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カルコックの神々を尊ぶ善良なる民への書

3.裁かれた神、"歩く男神エルジホスプト"またの名を"不敬なる者フラップス"

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 本来カルコックにおいて、罪人を裁くことは罪人が行うべきであるが、神の世界においてはその通りではない。
 "歩く男神エルジホスプト"は自身より高等な神である"起きる男神パラベシュトリ"へ楯突いた罪を"すなわち高貴なる男神ルナスフォンダ"によって清算された。
 罰は神である名前の抹消と、"起きる男神パラベシュトリ"が監視する人間へ姿を変えることであった。

 穢れた世界へその身を堕とされた彼は、フラップスという名に改め、カルコック領のはるか東南にあるビスケパラという町である家族に拾われた。

 雑多な神であれど、神であったその身は既に人へと変わり果て、その名残として肌は美しい白さを露出していた。

 裏切られた結末にも関わらず、慈悲深き御方であった"起きる男神パラベシュトリ"は兄の行く末を憂い、有象無象の人間たちよりもフラップスを注視していた。

 フラップスは拾われた家族の家で、粗末な暮らしながらも命を落とすことなく過ごしていき、やがて体は丈夫な大人のものへと成長した。

 自信が神であったことを忘れ、下賎な人間の暮らしに馴染んだことを哀れに思った"起きる男神パラベシュトリ"は友人である我々の王、フグクスストに事情を説明し、自分が神であることを思い出させようとした。

 "起きる男神パラベシュトリ"は聡明であった。

 フグクスストにフラップスを粗末に育てあげた人間たちを、私兵を率い殺すよう命じた。
 神は不敬でない人間に直接手出しすることが出来ないため、友人の手を借り、間接的に関与することに成功したのだ。

 哀れにも人の暮らしに染まってしまったフラップスは、またもや激昂し、あろうことかフグクススト、"起きる男神パラベシュトリ"へ直接的に反抗し対立する意思を申し出た。

 彼の振る舞いに大変呆れた"起きる男神パラベシュトリ"は、これ以上彼が、その痴態を晒すことの無いよう、殺害予告から正式に不敬なるものとして認識し、概念的幽体、そしてフグクスストの私兵をフラップスへ差し向けるのであった。

 カルコックでは、フラップスを神の施しに対して最上級の不届きを働いたものとして、
 "不敬なる者フラップス"
 上記の仇名を設けるものとする。

 "不敬なる者フラップス"はあろうことか、"起きる男神パラベシュトリ"の監視から逃れ、どこかに隠れ続けていると言う。
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