上 下
99 / 228

第88話 暇を持て余した神々の戦い。

しおりを挟む
第88話 暇を持て余した神々の戦い。


 俺は今、とある家の前にいる。その家は大きくもなく、小さくもない普通の家だ。
 ここに大神主であるユウという者が住んでいるらしい。

「到着致しました。零神主様、こちらが我ら神々の主、大神主様の家でございます。」

「あー、やっぱりそうなんだー。ここに止まったから、なんかそんな感じはしたんだけどねー。だけど……ねー。」

 うん。マジで普通だ。神々の主っていうから城みたいな感じかと思ったんだけど、まさかの少しでかいかな?くらいの普通の一軒家。ご丁寧にインターホンも付いてる。

 俺の微妙な顔に気づいて、苦笑いしながら、

「……色々と言いたいことはわかりますが、取り敢えず、中に入りましょうか。」

 といい、インターホンを押した。


ピーンポーーン。

『はーい。どちら様ですかー?』

 インターホンから聞こえた声は女の人?だった。
 ……あるぇー、もしかして、ユウって女なの?いや、でもステータス見た時は男って……。

「あ、シュレイア様!ユリアです!大神主様に頼まれて零神主様をお連れしました。」

 あ、大神主じゃなくてシュレイアっていう別の人……神?だったわ。
 ってか、この子ユリアって言うんだ。そういえば、名前聞いてなかったな。

『あらー!ユリちゃん?ごめんねー。今出るわー。……全く、あの人ったら今日、お客さんが来るなんて言ってなかったのに…。』

 ……もしかして、シュレイアって人(or神)、大神主ってやつの妻?


 俺がそんなことを考えていると、ドアが開いた。

「あらー、ユリちゃんお久しぶりねぇ。あ、貴方がユリちゃんが言ってた零神主様ね?あらまぁ、凄くイケメンねぇ。」

 あ、なんか友達の家のお母さんって感じするわ。
 あ、ちなみにシュレイアさんはすごく整った顔をしており、とても美人だ。さすが、神々の主の嫁(確定)だな。

「いえー、それほどでもないですよー。大神主さんはご在宅ですか?」

「ああ、あの人ならリビングにいるわよ。あ、立ち話もなんですし、どうぞあがってください。」

「あ、はい。では、お言葉に甘えて。」

 俺は、大神主の家へあがった。



 中は、これまた、異様に広いわけでもなく、見た目通りの広さだった。

 少し奥の方に行くとリビングがあり、そこに二十代前半くらいの男がいた。

 恐らく、この人が大神主だろう。………ソファーで寝てるけど。

「もう、この人ったら……。修行の休みの日は、いっつもこんなふうにぐうたらしちゃってっ!ほらっ!起きなさい!あなたのお客様よ!」

 おー、なんかすげぇお嫁さんっぽ……

「ううぇあっ!?…ととと。
……もぅ、せっかく人がたまの休みにいい気持ちでぐっすり寝てたのに!」

「ほらっ!そんなこと言わないの!
それよりも、あなたにお客さんよ!」

 あ、いや、違う。これお嫁さんやない。お母さんや。

「んぇー?僕に客?誰?」

 大神主が周りをキョロキョロと見回す。

 あ、目が合った。

「んー?どこかで見たような……。あぁー!零神主か!」

 いや、呼んでおいてそれは無いやろ。

「大神主様のご申し付け通り、来たので連れてきました。」

「えー、あー、来るの今日だったっけ。たははー、忘れてた。」

 ……殴ろうかな。

「んー、まぁいいや!」

 あ、俺の口癖が取られた。

「あ、そうだ!零神主!君、強いんだよね!!僕と試合しようよ!」

「んー……。いいよー。やるよー。」

「おおっ!じゃあ早速!」

 え?ここでやるん?場所変えようやー。

「もう。あなたったら!いきなりやる気になったと思ったらすぐに勝負事!?
はぁ。もうそこは諦めたので別にいいですけど、掃除が大変だからやるなら外でやってちょうだい!」

「ちぇー…。……わかったよ。
 零神主君、外に行こうか。」

「んー。わかったー。」

 どうでもいいけど、なんかこの伸ばした感じの喋り気に入ったわー。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「っよし!ここら辺でいいかな!」

 俺らは家から出て、少し遠く離れた次元に来た。

「僕達が戦うと、場所や空間どころか、次元が危ういからねぇ。取り敢えず、いらない次元を作ったからここで戦おうか。」

 あ、間抜けかと思ったら結構真面目に考えてたのね。………いや、真面目に考えてたらあそこでやろうとか言わねぇか。

「じゃあ、早速、始めようか!」

「うんー、わかったー。」

「僕達の戦いに小細工はいらない!最初から本気だ!それじゃあ始めるよ!よーい!……始め!」


 こうして、バケモノ大神主バケモノ零神主の戦いが始まった!

