃射程も僕たちの中では一番だから、僕とリーンはトーマの位置を常に念頭において戦わないといけないからね?」
「うん。戦ってる間はトーマに近付かないようにするね」
なんかその言い方だと、俺が敵味方の区別なく襲い掛かるバーサーカーみたいに聞こえませんかね?
ただ、シンの言ってることは分かる。2人のほうで気をつけてくれるとは言っても、俺自身も意識の端っこに置いておくことにする。
「見つけたね。数は……8、いや9体か。
じゃあ今回は僕が先陣を切るから、リーンは僕の援護を、トーマは遊撃して、積極的に数を減らしてほしい。
僕は敵の注意を引きつけるようなことはしないから、みんなも気をつけてね」
「うん、わかった」
「了解。ま、俺たちならやれるさ。油断せず行こう」
短く最終確認を済ませて、敵に近付く。今回は正面からの真っ向勝負なので、相手が気付くまで歩いて近付く。
お互いの距離が10メートルくらいまで近付いて、ようやくこちらの存在に気付いたようだ。猿っぽい見た目の割に、こいつらって五感があまり鋭くないような気がする。
全員がこちらに気付いたのを確認し「行くよ!」と短く声をあげシンが敵に走り寄る。リーンと俺もそれに続く。
勢い良くシンが袈裟斬りをお見舞いしているのを横目に見る。
リーンはシンの後方で全体の位置を確認しつつ、積極的に攻めに回らず、シンの援護を優先するようだ。
「っせぃ!」
シンからある程度離れた、群れの外側にいた個体に石斧で殴りかかる。
ゴキュっと鈍い音がして、頭部に深く大きな凹みが出来る。
続けざまに、もう1体に横薙ぎを叩き込む。
武器を引きつつ一瞬周囲を確認、攻撃射程内の敵はいないと判断し、頭部を狙って追撃の一撃。
頭部の上半分を叩き潰した。
前方に、シンと俺のどっちに向かうか迷っているアホがいたので、頭部を殴り飛ばしてやる。
これで彼も悩みから解放されることだろう。
その様子を見て、近くの2体がこちらに向かってくる。先ほどまでタンク役で、集団全体の注意を引いていたのだ。2体程度を、同時に相手取るのは問題ない。
先に飛び掛ってきた相手のどてっ腹に、石斧を叩き込む。
武器を引き抜きつつ、後ろにいたもう1体の頭部を狙って、石斧によるチョッピングライト!
地面に叩きつけて頭部が爆散した。キモっ。
振り返ると、腹を押さえて蹲っている個体がいたので、石斧を叩き込んでおく。近くに敵がいなくなった。
注意の範囲を広げてみると、最後の1体に背中から体当たりするような形で、リーンが短剣を突き刺しているところだった。
ふむ、どうやら終ったようだな。
声をかける前に、周囲を見渡しながら、耳も澄ましてみる。
近くに他の群れは居ないと判断。
「ドロップ品は俺が集めるから、2人は警戒しながらそのまま休憩しててくれ」
正面戦闘だったので、今までより俺の負担は減って、2人の負担は増えていただろう。
ここは俺が働いて、2人を休ませることにする。
ドロップ品をささっと回収し、2人と合流する。
「おつかれさん。2人とも怪我は無いか?俺のほうはなんともない」
「うん、僕もリーンも無事だよ。とりあえずこれで、3階層を問題なく回っていけるって、自信にはなったかな」
「私も頑張って役に立つからねー!」
どうやら正面から戦っても、被害なく完全勝利することができたようだな。
このあとは奇襲するのはやめて、なるべく正面から戦うことにした。戦闘経験だって足りていないのだから、楽をするのは最低限にしないとな。
探索を終えてギルドに戻ったときに、改めて3階層の旨みというものを思い知った。レッサーフラワーの単価は5リーフと大した値段じゃないが、一度の戦闘で7~9体は戦うことになる。
そしてマッドスライムを探すよりも遭遇率が高く、ドロップ品もソフトボール大だった粘土と比べて、テニスボールくらいの大きさしかないため、一度に持てる量もレッサーフラワーのほうが多い。
新しく買ったリュックの容量もでかいしね。
狩った数は223体、換金額は1115リーフになった。
1回の探索の報酬でこれだから、金策の効率も今までとは段違いである。まだ日没までには、かなり時間がありそうだし。
3階層とギルドまでの往復距離は伸びているが、1日3回も潜れれば、1人頭で日当が銀板単位に及ぶ。
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