異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
15 / 580
1章 仲間との出会い

014 出会い

しおりを挟む
「2階層でネズミを一撃で殺せるようにまで、3階層には行くんじゃねぇぞ。
 まずは2階層で、ネズミ相手に殺しに慣れろ」


 殺しに慣れろ、か。こういう生々しさのせいで、ここが夢ではなく現実だと思い知らされる。

 生きていくためには奪わなければならない。
 相手が人ではなく、魔物というだけの話だ。割り切れ。慣れろ。


 毎朝、買い取りを頼むでもなく冒険者ギルドに顔を出すのは、以前オーサンに忠告されたからである。
 迷宮や街などになんらかの異常事態が発生した場合、ギルドに来ればその情報を見落とすことはまずない。俺のようなソロで活動している者こそ、周囲の情報には敏感ではならないのだ。生き残るために。

 それと等級が上がると、冒険者家業お馴染みの、指名依頼が入ることもあるそうだ。依頼は基本的にどこかのギルドを通じて行われるので、指名依頼が入ればギルドから連絡が来るそうだ。

 等級が上がるほどギルドには頻繁に顔を出さなくてはならないので、駆け出しのうちからギルドに顔を出す習慣をつけておくべきだ、という話らしい。


 それにしても、あのネズミを一撃でか。今の俺には難しい条件だな。
 昨日戦ったときは胴体に一撃、その後頭部に向けて3度棍棒で殴りつけて、ようやく倒せたのだ。

 合計4発。急所であろう頭部を狙ってすら、一撃で倒せなかったのだ。
 戦闘技術的にも装備的にも、3階層に上がるのはまだ難しそうだ。


 そうだ。戦闘技術と言えば、ギルドで有料の講習が受けられるんだっけ?


「オーサン。ギルドで戦闘技術の指導とかやってるって聞いたんだけど。このギルドでもやってるなら、料金はいくらでどんな内容を教えてくれるんだ?」


 問いかけてみると、なぜかオーサンが微妙に嬉しそうな顔になった。
 ああ、これでオーサンが美人女性だったらなぁ。なんかもうすっかり俺の担当みたいな扱いされてるし。


「勿論ベイクでもやってるぞ。1回の料金は銀貨2枚だ。内容は使ってる武器の基礎的な技術だな。
 ふむ、トーマの場合はメイス系の技術になるか?時間的には日没までみっちり付き合ってやるぜ。指導員は俺だからな」

「げっ!マジかよ」


 滞在費とは別に銀貨2枚は、今の俺にはきつい出費だな。オーサンに教わるのもなんかイヤだし。

 なんかさぁ。異世界に来てからオーサンとの絆ばっかり深めてるような気がするんだよ。おっさん同士の絡み合いとか誰得なんだよまったく。


「はっ!予想通りの反応だが、見くびってもらっちゃ困るぜ?ギルド員になる前は、5等級まで行ったんだからな。金さえ貰えりゃみっちり鍛えてやるぜ。ガハハハハ!」


 おおう、なんか思わぬところでオーサンの過去の一端に触れてしまった。マジでこのおっさんとばかり仲良くなってないか俺。


「いやいや、料金でちょっとな。銀貨2枚は今の俺には高いわ。
 今すぐ頼める金額じゃなかったから驚いちまったんだよ」


 一応フォローしておく。悪印象をそのままにしておくと、教わる時になんか仕返しされそうで怖い。


「くくっ、そういうことにしておいてやるよ。今からお前を指導するのが楽しみで仕方ねぇな?
 料金の銀貨2枚は、ギルド全体で定められた金額だから、値引きは出来ねぇ。
 ただ複数人で指導を受けても、料金は200リーフのまま据え置きだ。だから、数人で料金を折半して受けることは出来るぞ」


 折半!そういう方法もあるのか。
 まぁ、冒険者に知り合いなんて居ないんですけどね。オーサンも絶対分かってるくせに言いやがってぇ。

 先立つものが無いと何も出来ないのは、地球もリンカーズも変わらない。明日のために稼ぐべし、だ。


 2階層は競争率が高いので、まず今までどおり1階層での狩りを、袋が一杯になるまで2回行う。
 こうすることで、仮に2階層でネズミが1匹も狩れなくても、滞在費での赤字は免れる。


 2度目の納品を終えて、改めて2階層へ。

 今回はどういう動き方をするべきか。他の冒険者の動きは、実際に歩き回って接触しなければ分からないし。


 2階層の地図を確認して方針を固める。

 昨日擦れ違った冒険者たちは、いずれも4~10人くらいの集団で、1人で歩いてるのなんて俺だけだった。年齢的に、小学生~中学生くらいに見えた少年少女たちで固まる集団もあった。
 子供でも人数が居ればネズミに後れを取ることは無いのだろう。慣れた感じだったし。

 つまりはなるべく集団で移動しやすいように、広い通路を好んで移動している集団の方が多いだろうと推測。地図で比較的狭そうで、入り組んでいる場所を確認して、足を運んでみるとしよう。



 足を運んでみたのは良いものの、今日は空振りか?冒険者とも会わなかったけどネズミにもエンカウントしない。

 とはいえ、MAP全埋め症候群の患者としては、1度決めたエリアは探索しきらないとな。地図で行き止まりとわかっちゃいるけど、ネズミは地図には載ってない。


 この先は行き止まりだなぁなんて考えていたら、前方から音が聞こえてくるのに気付いた。

 あっちゃー、こっちルートも他の冒険者が居たのかぁ。道理でネズミにも会えないわけだ。


 無駄足だろうけれど一応確認に行くかな。
 もしかしたら、美人冒険者が助けを求めてるかもしれないし!と切実なフラグ建てを行っておくことも忘れない。


 そして現場で俺が目にしたのは、ネズミが2匹と、折れた剣でネズミ2匹と戦う少年の姿。
 そして少年の後ろにもう1人、地面に膝を着いているやつが居る。


 どうやら怪我人を庇って、少年がネズミを引きつけている局面のようだ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...