23 / 100
第一章 出逢い
第23話 ・・嫌な、女。
しおりを挟む
事のあらましをざっと説明し終えた後で、みんな各々に椅子に座った。
「・・さて改めて紹介するわね、如月君。私の隣に座っているのが、もう一人の部員の黒木青葉よ。彼女は私の妹でもあるの。そして青葉。彼は新入部員の如月ユウ君。二人とも仲良くしてね」
だがその言葉とは裏腹に、部屋にはギスギスとした空気が漂っていた。紅葉と青葉が並んで座り机を挟んでユウといずみが並んで座っている構図だが、ユウと青葉は明らかにお互いに顔を合わせないようにしていた。お互いに、そっぽを向いているのだ。
「あらあら・・ 何だか楽しい部活になりそうね。そうだわ。ほら・・ お互いにちゃんと挨拶なさいよ」
黒木先輩に促されて二人は一応挨拶を交わした。しかし、どうも・・と、一言で挨拶を済ました如月ユウは明後日の方角を向いたままだったし、黒木青葉に至っては小さく頭を下げただけだ。
「ふふふっ二人とも、ちゃんと挨拶は交わせたみたいね。でも二人が気が合いそうで、私は安心したわ」
どこが!? 今、交わした挨拶に気が合いそうな件なんてあったんか!?
・・この人は、もしかしてとんでもない変わり者かもしれない。これから関わることになった新しい人間関係に不安を感じたユウは、嬉しそうに微笑んでいる黒木先輩をマジマジと見つめてしまった。それは黒木青葉も同じだったようで・・
「どこがですか!? 姉さんは一体、どこを見ているんですか!?」
と、隣に座る姉を驚いた顔で見つめている。そんな二人の様子を更に嬉しそうな顔で眺める黒木先輩。先輩はまあまあ・・少し落ち着いてね二人とも・・と笑顔をみせている。
「ねえ、如月君。さっき妹が貴方にしてしまった事だけれど、許してあげられない?この子は昔から、いずみちゃんに意地悪をする人を絶対に許さない処があるのよ。さっきの事も、きっといずみちゃんを大切に想う気持ちが先走ちゃったのね。妹の非礼は姉である私からも改めて謝らせてもらうわ。・・本当に、御免なさいね」
そしてユウは、先輩から三人が幼い頃からずっと親しくしている幼馴染なのだと説明を受けた。隣に座る金森を見れば照れ臭そうな笑顔。その笑顔を見れば、この三人が本当に仲の良い幼馴染なんだろうと一目で分かってしまう。
・・確かに先輩の言う通り、黒木青葉にとって金森いずみは本当に大切な存在なのだろう。そんな人間関係などないユウには、三人の関係が少し羨ましく感じてしまう。
まだ腕と肩に痛みは残っていたのだが、なぁに・・こんな痛み、入院していた時に比べたらなんてこともない。ここは一つ黒木先輩の顔を立てて大人の態度を心がけようと、ユウは改めて黒木青葉に和解の使者を送ることにした。
「・・いえ。俺こそ大人気無い態度をとってしまって、すみませんでした。そういう事情なら理解できます。 ・・俺も勘違いさせてしまって悪かった。さっきのことはお互いに忘れよう。改めて宜しくな、黒木」
「・・先輩です」
「・・は?」
「私のことは黒木先輩と呼んで下さい。私の方がこの部活では先輩なんですから、当然ですよね?慣れ慣れしく、呼び捨てにしないで・・」
「あ、青葉ちゃんっっ!!!」
先程、心掛けた大人な態度はどこに行ってしまったのだろうか?隣で金森の悲鳴が聞こえたが、今の台詞を聞いてユウは、もう一歩も引く気は無くなった。
「・・ほう?二人も黒木先輩がおられたら、どちらをお呼びしたのか分からなくなるんじゃないですかね?ねえ、黒木先輩?」
「だったら姉さんのことは、先生って呼べばいいじゃないんですか?あなたは、姉さんに催眠を教えてもらうんですよね?」
そしてそれに涼しい顔を返してくる黒木青葉。こういう場面では青葉の整った顔は逆効果になる。相手の神経を逆撫でする効果は抜群なのだ。まあ本人も、それを十分に理解して使用しているんだろうが・・
「ねえ青葉。私は嫌よ。そんな変な呼び方で如月君に呼ばれるの・・」
「・・分かりました。これからは黒木紅葉先輩のことを先生って呼ばせていただきます。それでいいんですよね? ・・ねえ黒木青葉、センパイ?」
人の話を聞いているのかいないのか、相変わらずの顔で無視を決め込む黒木先輩こと黒木青葉の態度にイラつきを覚え、ユウはその嫌な女に全開の嫌味な笑顔をプレゼントする。
・・不服そうな表情を浮かべている元祖黒木先輩には申し訳ないが、成り行き上こうなってしまったからには致し方ない。ユウは、これから二人のことをそう呼ぶことに決めた。
先生こと黒木紅葉が溜息をつき、事の成り行きを心配そうに見守っていた金森いずみは結局、最後は耐えられなくなって吹き出している。
結局のところ・・
『城西高校オカルト研究部』部員三名の初顔合わせは、笑わない様に必死に頑張っていたが無駄に終わった金森いずみの押し殺した笑い声で、幕を閉じたのだった。
「・・さて改めて紹介するわね、如月君。私の隣に座っているのが、もう一人の部員の黒木青葉よ。彼女は私の妹でもあるの。そして青葉。彼は新入部員の如月ユウ君。二人とも仲良くしてね」
だがその言葉とは裏腹に、部屋にはギスギスとした空気が漂っていた。紅葉と青葉が並んで座り机を挟んでユウといずみが並んで座っている構図だが、ユウと青葉は明らかにお互いに顔を合わせないようにしていた。お互いに、そっぽを向いているのだ。
「あらあら・・ 何だか楽しい部活になりそうね。そうだわ。ほら・・ お互いにちゃんと挨拶なさいよ」
黒木先輩に促されて二人は一応挨拶を交わした。しかし、どうも・・と、一言で挨拶を済ました如月ユウは明後日の方角を向いたままだったし、黒木青葉に至っては小さく頭を下げただけだ。
「ふふふっ二人とも、ちゃんと挨拶は交わせたみたいね。でも二人が気が合いそうで、私は安心したわ」
どこが!? 今、交わした挨拶に気が合いそうな件なんてあったんか!?
