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2章 強さへの道標
027 魔装術と暗視
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「冒険者として成功するためには、万人に共通する壁ってのがいくつかある。ベイクの3階層ってのは、その壁の1つと言って良い。お前らならここで躓くようなことはないだろうがな。
勿論、油断は禁物だが」
オーサンは、先ほどよりも更に真剣な口調で語り続ける。
「3階層を超えた冒険者の殆どがぶつかる壁が2つある。
1つは、階層を進むほどに、視界が確保できなくなること。
もう1つは、激化する魔物との戦闘が原因で、装備の損耗率が著しく上がってしまうことだ」
確かに1階層と比べて若干ではあるが、2階層は暗さを増している。探索初日に雑貨屋で聞いた話では、5階層くらいに行くと、もはや視界が殆ど確保できなくなるらしい。
かと言って、松明やランプなど持ったまま魔物と戦うのは難しく、それ以上先に進むなら、それなりの対策を取らないといけないという。
そして、運が悪ければ2階層ですら武器が損壊してしまうことは、シンが体験したばかりの話だ。
「冒険者としてこの先やって行きたいなら、この2つの壁を越える為に、必ず取得しなければいけない2つのスキルがある。
1つ目は『暗視』スキル。これは、暗く光の入らない場所でも、日中と同じような視界が得られる能力だ。
そしてもう1つは『魔装術』スキル。装備に魔力を纏わせることで、己の魔力を代償に、装備の耐久度や攻撃の威力を底上げするスキルだ。
この2つは迷宮探索でも必須スキルだし、迷宮の外で活動する場合にも非常に有用で強力なスキルだ」
暗視と魔装術スキル。
暗視は分かるけど、魔装術の方は漫画やアニメでよく見る、オーラを纏う技術みたいなものかな。身体強化魔法ならぬ、装備品強化魔法、といったところだろうか。
「この2つのスキルには非常に厄介な共通点があってな。どちらのスキルも必要になった時点では、とてもじゃないが取得できるスキルじゃないんだ。
必要なスキルがない状態で、スキルが必要な階層をどう攻略していくか。これこそが、2つの壁の本質だと言えるだろう」
うわぁ意地が悪いなぁ……。
最もスキルが必要なタイミングでは取得できなくて、そこを無事通過した後に取得できてしまうのか。
まぁその後も有用なスキルだから、文句なんて出ないんだろうけど。
「まぁ何度も言うけど、まずは3階層で、みっちり実戦経験を積むことが大切だ。言い出した俺がこう言うのもなんだが、その先のことを今考えても仕方ないっちゃ仕方ない。
お前ら3人はいっぱしの冒険者になる素質はあると思ってる。焦らずに一歩一歩着実に成長するのが、結局は一番の近道だぞ」
そこまで言ってオーサンは「今日は疲れたからもう寝る」と、奥の部屋に引っ込んでしまった。
「きっと喋りすぎて恥ずかしくなっちゃったんだと思うわぁ」と、クリリクさんは慣れたものだった。
夕食の片づけを手伝ってから、帰宅する時になってもオーサンは顔を見せず、クリリクさんが家の外まで見送りに来てくれた。
「最近あの人、トーマさんのことをよく話してくれるのよぉ。見てて危なっかしい、放っておけないって、半分くらいは愚痴なんだけどねぇ。トーマさん、これからもオーサンと仲良くしてくださいねぇ。
3人とも、またいつでもいらっしゃい。片付け手伝ってくれてありがと」
おっさんのツンデレとか需要ないです。
今日はもう疲労感が半端じゃなく、遅い時間でもあったので、今日の話を踏まえての先の話については、明日ギルドで改めて相談することになった。
お互い、もうとっとと寝たかっただけとも言う。
宿に戻った俺は、狭い部屋の中で日課の自己流インチキストレッチをこなしながら、今日の話を思い返す。
今日の話で一番気になったのは、魔装術というスキルのことだ。
トイレやランプを普通に使用できていることから、俺が魔力なしってことはないだろうとは思っていた。
なので、体内の魔力を感じ取ったり操作したり出来ないかなぁと、イメージトレーニングのようなことを行っていたのだが、今まで上手く行った試しがなかった。
魔装術の話から推測すると、該当するスキルを所持していない限り、魔力を操作する技術を勝手に自力習得したりは出来ないんじゃないか?
そうでなければ、スキルを持たずにスキルと同等のことが可能になってしまうかもしれないからだ。スキルシステムを根底から覆してしまいかねない。
この世界のスキルシステムは、努力し技術を磨いた成果としてスキルが与えられるのではなく、スキルを取得することで、スキルに該当した技術の使用を許可される、という順番のような気がする。
トイレやランプなどの日常品は、スキルを持たない人でも使用できるように、魔力自動吸引方式を採用しているのではないのかと。
つまりはこの世界は、努力するにも順番があるということだ。
正しく順番を理解し、適切な時間と対価を支払うことで、確実に強くなっていける反面、順番を間違えていることに気付けないと、いつまで経っても前に進めないのだ。
そして、今日の話の中で忘れちゃいけないのは、やっぱり奴隷の存在ですよね。
まさかこんな身近に、奴隷からのハッピーエンドの成功例が転がっているとは、夢にも思わなかった。
実際に奴隷を買おうとしたら、怖気づいて何も出来ない、そんな自分の姿が見えるようだが。
でも想像するだけなら自由だ!想像力とは、いつだって無限の可能性を秘めているのだ!
ハーレム生活を妄想する自由くらいあるはずだ!
現実には何も出来ない、ヘタレ野郎であったとしてもである!
勿論、油断は禁物だが」
オーサンは、先ほどよりも更に真剣な口調で語り続ける。
「3階層を超えた冒険者の殆どがぶつかる壁が2つある。
1つは、階層を進むほどに、視界が確保できなくなること。
もう1つは、激化する魔物との戦闘が原因で、装備の損耗率が著しく上がってしまうことだ」
確かに1階層と比べて若干ではあるが、2階層は暗さを増している。探索初日に雑貨屋で聞いた話では、5階層くらいに行くと、もはや視界が殆ど確保できなくなるらしい。
かと言って、松明やランプなど持ったまま魔物と戦うのは難しく、それ以上先に進むなら、それなりの対策を取らないといけないという。
そして、運が悪ければ2階層ですら武器が損壊してしまうことは、シンが体験したばかりの話だ。
「冒険者としてこの先やって行きたいなら、この2つの壁を越える為に、必ず取得しなければいけない2つのスキルがある。
1つ目は『暗視』スキル。これは、暗く光の入らない場所でも、日中と同じような視界が得られる能力だ。
そしてもう1つは『魔装術』スキル。装備に魔力を纏わせることで、己の魔力を代償に、装備の耐久度や攻撃の威力を底上げするスキルだ。
この2つは迷宮探索でも必須スキルだし、迷宮の外で活動する場合にも非常に有用で強力なスキルだ」
暗視と魔装術スキル。
暗視は分かるけど、魔装術の方は漫画やアニメでよく見る、オーラを纏う技術みたいなものかな。身体強化魔法ならぬ、装備品強化魔法、といったところだろうか。
「この2つのスキルには非常に厄介な共通点があってな。どちらのスキルも必要になった時点では、とてもじゃないが取得できるスキルじゃないんだ。
必要なスキルがない状態で、スキルが必要な階層をどう攻略していくか。これこそが、2つの壁の本質だと言えるだろう」
うわぁ意地が悪いなぁ……。
最もスキルが必要なタイミングでは取得できなくて、そこを無事通過した後に取得できてしまうのか。
まぁその後も有用なスキルだから、文句なんて出ないんだろうけど。
「まぁ何度も言うけど、まずは3階層で、みっちり実戦経験を積むことが大切だ。言い出した俺がこう言うのもなんだが、その先のことを今考えても仕方ないっちゃ仕方ない。
お前ら3人はいっぱしの冒険者になる素質はあると思ってる。焦らずに一歩一歩着実に成長するのが、結局は一番の近道だぞ」
そこまで言ってオーサンは「今日は疲れたからもう寝る」と、奥の部屋に引っ込んでしまった。
「きっと喋りすぎて恥ずかしくなっちゃったんだと思うわぁ」と、クリリクさんは慣れたものだった。
夕食の片づけを手伝ってから、帰宅する時になってもオーサンは顔を見せず、クリリクさんが家の外まで見送りに来てくれた。
「最近あの人、トーマさんのことをよく話してくれるのよぉ。見てて危なっかしい、放っておけないって、半分くらいは愚痴なんだけどねぇ。トーマさん、これからもオーサンと仲良くしてくださいねぇ。
3人とも、またいつでもいらっしゃい。片付け手伝ってくれてありがと」
おっさんのツンデレとか需要ないです。
今日はもう疲労感が半端じゃなく、遅い時間でもあったので、今日の話を踏まえての先の話については、明日ギルドで改めて相談することになった。
お互い、もうとっとと寝たかっただけとも言う。
宿に戻った俺は、狭い部屋の中で日課の自己流インチキストレッチをこなしながら、今日の話を思い返す。
今日の話で一番気になったのは、魔装術というスキルのことだ。
トイレやランプを普通に使用できていることから、俺が魔力なしってことはないだろうとは思っていた。
なので、体内の魔力を感じ取ったり操作したり出来ないかなぁと、イメージトレーニングのようなことを行っていたのだが、今まで上手く行った試しがなかった。
魔装術の話から推測すると、該当するスキルを所持していない限り、魔力を操作する技術を勝手に自力習得したりは出来ないんじゃないか?
そうでなければ、スキルを持たずにスキルと同等のことが可能になってしまうかもしれないからだ。スキルシステムを根底から覆してしまいかねない。
この世界のスキルシステムは、努力し技術を磨いた成果としてスキルが与えられるのではなく、スキルを取得することで、スキルに該当した技術の使用を許可される、という順番のような気がする。
トイレやランプなどの日常品は、スキルを持たない人でも使用できるように、魔力自動吸引方式を採用しているのではないのかと。
つまりはこの世界は、努力するにも順番があるということだ。
正しく順番を理解し、適切な時間と対価を支払うことで、確実に強くなっていける反面、順番を間違えていることに気付けないと、いつまで経っても前に進めないのだ。
そして、今日の話の中で忘れちゃいけないのは、やっぱり奴隷の存在ですよね。
まさかこんな身近に、奴隷からのハッピーエンドの成功例が転がっているとは、夢にも思わなかった。
実際に奴隷を買おうとしたら、怖気づいて何も出来ない、そんな自分の姿が見えるようだが。
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