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3 101号室 住人 小早川秀章
32.
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とりあえず、餌付け作戦でいくことにした。日持ちのするコンビニ菓子やらを常備し、渡す作戦だ。部屋に押しかける訳にもいかないから「さりげなく、自然に」がポイントだ。
だがしかし。
何故かほとんど橘さんと顔を合わせることがなくなった。見かけても挨拶だけして慌ただしく逃げ去られる。どやらオレが「女性と出会うと不快に思うだろうから出会わないように気をつけている」らしい。そんな気遣い無用だそ、おい。
オレがいたらあの子が行きにくいだろうと、しばらくいつきさんの夕食にも行かなかった。しかしなかなか彼女と接触できないので久しぶりに行ってみればなんと彼女もオレの休日は食堂に食べに来なくなっていたらしい。
「土日くらいしっかり自炊したいとのことですけど……朝も昼もちゃんと自炊されてるんですけどねぇ。でもこちらも無理強いできませんし」
と、いつきさんから早くなんとかしろと無言の圧力をかけられる。気まずすぎる。
今日は休日。花子と散歩に行こうと思い、玄関を開けようとしたら外が何やら騒がしい。
ゆっくり玄関のドアをあけると朝から伊織と橘さんが門を閉めきり、花子を庭に放して遊ばせていた。伊織がボールを投げれば嬉しそうに全速力で追いかける花子、橘さんがボールを投げれば飛距離がでないからか、余裕のある足取りで走る花子。皆が楽しそうに笑っている。
オレに気がついたら確実に花子が飛んでくる。そうなればあの子の楽しい時間が終わってしまうわけで……仕方ない、少し時間をずらそう。
再びゆっくりとドアを閉めて部屋に戻り、先ほどの光景を思い出す。
他の人に向ける笑顔を自分にだけ向けてもらえないのは結構堪える。自分勝手だとはわかっちゃいるけど。
一度植え付けられてしまった印象を修正するのはなかなか難しい。自業自得とはいえ……はぁ、なんかしんどい。
いつか一緒に笑える日が来るんだろうか、と。そう思った自分に驚いたが、とりあえず自分のしでかした後始末だ。頑張るしかない。
まさか数ヶ月後に礼子さんから「親父が2人に増えた……」と言われるハメになるとは、このとき思いもよらなかった。人間、何がきっかけで変わるかわからない。
だがしかし。
何故かほとんど橘さんと顔を合わせることがなくなった。見かけても挨拶だけして慌ただしく逃げ去られる。どやらオレが「女性と出会うと不快に思うだろうから出会わないように気をつけている」らしい。そんな気遣い無用だそ、おい。
オレがいたらあの子が行きにくいだろうと、しばらくいつきさんの夕食にも行かなかった。しかしなかなか彼女と接触できないので久しぶりに行ってみればなんと彼女もオレの休日は食堂に食べに来なくなっていたらしい。
「土日くらいしっかり自炊したいとのことですけど……朝も昼もちゃんと自炊されてるんですけどねぇ。でもこちらも無理強いできませんし」
と、いつきさんから早くなんとかしろと無言の圧力をかけられる。気まずすぎる。
今日は休日。花子と散歩に行こうと思い、玄関を開けようとしたら外が何やら騒がしい。
ゆっくり玄関のドアをあけると朝から伊織と橘さんが門を閉めきり、花子を庭に放して遊ばせていた。伊織がボールを投げれば嬉しそうに全速力で追いかける花子、橘さんがボールを投げれば飛距離がでないからか、余裕のある足取りで走る花子。皆が楽しそうに笑っている。
オレに気がついたら確実に花子が飛んでくる。そうなればあの子の楽しい時間が終わってしまうわけで……仕方ない、少し時間をずらそう。
再びゆっくりとドアを閉めて部屋に戻り、先ほどの光景を思い出す。
他の人に向ける笑顔を自分にだけ向けてもらえないのは結構堪える。自分勝手だとはわかっちゃいるけど。
一度植え付けられてしまった印象を修正するのはなかなか難しい。自業自得とはいえ……はぁ、なんかしんどい。
いつか一緒に笑える日が来るんだろうか、と。そう思った自分に驚いたが、とりあえず自分のしでかした後始末だ。頑張るしかない。
まさか数ヶ月後に礼子さんから「親父が2人に増えた……」と言われるハメになるとは、このとき思いもよらなかった。人間、何がきっかけで変わるかわからない。
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