・・この人は、もしかしてとんでもない変わり者かもしれない。これから関わることになった新しい人間関係に不安を感じたユウは、嬉しそうに微笑んでいる黒木先輩をマジマジと見つめてしまった。それは黒木青葉も同じだったようで・・
「どこがですか!? 姉さんは一体、どこを見ているんですか!?」
と、隣に座る姉を驚いた顔で見つめている。そんな二人の様子を更に嬉しそうな顔で眺める黒木先輩。先輩はまあまあ・・少し落ち着いてね二人とも・・と笑顔をみせている。
「ねえ、如月君。さっき妹が貴方にしてしまった事だけれど、許してあげられない?この子は昔から、いずみちゃんに意地悪をする人を絶対に許さない処があるのよ。さっきの事も、きっといずみちゃんを大切に想う気持ちが先走ちゃったのね。妹の非礼は姉である私からも改めて謝らせてもらうわ。・・本当に、御免なさいね」
そしてユウは、先輩から三人が幼い頃からずっと親しくしている幼馴染なのだと説明を受けた。隣に座る金森を見れば照れ臭そうな笑顔。その笑顔を見れば、この三人が本当に仲の良い幼馴染なんだろうと一目で分かってしまう。
・・確かに先輩の言う通り、黒木青葉にとって金森いずみは本当に大切な存在なのだろう。そんな人間関係などないユウには、三人の関係が少し羨ましく感じてしまう。
まだ腕と肩に痛みは残っていたのだが、なぁに・・こんな痛み、入院していた時に比べたらなんてこともない。ここは一つ黒木先輩の顔を立てて大人の態度を心がけようと、ユウは改めて黒木青葉に和解の使者を送ることにした。
「・・いえ。俺こそ大人気無い態度をとってしまって、すみませんでした。そういう事情なら理解できます。 ・・俺も勘違いさせてしまって悪かった。さっきのことはお互いに忘れよう。改めて宜しくな、黒木」
「・・先輩です」
「・・は?」
「私のことは黒木先輩と呼んで下さい。私の方がこの部活では先輩なんですから、当然ですよね?慣れ慣れしく、呼び捨てにしないで・・」
「あ、青葉ちゃんっっ!!!」
先程、心掛けた大人な態度はどこに行ってしまったのだろうか?隣で金森の悲鳴が聞こえたが、今の台詞を聞いてユウは、もう一歩も引く気は無くなった。
「・・ほう?二人も黒木先輩がおられたら、どちらをお呼びしたのか分からなくなるんじゃないですかね?ねえ、黒木先輩?」
「だったら姉さんのことは、先生って呼べばいいじゃないんですか?あなたは、姉さんに催眠を教えてもらうんですよね?」
そしてそれに涼しい顔を返してくる黒木青葉。こういう場面では青葉の整った顔は逆効果になる。相手の神経を逆撫でする効果は抜群なのだ。まあ本人も、それを十分に理解して使用しているんだろうが・・
「ねえ青葉。私は嫌よ。そんな変な呼び方で如月君に呼ばれるの・・」
「・・分かりました。これからは黒木紅葉先輩のことを先生って呼ばせていただきます。それでいいんですよね? ・・ねえ黒木青葉、センパイ?」
人の話を聞いているのかいないのか、相変わらずの顔で無視を決め込む黒木先輩こと黒木青葉の態度にイラつきを覚え、ユウはその嫌な女に全開の嫌味な笑顔をプレゼントする。
・・不服そうな表情を浮かべている元祖黒木先輩には申し訳ないが、成り行き上こうなってしまったからには致し方ない。ユウは、これから二人のことをそう呼ぶことに決めた。
先生こと黒木紅葉が溜息をつき、事の成り行きを心配そうに見守っていた金森いずみは結局、最後は耐えられなくなって吹き出している。
結局のところ・・
『城西高校オカルト研究部』部員三名の初顔合わせは、笑わない様に必死に頑張っていたが無駄に終わった金森いずみの押し殺した笑い声で、幕を閉じたのだった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
バスト105cm巨乳チアガール”妙子” 地獄の学園生活
アダルト小説家 迎夕紀
青春
バスト105cmの美少女、妙子はチアリーディング部に所属する女の子。
彼女の通う聖マリエンヌ女学院では女の子達に売春を強要することで多額の利益を得ていた。
ダイエットのために部活でシゴかれ、いやらしい衣装を着てコンパニオンをさせられ、そしてボロボロの身体に鞭打って下半身接待もさせられる妙子の地獄の学園生活。
---
主人公の女の子
名前:妙子
職業:女子学生
身長:163cm
体重:56kg
パスト:105cm
ウェスト:60cm
ヒップ:95cm
---
----
*こちらは表現を抑えた少ない話数の一般公開版です。大幅に加筆し、より過激な表現を含む全編32話(プロローグ1話、本編31話)を読みたい方は以下のURLをご参照下さい。
https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m05341b80803d
---
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる