異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
32 / 580
2章 強さへの道標

030 3階層での手応え

しおりを挟む
 俺たちの3階層探索は、今のところ順調だ。

 レッサーゴブリンには、あまり知性を感じない。俺が注意を引きつけることが出来れば、感情のままに突っ込んでくる。

 小柄で少し標的が小さくはあるものの、敏捷性が高いというわけでもなく、落ち着いてさえいれば攻撃を当てることも回避することも難しくない。

 余裕のあるときに腕と足をわざと噛まれてみたが、奴らの歯がダーティ素材の服を貫通することはなく、露出している手と、頭部にさえ噛み付かれなければ、ほぼ事故が起こる心配は無さそうだ。
 レッサーゴブリンは背が低いので、頭部に攻撃を受ける可能性は元々低そうだし。

 ただ、噛まれても怪我まではしないが、痛いことは痛い模様。


 慣れてくると、行動パターンもシンプルなのが分かってきた。
 基本的には飛びついて相手に取り付き、そこから噛み付き攻撃と、抱きつきと引き倒しに繋げる、という感じだ。
 フェイントのような発想もなく、正面から真っ直ぐ突っ込んでくるだけなので、単体での脅威度ははっきり言ってネズミ以下で間違いない。

 やはりこいつらの危険性の多くは、集団であることだろう。


 2階層で活動し慣れた冒険者が、5人以上で纏まって動けば、2階層とさほど難易度は変わらないのではないかと感じる。
 逆に俺たちのように少人数だったり、ソロで戦う場合は、3階層の難易度は本当に跳ね上がってしまうことだろう。


 とにかくレッサーゴブリンは、数が多い。最低3体以上は常にまとまっていると聞いていたが、5体以下の集団になんて一度も遭遇していない。平均で言うなら7~9体くらいだろうか。

 エンカウント率も高くて、3階層は1戦1戦の間隔も短く、一度戦闘中の増援も経験した。


 ひとつ幸いなのは、こいつらギャアギャア煩いために、よほどの混戦状態でもない限り、新手の出現に気付かないということはなさそうだということだ。
 増援によって奇襲を受けることが一番危険な想定だったが、ただ単に敵が増えただけならば、戦闘時間が少し長くなるだけだった。

 

「トーマ、次は奇襲じゃなくて、正面からぶつかってみてもいい?
 奇襲出来なかったときに戦えませんじゃ、やっていけなくなっちゃうし」

 シンが提案する。尤もな意見だな。先ほど増援があった際も問題なく立ち回れたと思うし、真っ向勝負でも恐らく大丈夫だろう。


「了解。次は奇襲なしな。2人がレッサーゴブリンに後れを取るとは思ってないが、奇襲の時と比べて相手に攻撃される機会は増えるだろうから、気ぃつけてくれよ」

「うん、注意するよ。それと奇襲の時と比べて、僕たち全員の戦闘位置が近くなると思う。同士討ちなんてしないように、お互い注意しよう。
 特にトーマの石斧は、威力も攻撃射程も僕たちの中では一番だから、僕とリーンはトーマの位置を常に念頭において戦わないといけないからね?」

「うん。戦ってる間はトーマに近付かないようにするね」


 なんかその言い方だと、俺が敵味方の区別なく襲い掛かるバーサーカーみたいに聞こえませんかね?

 ただ、シンの言ってることは分かる。2人のほうで気をつけてくれるとは言っても、俺自身も意識の端っこに置いておくことにする。


「見つけたね。数は……8、いや9体か。
 じゃあ今回は僕が先陣を切るから、リーンは僕の援護を、トーマは遊撃して、積極的に数を減らしてほしい。
 僕は敵の注意を引きつけるようなことはしないから、みんなも気をつけてね」

「うん、わかった」

「了解。ま、俺たちならやれるさ。油断せず行こう」


 短く最終確認を済ませて、敵に近付く。今回は正面からの真っ向勝負なので、相手が気付くまで歩いて近付く。

 お互いの距離が10メートルくらいまで近付いて、ようやくこちらの存在に気付いたようだ。猿っぽい見た目の割に、こいつらって五感があまり鋭くないような気がする。


 全員がこちらに気付いたのを確認し「行くよ!」と短く声をあげシンが敵に走り寄る。リーンと俺もそれに続く。

 勢い良くシンが袈裟斬りをお見舞いしているのを横目に見る。
 リーンはシンの後方で全体の位置を確認しつつ、積極的に攻めに回らず、シンの援護を優先するようだ。


「っせぃ!」


 シンからある程度離れた、群れの外側にいた個体に石斧で殴りかかる。
 ゴキュっと鈍い音がして、頭部に深く大きな凹みが出来る。

 続けざまに、もう1体に横薙ぎを叩き込む。
 武器を引きつつ一瞬周囲を確認、攻撃射程内の敵はいないと判断し、頭部を狙って追撃の一撃。
 頭部の上半分を叩き潰した。

 前方に、シンと俺のどっちに向かうか迷っているアホがいたので、頭部を殴り飛ばしてやる。
 これで彼も悩みから解放されることだろう。

 その様子を見て、近くの2体がこちらに向かってくる。先ほどまでタンク役で、集団全体の注意を引いていたのだ。2体程度を、同時に相手取るのは問題ない。

 先に飛び掛ってきた相手のどてっ腹に、石斧を叩き込む。
 武器を引き抜きつつ、後ろにいたもう1体の頭部を狙って、石斧によるチョッピングライト!
 地面に叩きつけて頭部が爆散した。キモっ。

 振り返ると、腹を押さえて蹲っている個体がいたので、石斧を叩き込んでおく。近くに敵がいなくなった。


 注意の範囲を広げてみると、最後の1体に背中から体当たりするような形で、リーンが短剣を突き刺しているところだった。
 ふむ、どうやら終ったようだな。


 声をかける前に、周囲を見渡しながら、耳も澄ましてみる。
 近くに他の群れは居ないと判断。


「ドロップ品は俺が集めるから、2人は警戒しながらそのまま休憩しててくれ」


 正面戦闘だったので、今までより俺の負担は減って、2人の負担は増えていただろう。
 ここは俺が働いて、2人を休ませることにする。


 ドロップ品をささっと回収し、2人と合流する。


「おつかれさん。2人とも怪我は無いか?俺のほうはなんともない」

「うん、僕もリーンも無事だよ。とりあえずこれで、3階層を問題なく回っていけるって、自信にはなったかな」

「私も頑張って役に立つからねー!」


 どうやら正面から戦っても、被害なく完全勝利することができたようだな。


 このあとは奇襲するのはやめて、なるべく正面から戦うことにした。戦闘経験だって足りていないのだから、楽をするのは最低限にしないとな。


 探索を終えてギルドに戻ったときに、改めて3階層の旨みというものを思い知った。レッサーフラワーの単価は5リーフと大した値段じゃないが、一度の戦闘で7~9体は戦うことになる。
 そしてマッドスライムを探すよりも遭遇率が高く、ドロップ品もソフトボール大だった粘土と比べて、テニスボールくらいの大きさしかないため、一度に持てる量もレッサーフラワーのほうが多い。
 新しく買ったリュックの容量もでかいしね。

 狩った数は223体、換金額は1115リーフになった。

 1回の探索の報酬でこれだから、金策の効率も今までとは段違いである。まだ日没までには、かなり時間がありそうだし。


 3階層とギルドまでの往復距離は伸びているが、1日3回も潜れれば、1人頭で日当が銀板単位に及ぶ。
 こりゃあ完全に、1階層巡りは卒業だなぁ。


 ばいばいマッドスライムさん!君たちのことは忘れないよ!
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...