異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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序章 気が付いたら異世界転移

007 異世界新生活スタート

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「……知らない天井だ」


 とりあえず、異世界に来たら言ってみたいセリフ第一位を口に出しておく。

 ランプはガラス玉にもう一度触れたことで普通に消えた。ただ、吸われた魔力は恐らく戻ってこなかった気がする。

 トイレやらランプやらでちょいちょい魔力吸われてるけど、魔力って自然回復するものなのかな?この辺も数値化されて無いから確認出来ないんだよなぁ。
 体調不良とか虚脱感とか感じてるわけじゃないし、恐らく問題ないと割り切る。

 窓の外を見るとまだ少し薄暗く、夜が明けきっていないような時間だ。つうかこの世界の暦と時間ってどうなってるんだろ?

 ベッドは少し硬く感じたけど、ちゃんと熟睡できたようだ。
 まぁ俺みたいに貧乏なおっさんは、何処でも寝れるのが特技みたいなもんだ。


 着替えも荷物も無いので、トイレを済ませて1階に降りる。
 食堂に行ってみたけど、やはり俺以外の客はまだ誰も起きていないらしい。


「おやアンタ、随分早起きじゃないかい。
 悪いけど朝食まではもう少しかかるよ」


 女将さんだ。やっぱり宿屋って朝が早いんだなぁ。


「おはようございます。寝たのが早かったせいか早くに目が覚めちゃって。
 仕事のお邪魔でしたら部屋に戻りますけど」

「私もこんな時間の受付担当でで退屈しててね。
 暇なら話し相手でもしちゃくれないかい?」


 へぇ。深夜、早朝でも受付が対応してくれるのか。なんか思った以上にサービスがちゃんとしてる宿だなぁ。


「俺は構いませんけど、受付担当なら食堂にいては不味いんじゃ?」

「ヘーキヘーキ。ここからでも入り口は見えるし、こんな時間に客なんてめったに来ないからね。
 お茶くらい入れてやるから、朝食が出来るまで付き合っておくれ」


 こちらとしても有り難い申し出だったので、断る選択肢は無い。分かりましたと返事して、食堂の適当な席に座った。

 程なくして、女将さんがお茶を持って戻ってきた。湯飲みみたいな陶器のコップに、薄い紅茶みたいな香りの飲み物が入っている。


「そういえばまだお互い名乗ってなかったね。
 わたしゃこの迷宮の安らぎ亭で働いてる『ユリン』ってんだ。アンタは?」


 なんか女将さん、思ってたよりかわいい名前だった。


「俺はトーマです。昨日着いたばかりです。ベイクには仕事を探しに来ました。
 迷宮に入りたいと思ってるんですけど、冒険者ギルドの場所って教えてもらえますか?」

「ああ、ここの迷宮はちょうど街の中心にあるのさ。街の入り口と逆方向に歩いてればそのうち着くよ。
 冒険者ギルドも、迷宮の近くに立ってる、石造りで3階建ての建物だから、見たらすぐわかるはずさ」


 なんだか分かりにくいような分かりやすいような案内だった。まぁ迷ったら他の人にも聞けばいいか。

 その後は最近はアレが高いとか、この宿はダンナが作ってる食事が自慢だとか、取りとめの無い話をした。
 確かに食事は自慢するだけはあると思う。朝食も満足行く味だった。異世界フード侮りがたし。


「じゃあこれが昨日の朝食分の弁当だよ。今日中に食っておくんな」


 部屋の鍵と交換で、薄布に包まれたサンドイッチを渡される。ここの食事は美味しかったので、これも食べるのが楽しみだ。


「って、あれ?昨日の夕食と今朝の朝食で、1泊分の2食は頂いてるのでは?
 お弁当の分はちゃんとお金払いますよ?」


 よく考えてみたら1泊2食で料金払ってるんだから、ここでもう1食受け取ったら、俺が一方的に得してるよな?


「あはは。気にせず受け取んなよ。これは宣伝みたいなもんさ。それを食べて気に入ったらまた泊まりに来な」


 ユリンさんは俺の申し出を笑い飛ばした。
 なんだこの人カッケー!惚れてまうやろ~!既婚者らしいので自重するけども!
 

「そういうことでしたら有り難く頂戴することにします。
 収入が安定したらまた来ますので、その時は改めて宜しくお願いします」


 お礼を言って宿から出た。

 よし。当面の目標は、迷宮の安らぎ亭に連泊できるくらいの収入を得ることにしよう!


 『佐渡 藤馬』改め『トーマ』の異世界新生活は、美味しい食事と、豪快で優しいユリンさんのおかげで、とても晴れやかな気持ちでスタートしたのだった。
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