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2章 強さへの道標
023 5等級冒険者オーサンの実力の片鱗
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「オラオラ休んでんじゃねぇよ走れ走れ!強くなりてぇんだろうが!迷宮で死んでから後悔しても遅ぇんだぞ!」
始めにやらされたのは走り込みだった。足腰の強化や基礎体力の向上効果が見込める、定番のトレーニングと言って良いだろう。
定番なので、確実な効果を期待できる半面、実際やらされたらめちゃくちゃきついんですけどねえええええええ!
マッドスライム狩りではジュギングのようなペースで走り回っていたけれど、今回の走りこみは、全力疾走に近いくらいの速度でのランニングだ。
喉が痛い。肺が痛い。なんか喉の奥から血の味がするぅぅぅぅぅぅ!
「走り込みの成果なんざ1日で出るわきゃねぇがな。全力に近いペースで限界まで走りこんだって経験は無駄にならねぇ。走り込みなら自分1人でも出来るんだからな。
今日の訓練を今後に繋げたいと思うなら、ぶっ倒れるまで走りやがれ!」
後ろから俺たちを追い立てながら捲し立てているオーサンは、息切れどころか汗ひとつかいていない。
くっそー!涼しい顔で好き勝手言いやがって~!
「良し、リーンは止まれ。2人が走ってる間は休んでろ。お前はまだ体が出来上がってないからな。今無理すると、逆に良くない場合もある。
お前が子供だからと馬鹿にしてるわけじゃあねぇからな」
「はっ……、はっ……、はっ……、はっ……、はっ……」
終了を言い渡されたリーンが、大の字になってぶっ倒れている。
お、俺はまだっすかね……!
10代の若者と35のおっさんを、一緒に走らせないで欲しいんですけどおおおお!
「トーマぁ!ぺース落ちてきてんぞ!お前は若くねぇんだから、意識して自分を追い込むんだよ!若者みてぇに勢いで物事こなせると思ってんのか!甘えんじゃねぇ!」
オーサンくっそうぜええええええええけど、言い返す余裕もないよおおおおおお!
俺とシンがぶっ倒れるまで走ったところで、ようやく走り込みが終った。
「毎日今の状態くらいまで、自分を追い込めとは言わねぇけどな。1人で走り込んだ時に、どのくらい甘えた考えで走りこんでるかは分かるようになんだろ。
お前らは今、自分自身を推し測る物差しを手に入れたんだと思え。自主訓練に対する意識の向上や、訓練の質も上がるはずだ」
オーサンがなんか言ってるけど、ぶっちゃけ死にそうだ。もうこのまま寝てしまいたい。
「じゃあそこでぶっ倒れてる、中年トーマの息が整うまでは休憩だ。
水飲んでも構わないが、飲みすぎると動けなくなるし、戦闘中は水分補給なんて出来ないからな。飲むにしても少し、実戦想定なら我慢しろ。トーマは飲むな」
なんか俺にだけ、妙にあたり強くないっすかねオーサンよぉ……。
「よし休憩は終わりだ。全員武器を持て。お前らの武器の扱い方を見てやるから、普段使ってるように、武器を振って見せろ。
ただし力は入れなくて良い。なるべく力を抜きつつ、いつもの動きを意識して見せてくれ。ああ、武器がすっぽ抜けないようにだけ気をつけろ。
一応全員、もうちょっと距離を取ってくれ」
次は、技術的な指導に移るようだ。力は入れなくて良いっつうか、力入らんねぇんですけどねぇ……。
石斧を振り上げようとしただけで、腕がぷるぷ「トーマ!サボってんじゃねぇ!」あーもーうっせーな!いつかぜってー泣かしてやるからなこのハゲ!ハゲてないけど!
くっそ、こんなことなら装備更新せずに、軽い棍棒持って来れば良かった……!
リーンの武器はダガー?って言えば良いんだろうか。刃渡り30センチあるかないかって感じの、小さくて軽そうな刃物だった。見るからに軽そうだ。ほんと軽そうで羨ましい。
「そうだ。その調子だ。まずは体の動かし方を覚えるんだ。今は力は必要ない。
刃物ってのは腕力より、技術のほうが大切だ。正しい扱いを覚えれば、お前でも問題なく魔物と戦えるはずだ」
なんか、リーンばっかり熱心に教えてないっすかねぇ……。
なんつって、俺だって恐らくリーンを重点的に指導するだろうな。
年齢的に一番伸びしろがあるだろうし、なにより1人になった場合に一番危険だ。
「トーマは技術的には特に言うことはねぇな。石斧なんて、全力でぶん殴りゃいいだけの話だしな」
真面目に指導しろやテメー!
「ただ将来的には、この程度の重量の武器は片手で扱って、もう一方には盾を持つなりしたほうがいいな。この程度の重量の武器に振り回されてるようじゃ先は無い。
それとどうしても、重い武器ってのは取り回しが遅く、小回りが利かない。石斧の他に、例えばリーンが使ってる様なダガーなんかでもいい。緊急時に咄嗟に扱える武器を、もう1つ身につけておくべきだな」
いきなり真面目に指導すんなテメー!
「よし、じゃあギルドの休憩室でちょっと寝てもらう。起きたら1人ずつ俺と模擬戦だ。交代で日没まで続けるからそのつもりでな。
そういえば休憩室にはベッドが2つしかないから、トーマは床で寝ろ」
「なんで俺を名指しすんだよ!」
そりゃあ2人に譲るけどさ!自分で譲るのと、オーサンに言われるのじゃ、気分的なもんがさぁ!
