虹恋、オカルテット(わけありな男子高校生と美少女たちの青春がオカルトすぎない?)

虹うた🌈

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第三章 死闘

第75話 一人きりの闘い 前編

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「青葉!」

 ユウの叫び声が空しく響く。画面から消えた彼女からの返事はない。

「……早速、動いて来たみいたいね。如月君、妹の事なら心配いらないわ。貴方は身をもって体験しているでしょう?」

 こんな事態なのに、紅葉の声は落ち着ついている。体験? ……そうだ。青葉と初めて出会った時の出来事をユウは思い出していた。

 ………あいつ、何か妙な技を使えるんだった。

 だけど大丈夫なのだろうか?そうは言っても、女の子一人っきりなんだぞ?

 その時、スマホから青葉の声が聞こえた。

「………囲まれてしまいました。1、2、3、4、――6人。柄の悪そうな男の人達が六人います」
 
 だが無事な声を聞いてほっとしたのも束の間、彼女から伝えられたのは絶望的な内容だった。なんと六人もの男達に、取り囲まれているというのだ。
 想像していた以上に悪い状況に、ユウは言葉を失ってしまった。しかしそんな状況の中で、彼女が返してきたのは意外すぎる言葉だった。

「姉さん、いいですか?手加減は、しますけど………?」

 そしてその言葉を受けた紅葉は、ふーっと深い溜息をつく。それから前髪をかき上げると、彼女はこう言ったのだ。

 お好きに、どうぞ―― っと。





 💀 💀 💀 💀 💀 💀 💀 💀 💀


 青葉が、スマホを制服のポケットにしまったと同時に、黒いワンボックスカーの運転席とサイドのスライドドアが開いて四人の男達が車から降りてきた。急いで来た道を戻ろうと振り返ると、二人の男達が道を塞ぐ様にして立っていた。

「青葉!」

 ポケットの中からユウの声が、聞こえた。

 青葉はゆっくりとスマホを取り出し、姉に状況を報告した。すると姉から返ってきたのは深い溜息と、お好きにどうぞ、という言葉。

 青葉の中で、もう心配事は無くなっていた。



「おいおい。こんな上玉、好きにしていいのかよ?あの人も、たまには気の利いた事してくれるじゃねえか。なあ?」

 男の一人が、下品な声を上げる。

「マジかよ!?こんないい女、見た事ないぜ。マジで最高かよ!」

 と、男共は勝手に盛り上がっている。

 ユウの言った通りだった。こいつらは、集団で狩りを行っている。

 姉がいるから大丈夫だろうが、万が一にも、いずみが危険に晒されているなら一秒でも早く合流したいと思った。こんな馬鹿共に、構っている暇は青葉には無かった。

 歓声を上げながら近づいてくる男達に苛立ちを覚えながら、青葉は一気に距離を縮めた。

 縮地しゅくち、と言う走法だ。

 青葉の修めている武術では基本中の基本の走り方だが、慣れていない奴等には急に目の前に現れた様に見えたことだろう。

「!」

 阿呆面で立っている先頭を歩く男の喉に手の平を叩き込みながら、右足を男の膝裏に掛け、そのまま地面に押し倒す。男は受け身も取れないまま、後頭部をアスファルトに打ち付けた。

 ………これで、一週間は目を覚まさないだろう。

 青葉はそのまま動きを止めずに縮地で近づき、近くで立ち竦んでいる男を同じ様に眠りにつかせた。しかし三人目の男は、驚いた顔をしながらも右手で青葉を掴みにきた。その手を左手で軽く往なしながら掴み、同時に捻り上げる。

 ボキボキと骨だか軟骨だかが、ひしゃげる感触が掴んだ腕に伝わってくる。

「うぎゃあ!!!」

 青葉はわめく男の喉仏に手の平を当てて後ろ足を掛けると、体ごと後ろに引き倒して後頭部をアスファルトに打ち付けた。


「てめえ!!」

 今度は、二人同時に男達が飛び掛かってきた。

 青葉は風の様な動きで二人をかわすと一人の背後に回り込み、トン……っと背中を押した。押された男はバランスを崩して前のめりに倒れ込むと、大袈裟に2、3メートルは転がった。
 
 そこに、もう一人の男が拳を振るってきた。青葉はそれを左手で往なしながら腕を掴み、そのまま自身の体を外側に回転させた。ボキリッと耳障りな音が辺りに響き、少し間を置いて男が膝から崩れ落ちるように倒れこむ。

 青葉が掴んでいた腕を離すと、男の腕はぶらんと垂れ下がった。
 肩が外れたのか、腕の骨が折れたのか知らないが、男は悲鳴を上げながら誰も居ない空中に向かって何かを訴えかけている。

五月蠅うるさい、ですよ?」

 そう言うと青葉は、他の男達と同じ様に男の意識を絶つ。

 視線を向けると、先程地面に転がった男は逃げようと地面をバタバタしていた。が、一瞬で近づいた青葉の手刀で頸部を一撃され、直ぐに動かなくなった。


「こりゃあ、驚いた。こんな可愛子かわいこちゃんが、古武術とはね。お嬢ちゃん、どこの流派だい?」

 最後に残った大柄な男が、ニヤニヤしながら尋ねてきた。

「……流派?そんなこと、聞いてどうするんですか?」

「いや、俺は格闘技が好きでね。ガキの頃から空手、柔道、ボクシング、お嬢ちゃんが今使った古武術なんかも一頻り修めたよ。で、今は戦闘術にハマってる。元傭兵なんでね」

 言いながら男は、太腿に取り付けたダガーを握り、ゆっくりと引き抜いた。
 
 確かに……です。

 その言葉通り。青葉はこの男から、他の男共とは比べ物にならない程の強烈な威圧感を感じていた。

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