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第一章 出逢い
第12話 旧部室棟
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「城西の魔女」こと黒木先輩に会いに行ったのは、放課後の4時半頃だった。旧部室棟の前で金森と待ち合わせ、建物の中に入って行く。
「悪いな、金森。時間をつくってくれて」
「別にいいよ。だって如月くんにとって大事なことだもん。でね・・もしよかったらだけど、今日も用事が済んだら一緒に帰ろうよ?」
「ああ、別にいいけど・・ でも金森、昼間は何かよそよそしくなかった?だから俺、嫌われたんじゃないかって思ってた」
・・そうなのだ。放課後の件で打ち合わせをしたかったのだが、教室での金森はユウを明らかに避けている様子だった。待ち合わせの場所と時間の連絡も、昨日交換したSNSでしてきたくらいだ。同じ教室の中にいるのに、何で?と、思う。
「そ、そんな訳ないよ!如月くんを嫌ったりなんか、私ぜったいしないから!」
「そうなの?ならいいけどさ」
「女の子には色々あるんだよ。如月くんと仲良く話してたら、絶対みんな詮索してくるから・・」
そういうものなのだろか?まあ、確かに女子には男子には分からない色々な事情がありそうな気がする。
「・・今はまだ、そっとしておいて欲しいんだもん」
「・・ん? 悪い。よく聞こえなかった」
急に声が小さくなったので、金森の言葉の最後の方は、よく聞こえなかった。
「ひ、独り言だから気にしないで・・」
「ああ、そうか・・それなら、いいんだけどさ」
旧部室棟は三階建ての建物で、古い洋館の様な佇まいをしている。レンガで出来た外壁が、歴史を感じる建物だ。
主に文化部の拠点となっていたのだが、数年前に新しい部室棟が建てられてからは主だった部はそちらに移動してしまい、幾つかの小人数で活動している部だけ使用している建物だと聞いた。だから今は、人の出入りは殆ど無いという。
本来なら既に取り壊されていても、おかしくはない古い建物なのだが、市の重要歴史的建造物になるかもしれないとの理由で、壊されずに残されているらしい。
その旧部室棟の中央にある入口に入ると、すぐ目の前には二階へと続く階段があった。だが目的の部屋は一階にあるとのことで、左右に続く廊下を右に進んでいく。
中に入ってみると、意外にも建物の中には活気が感じられた。生徒同士の話し合う声や、笑い声、足音も聞こえてくる。しかし一階には活動している部は無いらしく、元々は真っ白だったであろう薄汚れた壁と歴史を感じる扉の幾つかを通り過ぎたが、どの部屋からも人の気配は感じられなかった。喧騒を感じるのは、上の階からだ。
金森は突き当りまで進むと、左手側の扉を指した。
「・・この部屋だよ」
金森の指さす木製の扉の脇には小さな看板がぶら下がっており、趣のある字でこう書かれている。
『オカルト研究部』
「悪いな、金森。時間をつくってくれて」
「別にいいよ。だって如月くんにとって大事なことだもん。でね・・もしよかったらだけど、今日も用事が済んだら一緒に帰ろうよ?」
「ああ、別にいいけど・・ でも金森、昼間は何かよそよそしくなかった?だから俺、嫌われたんじゃないかって思ってた」
・・そうなのだ。放課後の件で打ち合わせをしたかったのだが、教室での金森はユウを明らかに避けている様子だった。待ち合わせの場所と時間の連絡も、昨日交換したSNSでしてきたくらいだ。同じ教室の中にいるのに、何で?と、思う。
「そ、そんな訳ないよ!如月くんを嫌ったりなんか、私ぜったいしないから!」
「そうなの?ならいいけどさ」
「女の子には色々あるんだよ。如月くんと仲良く話してたら、絶対みんな詮索してくるから・・」
そういうものなのだろか?まあ、確かに女子には男子には分からない色々な事情がありそうな気がする。
「・・今はまだ、そっとしておいて欲しいんだもん」
「・・ん? 悪い。よく聞こえなかった」
急に声が小さくなったので、金森の言葉の最後の方は、よく聞こえなかった。
「ひ、独り言だから気にしないで・・」
「ああ、そうか・・それなら、いいんだけどさ」
旧部室棟は三階建ての建物で、古い洋館の様な佇まいをしている。レンガで出来た外壁が、歴史を感じる建物だ。
主に文化部の拠点となっていたのだが、数年前に新しい部室棟が建てられてからは主だった部はそちらに移動してしまい、幾つかの小人数で活動している部だけ使用している建物だと聞いた。だから今は、人の出入りは殆ど無いという。
本来なら既に取り壊されていても、おかしくはない古い建物なのだが、市の重要歴史的建造物になるかもしれないとの理由で、壊されずに残されているらしい。
その旧部室棟の中央にある入口に入ると、すぐ目の前には二階へと続く階段があった。だが目的の部屋は一階にあるとのことで、左右に続く廊下を右に進んでいく。
中に入ってみると、意外にも建物の中には活気が感じられた。生徒同士の話し合う声や、笑い声、足音も聞こえてくる。しかし一階には活動している部は無いらしく、元々は真っ白だったであろう薄汚れた壁と歴史を感じる扉の幾つかを通り過ぎたが、どの部屋からも人の気配は感じられなかった。喧騒を感じるのは、上の階からだ。
金森は突き当りまで進むと、左手側の扉を指した。
「・・この部屋だよ」
金森の指さす木製の扉の脇には小さな看板がぶら下がっており、趣のある字でこう書かれている。
『オカルト研究部』
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