このおっさん、絶対面白がってんだろ!
そのくせ指導内容はまともだから怒るに怒れねぇ!くそがっ!
始めにやらされたのは走り込みだった。足腰の強化や基礎体力の向上効果が見込める、定番のトレーニングと言って良いだろう。
定番なので、確実な効果を期待できる半面、実際やらされたらめちゃくちゃきついんですけどねえええええええ!
マッドスライム狩りではジュギングのようなペースで走り回っていたけれど、今回の走りこみは、全力疾走に近いくらいの速度でのランニングだ。
喉が痛い。肺が痛い。なんか喉の奥から血の味がするぅぅぅぅぅぅ!
「走り込みの成果なんざ1日で出るわきゃねぇがな。全力に近いペースで限界まで走りこんだって経験は無駄にならねぇ。走り込みなら自分1人でも出来るんだからな。
今日の訓練を今後に繋げたいと思うなら、ぶっ倒れるまで走りやがれ!」
後ろから俺たちを追い立てながら捲し立てているオーサンは、息切れどころか汗ひとつかいていない。
くっそー!涼しい顔で好き勝手言いやがって~!
「良し、リーンは止まれ。2人が走ってる間は休んでろ。お前はまだ体が出来上がってないからな。今無理すると、逆に良くない場合もある。
お前が子供だからと馬鹿にしてるわけじゃあねぇからな」
「はっ……、はっ……、はっ……、はっ……、はっ……」
終了を言い渡されたリーンが、大の字になってぶっ倒れている。
お、俺はまだっすかね……!
10代の若者と35のおっさんを、一緒に走らせないで欲しいんですけどおおおお!
「トーマぁ!ぺース落ちてきてんぞ!お前は若くねぇんだから、意識して自分を追い込むんだよ!若者みてぇに勢いで物事こなせると思ってんのか!甘えんじゃねぇ!」
オーサンくっそうぜええええええええけど、言い返す余裕もないよおおおおおお!
俺とシンがぶっ倒れるまで走ったところで、ようやく走り込みが終った。
「毎日今の状態くらいまで、自分を追い込めとは言わねぇけどな。1人で走り込んだ時に、どのくらい甘えた考えで走りこんでるかは分かるようになんだろ。
お前らは今、自分自身を推し測る物差しを手に入れたんだと思え。自主訓練に対する意識の向上や、訓練の質も上がるはずだ」
オーサンがなんか言ってるけど、ぶっちゃけ死にそうだ。もうこのまま寝てしまいたい。
「じゃあそこでぶっ倒れてる、中年トーマの息が整うまでは休憩だ。
水飲んでも構わないが、飲みすぎると動けなくなるし、戦闘中は水分補給なんて出来ないからな。飲むにしても少し、実戦想定なら我慢しろ。トーマは飲むな」
なんか俺にだけ、妙にあたり強くないっすかねオーサンよぉ……。
「よし休憩は終わりだ。全員武器を持て。お前らの武器の扱い方を見てやるから、普段使ってるように、武器を振って見せろ。
ただし力は入れなくて良い。なるべく力を抜きつつ、いつもの動きを意識して見せてくれ。ああ、武器がすっぽ抜けないようにだけ気をつけろ。
一応全員、もうちょっと距離を取ってくれ」
次は、技術的な指導に移るようだ。力は入れなくて良いっつうか、力入らんねぇんですけどねぇ……。
石斧を振り上げようとしただけで、腕がぷるぷ「トーマ!サボってんじゃねぇ!」あーもーうっせーな!いつかぜってー泣かしてやるからなこのハゲ!ハゲてないけど!
くっそ、こんなことなら装備更新せずに、軽い棍棒持って来れば良かった……!
リーンの武器はダガー?って言えば良いんだろうか。刃渡り30センチあるかないかって感じの、小さくて軽そうな刃物だった。見るからに軽そうだ。ほんと軽そうで羨ましい。
「そうだ。その調子だ。まずは体の動かし方を覚えるんだ。今は力は必要ない。
刃物ってのは腕力より、技術のほうが大切だ。正しい扱いを覚えれば、お前でも問題なく魔物と戦えるはずだ」
なんか、リーンばっかり熱心に教えてないっすかねぇ……。
なんつって、俺だって恐らくリーンを重点的に指導するだろうな。
年齢的に一番伸びしろがあるだろうし、なにより1人になった場合に一番危険だ。
「トーマは技術的には特に言うことはねぇな。石斧なんて、全力でぶん殴りゃいいだけの話だしな」
真面目に指導しろやテメー!
「ただ将来的には、この程度の重量の武器は片手で扱って、もう一方には盾を持つなりしたほうがいいな。この程度の重量の武器に振り回されてるようじゃ先は無い。
それとどうしても、重い武器ってのは取り回しが遅く、小回りが利かない。石斧の他に、例えばリーンが使ってる様なダガーなんかでもいい。緊急時に咄嗟に扱える武器を、もう1つ身につけておくべきだな」
いきなり真面目に指導すんなテメー!
「よし、じゃあギルドの休憩室でちょっと寝てもらう。起きたら1人ずつ俺と模擬戦だ。交代で日没まで続けるからそのつもりでな。
そういえば休憩室にはベッドが2つしかないから、トーマは床で寝ろ」
「なんで俺を名指しすんだよ!」
そりゃあ2人に譲るけどさ!自分で譲るのと、オーサンに言われるのじゃ、気分的なもんがさぁ!
このおっさん、絶対面白がってんだろ!
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