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第一章 第二王子との出会い
2.第二王子と決意
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「驚いたなぁ。心配してついて来てみれば、まさか目の前で姿が変わるなんて。」
しばらく沈黙が続き、お互いに見つめ合うような形になった後。
痺れを切らしたかのようにアルベルトは口を開いた。
私、この人苦手なんだよね。……前世からずっと。
そう思っていたからだろう。
私はさっき放たれた言葉に、彼への警戒をさらに強めた。
いつもニコニコしているのに、言葉の端々に棘があって、何を考えているのかわからない。——それがアルベルトの現在の印象。
1番見られたくない人に見られてしまった。
そう言っても過言じゃないくらい、彼は頭が切れるのだ。
「……」
私がだんまりを決め込んだからか、アルベルトの表情は笑顔から真顔へと変わっていく。
私はというと、内心ヒヤヒヤしながら、どうやってこの場をやり過ごそうか考えていた。
「……じゃ、神殿に行こっか。」
「……へ?」
またもや少しの沈黙の後、アルベルトは予想外の言葉を放つ。
あまりにも突拍子のない言葉に、流石の私も令嬢らしからぬ声を出してしまった。
シンデンニイク?
ちゃんと意味は理解できているはずなのに、異国の言葉のようにその単語がカタカナで脳内を駆け巡った。
そして少し考えて、一つの結論に至る。
……そっか、この世界は魔法が一般的じゃないから、か。
彼にしては普通な提案に私は拍子抜けしてしまった。
ゲームの世界で中世ヨーロッパ。
しかも聖女がいるとなれば誰しも魔法があると思うかもしれないが、実はこの世界には魔法が普及していない。
というか、使える人はごく僅かなのだ。
それこそ聖女……とかね。
だから、私が目の前で姿を変えたのは異例中の異例。
アルベルトにとっては経験したことのない出来事のはずだった。
それでも顔に出さないなんて、流石は王太子の有力候補とでも言うべきか……。
そんな訳で、アルベルトが神殿——唯一魔法の信仰がある場所——に行こうと言い出したのはこの世界では当たり前のことだった。
魔法の塔とかそういう所が扱ってるんじゃないの?って思うのが一般的だと思うが、先ほども言ったように、この世界では魔法を使える人が希少だ。
だから別名を神の使いと呼ばれている。
神殿で神様から進言を受けた者だけが使えるもの。
それがこの世界でいう魔法だった。
そのことが死を目の前にした私の記憶からはすっぽり抜けてしまっていて、アルベルトの言葉を理解できなかった、というのがさっきの会話の真相だ。
「……そうですね、行きますか。」
別にこの国の神殿に行く必要なんてなかった。
だけど、この時私はある作戦を思いついていたのだ。
それを実行に移すには、この国である必要がある。
だから、私はアルベルトの提案に乗ることにした。
アルベルトは苦手というだけで、信用に足る人物であることに変わりはない。
……それに、彼がいた方がこの計画は成功させられるかもしれない。
そんな打算的な考えもあっての言葉だった。
「良かったぁ。てっきり断られると思ってたから、さ。」
私の返答に、彼は少し驚いたように目を見開いた後、ニッコリと楽しそうな笑顔を浮かべる。
その顔にゾクッ……と寒気がした気がした。
まるで、猛獣に狙われた小動物のように。
……気のせい、だよね?
腕をさすった後もう一度アルベルトの方を見てみると、いつもと同じようにニコニコと笑みを浮かべているだけで、もうさっきのような寒気を感じることがなかった。
色々あって、疲れているのだろう。
……そう思うことにした。
「はい」
そう言われて、スッと流れ作業のようにアルベルトに手を差し出され、反射的に自分の手を重ねてしまう。
しまった……と思った時にはすでに遅く、ぎゅーと効果音が付きそうなほどしっかりと握られてしまい、ため息つく。
別に手を繋ぐ必要なんてなかったのに。
……まぁでも。
私はアルベルトの横顔をチラ見する。
すると私の視線に気がついたのか、まるで大丈夫だよって言っているように、そんな優しさのある笑顔を向けられる。
「……っ」
あぁ、ずるい。
その笑顔がアルベルトならいいか、とそう思わせてならない。
こうやって誰かを頼ったことなんて、この世界では一度もなかった。
ずっと孤独だったから。
この世界の親は、私を『公爵令嬢』、婚約してからは『后妃』として扱った。
だからずっと、ずぅっと誰からも愛を感じたことはなかった。
……そのせいだろう。
私はこの世界で寂しさを感じていた。
その点でいうと、アルベルトは距離が近すぎるのだ。
誰に対してもそうだってわかっている。
それでも、私は心臓の音がうるさくなるのを止めることができなかった。
……しっかりしろ、私。
この世界に味方なんていない。
エドワードど婚約した時に、痛感したでしょ。
そう言い聞かせてみたものの、やはり鼓動は早くなるばかりだった。
……それから神殿に着くまでの間、アルベルトにドキドキされっぱなしだったのは言うまでもない。
しばらく沈黙が続き、お互いに見つめ合うような形になった後。
痺れを切らしたかのようにアルベルトは口を開いた。
私、この人苦手なんだよね。……前世からずっと。
そう思っていたからだろう。
私はさっき放たれた言葉に、彼への警戒をさらに強めた。
いつもニコニコしているのに、言葉の端々に棘があって、何を考えているのかわからない。——それがアルベルトの現在の印象。
1番見られたくない人に見られてしまった。
そう言っても過言じゃないくらい、彼は頭が切れるのだ。
「……」
私がだんまりを決め込んだからか、アルベルトの表情は笑顔から真顔へと変わっていく。
私はというと、内心ヒヤヒヤしながら、どうやってこの場をやり過ごそうか考えていた。
「……じゃ、神殿に行こっか。」
「……へ?」
またもや少しの沈黙の後、アルベルトは予想外の言葉を放つ。
あまりにも突拍子のない言葉に、流石の私も令嬢らしからぬ声を出してしまった。
シンデンニイク?
