真面目令嬢は無意識のうちに溺愛ルートに入ってしまったようです!

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朝食の時間

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「お嬢様、お時間ですよ。」

私が記憶をまとめるのに夢中になっていると、いつの間にか入って来ていたエマにそう告げられた。
慌てて時計の方に目を向けると、8時50分。
えっ、嘘でしょ。
思っていたよりも時間が経っていたようで、朝食の10分前になってしまっていた。
どうしよう、朝食のことまだ何も考えてない!
レミリアとして生きると決めてから、レミリアについてを特にまとめて書いたは良いものの、情報が少なすぎる。
攻略対象ならまだしも、悪役令嬢の過去なんて、最初の人物紹介には書かれていなかった。
私が知っていることといえば、将来悪役令嬢になること、第一王子の婚約者になることくらい。
これでどうやってレミリアを演じれば良いっていうんだろう。
だから30分前くらいになったら振る舞い方を考えようと思ってたんだけど、他の攻略対象達の情報をまとめるのに思っていたよりも時間を取られてしまって、気づけば10分前。
結局、(多分家族恒例の集まりである)朝食に参加しないなんてそんな勇気などなく、私は重い足取りでエマについていったんだ。

「リア、おはよう。今日は早起きだったんだって?」

椅子に座るや否や、レミリアのお父さんらしき人に話しかけられた。
リアはレミリアの愛称ってことはすぐわかったから、顔を上げて(仮)お父さんの方を見る。

「はい、お父様。早くに目が覚めてしまいましたの。」

こんな感じかな?
私が不安になりながらもレミリアパパの方を見つめていると、何故だか悲しそうな目になった。
え、私何かやらかした??
そんな心配をよそに、レミリアパパは

「リア!いつもみたいにパパで良いんだぞ。」

なんて予想外の言葉を言ってくれたんだ。
その言葉に私は安堵した。
レミリアの親子関係は良好なんだ。
それがわかったから。
レミリアパパは、レミリアのことを溺愛してそう。
もしかしたら、ゲームをしていれば事前に知ることができたかもしれないと改めてゲームをプレイしなかったことを後悔しそうになる。
それで慌てて、杞憂が杞憂に終わってよかったと、プラスに考えることにしたんだ。

「もうあなたたっら。いい加減リア離れをしないと、鬱陶しがられますよ。それに、リアはもう5歳で、もう少しで社交界デビューもするんですから。」

レミリアパパの横に座っているレミリアによく似た綺麗な人……多分レミリアのお母さんがそう言うと、レミリアパパは残念そうに俯いてしまった。
その会話を聞いていると、最初に感じていた不安はどこかに消えてしまったんだ。
良い人そうでよかった。
そう思うことができたから。
……って、今の会話で、レミリアが今5歳であることと、社交界にでないといけない年齢まで知れた!
なんて答えようか考えたところで、ようやくそのことに気づく。
これは大収穫なんじゃない?
今5歳ってことは、ゲーム開始までは11年ある。
よかった、時間は結構あるみたい。
そんな風に油断していた矢先、

「確かにそうかもしれないが……。来月には王族主催のパーティーに初めて参加するしな。」

立ち直ったのか、顔を上げたレミリアパパがそんなことを口にした。
えっ……?
王族主催のパーティー!?
その言葉で私の気分は一気に下落してしまう。
私、貴族のマナー全然わからないっ!
そう思い、焦ってしまったのだ。
今だって、フォークとナイフの使い方合ってるかな?ってそれだけでもドキドキしてるのに、パーティーに参加するってなるとさらにダンスとか挨拶とかもあるんだよ?
レミリアって、マナー習ってたのかな?
ど、どうしよう。
もし習ってたら、今の私がマナー知らないのはおかしいよね。
うーん、えーっと。
そうだ!
頭をフル回転してようやくあるアイディアを思い付く。

「お父様。社交界に向けてマナーを学びたいですわ。」

そう、そのアイディアとはまさにマナーを学び直すと言う口実で、マナーを身につけること。
前世と変わらなかったらもしかしたらなんとかなる部分もあるかも知れないけど、そんなの聞かないとわからないからね。

「リアがやる気になってくれて嬉しいよ。そろそろリアにも貴族としてのマナーを身につけて欲しいと思っていた所だし、来週までには講師を見つけておくよ。」

「ありがとうございます!」

やった!
プロから学べるんだ。
これで社交界はなんとかなりそう。
問題は……やっぱり、第一王子だよね。
パーティーで挨拶しないとダメかな?
そう、私が心配しているのは王子に会ってしまうこと。
正直にいって、避けられるものなら避けたい。
だって自分から火の中に飛び込むようなものだもの。
だけど、『王族主催』。
つまり主催者に挨拶しないわけにはいかないのだから、必然的に会うことになる。
レミリアは第一王子の婚約者になる予定だから、ますます会わないなんてことは叶わなさそう。
いや、逆に考えよう。
まだ時間はあるんだから、その間に対策を考えられるって。
そう思うことで、なんとか沈んだ気持ちを回復する。
それに……あのイラストを三次元で見れるんだら。
そう、あのビジュを、現実で見られるのだ。
……なんだか楽しみになってしまったのは、気のせいということにしとこう。
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