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 まず最初に、ユウが殴りかかってきた。
ゼロはそれを半身にして右によけ、横からユウの腹を殴ろうとした。
 ……が、ユウはその拳を左手で受け止め、そのままゼロを投げた。

 そして、ゼロは落下すると同時に着陸し、すぐに地面を蹴り、今度はゼロがユウに向かって殴りかかった。
 しかし、ユウはあっさりと躱して、すぐさまゼロに魔法をあびせた。

消滅する神々ディエティ・オブ・ヴァニッシング

複製反射コピー・リフレクション

 が、ゼロはすぐに防御型の魔法を使い、難を逃れた。

 一方、反射されたユウはというと、反射された魔法全てを、消滅魔法で消滅させていった。


 そして、消滅させ終わると、両者は相手の確認をし、アイテムボックスから剣を出した。

 ゼロは少し見合うと、すぐに剣で斬りかかった。
 対するユウも剣で応戦した。
 ……ちなみに、両者共、自身で作った異常に強すぎる剣である。

 両者一歩も譲らず、打ち合いを開始した。



 2人は、時には剣を、時には魔法を、時には罠を使い、攻撃を仕掛け、躱され、守られ、破壊され、周囲が壊れ、空間が割れたりした。

 一一戦いが始まり、3日が経った。
 だが、2人はまだ戦い続けていた。異常な戦いだが、どちらも一歩も譲らない戦いに見えた。
 だが、しかし、実際はゼロの方がやや優勢であった。ユウはやや疲れが出てきたが、ゼロには一切それがなかった。

 一一それから終わるまでさらに4日が経った。
 ゼロはピンピンしているのに対して、ユウは、肩が揺れ、顔に大きく疲れが見えてきた。

 ここまで来ると、どちらが勝つか、もう目に見えているだろう。……しかし、それでも両者手を抜かず、全力を出して戦った。

 数分の殴り合いや、魔法のぶつけあいがあり、ゼロの攻撃がユウの顔と体にあたり、ユウの体勢が一瞬崩れた!
 しかし、ゼロはその一瞬の隙を見逃さず、ここぞとばかりに猛攻をしかけた。
 それは、一瞬の事だったが、2人には数分とも数時間とも取れるような感覚だった。

 ……そして、ゼロの猛攻に耐えきれず、とうとう、ユウが倒れた。

 この勝負、ゼロの勝ちとなったのだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 やっっっと勝てたァ!やっぱり神々の主ってだけあってすげぇ強かったわぁ。

 ……ってか、今更だけど神々の主といい勝負するどころか勝てる俺ってなんなんだ?………まぁ別にいいけど。

 ……あ、大神主の傷が全部治ってる。……多分、再生とかの自然回復系の能力だろうな。
 ってか、大神主いつまで気絶してんだ?そろそろ起きるか?

「……んぁ?」

 あ、起きた。

「……んー、あれ?零神主君?なんd………って、あー、そっか負けちゃったのかぁ。
 まぁ、途中からなんとなくそんな感じしたしねぇ。体力的な問題で。
 いやぁー、でも久しぶりに本気出せて戦えて楽しかったよー。」

「うんー。俺も楽しかったよー。また今度やろーなー。あと、俺の名前はゼロだよー。ゼロって呼び捨てでいいよー。」

 話し方はふざけているが、これは本心だ。たまに戦いに来よう。あと、零神主っていうのは他人行儀でなんかむず痒い。

「あ、じゃあ、僕のこともユウって呼び捨てでいいよ!うん!またやろうね!ゼロ!
 ………よいしょっと、じゃあ、そろそろ僕は家に戻ろうかな。少しの間留守にしてたからシュレイアが寂しくして泣いてるかもだしね!」

 あ、そういえば。 

「ねー、シュレイアさんってー、ユウのお嫁さんー?」

「うん!そうだよ!すっごく優しくて、すっごく可愛くて、世界一大切な僕のお嫁さん!もう、シュレイアのためだったら世界や次元を破壊しても構わないくらいに!」

 おうおう、お暑いのぅ。でも、最後のやつは怖いからやめてね?

「仲が良くて羨ましいねー。
 ……さてと、疲れたし、今日のところはそろそろおいと)しようかなー。また今度遊びに来るねー。今度はなにか手土産持ってくからねー。バイバーい。」

「あ、うん!じゃあねー!ゼロ!またね!」

 俺たち2人は自分の世界へ転移した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

固有スキルが【空欄】の不遇ソーサラー、死後に発覚した最強スキル【転生】で生まれ変わった分だけ強くなる

名無し
ファンタジー
相方を補佐するためにソーサラーになったクアゼル。 冒険者なら誰にでも一つだけあるはずの強力な固有スキルが唯一《空欄》の男だった。 味方に裏切られて死ぬも復活し、最強の固有スキル【転生】を持っていたことを知る。 死ぬたびにダンジョンで亡くなった者として転生し、一つしか持てないはずの固有スキルをどんどん追加しながら、ソーサラーのクアゼルは最強になり、自分を裏切った者達に復讐していく。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

死んだのに異世界に転生しました!

drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。 この物語は異世界テンプレ要素が多いです。 主人公最強&チートですね 主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください! 初めて書くので 読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。 それでもいいという方はどうぞ! (本編は完結しました)

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

【Lv.999】から始まる異世界攻略譚 ~落ちこぼれゲーマーの俺は、ユニークスキル「ゲーム」を使って異世界を無双攻略する~

朝倉みずき
ファンタジー
学校から帰り、自室でゲームをプレイしていた明石未来(アカシミライ)は、ある日突然、異世界に迷いこんだ。突然の出来事に混乱する明石。しかし、明石未来には、謎のチートスキル「ゲーム」が備わっていた。念願のチートスキルと異世界にやってきた明石だったが、一癖も二癖もありすぎるパーティメンバー達に振り回される日々が続く。明石は冒険者ギルドに加入し、最強のルーキー冒険者として、今日ものらりくらりと異世界を無双攻略するのだった。 ◇9/26 男性向けHOTランキング 2位

処理中です...