ちゃんと意味は理解できているはずなのに、異国の言葉のようにその単語がカタカナで脳内を駆け巡った。
そして少し考えて、一つの結論に至る。
……そっか、この世界は魔法が一般的じゃないから、か。
彼にしては普通な提案に私は拍子抜けしてしまった。
ゲームの世界で中世ヨーロッパ。
しかも聖女がいるとなれば誰しも魔法があると思うかもしれないが、実はこの世界には魔法が普及していない。
というか、使える人はごく僅かなのだ。
それこそ聖女……とかね。
だから、私が目の前で姿を変えたのは異例中の異例。
アルベルトにとっては経験したことのない出来事のはずだった。
それでも顔に出さないなんて、流石は王太子の有力候補とでも言うべきか……。
そんな訳で、アルベルトが神殿——唯一魔法の信仰がある場所——に行こうと言い出したのはこの世界では当たり前のことだった。
魔法の塔とかそういう所が扱ってるんじゃないの?って思うのが一般的だと思うが、先ほども言ったように、この世界では魔法を使える人が希少だ。
だから別名を神の使いと呼ばれている。
神殿で神様から進言を受けた者だけが使えるもの。
それがこの世界でいう魔法だった。
そのことが死を目の前にした私の記憶からはすっぽり抜けてしまっていて、アルベルトの言葉を理解できなかった、というのがさっきの会話の真相だ。
「……そうですね、行きますか。」
別にこの国の神殿に行く必要なんてなかった。
だけど、この時私はある作戦を思いついていたのだ。
それを実行に移すには、この国である必要がある。
だから、私はアルベルトの提案に乗ることにした。
アルベルトは苦手というだけで、信用に足る人物であることに変わりはない。
……それに、彼がいた方がこの計画は成功させられるかもしれない。
そんな打算的な考えもあっての言葉だった。
「良かったぁ。てっきり断られると思ってたから、さ。」
私の返答に、彼は少し驚いたように目を見開いた後、ニッコリと楽しそうな笑顔を浮かべる。
その顔にゾクッ……と寒気がした気がした。
まるで、猛獣に狙われた小動物のように。
……気のせい、だよね?
腕をさすった後もう一度アルベルトの方を見てみると、いつもと同じようにニコニコと笑みを浮かべているだけで、もうさっきのような寒気を感じることがなかった。
色々あって、疲れているのだろう。
……そう思うことにした。
「はい」
そう言われて、スッと流れ作業のようにアルベルトに手を差し出され、反射的に自分の手を重ねてしまう。
しまった……と思った時にはすでに遅く、ぎゅーと効果音が付きそうなほどしっかりと握られてしまい、ため息つく。
別に手を繋ぐ必要なんてなかったのに。
……まぁでも。
私はアルベルトの横顔をチラ見する。
すると私の視線に気がついたのか、まるで大丈夫だよって言っているように、そんな優しさのある笑顔を向けられる。
「……っ」
あぁ、ずるい。
その笑顔がアルベルトならいいか、とそう思わせてならない。
こうやって誰かを頼ったことなんて、この世界では一度もなかった。
ずっと孤独だったから。
この世界の親は、私を『公爵令嬢』、婚約してからは『后妃』として扱った。
だからずっと、ずぅっと誰からも愛を感じたことはなかった。
……そのせいだろう。
私はこの世界で寂しさを感じていた。
その点でいうと、アルベルトは距離が近すぎるのだ。
誰に対してもそうだってわかっている。
それでも、私は心臓の音がうるさくなるのを止めることができなかった。
……しっかりしろ、私。
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