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それはうす暗い森の中。木々の隙間から微かに光が差し込む深い深い森の中。
瑛美は大きな古い木の根本に座り込んでいた。辺りには色づいた木の葉が一面に敷き詰められていてそれはとてもきれいな絨毯だった。
瑛美の斜め前には彼がいた。彼は倒れた木の幹に腰をかけ、いつものように優しく瑛美に語りかける。
瑛美は幸せだった。彼と一緒にいるのが楽しくて仕方がなかった。
瑛美は彼の為に歌い続けた。歌い疲れるとおしゃべりをした。彼の話術はとても巧みで飽きることがなかった。ただ彼自身のことについては何を聞いてもあまり答えてはくれなかった。
「ねえ、あなたは歌わないの?」
瑛美は彼に問いかける。
「歌わない」
「私あなたの声好きよ」
「そう」
「名前は?あなたのことなんて呼べばいいのかしら?」
瑛美は初めて歌を彼に教えてもらった時、彼を先生と呼ぼうとしたら止められた。
彼は瑛美に優しく笑いかける。
「好きなように呼べばいい」
そして瑛美は困ってしまう。もうそれ以上詮索できなくなってしまった。
彼のことをもっと知りたいと思うのにそれができないもどかしさ。瑛美の心はもやもやするがそれも彼の声を聞いてるうちに薄れていく。
「エイミ、一度戻ったほうがいい」
彼は静かにささやく。
「どうして?私ここにいたいわ」
「もう随分と戻っていないだろう」
「かまわないわ」
彼は静かに目を伏せる。
「ノブコが倒れたよ」
瑛美は驚き彼を見る。
「先生が?なぜ?」
「さあ」
瑛美は困惑する。篠宮のことは気になるが彼と離れたくはなかった。
「また戻ってくればいい」
「どこへもいかない?」
「行かない」
「すぐに迎えに来てくれる?」
「ああ。だから一度戻るんだ。そしてチャンスをつかんでおいで」
瑛美は首を傾げた。
「どういう意味?」
彼はふわりと微笑んだ。
「戻ればわかるさ」
瑛美は大きな古い木の根本に座り込んでいた。辺りには色づいた木の葉が一面に敷き詰められていてそれはとてもきれいな絨毯だった。
瑛美の斜め前には彼がいた。彼は倒れた木の幹に腰をかけ、いつものように優しく瑛美に語りかける。
瑛美は幸せだった。彼と一緒にいるのが楽しくて仕方がなかった。
瑛美は彼の為に歌い続けた。歌い疲れるとおしゃべりをした。彼の話術はとても巧みで飽きることがなかった。ただ彼自身のことについては何を聞いてもあまり答えてはくれなかった。
「ねえ、あなたは歌わないの?」
瑛美は彼に問いかける。
「歌わない」
「私あなたの声好きよ」
「そう」
「名前は?あなたのことなんて呼べばいいのかしら?」
瑛美は初めて歌を彼に教えてもらった時、彼を先生と呼ぼうとしたら止められた。
彼は瑛美に優しく笑いかける。
「好きなように呼べばいい」
そして瑛美は困ってしまう。もうそれ以上詮索できなくなってしまった。
彼のことをもっと知りたいと思うのにそれができないもどかしさ。瑛美の心はもやもやするがそれも彼の声を聞いてるうちに薄れていく。
「エイミ、一度戻ったほうがいい」
彼は静かにささやく。
「どうして?私ここにいたいわ」
「もう随分と戻っていないだろう」
「かまわないわ」
彼は静かに目を伏せる。
「ノブコが倒れたよ」
瑛美は驚き彼を見る。
「先生が?なぜ?」
「さあ」
瑛美は困惑する。篠宮のことは気になるが彼と離れたくはなかった。
「また戻ってくればいい」
「どこへもいかない?」
「行かない」
「すぐに迎えに来てくれる?」
「ああ。だから一度戻るんだ。そしてチャンスをつかんでおいで」
瑛美は首を傾げた。
「どういう意味?」
彼はふわりと微笑んだ。
「戻ればわかるさ」
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