虹恋、オカルテット(わけありな男子高校生と美少女たちの青春がオカルトすぎない?)

虹うた🌈

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第二章 絆

第54話 …混沌。

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 暫く見つめ合っていたユウと紅葉だったが、紅葉が唐突にびっくりする言葉を口にして、その時間は終わりを告げた。

「……ところで二人は、いつまでそこで盗み聞きをしているつもりなの?」

「はい……?」

 急いで涙を拭っている紅葉の姿を可愛らしいと感じつつ、ユウは間の抜けた声を上げた。慌てて後ろを振り向くと、部室の扉がゆっくりと開いてゆく。

「黒木先輩!?金森も!?二人共、今の話聞いていたのかよ!?」

 すると扉の向こうから、相変わらず無表情っぷり全開の青葉とバツが悪そうな顔全開の金森が姿を現したではないか……

「二人共ごめん!盗み聞きをしていた訳じゃないんだけど、入りづらくて、つい!本当にごめんね!」

 頻りに謝る金森に対して、一方の青葉は悪びれた様子もない。


「二人共、趣味が悪いわ。せっかくの如月君との良い雰囲気が、台無しになってしまったじゃない」

「ちょっと紅葉ちゃん!?いい雰囲気とかじゃないよね!?」

 意地悪な台詞を聞いた金森が、すかさずツッコミを入れる。

「ふふっ、どうかしら? ね~え、如月君?」

 そしてユウは、その声を敢えて無視したのだった。


「……で、二人はいつから盗み聞きしてたんだ?」

「ぬ、盗み聞きとかじゃないし。ねえ青葉ちゃん、違うよね?」

「私たち、仲間がどうたらってとこら辺から盗み聞きをしていたんです」

 その素直すぎる返答に、おい、素直すぎだろ先輩!?と、ユウが心の中でツッコミを入れ、金森はガックシと肩を落とした。

「黒木先輩もちょっとは反省して下さいよ。確かに趣味が悪いっす」

「……ごめんなさい」
 
 そして強い口調でユウから注意をされた青葉は、シュンと肩を落とした後に突然こんなことを言い出したのだ。

「でも、私のことは青葉でいいんです」

「……はあ?」

「ユウはこれから私のこと、黒木先輩じゃなくて青葉って呼ぶんです。……だから私も、あなたのことユウって呼びますね?」

 それはその場にいる全員を、ポカンとさせるには十分過ぎる台詞だった。

「ちょ…青葉ちゃん?ちょっと待って……? いきなりの呼び捨てなの? それに私だって、本当は如月くんに下の名前で呼ばれたいんだよ?」

 いや、金森。何、言ってんだ?

「そ、そうよ青葉。ふふっ、あなたは突然に何を言い出したのかしら? ……まさかあなた達、昨日二人で何かよからぬ事をしてたんじゃないでしょうね?」

 はい、先生。俺、死ぬより怖い思いをしてました。さっき話しましたよね?

「……だって私たち、仲間なんですよ?」

 そしてユウは、その青葉の一言にカーと顔が赤くなってゆくのを感じた。

 この女は、嫌がらせのつもりなの? ……絶対に、そうだよね?

「……ユウ? 私たち、仲間なんですよね?」

 うん、やっぱりこの女は嫌なやつだった。それどころか恥ずかしさに悶えている人間に畳み込むように言葉を重ねてくるこの女は、きっと悪魔に違いない。

「青葉ちゃんズルいよ!如月くん、私のこともいずみでいいから!だから私もユウって呼んでいいかな!? ユ、ユ、ユ、ユウ!  ……くん」

 そして勢いで呼んだまでは良かったのだが、顔を真っ赤にしている金森。……いや、いずみか? どうやら俺は、これから金森のことを、いずみって呼ぶことになったみたいだけど、涙目になるくらい照れ臭いなら無理しなくてもいいんだけど?

「だっ大体さ!二人とも学校中の噂になってるんだよ!?青葉ちゃんがユウくんを膝枕してたってどういうことなのか、ちゃんと説明してよ!」

「だって私たち、仲間ですし……」

 しれっと答えた青葉に、いずみが必死に噛みついていく。

「青葉ちゃん!彼女じゃあるまいし、仲間で膝枕っておかしいよ!?」

「じゃあ、それでもいいです」

「ぜ……っ!ぜ、全然よくないしっ!」

 

 あー五月蠅うるさいい……

 混沌と化してしまった部室でユウは一人、大きな溜息を付いたのだった。
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