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第206話 リミィの心も撃ち抜いた。

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第206話 リミィの心も撃ち抜いた。


 祭りが一際盛り上がっている場所に向かうと、さっきの騒がしさが目じゃないほどの盛り上がりを見せてくれた。
 もちろん、祭りということもあって付近には屋台や露店などが並び、人気なものでは蛇のような行列を作っていたりもした。

 小さな子供も祭りを駆け回り、若いカップルも仲良さそうに屋台を巡り、年老いたおじいちゃんも機敏な動きをかましていたりと、人々も皆、とてつもない盛り上がりを見せている。


 そして、そんな中俺は何をしているかって言うと──

「ゼロっ! 次はあっち行きましょうっ!!」

 ──リミィに連れ回されていた。

 ・・・いやー、ここは祭りの空気に流されず、貴族の娘らしく清楚で落ち着いた感じにエスコートしてくれるかと思いきや、まさかの年相応のはしゃぎぶり。

 ……うん、まぁやはりというかなんというか、リミィも祭りの空気に当てられてテンションがかなり高調していたようだ。
 俺の手を引いてあっちへ行ったりこっちへ行ったり……本当、文字通りに連れ回されてる。
 ・・・まぁたしかに俺も祭りの空気で気分は上がっているが……さすがにここまでじゃないぞ?

「ゼロっ! 次はあれやりましょうっ?」

 リミィがテンション高めに屋台の一角を指さしてそう言ってきた。

「ん、あぁ、射的か。」

 リミィが指さしていたお店は、棚に景品が並び、それを打って倒したら貰えるといった感じの射的屋だった。
 ・・・まぁここでは地球の射的と違って銃がないから弓とスリングショットらしきものだったが。

 確か、嫌な話、こういう店って高価な景品とかが棚とくっついてたり重りがついてたりするんじゃなかったっけ?
  ……あ、そう考えたらなんか倒したくなってきたな。

 普通は倒せないものを軽々と倒すのってなんか憧れない? ・・・お店から出禁くらいそうだけど。

「よし、ちょうど空いてるみたいだしな。いっちょやってみるか。」
「うんっ!」

「ってことで、おっちゃん。二回分お願いできるか?」
「あいよっ! 武器はどれ使うかいっ? 弓、スリングショットの2つから選べるぞっ!」

 屋台のおっちゃんに二回分の金を渡すと、ハキハキと元気にそう言った。
 んー、俺は弓でいいかな。リミィも弓にしてるみたいだし。

「んじゃ弓でお願いします。」

「ほらよっ、それじゃあ簡単にルール説明だ! その武器であの棚に並んだ物を打って倒したらその景品がゲットできるっ! 
 ただ当たったのに倒れなかった場合は残念ながらゲットならずだっ。それと打てる矢は今渡したその5発だけだ。ルールが分かったら始めてくれっ!」

 まぁよくある射的と同じだな。・・・それじゃあ手始めに、普通に置かれてるやつを狙うか。卑怯系は後に残しておこう。
 ・・・ってかここのおっちゃん、やっぱり景品に重りやら貼り付けをしていた。……こういうのってどこの世界でも同じなんだなぁ。

「えいっ! ……えいっ! ……それっ!!」

 お、早速、リミィは3つの景品を落としたみたいだ。丁度全部普通に置かれてたやつだけっぽいな。
 俺も似たように普通の景品を落としていく。

「・・・えーいっ!!」

 あ、それは……。

「っ? あちゃー。・・・力が足りなかったのかな?」

 リミィが棚に貼り付けてある少し大きめの人形を倒そうとしたが、やっぱり動かなかった。・・・屋台のおっちゃんはそれを見て一瞬口角があがった。

「・・・もう一回! えいっ!」

 リミィは諦めきれずにもう一度打ったが、やっぱり接着が強いせいか、倒れない。
 リミィは少し残念そうに俯いて落とした景品を受け取ったあと少し横にずれた。・・・よし、リミィの仇は俺が打ってやろう。

 俺はさっきリミィが取ろうとした人形に向けて弓を構える。・・・それと同時に、人形と棚を付けている接着剤を消した。
 あと威力的にも心配だから弓と矢に少しだけ強化をかけとく。

「よーく引いて……発射!」
 シュンッ!・・・コテーン。

 よし、討ち取ったりー。・・・本来接着剤で止めていたからか、取れないと思っていたものを俺がとったことでおっちゃんは目を見開いた。
 ・・・なんか今、すっげえスーッとしたわ。

 ・・・あ、そうだ。あと一発残ってるし、ついでにもうひとつ小さめの人形落としておくか。

 シュンッ。・・・コロン。

 まぁこんなもんだな。余裕余裕。

 っと、こんな感じに屋台のおっちゃんから景品を巻き上げた。
 ・・・どうでもいいけど、景品を受け取る時に俺に小細工は通用しねぇよと小声で言ってみたらすっげぇ震えてたのウケたわ。

「あ、リミィ。この落としたやついるか?」
「えっ! いいのっ?」
「あぁ、というかお前が欲しいみたいだったから落としたんだよ。」
「え、あ、そ、そうだったの? あ、ありがとう。」

 ・・・何この子可愛い。いやー、こういうどもってる感じも初々しくていいなぁ。


 ──こんな感じに、リミィと屋台を巡り、買い食いをしたり遊んだりしていると、あっという間に日が沈み始めた。
 屋台を巡る中で、射的屋の時のように好感度を上げまくってたらなんかすっごい俺にお熱な状態になった。

 ……さて、そろそろクライマックスかな。
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