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三章 意外な出来事

3-4 私の昔話

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「お師匠様(ばあちゃん)おはようございます!」

「「今日も頑張って行ってきます!」」

朝早くからきちんと挨拶し冒険者ギルドに向かって駆けだすおぼっちゃまとお嬢様をお見送りして、ボクはご主人様がいるリビングに戻ります。

おぼっちゃまとお嬢様に、宿代が勿体ないからと家から通う事を提案したところ、お二人は喜んで戻ってきたと嬉しそうな顔をして喜ぶご主人様。

冒険者という職業は命あってのものだから、なるべく一緒にいれる環境があると嬉しいのよねと微笑むご主人様の顔がとても可愛くて、ボクはちょっと照れてしまいました。

あ、申し遅れました。
ボクはエンゲリス家の執事として召喚された、猫人のニャースケです。

おぼっちゃまとお嬢様が冒険者ギルドという場所に行くことが多くなり、ちょっと寂しくなってしまったご主人様が僕を召喚してくれたんだけど、契約内容が変わってたんだ。

・朝から昼までの半日出勤。都合の悪い時は事前連絡でOK
・朝食の準備のお手伝いと、ご主人様のお話をお聞きする簡単なお仕事
・報酬は要相談

この話を聞いたボクは、最初、ご主人様が何を話しているのかわからなかったんです。
ただでさえ召喚されたボクらのような使い魔は、召喚と言う契約に縛られていて、ご主人様の命令には絶対服従が当たり前なのに、目の前のご主人様はボクにそれを求めてないんですね。

でもね、ボクが報酬と言われてもわからないといったら、ふふふと笑って、「だったら私とおともだちになってもらえないかしら?」だって。ともだちだったらいろいろなお話がしやすいでしょ?って笑うご主人様の笑顔が好きになって、ボクはここに来て本当に良かったって思えました。

あ、ボクの話が長くなってしまいましたね。すいません。

で、ボクはようやく慣れてきた朝食のお片付けと、ご主人様への紅茶を持ち、リビングへ戻りました。
ボクが持ってきた紅茶をゆっくり飲み、窓から見える畑や花を楽しそうに見ていたご主人様でしたが、ふと、さきほど出て行ったお二人の事をお話下さいました。

「あの二人ね私とは血は繋がってないの。だけど何故かどこか私に似ているの。紅茶をのむ最初の口だったり、出かけるときに必ず右から足が出るところとか、怒った時にちょっと頬を膨らませるとか・・・そんなちょっとしたしぐさを見つけるたびにとっても嬉しくなるの」

そういうご主人様のお話を、目の前に置かれたご主人様のクッキーをほおばりながら聞いていると、

「今日は私の昔話を聞いてほしいのだけど」と言い、また一口コップに口をつけて、ご主人様はお話をはじめました。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

最近になって、自分の魔力が全盛期に戻ったの。

きっかけはさっき出て行った孫なの。

孫が通っていた魔法学園でいじめがおこってね。
大けがした孫にも謝らないし、自分の責任じゃないって言い張った学園長たちに激おこぷんぷん丸だったの。
そんな時、夢の中でおじいさんが私の本当の力を思い出させてくれてね。自分の力を取り戻す事が出来たの。
私は本当は80歳のおばあちゃん。だけど、今はどう見ても20代の女の子かな?そのおかげでこうやってニャースケともお話が出来てるんですもの。世の中捨てたもんじゃないよね。

私の最盛期は、10代後半から20代中盤くらいだったかな?
自分でもあきれる位、自分勝手にいろいろな事をしてたんだけど、その分楽しい事も辛い事もいろいろな事を経験出来たんだよ。

駆け出しの冒険者の時から、強力な魔法を連発出来る魔女って変わってたらしくてね、いろいろなパーティを渡り歩いていろいろな場所に行ったわ。お話も好きだったから、パーティに入った人だけじゃなくて、初めての街に行ったら酒場で情報収集と言う名のおしゃべり、そこで聞いた美味しい食事処でもおしゃべり。名産品とか変わったものもいっぱい見たくて、そのたびにおしゃべりしてたら「おしゃべり魔女」なんてあだ名がついちゃったくらい。

でも、納得できないことはきっぱり断っていたし、暴力で訴えてきても魔法で反抗してたから、一部の人達には生意気に思われてたかもしれないわね。ま、私は私の信念で動いてたから全然気にしてなかったけどね。

そんなある日、冒険者ギルドのおっちゃんから「勇者パーティからお誘いがあるんだけどどうか?」って話があったから、なんとなく興味があって行って見たら、そこにいたのは5人の実力者達。

実力は冒険者ギルドにてSS級と認定されている剣も魔法も超一級だけど、すぐに女の子に手を出す問題児勇者に、寡黙でみんなの盾になってくれ、いろいろな厄介事を陰で解決してくれた戦士様(男性)と騎士様(女性)、神殿から依頼がありパーティに合流した世間知らずなお嬢様な僧侶と、お調子者だけどしっかり仕事をこなし、みんなのムードメーカーになっていた盗賊ちゃん。

うん、このパーティを見て、私は「世間知らずの勇者パーティに足りない知識」として加入の打診があったんだなぁって思ったんだ。

まぁ、実際に一緒にいたらね、勇者と僧侶以外はまともで、自分の事を一生懸命やる人で好感が持てたな。
目的地をしっかり把握し、道を歩く戦士様、騎士様、そして盗賊ちゃんの三人に道案内をお願いしながら、伝手を利用して宿などを抑え、食料や日用品を確保する私を尻目に、手あたり次第若い女の子に声をかけまくる勇者。
その様子をおろおろしながら見ている僧侶・・・それが最初の私達パーティの様子だったんだけどね、

ちょっかい出される騎士様や盗賊ちゃん、僧侶の女性陣を目にして、身体を貼って注意する戦士様。

ちょっかいだされながらも、全く相手にしない私に業を煮やして「出ていけ!」と言う勇者。

その言葉にぷちんときた戦士様をおさえつつ、私は思ったんだ・・・

あ、コイツ躾がなってないな・・・って。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「あっ、ニャースケもうクッキー食べちゃったの?お代わり持ってくるわね」

そう言ってお話を止めたご主人様はキッチンにクッキーを取りに行ってくれたんですけど、本当はこれ、ボクのお仕事だよね・・・って、ちょっと反省した時には、もうすでに新しいクッキーが用意されてて、ご主人様は続きを話したくて仕方がない顔をしているから、もう反省は忘れちゃいました。

美味しいクッキーと、楽しいお話に囲まれて、僕はなんて幸せな使い魔なんだろう。
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