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第123話 丸投げ。

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第123話 丸投げ。


「だからいくらなんでも一一」

「そういわれてもねぇ一一」

 ……うーん。こいつ早く帰ってくれないかなー。あれから10分くらいずっと言い合ってるんだけど……。
 俺も早いところギルマスになんかいい依頼がないか聞きたいんだけどなぁ。

 ・・・あ、そうだ。俺が原因なら俺が出ればすぐにおさまるんじゃね?
 言い合いを聞いた感じ、俺のランクが早く上がりすぎてるから信用できてないみたいだし。
 ってことは直接戦えば俺の強さをわからせられると思うしな。

 そうと決まれば早速……と、思ったけどただ出るだけじゃつまらないし、格好つけてでてみようか!

 えーと、(右側の)壁に背をつけて……片足を少し後ろにして……腕を組んで……っと。あ、あとついでにミステリアスで神聖な感じの雰囲気を追加して一一。

「ですから呼んで一一」

 よしっ、んじゃ『強キャラが出た時にでるあの風』。

「下さいと……ッ!」

 アレスが締め切った部屋に突然吹いた風に驚き一瞬の瞬きをする。

 俺はその瞬間に『透明化と無視を解除』した。

「やぁ、ギルマス。それと、アレスくん?」

「ッ!?誰ですっ!?」

「なっ!?・・・って何だい、居たのかい。」

 おおぅ、ギルマス冷静になるの早いな。さすがギルマスといったところか?
 ……いやどっちかって言うと、俺の非常識さになれたのかな?

 一一俺を見たギルマスは一瞬のうちに思考をめぐらせ、はっと思いついた顔をして体ごとこちらを向いた。

 ……あ、もしかして一一

「ちょうど今、あんたのことを話していたところだよ。・・・SSSランク冒険者、奔放者のゼロ。」

「えっ!?ってことはこの人が!?」

「さて、これであたしに用事はないね!あとは当事者同士、あんた達でやんなっ!」

 一一やっぱり丸投げする気だ。・・・まぁ別にいいけどね。っと、その前に。

「あ、ギルマス。ちょっといい?それと、アレスくん?少し待ってね。」

「・・・何だい?言っておくが、あたしは巻き込まんでくれよ。」

「え、あ、はい。」

 アレスはそう言うと、混乱した顔ですぐそこのソファーに座った。

「ああ、そうじゃなくて。SSからEXのいい依頼なんかない?下の依頼板にはいいやつ無くてね。」

 この要件を言いに来たんだ。

「・・・なんだい。あんた依頼を受けに来たのかい。というか、今の状況でよくいえたね。」

「いや、それ以外に何があると…。」

「こやつとの言い合いに駆けつけただけかと思ったわい。」

 いや、さすがにそれはない。

「で、依頼だったね。今こっち側にあるやつだと……。」

 ギルマスは机の上の紙や引き出しをガサゴソとして1枚の少し薄汚れた依頼を持ってきた。

「これだけかね。」

 と、取り出した依頼を机の上に置いた。

 えーとなになに?『EXランク依頼【ヨルムンガンドの討伐】』?

━━━━━━━━━━━━━━
・依頼書『EX』
ヨルムンガンドの討伐(極秘)
・内容
 封印の洞窟、最終層に眠るヨルムンガンドの討伐を願う。※失敗不可、絶対に倒せるという確信の元、受注願う。
・報酬
虹王貨10枚
━━━━━━━━━━━━━━

 EXランクの依頼初めて見たわ。あったんだ……。

 あとギルマスよ。依頼内容的にそう軽々と見せるのダメじゃね?極秘って書いてあるし。
 しかも失敗不可、絶対に倒せないとだめって……。

 ってか、ヨルムンガンドってたしかあれだよね?神に一撃与えたとか神を殺したとか相打ちになったっていうでっかい蛇。
 ここにもいるんだ。…ってかそんなんがいるのに普通に生活してる人類大丈夫なのか?

 いや、地球と同じとは限らないけど。・・・でもEXランクにされるくらいだからきっと強いんだろうなぁ。

 ・・・まぁせっかく出してくれたんだし、受けるとしますかねっと。

「ヨルムンガンドか。……よし、ちょうど討伐系をやりたかったしそれでいいかなー。」

「そうかい。なら受付に受注させておくからね。そのまま行ってくれて構わないよ。」

「うん。ありがとうございます。」

「もう用はないね?なら早いところアレスと話し合いでも決闘でもなんでもいいから解決しとくれ。」

 ん。そうしようかね。

 と、俺がアレスの方を見ると、アレスはソファーに座ったまま、まだ混乱していた。

「んじゃアレスくん?」

 俺が声をかけるとはっとこちらを向いた。

「・・・あ、終わりましたか。」

「うん。今さっきね。で、どうする?話し合いで解決する?それとも決闘で?」

「……えーと、はい。では決闘の方で?」

 ・・・あー、やっぱりまだ混乱が抜け切れてないっぽいな・・・まぁ別にいいや。

「そっか。じゃあ今からやる?」

「あ、はい。できればそちらでお願いできますか?」

「わかった、いいよ。」

「えーと、では闘技場へ?」

「うん。……あ、ギルマス、ではまた。」

「……はぁ。うむ。また来るといいさね。」

「ん。んじゃ行こうか。」

 俺はいまだに混乱しているアレスの手を引いて闘技場へ向かった。

「は、はい……?」
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